監修医師成田 亜希子
2011年医師免許取得。初期臨床研修を経て総合診療医として幅広い分野の治療に携わる。
臨床医として勤務しながら、行政機関での勤務経験もあり地域の健康課題にアプローチした健康寿命延伸、感染症対策などの医療行政にも携わってきた。
国立保健医療科学院、結核研究所での研鑽も積む。
現在、医療法人ウェルパートナー主任医師。
4月や5月、新年度や新学期がはじまってまもなく「どうも仕事に行きたくない」「何となくやる気が出ない」など、五月病かもと感じた経験はありませんか?2022年に社会人300人を対象にしたアンケートでは、半数を超える53%もの人が五月病の「経験あり」と回答しています。
五月病は怠け心から起こる責められる症状ではなく、誰にでも十分に起こりうる症状なのです。
今回は五月病の主な原因や五月病にかかりやすい人のデータをアンケート結果から紹介し、データを踏まえての五月病の予防策について解説します。五月病への不安がある人は、五月病にならないための予防策を参考にしてみてください。
資料引用:「五月病に関する調査」/統計分析研究所・株式会社アイスタット
※アイブリッジ株式会社(本社:大阪府大阪市)の会員 20歳~ 59歳、有職者の300人を対象に調査
五月病はテレビやニュースでも馴染みのある言葉ですが、正式な病名ではありません。
新生活や新学期の開始から少し時間の経った5月頃に現れる症状を総称して5月病と呼んでいるのです。五月病の主な症状は、次のとおりです。
五月病になると、仕事や勉強に手がつかなくなり、職場や学校での生活に悪影響を与えてしまうケースも少なくありません。放置しておくと人間関係の悪化を招くだけでなく、うつ病や適応障害など病気に進行してしまう危険性もあります。五月病は単なる気持ちの甘えと考えるのではなく、人に相談する、医療機関を受診するなどの対策が必要です。
統計分析研究所が 20歳~ 59歳で、有職者300人を対象に五月病に関して調査を実施したところ、原因TOP5としてもっとも多い回答は「人間関係」でした。
資料引用:「五月病に関する調査」/統計分析研究所・株式会社アイスタット
※アイブリッジ株式会社(本社:大阪府大阪市)の会員 20歳~ 59歳、有職者の300人を対象に調査
4月の年度始まりは、入社や転職、人事異動で人間関係や仕事内容に変化が起こる人が多い時期です。人間関係や仕事内容が変化すると、緊張状態が続いて疲労やストレスを溜め込みやすくなります。
適度な緊張状態は、集中力を保つのに効果的です。しかし、過度の緊張状態は、心身の不調にも繋がりかねません。緊張状態を保ってきた人でもGWで緊張の糸がほどけ、新たに気持ちを立て直すのが難しい人もいるでしょう。
つまり、五月病の主な原因は、新しい生活環境に適応するためのストレスと、十分に適応できてない状態が続くことと考えられます。さらに日本ではその時期に大型連休がある方も多いため、一度途切れた緊張感が一気に和らぐと意欲などを立て直して新しい生活に戻るのが難しくなるケースもあります。
統計分析研究所のアンケートでは、五月病の自覚症状についての調査も実施しています。「「五月病かも」と感じたとき、どのような症状がありましたか。」との質問に対する回答は、次のとおりです。
資料引用:「五月病に関する調査」/統計分析研究所・株式会社アイスタット
※アイブリッジ株式会社(本社:大阪府大阪市)の会員 20歳~ 59歳、有職者の300人を対象に調査
上位2つの結果を見ると、五月病の自覚症状として多いのはメンタル面での症状と言えます。メンタルの不調は、うつ病や適応障害など精神疾患に繋がる可能性もあるため注意が必要な症状です。また「無力感、倦怠感、気だるさ、やる気が出ない」といった疲労感が抜けない自覚症状をほぼ半数の方が感じているようです。
下位には頭痛や腹痛、胃痛などの身体面での症状を訴えている人も見られます。五月病の自覚症状は、精神的な症状から身体的な症状まで幅広いのが特徴です。
調査結果から、五月病にもっとも多い自覚症状はメンタル面での症状だとわかりました。では、メンタルに大きく影響する、性格や仕事の取り組み方について、実際のデータを参考に、五月病のかかりやすさについて見ていきましょう。
統計分析研究所のアンケートでは、五月病を経験している人の48.4%が自分のメンタルについて「やや弱いと思う」「非常に弱いと思う」と回答しています。
一方、5月病の経験がある人のうち、自分のメンタルについて「非常に強いと思う」「やや強いと思う」と回答した人は、わずか18.9%です。メンタルの強さを自分自身で評価したアンケートではありますが、メンタルが弱い人は強いと感じている人に比べて五月病にかかりやすいとの結果が読み取れます。
メンタルが弱い人はストレスへの耐性も弱く、生活環境の変化によるストレスから五月病にかかる人が多い傾向だと言えるでしょう。
上述したアンケートでは、性格面からも、五月病になりやすい人の分析をしています。性格と五月病との関係で、五月病の経験がある人とない人との差が大きい順番は、次のとおりです。
資料引用:「五月病に関する調査」/統計分析研究所・株式会社アイスタット
※アイブリッジ株式会社(本社:大阪府大阪市)の会員 20歳~ 59歳、有職者の300人を対象に調査
また、真面目な性格であると答えた人についても、39.6%が五月病の経験ありと回答しています。真面目で几帳面な人は、責任感が強く自分にプレッシャーをかけてしまいがちです。そのため、ストレスも溜まりやすく、五月病にもかかりやすい傾向が強く出ているのが読み取れます。
アンケートでは、さらに踏み込んで、日頃の仕事への意欲に対しても調査しています。回答者の56.7%が日頃の仕事への取り組み方について意欲的であると回答しています。5月病の経験がある人のうち、意欲的であると回答した人は57.2%、5月病の経験がない人のうち意欲的であると回答した人は56.0%で大きな差は見られませんでした。
アンケート結果からは、仕事への意欲と五月病のかかりやすさには関連性がなく、普段から仕事に意欲的に取り組んでいる人でも、意欲的でない人と同様に五月病にかかってしまうのが読み取れます。
五月病に陥ってしまうと、仕事や人間関係に悪影響が出てしまうケースもあります。生活を立て直すのが大変になる前に、五月病になりやすい特徴のある人、または自覚している場合は、予防策を立てたり、医療機関や悩みを相談できる場所に相談やカウンセリングを申し込むのもおすすめです。
とくに、五月病の主な原因は、人間関係や仕事内容の変化による疲労やストレスでした。五月病を予防するには、疲労やストレスを溜め込まない生活が重要になってきます。
人間関係や仕事の内容が変わると、仕事への取り組み方に迷う機会も増えるでしょう。迷いを一人で抱えるとストレスを溜め込む大きな原因となりえます。迷い事、悩み事がある場合には、上司や同僚に相談する習慣を身につけましょう。
相談を受けた上司も、社員が抱えている悩みを知って職場環境の改善に取り組めます。同僚が同じ悩みを抱えていた場合には、何でも相談できる良好な人間関係が生まれやすくなる「良い効果」も期待できるでしょう。
また、完璧主義の思考を捨てて、「慣れないうちは少しの失敗も仕方ない」と考えるのも重要です。少しの失敗も許されないと自分自身にプレッシャーをかけてしまうと、ストレスを溜め込む原因になります。
真面目で几帳面な性格は素晴らしいですが、年度始めは肩の力を抜いて、環境に慣れるのを優先に考えてみてはいかがでしょうか。
人間関係や仕事でのストレスを解消するには、友人や家族など信頼できる人に悩みを打ち明けたり、仕事を忘れて遊んだりするのが効果的です。
同じ境遇にある友人と悩みを共有できると、「自分だけの悩みじゃない」と気持ちが軽くなるでしょう。
また、定期的な運動もストレス解消には効果的です。仕事以外で体を動かすと、頭もスッキリして気分転換になります。
疲労を溜め込まないためには、規則正しい生活リズムで過ごすのが重要です。生活リズムが乱れると、不眠や食欲不振など心身のバランスも崩してしまいます。
環境が変わりやすい時期ほど、正しい生活リズムを心がけ、食事から十分な栄養を摂り、質の良い睡眠を取る生活を続けられるようより心を配りましょう。
五月病は、有職者への調査結果のうえでは、なんと半数以上の人が経験していました。性格の違いによる差はあれ、誰の身にも起こりうる症状です。毎年のように症状を繰り返している人もいらっしゃるかもしれません。
五月病にかかりやすいと自覚症状がある人は、五月病にならないための予防策を見つけていきましょう。いつでも相談できる人を見つけておく、生活リズムが乱れないように気を付けるだけでも五月病のリスクは少しずつ減っていくはずです。
それでも、五月病に陥ってしまった場合、焦りは禁物です。生活リズムの改善や簡単な仕事など、ひとつずつ着実に対応していきましょう。知らず知らずのうちに五月病から抜け出すきっかけが見つかるはずです。
5月病はご紹介したように、思いのほか多くの方が悩まされる症状の一つです。新しい環境の中、ストレスや緊張感が続くと一か月過ぎた頃に心身の不調を引き起こしやすくなります。さらに、日本では同時期に大型連休があるため、より一層元の生活に戻る際に気持ちを立て直すのが難しくなる方も多いとされています。
5月病の症状や重症度には個人差があります。そのまま環境に慣れていくと自然に症状が改善していくケースも多いですが、重症な場合はうつ病や適応障害などに進行してしまうことも。
5月病を予防する対策も大切ですが、100%予防することはできません。5月病が疑われる症状がある場合には、ストレスや緊張感を和らげるために休養を取る、仕事や学校以外の場で楽しみを見つける、といった対策がおすすめです。
ただし、強い心身の不調が一か月以上続く場合はセルフケアや対策だけでは改善できない可能性があるため、軽く考えずに心療内科などを受診することをおすすめします。
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