生薬が使われている漢方薬や栄養ドリンクは数多くありますが、そもそも、生薬とはいったいどういう品なのでしょうか?身体によさそうな印象がありますが、どのように身体に作用するのでしょうか? 生薬は中国と日本で長い歴史を持ち、医薬品として品質管理がされています。また、生薬は効能によって、五味五性および帰経という分類で事細かに分けられています。 生薬について、読み方や定義、民間薬との違い、効能の分類について紹介します。
目次
- 01生薬の読み方と定義
- 02生薬と薬用植物、民間薬との違い
- 03生薬と漢方薬の違い
- 04生薬の分類
- 05生薬の定義を知り健康に役立てよう
生薬の読み方と定義
生薬の読み方には、2種類あります。
生薬の読み方
生薬の読み方は、もともとは「きぐすり」でした。しかし、江戸時代にオランダから蘭方(西洋医学)が入ってきた時、ずっと日本にあった医学(漢方)の薬を新たに名付ける必要が生じ、「しょうやく」と呼ばれるようになりました。
漢方のもとになった中医学(中国の伝統医学)では、生薬は中薬(ちゅうやく)と呼ばれます。
生薬の定義
広辞苑で「生薬」を引いてみると、「薬草をまだ刻まず、調剤していない漢方薬。しょうやく」とあります。生薬は薬用植物以外を含むため、正確な定義ではないのですが、生薬は薬効のある天然物を干したり蒸したり、簡単な加工・調整をして薬用に保存している物品と考えていいでしょう。
生薬と薬用植物、民間薬との違い
生薬・薬用植物・民間薬は、重なる部分はありますが、異なる概念です。民間薬から紹介します。
民間薬の特徴
民間薬は、薬用植物が多いです。特に複数を組み合わせなくても、単体で使えます。民間薬なので、専門家でない民間人が使え、副作用が少ないものとなっています。
また、民間薬は一つの症状に付き一つを使うのが基本です。民間の薬なので、特に品質が審査されていなくても(適当な土地から適当に取ってきた植物でも)民間薬として扱われます。
生薬の特徴
生薬は薬用植物だけでなく、鉱物、菌類、動物由来の成分(牡蠣の殻やロバの皮のニカワなど)を含みます。厚生労働省監修の日本薬局方の定義では、「医薬品各条の生薬は、動植物の薬用とする部分、細胞内容物、分泌物、抽出物又は鉱物など」とされています。
生薬は、単体で使う場合はほとんどありません。症状や体質に合わせて、複数の生薬を組み合わせて使います。しかし生薬は使い方を誤ると副作用が強く出る場合もあります。
基本的に医薬品の扱いなので、医者や薬剤師が扱います。生薬は薬の材料として扱われるので、一定の品質を保っているか、有効成分を一定量含んでいるかが審査されています。品質規格書として、日本薬局方(公定書)に規定があります。
民間薬と生薬の呼び方の違い
民間薬は、元となる植物名や民間的な俗称で呼ばれる事が多いです。一般に、植物の和名で呼ばれます(例:ハトムギなど)。
生薬は漢字名(中国から入ってきたときの名前)で呼ぶ場合が多く、和名とは異なる名前が多いのです(例:同じハトムギでもヨクイニンと呼ぶ)。
また、同じ植物を使う場合でも、加工法や植物の用いる部分によって呼び名が異なる場合があります(例:ショウガを干した生薬はショウキョウ、ショウガを蒸してから干した生薬はカンキョウと呼ばれ、効能が異なる)。
漢方薬の呼び方
漢方薬は、生薬を組み合わせて作られた医薬品です。葛根湯(かっこんとう)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)など、漢方方剤名で呼ばれます。漢方方剤名は、古来からの名前や、中国から渡ってきた名前が多いでしょう。
漢方薬は漢方の理論に基づいて運用する必要があり、専門家が選定すべき薬です。
生薬と漢方薬の違い
生薬は漢方薬の材料であり、すぐ使えるけれど保存が効く状態に加工した単体の物品です。加工法は、蒸したり炒ったり、酒で蒸す、蜂蜜で炒めるなど、生薬によってさまざまです。蒸した後、乾燥させる加工法もあり、加工法によって効能が異なる生薬が複数あります。
漢方薬は生薬を組み合わせて作る薬です。症状や体質に合わせて生薬を組み合わせ、使い分けます。
漢方薬は生薬を組み合わせてから煎じて作る場合が多いです。煎じて飲む漢方薬は、名前の最後に「湯」がついています(葛根湯)。
現代に多い顆粒状の漢方薬は、煎じた液体の水分を飛ばして有効成分だけにした薬です。コーヒー豆を生薬の組み合わせとするなら、顆粒状の漢方薬はインスタントコーヒーの粉に相当します。
煎じる漢方薬以外にも、生薬の粉末を混ぜた漢方薬(名前に「散」がつく)や、生薬の粉をハチミツなどで練って玉にして飲む漢方薬(名前に「丸」がつく)、煎じてから冷まして飲む漢方薬(名前に「飲」)があります。ですが、どれも現代では煎じて、煎じた汁の水分を飛ばして、顆粒状の漢方薬にしてある場合が多いです。
生薬の分類
生薬は、主に五味五性と帰経で効能ごとに分類されます。五味五性と帰経について解説します。
五味
5つの味を表します。生薬を味で分けています。味覚でわかる味で分けているのではなく、生薬の大まかな効能を味の名前で分けている形です。
甘味
気力体力を補うので、滋養強壮に使われます。筋肉の痙攣を抑える場合があります。
辛味
体を温める場合が多く、体の巡りをよくする効能があります。
苦味
体を冷やし、解毒します。利尿を促す場合があります。
酸味
体を引き締め、汗や血が漏れ出るのを防ぎます。咳を鎮める場合があります。
鹹味(かんみ)
一般的には塩辛いの意味ですが、塩味に限らずミネラル分豊富な生薬が分類される場合が多いです。しこりを和らげ、便を柔らかくして排便を促します。
五性
体を冷やすか温めるかを、5種類に分けて表しています。
熱性
体を強力に温めます。血の巡りを促す生薬が多いですが、刺激が強すぎる場合があります。
温性
体を穏やかに温めます。熱性の生薬と比較して、刺激が少ない場合が多いです。熱性と同じように血の巡りを促します。
平性
体を温めも冷やしもしないので、大量にとっても体の熱が偏りません。
涼性
体を穏やかに冷やします。炎症を鎮める作用を持つ場合があります。
寒性
体を強力に冷やします。炎症を鎮める作用を持つ場合がありますが、冷え性の人には不向きです。
帰経
帰経とは、生薬が五臓のどれに働くかを示す分類です。五臓は、肝臓や脾臓などの内臓を指すのではなく、体の機能を大まかに分類した分類法です。
内臓と使っている漢字が一致するのは、中医学や漢方で体の機能の分類に使われていた漢字を、後に発展した外科でわかった内臓に大まかに当てはめたためではないかと言われています。
肝(かん)
血を貯蔵し、気(体を温め動かすエネルギー)の巡りを司ります。気は、十分に存在していても、巡らないとイライラ・落ち込み・ゲップ・お腹のハリが出るとされます。また、肝臓が蓄えている血が足りないと髪や肌のパサつき、めまい、ふらつき、しびれが出るとされます。
脾(ひ)
消化吸収を司ります。不調だと食欲不振や内臓下垂、むくみが出るとされます。
心(しん)
血の巡りと精神を司ります。不調だと動悸、不眠、健忘が出るとされます。
腎(じん)
精気を蓄え、成長や生殖を司ります。不調だと発育不全、不妊、老化が起こるとされます。
肺(はい)
呼吸と気の生成、水分代謝を司ります。不調だとせきや息切れ、むくみが出るとされます。
生薬は、民間薬や薬用植物とはまた異なる概念であり、品質管理がされている物品です。漢方理論によって、複数の生薬を組み合わせた薬が漢方薬として使われます。また、生薬はひとつひとつが漢方理論によって効能ごとに分けられています。
非常に細かい効能なので、生薬を用いたい時や生薬を含む飲食物をとりたい時は、専門家が扱う製品を選んだり、医薬品を作る会社が関わった製品を選んだりするのがおすすめです。
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