監修医師木村眞樹子
東京女子医科大学医学部卒業後、東京女子医科大学病院循環器内科入局。
現在も東京女子医科大学病院、および関連病院で内科、循環器科、睡眠科として診療にあたるほか、嘱託産業医として企業の健康経営にも携わっている。
オメガ3脂肪酸は、体内で合成できない「必須脂肪酸」です。動物性脂肪酸のEPAとDHA、植物性脂肪酸のALAに代表される成分で、細胞膜を柔らかく結びつける効果が確認されています。
オメガ3脂肪酸の1日摂取量を食品や油だけで摂取するのは難しく、サプリメントを活用すると効果的です。オメガ3脂肪酸の性質と摂取量を正しく理解して、毎日の生活にオメガ3脂肪酸を取り入れましょう。
脂質と聞くと「太りやすいのでは」「ダイエットのために控えたほうが良いのでは」とのイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。脂質は人間にとって重要なエネルギー源ですが、他にも「細胞膜の主成分」「ホルモンやビタミンDの前駆体」に代表される、体内で多くの役割を担う栄養素でもあります。
炭水化物・たんぱく質と並んで三大栄養素としての役割をもち、人間の体にとって重要な栄養素となっていますので、厚生労働省では「食事から摂取する脂質は多すぎても少なすぎても健康に悪影響を及ぼす」としています。
人間にとって大切な栄養素の脂質を構成する主な物質が、脂肪酸になります。脂肪酸は体内でグリセリンと結合して、脂肪に変わる栄養素です。
脂肪酸は分子の構造の違いによって、「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分類できます。「飽和脂肪酸」は常温で固まりやすい性質で、一方の「不飽和脂肪酸」は常温で固まりにくい性質です。不飽和脂肪酸の中でも、n-3系脂肪酸とn-6系脂肪酸の2種類は「多価不飽和脂肪酸」と呼ばれています。
不飽和脂肪酸の一種「多価不飽和脂肪酸」は、n-3系脂肪酸とn-6系脂肪酸です。血圧を下げる働きとLDLコレステロールの低下を防ぐ役割が期待される成分で、「必須脂肪酸」の名称で広く知られています。
とくに厚生労働省では必須脂肪酸を食事から摂取するよう推奨しており、目標となる摂取量の目安も指導しています。
引用:脂質による健康影響/厚生労働省
参照:脂質と脂肪酸のはなし/消費者庁食品表示課
体内で合成できない必須脂肪酸は、どんな性質をもつのでしょうか。必須脂肪酸に含まれる2種類の代表的な脂肪酸を詳しく学んでみましょう。
オメガ6脂肪酸は、リノール酸をはじめとする脂肪酸から構成されています。大豆やコーン油をはじめとする食品に豊富に含まれていると分かっており、日本人が摂取するオメガ6脂肪酸の98%は、植物油に由来すると分かっています。
リノール酸は体内でARA(アラキドン酸)と呼ばれる代謝物に変化する脂肪酸です。特に細胞分裂が急速にすすむ胎児や乳幼児期にも必要な栄養素として、粉ミルクへのARAの配合や、妊娠中の積極的な摂取が推奨されています。
オメガ3脂肪酸は、EPA(エイコサペンタエン酸)・DHA(ドコサヘキサエン酸)ALA(αリノレン酸)をはじめとする脂肪酸です。オメガ3脂肪酸のうち、EPAとDHAは魚介類に豊富に含まれています。
一方のALAは亜麻仁油・大豆油・キャノーラ油に代表される植物油、またはチアシード・黒クルミをはじめとする植物由来食品に多く含まれる脂肪酸です。
オメガ3脂肪酸は分子構造が独特で、曲がりくねった形をしています。
曲線的な形状が細胞膜同士を柔らかく結合するので、他の脂肪酸と比較して細胞膜を柔軟に変形させる点が特徴的です。
EPAとDHAはオメガ3脂肪酸の中でも魚や甲殻類に代表される海産物に多く含まれる、動物由来の脂肪酸です。
海産物の中でも青魚に多く含まれていますが、酸化しやすい性質をもっており、火を通すと含有量が減少してしまいます。
具体的にくろまぐろで比較してみると、刺身の状態に対してグリル調理を行うと約20%、フライ調理を行うと約50%ものEPAとDHAが減少します。
EPAやDHAを多く摂取したい場合は新鮮な生食がおすすめです。
ALAは他のオメガ3脂肪酸とは異なり、植物由来の油や種子に多く含まれる植物由来の脂肪酸です。
亜麻仁やえごま以外では、くるみやチアシード、大豆をはじめとする植物の種部分に多くのALAが含まれています。
種子から成分を抽出した油の状態、また種子そのものの状態のどちらでも豊富にALAが含まれていますので、食事の内容に合わせて様々な形状で摂取可能です。
EPA・DHA・ALAを含むオメガ3脂肪酸が豊富に含まれている食品は、ランキングにするとどうなるのでしょうか。
文部科学省の食品成分データベースを基に、詳しく確認してみましょう。特に植物性の食品は、豊富にオメガ3脂肪酸を含有していると分かります。
【オメガ3脂肪酸を豊富に含む食品例】
現在オメガ3脂肪酸のもつ力に対して、多くの研究が進められています。実際にEPA・DHAを継続的に摂取した臨床研究では、血中中性脂肪値の減少が確認されており、毎日のオメガ脂肪酸摂取が健康的な暮らしをサポートしてくれると期待が寄せられています。
参照:オメガ3系脂肪酸/厚生労働省
健康的な毎日に必要なオメガ3脂肪酸は、食品やサプリメントから意識的に摂取する必要があります。オメガ3脂肪酸の推奨摂取量と、摂取のタイミングについて確認していきましょう。
農林水産省では、オメガ3脂肪酸(n-3系脂肪酸)の摂取目安を以下の通りとしています。
オメガ3脂肪酸を2.0g摂取する場合、実際の食品で考えるとどれくらいの量を摂取すると良いのでしょうか。
くろまぐろ100gには0.17gのオメガ3脂肪酸が含まれていますので、2.0gの摂取目標のためには1日あたりくろまぐろを1.17kg程度摂取すると、目安量を達成できます。
くろまぐろ1kg以上となると、刺身では約80枚以上の量となり、現実的には難しい数字ですので、サプリメントの併用がおすすめです。
ただ、1日の摂取量目安は守る必要があります。
オメガ3脂肪酸をいつ飲むべきかとの疑問に対しては、時間栄養学の観点から研究が進んでいます。基本的には食品なのでいつ食べてもいいのですが、現段階の研究においてはとくにEPAやDHAは朝に摂取すると体内に吸収される量が多いとの研究もあります。
朝食のメニューを考える際、意識的に青魚や亜麻仁油、えごま油を含むメニューを考えるとよいでしょう。
参照:Effect of Long-Term Marine q-3 Fatty Acids Supplementation on the Risk of Atrial Fibrillation in Randomized Controlled Trials of Cardiovascular Outcomes: A Systematic Review and Meta-Analysis/Baris Gencer, Luc Djousse, Omar T. Al-Ramady, Nancy R. Cook, JoAnn E. Manson and Christine M. Albert
オメガ3脂肪酸は、毎日の食生活では不足しがちな栄養素です。
植物性脂肪酸のALA、動物性脂肪酸のEPA・DHAに代表される成分です。必須脂肪酸として毎日の摂取量の目安が定められています。
オメガ3脂肪酸の1日の摂取量を達成するためには、亜麻仁油に代表される食品を意識的に摂取した上で、必要に応じてサプリメントを併用するとよいでしょう。
特にEPAやDHAは、朝の摂取が効果的です。
毎日の健康的な生活の中に、オメガ3脂肪酸を積極的に取り入れていきましょう。
「油」というと身体に悪いイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、不飽和脂肪酸に含まれるオメガ3脂肪酸は、動脈硬化によい作用をする油です。
亜麻仁油や魚など日頃の食事の中で積極的にとることをおすすめします。また、基礎疾患がある方はEPA、DHAを定期薬として服薬することが適応となることもあるので、かかりつけ医でご相談ください。
※オメガ3に関して正しい情報発信を行うために、専門家に監修を依頼しております。アマニ油やEPA/DHAの商品(サービス)について専門家が推薦を行うものではありません。
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