監修医師成田 亜希子
2011年医師免許取得。初期臨床研修を経て総合診療医として幅広い分野の治療に携わる。
臨床医として勤務しながら、行政機関での勤務経験もあり地域の健康課題にアプローチした健康寿命延伸、感染症対策などの医療行政にも携わってきた。
国立保健医療科学院、結核研究所での研鑽も積む。
現在、医療法人ウェルパートナー主任医師。
自律神経とは、私たちの心身をすこやかに保つための神経です。「春は自律神経のバランスがみだれがち」とよく耳にしますが、そもそも自律神経とは何か、どこにあるのかご存じでしょうか。
「身体のどこにあるの?」「交感神経と副交感神経との関係は?」「生理前にも自律神経バランスがみだれる?」などの疑問を解消したい方に、本記事では、自律神経についてわかりやすく解説していきます。
自律神経とは、簡単にいうと「生命維持を司る神経」です。そもそも神経は中枢神経と末梢神経にわかれており、自律神経は末梢神経に分類されます。末梢神経には意思によって身体を動かす働きなどを担う体性神経もありますが、自律神経は意思と関係ないところではたらく神経です。
わかりやすく例をあげると、寝ているときに呼吸をする・心臓を動かすようにしたり、口から食べ物を入れると胃腸が動いて消化したりするのも、自律神経のはたらきによります。自分の意思とは関係ないところで体のさまざまな機能を調節してくれる自律神経は、生きていくうえで欠かせない神経といえるのです。
私たちの健康をまもる自律神経は、全身のあらゆるところに分布しています。心臓や胃・腸をはじめとする内臓や、血液を全身に届ける血管など、数えるときりがありません。
自律神経の一つである交感神経の中枢は、脊髄にあります。
対して脳幹・仙髄からのび、顔面や胸部・腹部にある内臓にはしっているのが、副交感神経です。脳幹は、大脳の指令下にあります。意思を持たずとも唾液分泌量の調節などが可能なのは、自律神経の一つである副交感神経が、大脳の指令を受けているからと推測できるでしょう。
交感神経と副交感神経については、次項でくわしく説明します。
末梢神経の一つである自律神経は、反対のはたらきを持つ「交感神経」と「副交感神経」のふたつによって構成されています。双方の役割をわかりやすくいうと、交感神経はアクセルであり、副交感神経はブレーキです。互いのはたらきのバランスが正常に保たれてこそ、健康といえます。反対に、バランスの乱れは心身のバランス崩壊につながり、体調に異変をきたしかねません。交感神経と副交感神経のはたらきが偏って起こる現象こそ、いわゆる「自律神経バランスのみだれ」なのです。
以下では、交感神経と副交感神経の役割・はたらきを解説します。
交感神経は、自律神経のうち、心身が「活発になっているとき」に優位になる神経です。興奮時や日中、ストレスを感じたとき、不安や緊張を感じる場面ではたらきが盛んになります。スポーツやトレーニングをはじめとする運動や、発表会・仕事でのここ一番の場面などで緊張をしているときは、交感神経が優位になると想像できるでしょう。
運動・緊張時に、心臓の鼓動を早くさせたり、血圧を高くさせたりするのは、交感神経のはたらきによります。また、暑いときに汗を出して体温を下げたり、寒いときに鳥肌をたてて熱を起こしたりするのも交感神経の役割の一つです。
交感神経優位=アクティブな生活にプラスになるイメージですが、盛んになりすぎると、体調不良を招くケースも少なくありません。アクセルの踏みすぎは、心身の疲労感やさらなるストレスにつながりかねないのです。
心身が活発化しているときに優位になる交感神経に対し、副交感神経は「リラックスしているとき」に優位になります。心身ともにくつろいでいるときや睡眠時、食後のゆっくりした時間に盛んにはたらくのが特徴です。ほかにも、好きな音楽を聴いたり、アロマの香りにつつまれながら読書をしたり、ストレスから遠い場面で優位になると想像できます。
副交感神経がはたらくと、脈・心拍数を遅くするほか、消化・排便・排尿を促進します。副交感神経の優位になりやすいリラックス時の食事は、スムーズな消化につながると考えられるでしょう。さらに、唾液を出して口内の乾燥を防いだり、血管を拡張させたりするのも、副交感神経が優位にはたらいている証拠といえます。
心身のリフレッシュに欠かせない副交感神経も、交感神経と同じく優位の状態が続くのは好ましくありません。ブレーキをかけすぎても、体調は万全とはいかないのです。
自律神経を正常に保つためには、交感神経と副交感神経がバランスよくはたらいてこそ成り立ちます。
例えば交感神経優位になりすぎて興奮状態が続いたり、副交感神経優位の連続でメリハリのない日々をおくっていると、結果として双方のバランスが偏り、心身のあらゆるところに不調を引き起こしかねません。
自律神経のバランスが崩れると、だるさや疲れのとれにくさ、冷えなどの身体の不調を招く可能性もあります。場合によっては、不安感やイライラ感、どことなく気分が晴れないといった精神状態を招くケースもあります。
慣れない環境下でストレスを感じやすい春の新生活は、交感神経が優位になり、自律神経のバランスが崩れやすくなるといわれています。また、春は温度や湿度が大きく変わり、寒暖差により過度な体温調節などを繰り返すと自律神経バランスが乱れやすくなります。「寒暖差疲労」が気になるのは秋も同様の理由からです。春や秋は、自律神経がみだれやすい季節といえます。
また、女性は生理前による自律神経のみだれにも注意が必要です。卵巣から分泌されるふたつのホルモンが関係していて、エストロゲンは副交感神経を刺激し、プロゲステロンは交感神経を刺激します。双方の分泌量が大きく変動する生理前は、ホルモンバランスに加え、自律神経のバランスも崩れやすくなるのです。
自律神経とは、簡単にいうと生命維持の要です。交感神経・副交感神経のふたつから成り立っており、血管および心臓や胃をはじめとする内臓の大部分に分布しています。意思と離れたところで、心身をすこやかに保つための指揮をして働いています。
自律神経のうち、活発時にはたらくのが交感神経です。一方、リラックス時にはたらくのが副交感神経であると覚えておきましょう。交感神経は運動によって緊張・興奮状態にあるときに優位になり、副交感神経は睡眠時や食後のくつろいでいるときに優位になります。通常であれば双方のバランスはとれているでしょう。しかし、ストレスや不規則な生活によって異常をきたすと「自律神経バランスのみだれ」につながりかねません。
とくに気象が変動する春・秋といった季節の変わり目や、ホルモンバランスの崩れやすい女性の生理前は要注意です。健康を保つ自律神経が正しく機能するには、規則正しい生活のなかにも、ほどよい休息が大切なのです。
自律神経は私たちが生きていくための体の機能を調節するため、自律的に機能する神経の総称です。ご紹介したように、自律神経には交感神経と副交感神経という2つの種類があり、それぞれ相反する働きを担って体の機能を調節しています。
しかし、この交感神経と副交感神経のバランスは気候の変化やストレス、ホルモンバランスの変化などによって乱れやすいのが特徴です。自律神経のバランスが乱れると、気持ちが昂って眠れない、やる気が起きずに仕事に支障が出る、など心身に多くの不調をもたらします。
自律神経バランスの乱れによる症状が続くときは、生活を見直してバランスの乱れを改善するセルフケアを行いましょう。ただし、自律神経バランスの乱れは甲状腺疾患などの病気によって引き起こされる場合もあります。
生活の見直しを測っても不調が続くときは、医療機関への受診を検討しましょう。
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