監修医師成田 亜希子
2011年医師免許取得。初期臨床研修を経て総合診療医として幅広い分野の治療に携わる。
臨床医として勤務しながら、行政機関での勤務経験もあり地域の健康課題にアプローチした健康寿命延伸、感染症対策などの医療行政にも携わってきた。
国立保健医療科学院、結核研究所での研鑽も積む。
現在、医療法人ウェルパートナー主任医師。
春や秋の季節の変わり目に、眠気やだるさを感じた経験はありませんか?季節の変わり目は、寒暖差などによる自律神経の乱れが起こりやすく、日照時間が短くなる秋は心を落ち着かせて眠りを誘う脳内物質の分泌が低下するため睡眠不足になりがち。日中に眠気を感じやすくなるケースもあります。
睡眠の質の悪化となる原因を解説し、自律神経を整え、季節の変わり目の睡眠トラブルを予防する対策法を数多く紹介しますので、一つでも取り入れて対処してみましょう。
春や秋といった気温差が激しい季節の変わり目に、眠気やだるさを感じる方も多いのではないでしょうか。近年の研究により、さまざまな心身の不調は自律神経バランスの乱れから起こる場合があります。
季節の変わり目は、自律神経が乱れて睡眠に悪影響を及ぼしやすいために、眠気やだるさを感じやすくなると考えられるのです。
まずは日常生活に重要な役割を果たす自律神経と、睡眠との関係について解説します。
自律神経とは、呼吸、体温、消化、排泄など生きていくために必要な身体の機能を調整する神経のことです。全身の分布し、私たちが意識することなく身体の機能を調整してくれています。自律神経は、身体活動を活発にする交感神経と、身体活動を抑えてリラックスさせる副交感神経に分かれます。
アクティブになる交感神経とリラックスさせる副交感神経が共によく働き、どちらかに偏りすぎていない状態が、最もバランスよく自律神経の整った状態とされています。
睡眠時には、副交感神経優位のリラックスした状態でないと、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりすることで、熟眠感を得られにくくなることも珍しくありません。
自律神経は、変化やストレスに弱いと言われています。
季節の変わり目に起きやすく、以下の変化によって、自律神経が乱れてしまうかもしれません。
気温の変化が大きいと、自動的に体温調節しようと自律神経が過剰に働いて疲れてしまいます。自律神経が過剰に働くと、エネルギーを消耗しやすくなるため疲労が蓄積しやすくなります。このようにして引き起こされる身体的な疲労感は寒暖差疲労と呼ばれ、症状が長引くこともあるため注意が必要です。
環境の変化によってストレスがかかると、自律神経バランスは乱れやすくなります。
進学・就職・異動によって初対面の人との出会いが多く、環境の変化を感じやすい春は、自律神経バランスが乱れやすい季節と言えるでしょう。
自律神経バランスが乱れると、体温調節がうまくいかなくなったり、リラックスして副交感神経優位の状態になりにくくなったりします。
結果として、寝つきは悪く、睡眠も浅くなり、睡眠不足になるのです。
また、自律神経バランスの乱れが悪化すると、自律神経失調症と総称される、疲れやすい・頭痛といった身体的症状およびイライラ・うつといった精神的症状が出てしまう場合もあります。
自律神経は意識して使っている訳ではないため、自律神経の過剰な働きによってバランスが
乱れた場合でも自分で気付きにくいかもしれません。
はっきりした原因がないにも関わらず良眠できなくなったり眠気などの症状がある際には、自律神経の乱れを疑いましょう。
長く不眠や体調不良が続くようであれば、睡眠や自律神経に関する専門医に相談するのをおすすめします。
季節の変わり目でも、寒暖差の激しい春と秋は、とくに眠気を感じやすい方も多いとされています。春と秋に感じやすい眠気の原因となる、季節ごとの特徴について、より詳しく考察してみましょう。
寒暖差が大きく、気圧の変化も大きな春は特に自律神経のバランスが乱れやすくなる季節です。
前述のように、花粉症になったり、就職といったイベントで環境の変化によるストレスが大きくなる季節でもあります。
自律神経バランスが乱れやすい気候に加え、さらにストレスが重なると自律神経バランスはさらに乱れやすくなるのです。
秋は、日照時間が段々と減少していくため、精神を安定させる脳内物質であるセロトニンの分泌が減少していく季節です。強い光により分泌を促進されるセロトニンが減少すると気分が落ち込みやすく、冬季うつと呼ばれる病気を引き起こすことも知られています。
さらに、体内時計を整えて眠気を引き起こすホルモンであるメラトニンはセロトニンを原料とするため、セロトニンの不足によりメラトニンまで分泌されにくくなります。
つまり、セロトニン不足は睡眠に悪影響を及ぼし、寝不足になりやすくなるのです。
また夜、想定以上に寒くなっているにもかかわらず薄着のまま寝てしまい、体温調節に失敗しやすいのも秋にありがちなケースです。
暖かくなる春は、就寝中に布団や毛布をはいで温度を調整できる可能性もありますが、秋はそうもいきません。秋は、最も睡眠時の体温調節、冷えへの対策が難しい季節と言えるでしょう。
自律神経バランスの乱れによって起こる睡眠トラブルへの対策には何があるでしょうか。
自律神経を整える方法、睡眠の質を向上させて睡眠不足を予防する方法といった、さまざまな対策法や工夫を紹介していきます。
取り入れやすい対策法や工夫を、一つでも試してみてください。
鼻から3秒吸って、口から6秒吐く簡単な深呼吸をするだけでも、自律神経は整うとされています。また軽い運動は、ストレス解消につながるため、自律神経を整える効果も期待できます。無理のない範囲で気持ち良くなる運動を取り入れてみましょう。
朝に日光を浴びると体内時計がリセットされるため目覚めが良くなるでしょう。
また、朝や昼の日光浴によりセロトニンの分泌が促されます。
セロトニンは精神を安定させ、メラトニンの分泌にもつながるため、睡眠の質の向上が期待できます。
セロトニンを生成するのに必要な栄養素である、ビタミンB6・トリプトファンを意識して摂取してみるのも睡眠の改善につながりますバナナ、まぐろ、かつお、チーズ、豆腐、納豆などの食材がおすすめです。
また、寒くなる季節には、ニラ、ネギ、にんにく、しょうがといった身体が温まる食材は血行を良くして副交感神経が活発になり、寝つきがよくなります。
朝に白湯やホットコーヒーを飲んで、腸を朝から刺激するのは、自律神経バランスを整えるのによいとされています。ホットコーヒーは、交感神経の働きを活性化するだけでなく血流促進も期待できるので、おすすめです。
ディスプレイに使われているブルーライトや、明るい照明を避けると、夜寝る前に交感神経が活発になってしまうのを防ぐ効果があります。
SNSの見すぎもストレスを感じる要因になるため、できるだけ寝る前にスマホに触らないよう心がけましょう。
寝具を見直し、季節にあった布団を用意したり、快適なマットレスを使う工夫は、睡眠の質を高めてくれるでしょう。
アロマを利用して寝る前にリラックスする香りを嗅ぐと、副交感神経が優位になって眠りやすくなるかもしれません。
夜に38~40℃の少しぬるめの湯に10~15分浸かると、副交感神経が刺激されて副交感神経優位の状態になりやすく、睡眠の質を高めてくれます。就寝直前ではなく、1~2時間前に入浴するのもポイントです。
15~30分程度の昼寝は、副交感神経を刺激してリラックスするのに有効です。
忙しく活動的な現代人は、交感神経優位の状態が長すぎると言われているので、適度にリラックスした状態を作るよう意識すると、自律神経バランスを整えるのに役立つでしょう。
自律神経は、体調不良に関わる神経の一つです。
自律神経は私たちの意思とは関係なく働く神経であるため、バランスを自覚しながら改善するのは困難です。だからこそ、自律神経バランスが整いやすいとされる行動の習慣化が一番の近道です。
自律神経が整うと、季節の変わり目の眠気やだるさの改善が期待できます。朝晩の気温差の激しい時節に眠気やだるさを感じた場合には、自律神経の調整を意識してみてください。
季節の変わり目である春や秋はさまざまな体調不良が起こりやすい季節ですが、とくに眠気を感じやすくなる方も多いのではないでしょうか?
日中の眠気は集中力や注意力を低下させ、日常生活に支障を引き起こすのも珍しくありません。
季節の変わり目に生じる眠気は自律神経バランスの乱れが原因の場合があります。
本格的な季節の変わり目に入る前から、今回ご紹介した対策法を生活に取り入れておきましょう。
特に、規則正しい生活リズムは眠気対策に欠かせません。
・十分な睡眠時間を確保する(成人は6時間以上)
・毎日決まった時間に就寝する
・休日に「寝だめ」をしない
これらの対策も生活リズムを整えるために必要です。
実践できていない方は、今日からでも実践してください。
また、眠気は身体的、精神的な病気が原因で引き起こされている場合もあります。
対策をしても眠気が改善せず、日常生活に支障を来たすようなときは軽く考えずに医療機関を受診しましょう。
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