監修医師成田 亜希子
2011年医師免許取得。総合診療医。
行政機関で医療行政に携わっていた経験もあり。地域住民の女性健康相談のリーダーとして思春期から妊娠出産、更年期障害など女性のライフステージごとのお悩みに寄り添ってきた。
現在、医療法人ウェルパートナー主任医師。女性の美容に関するお悩みにも医学的にアプローチしている。
「デリケートゾーンソープ」を使っていますか?ムレや痒み・臭いなどが生じやすいデリケートゾーンは、刺激に敏感なため、特別なケアが必要です。
近年、今まで他の人に相談しづらかったフェムケアに対する認知度が上がり、デリケートゾーンソープのニーズが高まっています。
デリケートゾーンソープで洗うメリットや、一般的な石鹸・ボディソープとの違い、デリケートゾーンの洗い方やケア方法をご紹介します。
デリケートゾーンは、尿・汗・経血・おりもの・皮脂といった汚れが付着しやすい複雑な形をしています。しかも、粘膜は刺激に対して敏感です。付着した汚れを湯水では十分に落とせないからと、一般的な石鹸やボディソープを使ってしまうと、洗浄力が強過ぎて必要な常在菌や皮脂膜までも洗い流してしまうケースも多いのです。丁寧に洗ったはずが、かえって痒みや臭い・不快感の原因に。
デリケートゾーンに合わせてpH(ペーハー)値や洗浄成分を調整した専用ソープを使用すれば、湯水だけでは落ちない汚れを落としながら、常在菌を過度に減らすことなく必要な潤いを残せるのです。
デリケートゾーンも顔や体と同じく弱酸性ですが、やや酸性寄り。ところが、普通の石鹸や合成界面活性剤を含むボディソープは洗浄力が高いアルカリ性です。
pHは酸性レベルを指します。
膣には“乳酸菌”や“コリネバクテリウム属”といった良性の細菌が一定量存在しており、これらの常在菌が膣内での雑菌の繁殖を防ぐバリアとして機能しています。
膣内pH値のバランスが崩れると、常在菌が存在できず、バリア機能が弱くなり様々な感染症を引き起こしやすくなるのです。
酸性寄りのデリケートゾーンにアルカリ性の製品を使用すると、pHのバランスが崩れてしまい、外部からの細菌の侵入を防ぐ常在菌までも洗い流すためバリア機能が低下しやすくなります。また、石鹸の中には香料や防腐剤が入っている製品もあり、デリケートゾーンに負担をかけてしまうのです。
デリケートゾーンソープは膣環境を正常に保てるようにpHを調整して作られています。肌への負担を抑えながらしっかり洗えて、天然成分や質の良いオイルを使っている製品が多いのもメリットです。デリケートゾーンソープを使用すれば洗い過ぎを防止でき、膣環境を良い状態に保ちやすくなるのです。
デリケートゾーンのお手入れ方法は人に聞きづらいので、自己流でケアしている人は多いでしょう。しかし、間違った洗い方でケアし続けてしまうと、雑菌の繁殖や炎症、乾燥を引き起こし、痒みや臭い、黒ずみといったトラブルを生じる可能性が高まります。
デリケートゾーンはどのように洗ってどこまで洗えばいいのか、正しいケア方法をご紹介します。
デリケートゾーンは体の中でも刺激に弱い部分なので、専用のデリケートゾーンソープをしっかり泡立てて使います。ナイロンタオルやスポンジの使用、ゴシゴシとこすりながら洗うとデリケートゾーンを傷つけてしまうので、ソープの泡で包み込みながら人差し指と中指で優しくなでるように洗ってください。
デリケートゾーンの細かく重なり合うヒダの間には、恥垢と呼ばれる特有の汚れが溜まります。特に小陰唇の裏は恥垢が溜まりやすい部分なので、ヒダを開いて丁寧に洗いましょう。
洗う際には体勢も大切です。お風呂の椅子に普通に座ると汚れがうまく取れないので、和式トイレで用を足すときと同じ体勢をとり、しゃがんで足を開くとヒダの間を洗いやすくなります。椅子に座って洗う場合には、低めの椅子を選ぶと足をしっかり広げられるでしょう。
デリケートゾーンをすみずみまで洗ったら、ぬるま湯を使ってしっかり流します。汚れや泡が残っていると臭いの原因になったり、かゆみなどのトラブルを生じたりするため、洗い流しのないように気をつけてください。また、熱いお湯を使うと必要な皮脂までも流してしまいます。乾燥しやすくなるので、お湯の温度にも気をつけましょう。
シャワーをデリケートゾーンに直接当てる場合には、水圧は弱めに。温水洗浄便座で経血やおりものを流す際にも、強い水圧を避けて軽く洗いましょう。
デリケートゾーンを洗うのは、膣口の手前までにしましょう。
シャワーやビデで膣内まで洗ってしまうと、細菌の侵入や増殖を防いでいる(膣の自浄作用)「デルライン桿菌(かんきん)」と呼ばれる乳酸菌が洗い流されるからです。
自浄作用が弱まると雑菌が繁殖するリスクが高まるため、膣内を洗う場合には専用の膣内洗浄剤を使用し、使い過ぎに注意しましょう。
デリケートゾーンを洗った後は、顔を拭くのと同様に強い刺激を与えてはいけません。清潔にしようと強くこすって拭くのはトラブルの元。肌が傷ついたり黒ずんだりしてしまいます。
入浴後はタオルで軽く押さえて水分を拭き取ってください。温水洗浄便座で洗った後は、トイレットペーパーをふんわりと重ねて、デリケートゾーンに静かに押しあてて水分を吸収しましょう。
デリケートゾーンのケアの基本は、専用アイテムで「洗う」「潤す」「アンダーヘアをお手入れする」の3つです。
日々のルーティーンに取り入れたいセルフケアの方法をご紹介します。
繊細なデリケートゾーンは、刺激の少ない専用のデリケートゾーンソープで優しく洗いましょう。洗い過ぎを防ぎながら、汚れをしっかり落とせます。
デリケートゾーンソープで優しく洗った後は、乾燥しないように専用のローションやオイル、クリームなどで保湿するのもおすすめです。しっかり保湿して肌の潤いを保てば、肌トラブルの軽減につながります。
アンダーヘアが伸びているとムレやすく、雑菌が繁殖しやすくなります。特にIラインは経血やおりものが付着しやすいので、悪臭の原因になったり、不快感につながったりするため、短くカットして清潔に保ちましょう。
ただし、カミソリの刃を肌に直接あてて処理すると、カミソリ負けや粘膜を傷つける可能性があります。できれば、肌への負担が少ない電気シェーバーを使いましょう。
デリケートゾーンは体の中でも特に敏感な部分です。下着の摩擦による影響も受けるほどデリケートな部分なので、肌に合わない石鹸やボディソープを使ったり、間違った方法でケアを続けたりすると、トラブルを生じるリスクが高まってしまいます。
pHや成分がデリケートゾーンに合わせて作られているデリケートゾーンソープなら肌への負担が少なく、優しい洗い心地です。ソープをしっかり泡立てて指で優しくなでるように洗うと、落としづらい経血や汚れをしっかり落としながら必要な潤いをキープできます。
トラブルのない健やかなデリケートゾーンを保つために、これまでのお手入れ方法を見直して、新たにデリケートゾーンソープを毎日の習慣に取り入れてみませんか?
デリケートゾーンはその名の通り、さまざまな刺激に対して敏感な部分で非常にデリケートです。ケア方法を間違えると臭いやかゆみなどの原因になるため注意しましょう。
今回ご紹介したように、デリケートゾーンはデリケートゾーンに適したケアが必要です。特に洗うときは通常のボディーソープなどで洗うと必要な常在菌にダメージを与えたり、潤いを流し過ぎてしまうことも。デリケートゾーン専用のソープを使用するのがおすすめです。
また、できるだけ刺激が少ない洗い方を心がけましょう。
一方で、セルフケアだけでは改善しない臭いやかゆみなどのトラブルがあるときは感染症など何らかの病気が原因の場合があります。
放置せずに、できるだけ早く婦人科を受診してください。
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