教養系ライター江上奏
司法書士として手続代理業を続ける中、難解で細かい書類を依頼者に分かりやすく説明する努力を重ねた経験を活かしつつ、解説記事や健康コラムを執筆。
世の中の便利な知識や世の中の仕組みについて、ひとつでもイメージしやすい形で読者に届け、知識を役立ててほしい思いでライター業を続けている。
青魚の脂に含まれる成分「EPA・DHA」。共に中性脂肪を下げる機能があるとされ、近年注目を集めています。EPAとDHAは似た脂質の成分であり、それぞれの成分には、脳に存在するかどうか、体で果たす役割の違いがあるのです。しかしどちらも、体内で生成できないため、食事でまかないきれない場合はサプリメントなどを利用して摂取したい成分です。 EPA・DHAそれぞれの特徴や機能を解説し、一日の推奨摂取量や摂取方法を紹介しますので、意識して積極的に摂取したい方は参考にしてください。
注目の栄養素として名前の挙がる場合が多いEPAとDHAは、青魚の脂に多く含まれる脂質の一種です。ともに、体内ではほとんど生成できない成分「必須脂肪酸」。
そこで、体内に取り込むには、青魚に代表される食物やサプリメントで摂取する必要があります。
近年の健康志向の高まりと共に、脂質に関する研究が進んでおり、EPAとDHAを含む脂質をバランスよく摂取するのが、人体にとって理想的と判明しつつあるのです。
ところが、魚をよく食べていた日本人の食生活が欧米寄りに変化。
昔よりあまり魚を食べなくなったため、EPAとDHAが不足しがちになりつつあります。
EPAとDHAは、n-3系の多価不飽和脂肪酸に分類される脂肪酸です。
脂肪酸は炭素、水素、酸素が鎖状につながった脂質を構成する成分です。代謝により、体の中でだんだん短くなる過程でエネルギー(熱)を出します。
分子の構造的な違いから飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸といった分類がなされており、EPAもDHAも多価不飽和脂肪酸であるn-3系脂肪酸に分類され、似た分子です。
n-3系脂肪酸は、体内でほとんど合成できない「必須脂肪酸」とされています。
なお、n-3系脂肪酸には、EPA・DHAの他に、えごま油やあまに油などの植物油に含まれるα-リノレン酸があります。
エイコサペンタエン酸を略したEPAは、イヌイットに心臓病が少ない事実への着目により、古くから注目されてきた栄養素です。
体内に摂取すると、EPAの血液中濃度はすぐに上がり、体内のEPA量は増えやすい特徴があります。
長年の研究により、EPAは良質な細胞膜の成分となり、中性脂肪値を下げるなど、循環器系の健康維持へさまざまな機能や役割を担っていると報告されています。
また、EPAについての研究はDHAより進んでおり、機能がある程度明確になっているのも特徴です。
DHAはドコサヘキサエン酸の略で、脳内に多く存在します。
EPAは脳の入口である血液脳関門を突破できませんが、DHAは突破して脳の構成物質となるのです。
脳に作用するDHAは、EPAと補完しながら脳の血管を健康に保っていると考えられます。
常に一定の量が体内に存在し保たれており、食事でDHAを摂取しても血中濃度はすぐには増えません。
脳や神経細胞と深い関わりがあると分かっていますが、DHAの明確な機能はまだ解明されておらず、研究成果報告が待たれるところです。
また、EPAが体内でDHAに変換される場合もあるのですが、変換量は多くないため、DHA自体の摂取が必要です。
母乳に多く含まれているDHAが脳や神経の成長に貢献すると考えられており、とくに幼児や子どもは積極的なDHAの摂取が勧められています。
研究からはEPAとDHA、とくにEPAの摂取により、肝臓から中性脂肪が出て行くのを防いで、血液中の中性脂肪の減少を促す機能が実証されています。
また、EPAとDHAの摂取は、脂肪燃焼作用のある「褐色脂肪細胞」を増加させ、エネルギー(体脂肪)の消費が促進されるとの報告もあります。
EPAとDHAは「中性脂肪が気になる方に適している」成分なのです。
血中の中性脂肪の高い・低いは自覚できないため、血液検査での中性脂肪の数値や皮下脂肪、内臓脂肪の状態を調べる必要があります。
「中性脂肪」が健康診断で基準値以上の場合、どうして数値を下げる必要があるのでしょうか。
中性脂肪は、脂質の一種であり、脂肪酸は中性脂肪を構成する成分です。
体内のエネルギーの蓄えとなる「エネルギーの塊」そのもので、中性脂肪は体温を保ったり、体内にエネルギーを蓄えるための働きをしています。
中性脂肪は多すぎても少なすぎてもよくないとされており、中性脂肪の量は空腹時の血中で30~149mg/dLが健康診断における基準値、適正値となっています。
値が低すぎると体温調節がうまくいかなくなったり、疲れやすくなったりする恐れがあります。逆に値が高すぎると肥満になったり、生活習慣病のリスクが高まるとされているのです。
現代の日本はひと昔前と比較すると、食生活が欧米化して摂取カロリーが増えた一方で、生活が便利になり運動量が減りつつあります。
つまり、摂取カロリーが消費カロリーより多くなりがちで、エネルギーの塊である中性脂肪が体内に溜まりやすいのです。
体質やカロリー以外にも、中性脂肪量に影響する要因はありますが、中性脂肪値が高くなりすぎないよう、より注意が必要な環境にあると言えるでしょう。
EPAとDHAを「どれくらい」「どのように」摂取するのがよいのでしょうか。1日の推奨摂取量、多く含まれる食材、効果的な摂取方法について紹介します。
厚生労働省の発表では、n-3系脂肪酸の食事摂取基準として、18歳から49歳までの成人だと、男性1日2g、女性1日1.6gの摂取が推奨されています。
参照:「日本人の食事摂取基準(2020年版)」/厚生労働省EPAが多く含まれる食材は、「いわし、さば、まぐろ、さんま」です。
DHAが多く含まれる食材は、「さば、ぶり、まぐろ、さんま」が挙げられます。
青魚全般の脂にEPAとDHAが含まれていると考えてよいでしょう。
文部科学省の食品成分データベースによると、可食部100gあたり1g弱前後のEPAとDHAの摂取を期待できる青魚が多い傾向です。
天然くろまぐろの脂身(トロ)であれば、可食部100gあたりDHA3g以上、EPA1g以上と、より多い量の摂取が期待できます。
まぐろの赤身の場合、まぐろの種類や養殖か天然かによって、脂がどれだけ含まれているか大きく違ってくるのです。
養殖のまぐろは比較的脂が含まれた赤身なので、EPAとDHAはそれなりに摂取できます。一方で、天然のまぐろの赤身には脂身が少なく、少量しか摂取できません。
さばやいわしの水煮缶詰は、手軽にEPAとDHAを摂取できるおすすめの食材です。青魚の水煮缶には、可食部100gあたり1g程度のEPAと、1g程度のDHAが含まれています。
効率よくEPAとDHAを摂取するには、魚の脂を無駄にしない調理法が重要です。脂が落ちると、EPAとDHAは失われてしまいます。
脂が流れやすいのは「揚げ調理」です。EPAとDHAを摂取するには、流れ出た脂を煮汁で摂取できる煮物や汁物が適しています。生の刺身で食べる方法がもっとも効率的です。
また、EPAとDHAは酸化しやすい性質があります。酸化した脂の摂取は健康に悪影響を及ぼす危険があるため、摂取には脂の鮮度が重要です。酸化を避けるため、新鮮なうちに早めに食べるよう心がけましょう。
青魚を毎日調理して食べるのは大変ですし、魚があまり得意でない方もいるでしょう。サプリメントを利用すれば、手軽にEPAとDHAを摂取できます。
選び方として、ビタミンEなど抗酸化作用物質を配合し、酸化を防止するよう配慮されたサプリメントであれば、より安心です。
また、EPAとDHAは脂質なので、吸収をよくするなら食後すぐに摂るとよいでしょう。
肉やお菓子は魅力的な食べ物ですが、食生活が動物性脂肪に偏ってしまう大きな要因でもあります。
魚が苦手だったり、魚の調理が面倒で、EPAとDHAをほとんど摂取できていない方も多いのではないでしょうか。体と健康にとって、バランスよい脂質の摂取が理想的。
魚をあまり食べていない方や、中性脂肪が気になっている方は、サプリメントを利用するなど工夫をしながら、意識して積極的にEPA・DHAを摂取してみてください。
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