監修医師木村眞樹子
東京女子医科大学医学部卒業後、東京女子医科大学病院循環器内科入局。
現在も東京女子医科大学病院、および関連病院で内科、循環器科、睡眠科として診療にあたるほか、嘱託産業医として企業の健康経営にも携わっている。
DHAとEPAはサラサラと流動性が高く、氷点下でも固まりにくい特性を持つ必須脂肪酸です。中性脂肪へ働きかける、健康維持に不可欠な成分として知られています。ただ、体内では自然に生成できないので、食事による摂取が必要です。
とくにDHAとEPAを豊富に含む魚は最適な食材ですが、調理法によっては大事な成分が減少してしまいます。普段の食事だけでは十分な量を補えない場合は、サプリメントを活用しましょう。
DHAとEPAは、本マグロ・イワシ・サバといった青魚の油に含まれている必須脂肪酸(多価不飽和脂肪酸)です。
必須脂肪酸は「n-3系脂肪酸(オメガ3脂肪酸)」と「n-6系脂肪酸(オメガ6脂肪酸)」に分けられ、DHAとEPAはα-リノレン酸とともにn-3系脂肪酸に分類されます。
必須脂肪酸は氷点下でも固まりにくい、さらさらとした脂成分で、健康維持には欠かせない成分です。ところが、ヒトの体では作り出せないため食事やサプリメントで摂取する必要があります。
EPAとはエイコサペンタエン酸の略称で、体内で自然に生成されない必須脂肪酸のひとつです。1970年代に行われた疫学調査によって、イヌイットの人々の心疾患率が低いと明らかになり、EPAへの関心が高まりました。EPAの摂取は血液中のEPA濃度を上昇させ、体内のEPA量を増やす傾向があります。EPAは柔軟な細胞膜をつくる成分として機能し、とくに中性脂肪値の低下を促すなど、循環器系の健康をサポートする重要な役割があると、長年の研究により示されているのです。DHAとともに研究されるケースが多い中、EPAに関する研究はやや進展が早く、ある程度の機能が明確になっています。
DHAとはドコサヘキサエン酸の略称で、脳内に多く存在している成分です。EPAは脳の入り口の血液脳関門を通過できませんが、DHAは通過して脳神経系に働きかける重要な構成物質になります。
脳の血管を維持するために、DHAはEPAと補完しながら作用していると考えられているのです。また、体内に存在するDHAの量は一定に保たれており、食事でDHAを摂取しても血中濃度は増加しません。
DHAは脳や神経細胞と密接に関係していますが、具体的な機能についてはまだ完全に解明されていないので、さらなる研究が期待されています。また、EPAからDHAへの変換が体内で起きる場合がありますが、変換される量は限られているのでDHAの摂取は必要です。とくに、母乳に多く含まれるDHAは、脳や神経の成長を促すと考えられているため、幼児や子どもの健康のためにも、DHAの積極的な摂取が推奨されています。
DHA・EPA・α-リノレン酸は分子構造的にはそれぞれ異なる脂肪酸ですが、いずれもn-3系脂肪酸の仲間です。DHAとEPAは魚に含まれており、いっぽうα-リノレン酸は植物由来のため、あまに油やえごま油に多く含まれます。
いずれも私たちがより健康的な日々を送るために欠かせない成分です。
DHAとEPAは血液中の中性脂肪値を低下させる機能があると報告されています。
健康診断で耳にする中性脂肪は、悪者に思われがちですが、体になくてはならない栄養素の一つです。
血液中に含まれる脂質(血中脂質)である中性脂肪は、同じく主な血中脂質のコレステロールと一緒に考える方もいますが、役割はまったく異なります。
脂肪膜を構成し、ホルモンや胆汁酸といった原料にもなるのがコレステロール。
一方で、体のエネルギー源であるブドウ糖が不足すると、体の機能を維持できなくなるため、補う貯金のような存在をしているのが中性脂肪です。
しかし、エネルギーとして使い切れない中性脂肪は皮下脂肪として蓄えられてしまうため、肥満状態が長引けば健康への影響も考えられてしまいます。
中性脂肪値が気になってきた方は生活の中でDHAとEPAの摂取を心がけましょう。
DHAとEPAを効果的に摂取するには、まずは食生活の見直しが大切です。DHAとEPAが豊富に含まれている青魚の刺身が一番効率よく摂取できます。
青魚以外だと、DHAは豚肉に、EPAは生卵に少量だけ入っていますが、青魚ほどは入っていません。
下記の魚を参考に、スーパーで購入したり、外食でも選ぶようにしてみましょう。
忙しくなかなか新鮮な刺身が購入できない場合は、缶詰もおすすめ。DHA・EPAの成分が入った油がそのまま入っており、骨まで食べられるのが缶詰のよいところです。
DHA・EPAを効果的に摂取したいからと、魚料理をたくさん食べればいいわけではありません。
例えば、生で食べるお刺身で摂取できるDHAとEPAが100%だと仮定します。
焼き魚にした場合は、DHA・EPA成分が入った油が滴り落ちると約20%減少してしまい、フライにした場合は、高温でDHAやEPA成分が壊れるため約50%も減少してしまうのです。
日々の食事で、魚を食べて摂取したつもりになっていても、調理法によっては十分に摂取しきれていない場合も多いといえるでしょう。
DHAとEPAを継続的に摂取すると、血中の中性脂肪値が低下する機能があると報告されています。中性脂肪が気になり始めたら、まずは食事からDHAとEPAを摂取できるように心がけ、不足する分はサプリメントを活用するのも効率がいい方法でしょう。
DHAとEPAは私達の体では作り出せない、健康維持には欠かせない成分です。1日に推奨されている摂取量を目標にしましょう。
DHAとEPAの摂取量の目安について詳しくはこちらをご覧ください
サプリメントは「健康食品」なので、基本的にはいつ飲んでも問題はありません。朝食後や寝る前など、忘れずに飲める時間やタイミングを自分のライフスタイルにあわせて見つけてください。
また、サプリメントは気になったタイミングだけ短期間摂取するのではなく継続的に摂取しましょう。
「健康は1日にしてならず」と言われる通り、健康診断の直前だけでなく、良い生活習慣の毎日積み重ねが大切です。
食生活を変えるだけでも、DHAとEPAを摂取するのは可能ですが、実際のところ食事だけで必要量を毎日摂取するのは難しいでしょう。
厚生労働省から発表されている「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、DHAとEPAを含むn-3系脂肪酸の1日あたりの摂取量は、30~49歳の男性で2.03g、女性で1.59gの摂取が推奨されています。
1日の目安量を確認して、サプリメントでの摂取も手軽でおすすめです。
市販されているDHAとEPAのサプリメントから、どんなアイテムを選べばよいのでしょうか。DHAとEPAの含有量や飲みやすさで選ぶと、持続して摂取しやすいのです。
DHAとEPAの含有量はサプリメントによって異なります。上記で解説した摂取目安の数値を元に、表示されているDHAとEPAの含有量をチェックしましょう。また、DHAとEPAのどちらも配合されているサプリメントを選べば、より効果的に摂取できます。
サプリメントには、食品や機能性表示食品といった分類があります。
機能性表示食品とは、届出表示をしてある機能を記載できる商品です。パッケージの後ろに、届出表示として『血中の中性脂肪値を低下させる機能があることが報告されています。』などと表示されています。
届出内容は、消費者庁のWEBサイトで公開されており、商品の安全性や機能性がどのように確保されているかを、WEBサイトでいつでも確認できるので安心ですね。
DHAとEPAは酸化しやすいため、サプリメントに酸化防止成分が配合されているかを確認するとよいでしょう。
ビタミンEやアスタキサンチンといった抗酸化作用がある成分が配合されていれば、酸化防止成分が入っていると言えるでしょう。購入時に成分表を確認して選んでください。
サプリメントは毎日飲み続けるのが大切です。そのため、なるべく自分にとって継続して購入しやすい価格のサプリメントを選ぶとよいでしょう。
ただ、安いサプリメントだと品質が心配でもあります。DHAとEPAの含有量や機能性を確認した上で、納得のいくサプリメントであればよいですね。
医薬品ではなくサプリメントなので、1日の摂取量は厳密には決められていませんが、1日の摂取目安量は記載されています。パッケージに記載されている量を守って摂取してください。摂取するにあたっての注意事項も記載されているため、商品情報を必ず読んで守りましょう。
また、DHAとEPAのサプリメントだけを摂取していればよいわけではありません。できるだけ青魚をお刺身で摂取するようにし、バランスのよい食事も心がけていきましょう。
DHAとEPAは体内では作れない栄養素なので、食事やサプリメントでうまくバランスを取って、積極的に摂取する必要があります。
食事だけでは摂取しにくい成分だからこそ、DHAとEPAの含有量やサプリメントの飲みやすさ、継続しやすい価格も考慮し、ぜひご自身に合ったDHAとEPAサプリメントを選んで、必要な栄養素を摂取してくださいね。
バランスの良い食事を摂ることはとても大切ですが、忙しい生活のなかで必要な栄養素を摂ることが難しいこともあるでしょう。サプリメントなども上手に活用しながら、健康な身体を作っていってください。ただし、サプリメントを過剰に摂ると悪影響を及ぼすこともあるため適切な量を守ることが必要です。ご自身に合ったものを探してみてください。
※EPA/DHAに関して正しい情報発信を行うために、専門家に監修を依頼しております。EPA/DHAの商品(サービス)について専門家が推薦を行うものではありません。
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