看護師ライター北村由美
看護師として総合病院、地域病院、訪問看護ステーション等で約30年勤務。超低出生体重児から103歳の高齢者まで看護を経験。
自らが家族の介護を行う中「自分の知識、経験が困っている人の役に立てるのではないか」と考えるようになり、ライターを開始。「読者が共感できる記事」をモットーに医療・健康分野の記事、看護師向け記事を執筆している。
夏は熱中症に見舞われる人が増加するシーズン。熱中症が生じる要因はさまざまありますが、「なりやすいタイプの人」がいるのはご存知でしょうか。
「子どもや高齢者」「屋外でスポーツや作業をする人」はとくに注意が必要です。また、一般に屋外で起こりやすいイメージですが、実際のところ屋内での発症が高い割合をしめます。
熱中症を予防するためには、原因や環境、時期を知り、それぞれの属性にあった対策が大切です。ポイントをおさえ、蒸し暑い時期も元気に過ごせるよう対策しましょう。
熱中症は体温調節する機能が正常に働かず、体内に熱がこもるために起きる体の不調です。 人間の体は、体温が上がっても汗をかいたり、皮膚の温度が上昇したりして、こもった熱を逃そうとします。 しかし、次の3つの要因により、調整機能のバランスが崩れ、体に熱が溜まってしまうケースがあるのです。
気温が高い、湿度が高い、風が弱いなどの状況です。季節の変わり目で、気温が急上昇するときや、気温が低くても湿度が高いときは熱中症のリスクは高まります。
炎天下で運動や活動を行い、体からうまく熱が逃げない場合です。年齢や病気の有無、体調の悪さも関係します。
激しい筋肉運動、慣れない運動や長時間の屋外作業、水分補給できない状況では発症しやすくなります。
熱中症は真夏以外にも、起こりやすい環境や時期があります。
まずは熱中症になりやすい環境について、具体的な環境を解説します。当てはまる状況で過ごす場合は注意が必要です。
真夏日(最高気温が30℃以上)になると発症し始め、猛暑日(最高気温35℃以上)で急増します。
気温が低くても湿度が高いと熱中症のリスクがあります。汗をかいてもうまく蒸発させられないためです。気温が25℃以下でも湿度が80%以上あるときは注意が必要です。
風が弱いときは、汗が蒸発しにくくなります。風の影響をうけないため、体温は下がりにくくなり、熱がこもったままとなってしまうのです。
晴れた日は直射日光と地面からの照り返しにより、熱中症のリスクは高まります。地面に近い子どもやペットは注意が必要です。
近年熱中症を発症する時期は早まっています。5月くらいから発症者がみられ、最高気温が高くなる日に発症者数は増加します。
7月~8月の日中発症者数は増加します。総務省消防庁資料によりますと、令和4年の熱中症による救急搬送数は5月で2,668人、6月が15,969人でしたが、7月は27,209人、8月は20,252人となっています。
参考:総務省消防庁 報道資料 令和4年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況梅雨の晴れ間や梅雨明けの急に暑くなったときは要注意です。 体が暑さに慣れておらず、うまく汗をかけないため、体内に熱がこもり発症しやすくなります。 暑い日が続くと、体は熱さに慣れていきます。「暑熱馴化」(しょねつじゅんか)と呼ばれる状態です。
令和4年5月~9月の「熱中症による救急搬送状況」によると、発生場所は「住居」の割合が最も高く39,5%、次いで道路、公衆(屋外)となっています。
年齢区分では「65歳以上の高齢者」の割合が最も高く54,5%、次いで成人、少年、乳幼児の順です。
「家庭や施設内」「高齢者」の熱中症対策は、課題と言えるでしょう。
熱中症は体の状態や年齢により、なりやすい人がいます。どのような人が熱中症にとくに注意すべきでしょうか。
熱中症になりやすい人はいくつかの要因を抱えており、以下に挙げる条件の方はかかりやすい傾向です。とくに子どもや高齢者は注意しましょう。
子どもや高齢者は、熱中症を起こしやすく、熱中症で救急搬送される人の半数以上は65歳以上の高齢者です。
子どもは大人より新陳代謝が活発で、体温は高めです。しかし、汗腺の発達が未熟で体温をうまく調節できず、熱がこもりやすくなります。 とくに乳幼児は自分で対策がとれません。大人がしっかり見守り、気を配るようにしましょう。くれぐれも、車内に子どもだけを残して離れないようにしてください。
顔色や汗のかき方を確認するようにしましょう。顔が赤い、ひどく汗をかいている場合は、涼しい場所で十分休ませたり、水分を飲ませたりして様子をみましょう。
通気性がよい涼しい服を着せ、暑いときには脱ぎ着するよう教えましょう。
屋外でもこまめに水分を取るように教え、飲み物を持ち歩かせましょう。
子どもは身長が低いため、地面からの照り返しの影響を受けやすくなります。 ベビーカーは地面からの位置が低く、内部の温度が高くなりやすいのです。大人以上に暑さの影響があると意識しましょう。 保冷剤や冷感グッズを使用し、対策を取りましょう。
日頃から外で遊ぶ、適度な運動をするなどが大切です。エアコンの効いた部屋で汗をかかずに過ごしていると、暑さに弱くなってしまいます。暑さに負けない体をつくりましょう。
高齢者は、体内の水分量や体温の調整機能が低下しているため、体に熱がこもりやすくなります。暑さやのどの渇きを感じにくく、水分摂取の対策が遅くなってしまう場合もあり、注意が必要です。
室内や夜間でも発生するため、家族や周囲の人の見守りや、声がけが大切です。
室内で汗をかいていなくても、こまめに補給しましょう。高齢者はトイレが近くならないよう水分摂取を控える傾向がありますので、健康維持には大切であることを声がけしましょう。
暑さを感じにくいため、季節にあわない服装でいる人もいます。気温にあわせた服装をするよう声をかけましょう。 エアコンの使用により外気温と室温に差があるときもあるため、半袖と長そでのカーディガンなどをうまく併用しましょう。
高齢者はエアコンを好まない人もいます。また、エアコンの使用を我慢する場合もあるので、適切に使用するよう配慮しましょう。
年齢以外にも熱中症のリスクが高い環境にある人は要注意です。環境や状況に応じた熱中症対策を取り入れましょう。
スポーツをすると筋肉で大量の熱が発生するため、熱中症のリスクは高まります。激しい運動では短時間でも、気温が高くなくても発生してしまいます。次の対策をとるようにしましょう。
35℃以上のときは、原則運動は中止です。朝や夕方でも熱中症は発生します。
寝不足や風邪で体調が悪いときは無理をしないようにしましょう。体力のない人、肥満の人、暑さに慣れていない人も要注意です。
のどの渇きを感じる前から、こまめに水分補給をしましょう。0.1~0.2%の塩分を含んだ水(水1Lに1~2gの食塩)が効率的です。スポーツドリンクなら100mlあたり40~80mgのナトリウム量が適切です。
涼しい場所で30分に一度は休憩するようにしましょう。水分補給も一緒にするといいですね。
通気性の良い素材で、薄い衣類を着用しましょう。屋外では帽子をかぶると効果的です。
日陰のない屋外や炉などの高温物体がある場合、長時間の作業や休憩がとりにくい環境にある人です。 管理者による職場環境の整備が重要です。同時に、働く人も正しい知識を身につけなければなりません。以下の点を意識しましょう。
風邪をひいたり、前日にお酒を飲み過ぎたりしているときは熱中症が発生しやすくなります。日頃から体調管理に注意しましょう。
朝食はエネルギー源になるだけでなく、水分や電解質の補給のためにも欠かせません。しっかり食べてから作業をしましょう。
のどが渇いてなくても定期的に水分・塩分をとりましょう。
高温多湿になる場所で、連続した作業は行わないようにします。休憩は涼しい場所で。保冷剤や冷たいおしぼりで冷やすようにしましょう。
参照:熱中症環境保健マニュアル 2022日常生活で熱中症につながる要因はさまざまです。とくに、かかりやすい年齢層・環境や体調・行動を知り、リスクを回避するための予防対策が重要です。
また子どもや高齢者は、自分で対策をとることが難しい場合も多く、リスクが高まります。水分摂取や涼しい服装、室温設定など、周囲の人たちの配慮も欠かせません。
誰にも起こりうるのが熱中症です。それぞれにあった対策で熱中症を予防したいですね。
各ブランドの商品一覧をご確認いただけます。