監修医師成田 亜希子
2011年医師免許取得。初期臨床研修を経て総合診療医として幅広い分野の治療に携わる。
臨床医として勤務しながら、行政機関での勤務経験もあり地域の健康課題にアプローチした健康寿命延伸、感染症対策などの医療行政にも携わってきた。
国立保健医療科学院、結核研究所での研鑽も積む。
現在、医療法人ウェルパートナー主任医師。
冷房の設定温度を何度にするか、室温が何度になったら使用するか、悩む場合はありませんか?近年温暖化が進み、エアコンを効果的に使用する必要性は高まっています。冷房を使用する際は、一般に室温28℃を目指すのが推奨されています。
省エネや健康に配慮するうえで「28℃が推奨されている」理由を解説し、効果的にエアコンを使用する工夫や、使用する環境上の注意点について紹介します。ぜひ、日々の生活に役立ててみてください。
「冷房をもっと効かせたいけど電気代が気になる…」「冷やしすぎは体に悪そう」と考え、冷房をいつつけるか、設定温度をどうするか悩む方も多いのでは?
環境省によれば、クールビズの実現として推奨される室温の目安は28℃です。
『クールビズ』とは、地球温暖化対策の一貫として政府が提唱するライフスタイル。過度な冷房に頼らず、さまざまな工夫をして夏を快適に過ごせるよう目指しています。
具体的には、室温の適正化・軽装・西側の日よけのブラインドの使用・熱エネルギーを遮蔽しやすい緑のカーテンの使用などが推奨されているのです。
クールビズのため室温28℃を目指すのには以下で記述するいくつかの合理的な理由があるため、積極的に実現していきましょう。
暑い日には部屋をガンガン冷やしたくなる気持ちも分かりますが、部屋の温度を1℃下げるには相当の電力が必要。冷房の設定温度を1℃上げると、なんと10%以上の節電になると言われているのです。
人間にとって快適な温度は17℃から28℃くらいと言われていますから、上限の28℃で暮らすのを目標にして、節電を目指しています。
電気代を節約=省エネによって資源を大切に使い、温室効果ガスの発生をなるべく減らしていきましょう。
「室内と外気との温度差が大きいと、健康に悪影響を及ぼす恐れがある」と多くの専門家は指摘します。外出した際に温度差が5℃以上ある状態が続くと体温の調節機能が疲弊してしまうためです。室温を下げすぎず、外気との温度差をできるだけ少なくするのは、健康を維持するためにも必要なのです。
『クールビズ』は快適に健康に夏を過ごすためのスタイルなので、熱中症予防のためにはエアコンの使用を推奨する側面もあります。
国内の熱中症死亡者数は増加傾向が続いており、「暑い日には積極的に冷房を使用するべき」と推奨しているのです。
室温が28℃を超えそうな場合には、迷わず冷房を使用しましょう。
室温28℃を目指すのが合理的だとして、冷房運転の設定温度は28℃がよいのでしょうか。まずは28℃設定で使用しつつ、状況や体質に合わせ各自で温度設定を判断しましょう。
電気代節約の観点からなら、冷房は27℃~28℃の自動運転で使用するのがお得でしょう。
28℃基準は環境省が推奨する夏の室温として広まっており、各エアコンメーカーのパンフレットを見ると、一年間の電気代計算として27℃~28℃の自動運転時を目安として、いかに省エネできるかについての記載がある場合が多いです。
しかし、部屋の形や大きさなど環境によっては、室温が冷房の設定温度どおりにならない場合があります。暑がりな方や体温調節が苦手な方は、室温28℃だと暑くて過ごしにくく感じるケースも。
真夏は気温35℃を超えるとても暑い「猛暑日」もよくあり、28℃設定の冷房運転ではすぐに部屋が冷えきらないケースも想定されます。
環境や体質によっては、冷房の設定温度を適宜28℃以下に設定する判断が必要です。しかし部屋の冷えすぎを避けるために、こまめに室内温度を確認して、心地よい温度を感じたら25~28℃設定に戻しましょう。
続いて、より効果的にエアコンを使用する方法を紹介します。
まずは、除湿運転を効果的に利用してみましょう。「暑い・涼しい」と感じる要因には湿度が大きく関係しており、湿度が変化すると体感温度は大きく変わります。
同じ気温28℃でも、湿度80%ではジメジメ暑く感じ、湿度50%に下げるとカラっと涼しく感じるのです。除湿運転には、いくつかのメリットがあります。
冷房運転で部屋の温度を目標値まで下げると、十分に除湿されていなくても温度維持運転のままで、湿度はあまり下がりません。湿度が高い日は湿度が下がらずより暑く感じ、設定温度をより下げてしまい、室温が下がり過ぎて体調を崩す場合もあるのです。
湿度が高い雨の日などは、除湿運転との併用がより効率的で体にもやさしいでしょう。
エアコンの除湿運転は、部屋に戻す空気の温度の違いにより「弱冷房除湿」と「再熱除湿」とに分かれます。
最近の高機能エアコンは、取り込んだ空気の温度を下げて湿気を取った後、温める「再熱除湿機能」が搭載されている機種があり、除湿の際に室温が下がり冷えるのを嫌う方に人気です。
昔からある一般的な除湿機能は「弱冷房除湿」です。取り込んだ空気の温度を下げて水分を集めて排出し、温度を下げた空気をそのまま部屋に戻すので、弱い冷房運転と似ている機能です。また「弱冷房除湿」は、消費電力が冷房運転より低くなるのです。
湿度が低ければ室温も気になりにくいため、エアコンの運転時間の短縮も期待できます。
除湿(弱冷房除湿)運転は、真夏の昼にはパワー不足かもしれませんが、ジメジメした梅雨の時期、夏の雨の日、少し蒸し暑く感じる夜には適しています。
節電・健康のためにぜひ利用してみましょう。
エアコンを効果的に使う工夫や、生活シーンにあわせた注意点について要点を紹介します。確認し、今後の生活に役立てていきましょう。
部屋の空気が動かないと、冷たい空気は下にたまり、暖かい空気は上にたまってしまいます。そこでサーキュレーターや扇風機で空気を循環させると、部屋の温度のムラが減り、部屋全体の温度を下げやすくなるのです。さらに風があたると涼しく感じるので、冷房の設定温度を下げずに済む効果が期待できます。サーキュレーターや扇風機の使用電力はかなり低いため、電気代の節約にもなるでしょう。
なお、サーキュレーターと扇風機の主な違いは、風の性質です。大きな部屋で空気を循環させるなら、力強い直線的な風を送って空気を循環させる目的のサーキュレーターが効果的です。
扇風機は広範囲に柔らかい風を送って涼をとる目的の家電ですが、一般家庭の普通の広さの部屋なら、扇風機でも十分空気の循環の役に立つでしょう。
エアコンのフィルターがほこりで詰まっていると、運転効率が下がり電力を余計に消費してしまうので、できるだけこまめに掃除しましょう。
室外機も、可能ならブラシなどを使って清掃しましょう。もし室外機が日光のあたる場所にある場合は日よけカバーをつけ、室外機の近くに物を置かず、空気の排出の邪魔をしないよう気をつけるのも効果的です。
エアコンは、室温を下げる際に一番電気量を使います。しかし室温を維持するにはあまり電気量を消費しません。一時間程度の外出なら、エアコンはつけっぱなしの方が節電になります。
また、強風や弱風といった風量を自分で変更するよりも、自動運転で機械に任せた方が電気代がかからない場合が多いため、なるべく自動運転で使用しましょう。
電車などの公共交通機関や、オフィスなど大人数で利用する場所は、自由にエアコン設定を変更できません。
体感温度は各自異なるため、冷房に弱い方は冷えで体調を崩してしまう場合も。
「冷房の風が直接あたる場所に居るのを避ける」「上着を用意しておく」「ホットドリンクを利用する」など、冷えへの対策を考えておきましょう。
就寝時エアコンを一晩中つけておくと寒く感じ、消すと暑く感じ、寝付けなかったり睡眠途中で目が覚めてしまう経験がある方も多いでしょう。
一般的には「室温28℃以下、湿度40~60%の環境」が快適な睡眠につながるとされています。
対策として、たとえば26℃に設定して少し部屋を冷やしておき、寝る間際に28℃設定でつけっぱなしにするなど、設定温度を少し下げて部屋を冷やした後、設定温度を上げて一晩中つけておく方法を試してみましょう。
ためのエアコンの使用は必要不可欠です。省エネや健康に気をつけながら、上手なエアコンを使用する工夫が、重要性を増しています。
放置しがちなフィルターの掃除や室外機の状況確認は、思いついた際にやるのが大切。
ぜひ、この機会にフィルターを掃除し、除湿運転を利用したり冷房の設定温度を見直してみて、エアコンを効果的に、健康的に使用していきましょう。
気温が上がる夏は特に熱中症のリスクが高くなる時期です。適切な室温をキープしていないと室内で熱中症を発症し、命を落とすケースもあります。
室温は28度前後をキープするのがよいとされており、暑い夏はエアコンを使用して快適な室温をキープするのが推奨されています。
しかし、室温を下げすぎると外気温との温度差が大きくなるため、体温調節を司る自律神経バランスの乱れを引き起こすことも。
室温と外気温の差は5度前後にとどめるのがポイントです。
ただし、猛暑日などは室温と外気温の差が5度以上になってしまケースも多いはず。そのような日は、暑い日中はできるだけ外出を控える、体感気温が下がる日傘を使用するなど、温度差を避けるようにする工夫も大切です。
ご自身のライフスタイルに併せて健康的で快適な夏を過ごしましょう。
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