監修医師成田 亜希子
2011年医師免許取得。初期臨床研修を経て総合診療医として幅広い分野の治療に携わる。
臨床医として勤務しながら、行政機関での勤務経験もあり地域の健康課題にアプローチした健康寿命延伸、感染症対策などの医療行政にも携わってきた。
国立保健医療科学院、結核研究所での研鑽も積む。
現在、医療法人ウェルパートナー主任医師。
ひどい花粉症を正しく対策するには、自分のタイプをよく知るところから始めてみてください。花粉症には鼻づまりやくしゃみなどさまざまな症状があり、発熱などの症状をはじめ、夕方や夜、曇りの日など、症状を感じやすいタイミングもは人によって異なります。症状の出方がわかれば、あとは先回りして対策すれば症状を和らげられます。公的機関の情報サイトなども活用し、花粉と上手く付き合っていきましょう。
花粉症とは、スギやヒノキといった植物の花粉が原因となるアレルギーの一つです。花粉症の症状は、花粉を吸い込んだり付着しやすい鼻と目にあらわれやすく、くしゃみや鼻水・鼻づまり、目のかゆみや充血などが多くみられます。場合によっては、喉の違和感や微熱、全身の倦怠感を引き起こすケースもあるため、風邪やほかの病気と混同しやすいケースもあるので注意が必要です。
また、花粉症は医学用語で「季節性アレルギー性鼻炎」と呼ばれています。重症化すると、日常生活に支障が出てしまう人も少なくありません。いわゆる「ひどい花粉症」かどうかは、くしゃみと鼻水、そして鼻づまりの度合いによって判定されます。花粉症で鼻に症状が出やすいと感じている方は、各タイプの症状をチェックしておきましょう。
花粉症による鼻の症状がひどくなると、一日のうちに何度もくしゃみをしたり、鼻をかんだりする方も多いのではないでしょうか。くしゃみや鼻をかむ回数こそ、ひどい花粉症と判断する目安といえます。一日のうちで5~10回程度の症状が見られる程度であれば、軽症もしくは中等症のうちと判断できるでしょう。しかし、一日に10回以上くしゃみや鼻水が出る場合は、ひどいタイプにあたるといえるため要注意です。
花粉症の鼻症状のなかで、くしゃみや鼻水より、鼻づまりがひどい方もいるでしょう。鼻づまりの程度も、ひどい花粉症と判断する目安の一つです。軽く鼻が詰まっている程度なら、まだ軽症と判定されます。一方、口呼吸をする時間が多少なりともあれば、中等症以上です。さらに、鼻が一日中完全に詰まってしまっているなら、重症度は最も高いと判断できます。口呼吸が中心になっている方は、医療機関の診察を検討してみてください。
花粉の飛散量が多くなり、ひどい花粉症を招きやすいといわれているのは、一日のうちでお昼(12~15時頃)と夕方(18時頃)の2回です。花粉が木々を離れて飛び始めるタイミングと、気温の低下による、上空の花粉の落下に原因はあると考えられています。
また、スギ花粉を例にとると、天候による違いもあるため覚えておきましょう。
上記以外にも、花粉症の程度は植物に加え、各方面の条件によって変わります。曇りの日とはいえ、まったく飛んでいないわけではありません。雨が降った翌日、もしくは風の強い曇りの日は要注意です。
次に、ひどい花粉症を引き起こす条件について、より詳しくみてみましょう。
「朝の起床と同時に、くしゃみや鼻水が止まらなくてつらい…」そんな花粉症の方は、少なくないのではないでしょうか。花粉症がひどいと感じるタイミングは、起床時と記すデータもあるくらいです。起床時に起こる鼻の諸症状を「モーニングアタック」と呼びます。
朝に症状がひどくなる主な原因は、自律神経に関係しているといわれています。起床時は副交感神経系から交感神経優位に切り替わるため、鼻の粘膜が過敏になるのです。加えて、夜の間に床へ落ちた花粉を吸い込んだり、ふとんをたたむときに付着していた花粉が舞いやすくなるのものも原因と数えられています。
「夜、眠りにつく前に症状がぶり返す…」そんな方は、案外少なくないでしょう。鼻づまりがひどくなかなか寝付けず、睡眠不足によって翌日の眠気やだるさを引き起こすと、おのずと日常生活に支障をきたしてしまうでしょう。夜のひどい花粉症は、日中の症状を併発する悪循環の元ともいえます。
花粉のピークは朝・夕の2回ですが、夜になると飛ばなくなるわけではありません。気温の低下のみならず、人の動きによって地面や床に落ちた花粉が再び舞うのです。また、アレルギー性鼻炎は時間差で症状があらわれるケースもあります。花粉を吸い込んでから数十分以内に起こりやすいですが、鼻づまりは花粉を吸い込んでから6~10時間ほど経過した夜間に症状がみられる場合もあると覚えておきましょう。
「お風呂上がりにくしゃみを連発してしまう…」と、入浴後の症状に悩まされる人も多くいます。入浴すると日中に付着した花粉を洗い流せて、リフレッシュできるでしょう。ただし、お風呂上がりは、くしゃみがひどくなりやすいのです。
入浴をすると、副交感神経が優位になる傾向になります。入浴を終えて交感神経が活発になると鼻の粘膜が過敏になってくしゃみや鼻水などの症状が出やすくなるケースがあるのです。さらに、バスマットや部屋着に付着した花粉により、症状が引き起こされている可能性もあります。
ひどい花粉症をしっかり対策したいなら、花粉の飛散量を正しく把握するのが大切です。多い日は装備を強化するなど、対策の度合いも調整しやすくなるでしょう。
環境省や日本気象協会、東京都保健医療局のホームページでは、花粉の観測データを公開しています。スギやヒノキなど、種類ごとの飛散量がひと目でわかるのでチェックしてみてください。花粉症に関する情報も載っているので、花粉シーズンの暮らしに役立てましょう。
日本気象協会のホームページでは、2024年春の花粉飛散予測が立てられています。全体的な飛散量は例年より多い傾向。2023年の春に比べると九州~東北南部は飛散量が減少するものの、北海道のシラカバ花粉は非常に多くなる模様です。また、スギ花粉の飛び始めは、ほぼ例年並みの2月上旬。ただし、飛散開始と認められる前から少しずつ飛び始めます※。1月からの対策が推奨されているため、花粉症がひどい方は早めの対策を心がけましょう。
※参照:「2024年 春の花粉飛散予測(第2報)/日本気象協会」医療機関で自分にあった花粉症治療を受けられると、約5割の人が花粉症を意識せず過ごせるともいわれています。ただし、花粉症の悪化を食い止めるには、日々のセルフケアが欠かせません。続いて、花粉症をひどくさせないための対策や注意点をチェックしましょう。
花粉の吸い込みや室内への取り込みを完全に抑えるのはむずかしいですが、基本の対策として「花粉を付着させないための行動」を意識しましょう。目と鼻から花粉が侵入するのを防ぐために、外出時はマスクを必ず着用してください。目の症状が強い人は、フード付きのメガネもおすすめです。とくに症状が強い人は、飛散量の多い日や時間帯にはできるだけ外出を控えるとともに、屋内では窓をしっかり閉めて花粉の室内への侵入をブロックしましょう。花粉の飛散情報は、日本気象協会のHPでチェックできるため、ぜひ活用してみてください。
また、家に入る前には衣服や髪に付着した花粉をよく払いましょう。払うだけで除去しきれるわけではないため、掃除機や空気清浄機を活用して花粉軽減に努めてみてください。外出時には花粉がつきやすい素材の衣服を控えるのも有効です。毛の長いウールやアクリル素材は、花粉が絡みやすいため注意しましょう。
花粉を付着させない行動とともに、健康維持にかかわる生活習慣を見直してみてください。
まず、タバコやアルコールは花粉症の症状を悪化させる一因のため、なるべく控えましょう。タバコはともに鼻の粘膜を刺激し、アルコールは鼻の粘膜の毛細血管を広げてむくみを引き起こすため鼻の諸症状を悪化させます。
また、食事では、意識的に乳酸菌を摂取するよう努めてみてください。乳酸菌は腸内環境を整えるといわれています。私たちの腸内には免疫の過剰な働きを押さえてアレルギーを防ぐ細胞があるため、腸内環境を整えると花粉症の症状を和らげてくれる可能性があります。乳酸菌をサポートする食物繊維も取り入れつつ、バランスのよい食事を目指しましょう。さらに、スパイスなど粘膜への刺激の強い食べ物は、症状を悪化させるともいわれるため控えるのが賢明です。
花粉の付着防止や生活習慣の見直しで、ずいぶんと花粉症の症状悪化は防げるでしょう。しかし、お風呂上がりのひどいくしゃみは、どう対策すればよいのかと感じるかもしれません。副交感神経優位によって起こる入浴後の症状悪化は、入浴方法の工夫がカギといえます。
入浴時に心がけたいのは、お湯とぬるめのお湯を交互に浴びる方法です。副交感神経・交感神経どちらに傾くわけでなく、自律神経が整いやすくなります。最後はぬるめのお湯で終わると、お風呂上がりの寒暖差を抑えられて、お風呂上りの症状を抑えられるでしょう。
花粉症はひどくなると、くしゃみや鼻水、鼻づまりの悪化を招きます。1日のうちで朝夕の2回をはじめ、朝の起床時や夜の就寝前、副交感神経優位になりやすいお風呂上がりは、とくにひどい症状に悩まされやすいタイミングです。
つらい花粉症をひどくさせないためには、セルフケアの徹底が基本です。メガネやマスクなど基本の装備はもちろん、衣服の選択や玄関先で花粉を徹底的に払って対策しましょう。また、タバコやアルコールを控え、バランスのよい食事をとるのも欠かせません。お風呂上がりの症状悪化を防ぎたいなら、お湯と水を交互に浴びる入浴法を試してみてください。
鼻づまりがひどいタイプの花粉症なら、対策に部屋の湿度管理を取り入れるのがおすすめ。鼻の粘膜が乾燥すると症状が悪化しやすくなります。タバコやアルコールを控えるとともに、うるおいを保つのも、鼻の粘膜を守る大切な手段といえます。加湿器を稼働させたり、室内に洗濯物を干したりして加湿に努めてみてください。外出時はマスクの着用が花粉を吸いこむのを防ぐとともに、空気の乾燥から守ってくれるでしょう。
花粉症は花粉に対してアレルギー症状を引き起こす病気ですが、症状の現れ方には大きな個人差があります。
一般的によく見られる症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりの3つの鼻症状です。これらの鼻症状を抑えるには、第一に花粉を取り込まないこと、室内に持ち込まないことが大切。今回ご紹介した対策方法を実践してみて下さい。
花粉症の症状が現れる時間帯も人によってさまざまです。症状を和らげるにはご自身のタイプに合わせて対策方法も検討する必要があります。
花粉症の症状を和らげるための対策は、本格的に花粉が飛散する前から始めましょう。マスクや花粉症対策用のメガネなどは事前に準備しておくと安心ですね。
その他にも、朝に症状が強くなるタイプの人は空気清浄機、鼻づまりなどの症状が強い人は加湿器などを準備することをおすすめします。
また、症状が強く日常生活に支障を来している場合には医療機関での治療をおすすめします。今の薬は速効性がありますが、花粉はいつ飛散し出すか分かりませんので、できるだけ早めに受診しましょう。
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