獣医師/山内アニマルセンター(往診専門動物病院) 院長
山内 一男先生
久米川の犬猫の健康を守るホームドクターとして活躍し、地元の信頼を集めてきた。治療のモットーは「単純に高度医療を目指すのではなく、最良の治療を目指す」ことであり、ペットオーナーにとって「何が一番良い治療なのか」を提案しながら診察するのが山内院長の流儀である。
私たち人間と同じように、犬も褥瘡(床ずれ)をおこします。犬の褥瘡についてや症状がでてしまう原因、その対策方法について山内アニマルセンターの院長 山内先生にご紹介いただきます。
人の医療には「日本褥瘡学会」という学会があり治療のガイドラインがあります。残念ながらペットには、褥瘡に関わる組織はないためガイドラインなどが整備されているとは言い難いのが現状です。
ですので、今回のコラムは私の主観となってしまうことをご理解ください。
褥瘡の初期症状は何らかの原因によって生じた皮膚の「ただれ」です。進行すると皮膚が取れてしまって、その下にある組織、もしくは筋肉などが傷害され、さらに進むと骨までが露出する大変厄介な状態を引き起こします。
特に多く見られるのは、寝たきりによるいわゆる「床ずれ」と呼ばれるものです。床ずれは、自力で動けなくなったために体の一部に持続的な圧迫が加わり、その部分の皮膚やその下にある組織の血行が阻害され、その部分の組織が擦れることによって症状が悪化します。
ペットの褥瘡はいろいろな原因でおきますが、主に飼育環境によるものとペットの状態によるものとがあります。
これは少数例で、ほとんどのケースは高年齢や椎間板ヘルニア、脳の病気などの何らかの麻痺によって自分で体の向きを変えることができなくなった「寝たきり状態」で起きます。これらが「床ずれ」へとつながります。
中型犬以上の犬で症状が出やすく、肩の周囲や肘、腰の横に出ている骨の部分や膝などの部位では、皮膚が薄くて骨が当たる部分で床ずれが広範囲に生じて進行しやすくなります。
ペットは仰向けではなく「横たわった状態」で寝たきりとなることから人とは違った部分で床ずれを起こしやすいことが特徴としてあります。
体位を長時間ごとに変えるなど人為的に何らかの方法で圧迫を軽減させてあげることで褥瘡の状態を和らげることができますが、人と同様に自宅介護で定期的に家族が寝返りをさせるのはなかなか難しいと思います。
また、ペットは人間のようにおとなしく横たわっていることは少なく、体勢を立て直そうともがいてしまうことで「床ずれ」を助長してしまう場合もあります。
「褥瘡パット」など物理的に圧迫を軽減させようとする器具もありますが、人ではかえって褥瘡周囲の血行を阻害して悪影響を与えるということで使用されなくなってきています。
ペットにおいては検証が不十分ですが、人と同様に血行障害を起こす可能性があるため、動いてしまってパットがずれてしまうなどの問題も含んでいてあまり普及していません。
現実的な方法としては、体位変換の頻度を減らしながら圧迫も軽減させる方法が一番です。その一つの選択として、減圧マットの使用があげられます。
人では高機能エアーマット、除圧マットレスなどで体にかかる圧力を軽減させる効果がありますが、ペットも同様に医療器具の開発が進み、寝たきり体勢での圧力を低減できる低反発マットが販売されるようになりました。
「床ずれ」の起きやすい部分に敷くことで人と同じように圧力の軽減効果を発揮させることができ、非常に有効な手段として活用されています。
近年ペットも高齢化が進み、介護への対策の必要性が高まっています。中でもペットの「褥瘡」(床ずれ)は、人間と同じように慢性的で難治性であり治療することが大変困難です。
広範囲に及ぶと、ペットは痛みを訴えますし、また患部が化膿して悪臭がることで生活環境にも影響を及ぼすようになります。
床ずれを事前に予防するために、柔らかい毛布や座布団で下敷きしてあげる方法もありますが、不衛生になりやすく、圧力の分散がうまくいないなど問題点も数多く存在しています。
その点、ペット用の低反発マットは床ずれの予防効果も期待できるので、できることなら寝たきりの初期から使用するのが望ましいと考えます。
もしペットが寝たきりになった時には、何らかの方法を用いてとにかく褥瘡にならないよう努めてあげる必要がありますが、その一つの方法として、低反発マットの導入を考えるのは良いのではないでしょうか。
ペット、飼い主ともに最後まで気持ちよく過ごしてもらう努力をしていくことが大切だと思います。
獣医師/山内アニマルセンター(往診専門動物病院) 院長
山内 一男先生
久米川の犬猫の健康を守るホームドクターとして活躍し、地元の信頼を集めてきた。治療のモットーは「単純に高度医療を目指すのではなく、最良の治療を目指す」ことであり、ペットオーナーにとって「何が一番良い治療なのか」を提案しながら診察するのが山内院長の流儀である。
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