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【どこよりも詳しい精油の話・4】ローズマリーの歴史と魅力<歴史編>

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2024/11/28

ローズマリーは料理や薬用に古くから使われ、力強く刺激的な香りで何世紀にもわたり人々を魅了し続けているハーブです。ローズマリー精油は古くからさまざまな研究により、化粧水の材料や育毛、フケ予防に古くから使われています。<歴史編>では、ローズマリーがいかに古い時代から人々に愛されて用いられ、生活に密接に関わり、文化の一端を育んできたのかをご紹介します。

 

ローズマリーの産地

フランス・スペイン・イギリスなどのヨーロッパ、メキシコ、アメリカ(とくにカリフォルニア)が主な生産地です。また、地中海・ポルトガル・スペイン北西部など、ヨーロッパの多くの地域に自生しています。温暖な気候を好み、気候さえ合えばどこでも育つほど丈夫で、よく増えるため、キューバでは侵略的雑草と言われています。

 

ローズマリーの生物学的な情報

シソ科サルビア属の常緑低木で、和名はマンネンロウ(迷迭香)。学名はSalvia rosmarinus(サルビア・ロスマリヌス)ですが、2017年までの学名はRosmarinus officinalis(ロスマリヌス・オフィシナリス)でした。葉は細くて光沢があり、小さな松の葉に似ています。高さは通常約1mほどですが、品種や環境によっては2mまで成長。寿命は20年以上あり、時には30年枯れずに育ちます。

温暖な気候で育つ

ローズマリーは、温暖な気候と十分な日光、適度に乾燥した土壌を好みます。日本を含む温帯の地域でよく育ち、害虫がつきにくく増えやすい、寒さや干ばつに比較的強いといった特徴があるため、ガーデニング初心者でも育てやすい植物です。また、「海の聞こえる場所」に育つという古代の伝説があり、実際にローズマリーは海のそばや砂質の土壌でよく育ちます。

1年で何度も収穫できる

春と夏には、白やピンク、紫、または濃い青色の小さな花を咲かせ、とくに温暖な気候の場合には絶え間なく開花します。初春に咲く花の蜜と花粉は、ミツバチにとって重要な食料源です。花からは種子が取れるものの、発芽率が低く、発芽するまでに時間がかかります。発芽してから大きくなるまでに3年ほどかかるので、挿し木で増やすのが一般的です。枝を水や培養土に挿して、水を切らさないようにしておけば根が出ます。 ローズマリー精油は、葉や小枝、頂花から水蒸気蒸留で抽出して作ります。1年のうちに何度も剪定して収穫でき、料理や手作り化粧品に活用できるので、庭で栽培するのにおすすめです。

 

ローズマリーの歴史

ローズマリーは、古代ギリシャ・ローマ時代よりもはるか昔から使われてきたハーブです。料理に優れた風味をもたらすだけでなく、薬用としても大いに活用できます。

古代のローズマリー

ローズマリーについての最初の記述は、古代シュメール人が発明した楔形文字に見られます。フランスの歴史家ジャン・ボッテロが、紀元前1600年頃に刻まれた楔形文字を解読したところ、ローズマリー・ミント・タイムなどを使った料理について書かれていることがわかりました。そのため、「人類最古のレシピ」と呼ばれています。

古代エジプト

古代エジプト(紀元前3000~紀元前30年)にも、ローズマリーは存在していました。当時のミイラからローズマリーが発見されているため、古代エジプト人は埋葬の儀式で使用していたと考えられています。また、ファラオのラムセス3世王がテーベの神アモンに125本のローズマリーを提供したとの記録が残っています。

古代ギリシャ・古代ローマ

紀元前500年頃の古代ギリシア人や古代ローマ人は、ローズマリーを薬に使いました。古代ローマの医師にして植物学者のディオスコリデスは、後の1400年において、医療行為の基礎となった薬草の本「薬物誌」(マテリア・メディカ)を執筆。本の中で、体を温める機能があるハーブとして、ローズマリーを推奨しています。同じく古代ローマの植物学者大プリニウスも、自身の著書「博物誌」において、ローズマリーの効能について記しています。 古代ギリシャ人は、ローズマリーに多くの薬効成分があると考えていました。香りには記憶をよみがえらせる作用があるとして、ギリシャの学生はローズマリーの枝を髪に編み込んだと言われています。ギリシャの学者たちも、研究中の集中力を高めるためにローズマリーを髪に付けました。同様に、古代ローマにおいても、学生たちはローズマリーで作られた冠をかぶって記憶力を増大させようとしたのです。当時の使用方法から、ローズマリーは「王冠のハーブ」と呼ばれていました。

ヘレニズム時代の古代ギリシャ・古代ローマ

ヘレニズム時代の古代ギリシャと古代ローマでは、多くの庭園でローズマリー植えられていました。というのも、ローズマリーは義人の庭でしか育たず、さらに悪霊から守ってくれるとの言い伝えがあったからです。その後、ローズマリーは持ち出されて東の中国へと向かい、漢王朝後期の西暦220年ごろに中国に根付きました。

中世のローズマリー

ローズマリーは、古代ローマ人がイギリスを侵略した1世紀頃にイギリスへ伝わったと考えられています。しかし、イギリスの記録にローズマリーが登場するのは8世紀頃。当時、一般的なハーブの栽培を奨励していたカール大帝(チャールズ大帝)は、修道院の庭園や農場でローズマリーを栽培するよう命じました。9世紀になると発熱や歯痛の治療薬として初めてローズマリーが使われるようになり、少しずつヨーロッパ全体へと広まったのです。

調味料として人気を博す

13世紀にはスペイン人によって栽培され、15世紀から18世紀にかけて塩漬け肉の調味料として人気を博しました。ローズマリーの風味は肉との相性が良く、腐った肉の不快な臭いや風味を隠すためにも使用されていたと考えられています。また、抗菌作用や抗酸化作用があるため、冷蔵庫が登場する前までは、肉をはじめとした食品の防腐剤としても活用されていました。


魔除けとしての記録

スペインでは、19世紀まで魔術や悪者から身を守るハーブとして使われ、旅行者は帽子にローズマリーの小枝を付けていたとの記録が残っています。
1338年には、イングランド王エドワード3世の妻フィリッパオブ・エノーに宛てて、母親のジャンヌ・オブ・ヴァロワからローズマリーの挿し木が送られています。一緒に送られた贈答品には、ローズマリーや他のハーブの働きを記した手紙がついていました。手紙には、「眠っている人の頭の下に葉を置くと、悪霊を追い払います。不吉な鳥の夢を見ても、もう恐れることはありません」と書かれていました。実際、地中海のジプシーは、子供たちを悪夢から守るために葉を小さな枕に詰めていたそうです。送られたローズマリーの挿し木はウェストミンスター旧宮殿の庭に植えられ、手紙の写本は大英博物館に展示されています。

ハンガリー女王とローズマリー

13世紀のハンガリーの女王エリザベス(イザベラ)には、ローズマリーを使った化粧品にまつわる言い伝えがあります。重度のリウマチと痛風に苦しんでいた女王(72歳)は、薬草に詳しい修道士に勧められて、ローズマリーを使ったハンガリーウォーターと呼ばれる化粧水を使いました。すると、女王の手足の麻痺が回復。体が健康になっただけでなく、活力を増し、若く美しくなったので、ポーランドの王(26歳)がエリザベス女王に求婚したのです。
14世紀において、ハンガリーウォーター(ハンガリーの水)は、ヨーロッパで最初のアルコールベースの香水でした。レシピにはいくつもの種類があり、主にワインやブランデーといった蒸留酒にローズマリーを漬けて作っていました。また、育毛やフケ防止、皮膚疾患の治療にも長い間使用されています。
一方、ローズマリーは虫除けのために植物の間に植えたり、悪夢を防ぐために枕の下に置いたり、悪霊を侵入させないために家の外に吊るしたりして使用されたのです。

中世から近代のローズマリー

ローズマリーは中世の巡礼者に人気があり、長く歩いた後の癒しとして使用されました。また、クリスマスリースなど祝祭日の装飾としても伝統的に用いられていました。クリスマスイブにローズマリーの香りを嗅いだ人には健康と幸福の一年が訪れると言われていたため、イブの真夜中にローズマリーを床に広げ、上を歩いたときに香りが立つよう準備していたのです。
16世紀になると、クリスマスツリーとして使われるようになりました。現代は、ローズマリーをポインセチアや松の木に置き換えて飾っています。

ローズマリーに関する著書

1525年頃にイギリスで出版されたハーブに関する本「Herball」(著者:ブランクス)の中では、ローズマリーは薬用や美容用として推奨されています。ブランクは本の中で、ローズマリーの葉を白ワインで煮て、煮汁で顔を洗う方法を推奨。「木の箱(ローズマリーを使用した箱)を作って匂いを嗅ぐと、若さを保てます」「痛風で足が痛む場合は、ローズマリーの葉を水で沸騰させてから葉を取り除き、液体を亜麻布に染み込ませて足に巻き付けます」などの記述もあります。ブランクスが書いた別の著書「すべてに対して非常に価値のあるもの」の中では、ローズマリーティーの効能が記されています。

16世紀におけるローズマリーの使い道

16世紀においては、痛風・食欲不振・咳の治療・歯磨き粉・悪夢の予防として使用されました。冠婚葬祭の装飾としても使われ、当時の裕福な新郎新婦は、各結婚式のゲストにローズマリーの金色の枝を贈っていました。イギリス王ヘンリー8世の妻アン・オブ・クリーブスは、結婚式で髪にローズマリーをあしらった石と真珠の豊かな王冠を身に着けています。

ローズマリーと女性の関係

ローズマリーの栽培は、イギリスの家庭菜園から広まったため、家にいる女性を象徴するハーブとされていました。「The Treasury of Botany」 (1870に出版された植物の本) の中では、グロスターシャーや他のイギリスの郡では「女性が家の主人である場所のみ、ローズマリーがよく育つと信じられていた」と書かれています。
実際「ローズマリーが繁栄する場所は女性が支配する」という言葉があり、男性は権威の欠如が露見しないように、庭のローズマリーの成長を密かに妨害したり、引き抜いたりしました。しかし、言葉には、単にローズマリーを傷つけたり破壊したりするだけでは女性の支配から解放されないという、男性へ警告の意味が込められていたのです。

近代のローズマリー

ローズマリーは、ペスト・憂鬱・痛風・てんかん・関節炎など、多くの病気の治療に使用されました。特にペストを防ぐ消毒剤として、病室で燃やされました。

ペストの流行で価格が高騰

1603年、ペストで3万8千人のロンドン市民が死亡したとき、ローズマリーの需要は非常に高まりました。たった一握りの枝で、1シリングから6シリングにまで価格が上昇。当時は、1シリングで太った豚が丸ごと手に入り、3シリングで良質のエールまたはダブル・ビールが18ガロン(約68リットル)買える時代でした。

薬草としての働き

16世紀後半から17世紀前半を生きたイギリスの作家バス・マーカムは、1615 年に初めて出版した最も有名な作品「英国の主婦」の中で、ローズマリーを高く評価しています。彼は次のように書いています。 「ローズマリーの煎じ薬を入れた風呂は生命の風呂と呼ばれ、心臓、脳、そして全身を癒します。また、顔のしみをきれいにして、男性を若く見せます」

17世紀の植物学者にして医師のニコラス・カルペパーは、薬草学者でもあり、人生の大部分を何百もの薬草の目録作成に費やしました。彼はローズマリーについて「(ローズマリーの)水は、あらゆる種類の風邪・記憶喪失・頭痛・昏睡に対する素晴らしい万能薬です」「高齢になっても体の機能と能力を回復させます」と記しました。また、ワインでローズマリーを煎じた液体は「頭と脳の風邪を助ける」と述べており、液体を飲んだり、こめかみを洗ったりするのを勧めています。

また、ニコラス・カルペパーは、ローズマリーが使われた軟膏を「ソブリンバーム」と呼び、循環刺激剤(血圧の問題の治療)・抗菌・抗真菌油・消化促進剤・肝強壮剤として使用しました。
一方で、当時のフランス人は、1日1回ローズマリーの木の櫛で髪を梳くと、めまいを防げると信じていました。また、チフスに対する予防措置として刑務所でも使われたのです。

近代のローズマリー

ローズマリーは最も古いお香のひとつで、燃やすと強力に空気を浄化すると考えられていました。そのため、何世紀にもわたって病室で燃やされ続けたのです。
フランスの病院では、質の悪い空気を改善し、蚊やノミ などによる疫病の感染を防ぐために、ジュニパーベリーをローズマリーで燃やしました。また、戦争中(第二次世界大戦中)には細菌を殺す目的で使われました。

世界への広がり

17世紀の初め、ローズマリーが初期のヨーロッパ人入植者と共にアメリカ大陸へ渡るとすぐに、南アメリカをはじめとした世界に広まりました。ローズマリー精油には抗酸化作用があるため、機械油のテレビン油や黒マスタードシード精油にブレンドして、時計などの精密機器に使用されました。

記憶のハーブとして伝わる

ローズマリーは「愛と忠誠」「記憶のハーブ」としてイギリスのエリザベス朝の人々に伝わりました。1966年に結成された「サイモンアンドガーファンクル」は、伝統的なエリザベス朝のバラード「スカボロー・フェア」において、記憶のハーブとしてのローズマリーを歌詞に登場させています。「スカボロー・フェアに行くの? パセリ、セージ、ローズマリー、タイム そこに住んでいる人によろしく伝えて欲しい。彼女はかつて私の本当の恋人だったから」

追悼の象徴として身につける

第一次世界大戦では多くのオーストラリア人が従軍し、戦死したテュルキエのガリポリ半島ではローズマリーが自生していました。そのため、アンザック・デイ(第一次世界大戦犠牲者の追悼日)やリメンブランス・デイ(第一次世界大戦集結記念日)などの特別な記念日には、追悼の象徴として心臓の近くにローズマリーの小枝をつけたり、頭にかぶったりします。

現代のローズマリー

古代から現在において、子羊や鶏などの肉料理、魚や卵料理、スープ、野菜、詰め物、ドレッシングやフルーツサラダなど、ローズマリーは料理によく使われてきました。ローズマリーの葉は力強くすっきりした香りだけでなく、苦みと渋みがあるため、料理によい風味を与える調味料として、とくに伝統的な地中海料理で頻繁に使用されます。

食品への用いられ方

ローズマリー精油やローズマリーの抽出物は、天然の酸化防止剤として食品にもよく使われます。クリームやローションといった化粧品・石鹸・香水・美容製品・シャンプー・トイレタリー製品などに使うと、爽やかな香りやスキンケアによい作用を与えられるのです。一方、ローズマリーの葉は、ポプリ・ハーブバス・フェイシャルスチーム・ヘアリンス・染料に使われます。

精油の副産物も注目されている

ローズマリーの芳香蒸留水(水蒸気蒸留で精油を得るときの副産物。精油成分が溶け込んだ香りのよい水)は、ヘアローションによく使われます。
心地よい香りがあるだけでなく、髪の成長を刺激し、脱毛を防ぐ作用やフケ防止にも役立つ研究結果も報告されています。

 

ローズマリーと神話や宗教との関わり

ローズマリーは、愛と忠誠の象徴として長い歴史の中で宗教的な儀式や結婚式などに用いられ、名前の由来にはイエス・キリストの母、聖母マリアの神話が残されています。シェークスピアの戯曲「ハムレット」にもローズマリーが登場。ローズマリー水は、ナポレオンのお気に入りの香水として知られています。

ローズマリーとイエス・キリスト

「ローズマリー」の名前は、ラテン語の 「rosmarinus (海の露)」または「マリアのバラ」に由来します。伝説では、イエスの母である聖母マリアがエジプトから逃れたとき、ローズマリーの茂みの近くに隠れたと言われています。マリアが青いマントを茂みに投げると、白い花は青に変わりました。実際のローズマリーの花はバラには似ておらず、小さく可憐で愛らしい姿をしていますが、言い伝えによってマリアのバラとして知られるようになったのです。

ローズマリーの象徴(愛と忠誠)

何世紀にもわたり、ローズマリーは記憶と忠誠の象徴でした。恋人が誓いを立てるときや結婚式に使われ、処女と少女の守護聖人である聖アグネスを称える1月20日と21日の聖アグネス・イブでは、タイムとともに使用されました。
聖アグネス・イブでは、少女が将来の夫を見つけられるようにするための儀式が行われました。イギリスの民間伝承によると、少女が真夏の前夜にローズマリーの茂みの下に小麦粉の皿を置くと、将来の夫のイニシャルがそこに書かれる、夢の中で本当の愛を見るにはローズマリーを枕の下に置くべし、と信じられていたのです。眠れる森の美女では、王子が彼女の頬にローズマリーの小枝をこすりつけると、深い眠りから目覚めるシーンがあります。

結婚式に欠かせないローズマリー

ローズマリーは、愛の象徴として、長い間結婚式で重要な役割を果たしてきました。記憶の象徴でもあるので、結婚式の誓いを思い出すためにも使われます。
中世において、若い花嫁は結婚式のブーケやリースにローズマリーの小枝を携え、新郎とゲストにも小枝をつけるのが伝統的な習慣でした。本当に裕福な結婚式の出席者は、金メッキされ、美しいリボンで結ばれたローズマリーの枝を受け取ります。新婚夫婦は乾杯用にローズマリーをワインカップに浸し、結婚式の日にはローズマリーを植えて、よい将来が来るように願いました。
乾燥したローズマリーは、忠誠を誓うためにベッドリネンに置かれます。花嫁は新郎が忠実であり続けるよう願い、結婚式の夜にローズマリーの小枝を新郎に持たせるのです。
ローズマリーはしばしば花輪に絡められ、香りのする水に浸されると、祭壇で花嫁が身に着けました。ローズマリーを付けた花輪は、忠誠、愛、不変の友情、そして結婚前の女性の人生の記憶を象徴しているのです。

恋人たちの忠誠心の象徴

ローズマリーは、恋人たちの忠誠心のシンボルでもあります。シェイクスピアの「ハムレット」の中で悲劇のヒロインであるオフィーリアは、「これはローズマリー、ものを忘れないようにするお花。お願い、愛しい人よ、覚えていて」と言っています。

ナポレオンにかけられた魔法

フランスの伝承では、ローズマリーの香りが嫌いな男性は劣った恋人になると言われています。フランス皇帝ナポレオンの妻ジョゼフィーヌは、寝室に入る前にローズマリーの水で体を洗うようナポレオンに頼んだと言われています。ナポレオンはローズマリーに執着しており、ローズマリー水がお気に入りの香水でした。皇帝と王室の調香師であるシャルダンは、彼の著書「セントヘレナの思い出」の中で、「ナポレオンは1806年の最初の3か月間に162本のローズマリー水を使用した」と記録しています。

ローズマリーが持つ「愛と記憶」の力は、ナポレオンに魔法をかけました。数々の不倫、離婚、さらには再婚にもかかわらず、1821年にヘレナ島で亡くなったナポレオンの最後の言葉は、「フランス、陸軍、陸軍司令官、ジョセフィーヌ」だったのです。

ローズマリーの象徴(記憶と埋葬)

初期のヨーロッパ人は、友人間の忠誠の象徴としてローズマリーを交換し、死者への追悼や死者を忘れない象徴として、ローズマリーの小枝を愛する人の墓に投げ込みました。ローズマリーの香りには、死臭を隠す作用や、死者からの病原菌を阻止する作用を期待していたと考えられています。
シェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」では、ジュリエットはローズマリーを使って埋葬され、追悼されました。ジュリエットの遺体に付き添う修道士ローレンスは、ローズマリーを棺桶や墓の周りに置くように(現代のイギリスと同じ慣習)指示し、「涙を拭いて、ローズマリーをこの美しい体に貼り付けてください」と言ったのです。

ローズマリーと妖精

シチリアでは、若い妖精がローズマリーの花の中で眠ると信じられていました。リチャード・フォルカードは「Plant Lore, Legends and Lyrics」(植物の伝承や言い伝え)の中で、1892年になっても、シチリアでは「蛇に扮した若い妖精たちがローズマリーの枝の下に隠れている」と考えられていたと書いています。

 

ローズマリーの歴史と働きから長く使われる理由を知ろうり

ローズマリーは食用・薬用に古代から使われてきたハーブ。とくにヨーロッパでは古くから用いられ方を追求するだけでなく、聖なる植物として文化を育む一端をになってきました。ローズマリーと、ローズマリーから生み出される精油がいかに愛されてきたか、その歴史を知って深く感じていただければ幸いです。

  • 田中彩

    アロマ・ハーブ・薬膳・漢方ライター田中彩

    「紅生姜」の名義でハーブ・薬膳・漢方を中心に書くWebライター。植物と昆虫の研究で修士号を取得。農分野で研究員として働いた経験とバイオ系で遺伝子検査や抗体精製などに関わった経験あり。 薬膳コーディネーター、メディカルハーブセラピスト、アロマ&ケアスペシャリスト、紅茶検定中級の資格あり。理系として、研究論文(英語含む)、書籍を参考に執筆するよう心がけている。