おうち時間が増えた今、人では自宅でできる筋トレや体幹トレーニングが人気ですが、
近年、いつまでも健康で元気で過ごせるように、犬でも筋トレの重要性が高まっています。
でも、犬の筋トレっていったい何をすればいいのでしょうか??
犬と猫のリハビリテーション専門病院D&C Physical Therapy院長の長坂佳世先生に、犬の筋トレについて教えていただきました。
いまどきの犬たちは運動不足でぽっちゃり傾向
室内飼育が生活スタイルの主流となっている今、「小型犬は家の中で動き回っていれば散歩しなくてもいいのでは?」 という意見を耳にしますが、運動のためだけでなく、外の刺激を受けたりリフレッシュするためにも、 どんな犬種にとっても散歩は大切です。けれども、散歩さえしていれば、犬の運動は十分というわけでもありません。 リードを着けてただ歩いているだけでは、同じ筋肉しか使っていないため、実は運動としては不十分なのです。 そのうえ、散歩は夏の猛暑や、雨や雪など天候に左右されるため、行けない日が続けばますます運動不足になります。 最近では、リモートワークも増えて愛犬と過ごす時間が長くなったぶん、ついおやつを与えすぎてしまい、ぽっちゃり傾向の犬たちが増えています。
散歩だけでは使う筋肉が限られるため、十分な運動をしているといえない。
猫背の犬も急増中! 愛犬の正しい姿勢をチェックしよう
さらに、年齢とともに背中が丸い猫背の犬も増えています。背中が丸くなると背筋(はいきん)が伸び切った状態になり、シッポが高く上がらなくなったり、シッポが巻いている犬種では巻きがゆるくなったりします。
筋肉が凝り固まると「のび」もあまりしなくなるため、ますます体が丸まります。体が歪むと不自然な力が入り、筋力が低下したり、痛みが生じたりなど、さまざまな影響が出てきます。
犬種の特徴によるちがいがあるものの、一般的に、真横から見たときに肩から真下に前足、股関節の真下に後ろ足がついていて、背中がまっすぐでシッポが上がっているのが犬の正しい姿勢です。毎日見ていると案外気づきにくいものですが、若い頃の写真と見比べてみると姿勢の変化がわかります。愛犬の姿を正面、後ろ、上、真横から見て確認してみましょう。
愛犬の姿勢を若い頃の写真と比べてみると、変化に気づきやすい。
犬も体幹を意識して、筋肉を鍛えよう
筋肉は動物が生きていくうえでとても重要な組織です。体を支え、関節を動かすだけでなく、エネルギーを蓄えたり、血液を循環させるポンプになったり、筋肉にはさまざまな役割があります。
人では「体幹筋トレーニング」という言葉をよく耳にしますが、体幹とはいわゆる胴体のことで、胸や背中、おなか、肩関節や股関節まわりなど、さまざまな筋肉で構成されています。体幹筋を鍛えることで内臓の位置や骨格など体全体の安定感が高まりますが、これは犬でも同じことが言えます。また、筋肉がつけば基礎代謝が上がってエネルギー消費量が増えるため肥満予防にもなり、しなやかな筋肉がつくことはケガの予防になります。さらに、自分を支える筋力を鍛えることは、寝たきり予防にもつながります。
こうしたことから、近年、犬の「筋トレ」が注目されています。いつもの散歩にプラスして筋トレを行うことで、歩いたり走ったりするだけでは維持できない筋肉を鍛えることができます。
犬にとっても体幹トレーニングは大事。肥満予防や寝たきり予防にもつながる。
マッサージやストレッチで筋肉をしなやかに
筋トレ前にはマッサージやストレッチをして筋肉をやわらかくしておくことが重要です。 まずは、筋肉の硬さをチェックしながら、頭からお尻に向かって体をさすってマッサージをして筋肉をほぐします。
ストレッチでは肩関節や股関節のまわりの筋肉を伸ばします。
肩関節のストレッチは、肩の前に片手を当て、もう一方の手をわきの下に入れて、「前にならえ」のように前足をまっすぐ前に押し出します。 股関節のストレッチは、片手をおなかの下に入れ、もう片方の手を膝の上に当てて、後ろ足をまっすぐ後ろに伸ばします。 ストレッチは前足も後ろ足も片足ずつゆっくり行います。
マッサージやストレッチは散歩の前などに行うのがポイントです。 筋肉を柔らかくしてから散歩することで、関節の動きや筋肉がしなやかになります。
肩関節、股関節のストレッチは片足ずつゆっくりと。運動前に行うのがポイント。
「オスワリ」&「立ってマテ」は効果的なスクワット
「筋トレ」というと難しく感じるかもしれませんが、少し意識を変えて普段の動作をやるだけでも立派な筋トレになります。
たとえば、オスワリ(座る)→立つ→マテ(止まる)という動作をていねいに行うことで、後ろ足と体幹を鍛えるスクワットになります。
また、伏せ→立つ→マテ(止まる)なら、全身の筋肉を使って自分の体を持ち上げる動作となり、前足、後ろ足、腹筋、背筋のすべてが鍛えられます。
ポイントは、「オスワリ」「伏せ」「立つ」をきれいな姿勢で行い、「止まる」状態をしっかりとキープすること。一つ一つの動作をていねいに行って、1セット3回を目安にします。号令に従うことは頭も使うので脳への刺激にもなりますし、楽しいコミュニケーションタイムにもなります。
普段何気なくやっている「オスワリ」「伏せ」「立つ」などの動作も、体幹を鍛えるトレーニングに。
犬用バランスディスクも登場!おうち筋トレを習慣に
最近では、犬用のバランスディスクなどの筋トレグッズも登場しています。
バランスディスクのように足元が不安定なものの上に乗るだけで適度な負荷がかかり、自然にバランスを取ろうとするので、
効果的に体幹や筋肉を鍛えることができます。グッズがあると一緒に楽しむことができますし、
「これを使ってやってみよう!」と前向きな気分になれるのも大きなメリットです。
愛犬にいつまでも健康で元気でいてもらうためにも、健康管理の一つとして、天候に左右されず、ふれあいながら楽しく続けられる、室内での筋トレを習慣にしましょう。
バランスディスクに乗ることで適度に負荷がかかり、効果的に体幹や筋肉を鍛えることができる。
(プロフィール)
監修:長坂佳世先生
獣医師/D&C Physical Therapy院長
麻布大学外科学第2研究室卒業。CHI Institute(アメリカ、フロリダ州)にて、鍼治療認定資格(CVA)およびマッサージ療法認定資格(CVT)取得後、
ゼファー動物病院にて一般診療、リハビリテーション診療を担当。2011年にはテネシー大学公認のリハビリテーション認定資格(CCRP)を取得し、
2013年、日本では初となる犬猫のリハビリテーションに特化した『D&C Physical Therapy』を開院。飼い主や犬猫にとって負担とならない、
それぞれのライフスタイルに合わせたリハビリ医療プログラムを提案している。
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