監修医師成田 亜希子
2011年医師免許取得。初期臨床研修を経て総合診療医として幅広い分野の治療に携わる。
臨床医として勤務しながら、行政機関での勤務経験もあり地域の健康課題にアプローチした健康寿命延伸、感染症対策などの医療行政にも携わってきた。
国立保健医療科学院、結核研究所での研鑽も積む。
現在、医療法人ウェルパートナー主任医師。
糖尿病の人だけでなく、「血糖値」を気にする人が増えています。最近では「糖類ゼロ」などの商品もよく見かけるようになりました。今回は、栄養ドリンクと血糖値の関係や、糖尿病の人は栄養ドリンクを飲んでも良いかどうかを解説します。血糖値が気になる人の飲み方や「糖類」をはじめとした炭水化物の分類についても紹介しているので、栄養ドリンク選びの参考にしてみてください。
栄養ドリンクには血糖値を上げやすい商品もあれば、血糖値にあまり影響を与えない商品もあります。
血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖の濃度のことです。飲食物中の炭水化物が消化吸収され、ブドウ糖となり血液に入ります。つまり、栄養ドリンクに含まれる炭水化物は血糖値に影響を与えるのです。
健康を取り上げるメディアなどでは『血糖値を下げること』を重視するものが多いため、“血糖値が上がるのは悪いこと”というイメージをお持ちの方もいるかもしれません。しかし、ブドウ糖は私たちが生きていくのに必要なエネルギー源です。特に、脳は最も多くのエネルギーを消費する臓器であり、「集中」や「疲労回復」に欠かせない栄養素なのです。
そのため、栄養ドリンクのなかには、白糖などの糖分(炭水化物)が配合されている場合が多くあります。
一方で、低炭水化物の商品も存在するので、商品パッケージの成分や添加物の欄で確認してみるとよいでしょう。
糖尿病の人は、基本的に糖分の入った栄養ドリンクは安易に多様しないことが望ましいです。
血糖値コントロールの状況などはは一人一人異なるため、担当のお医者さんに相談しましょう。
カロリー制限がある場合も同様です。食事量にプラスして栄養ドリンクのカロリー数を考慮する必要があり、摂取する時は、医療機関の「担当医師」、「栄養管理相談室」などに相談することをおすすめします。
血糖値が気になる人が栄養ドリンクを飲む際に抑えておくべきポイントについて解説します。
「糖類ゼロ」の栄養ドリンクは糖質が極めて少量に抑えられているので、栄養ドリンクの糖質が気になる人に向いています。
しかし、注意点もあるので詳しく見ていきましょう。
実は、「糖類ゼロ」と記載があっても、微量の糖類が入っている場合があります。
食品表示法という法律によって、“食品100g(飲料100ml)あたりに含まれる糖類が0.5g未満の場合に「糖類ゼロ」と表示しても良い”という決まりがあるのです。
そもそも「糖類」とは、糖質のなかの単糖類(ブドウ糖など)と二糖類(砂糖など)の総称を指します。そのため、「糖類ゼロ」と記載されていても下記の図にあるような糖類以外の糖質を含んでいる可能性もあるのです。
参考:国立研究開発法人医療基盤・健康・栄養研究所「炭水化物と糖類について」
糖類の摂取量については、日本では目標量が設定されていません。これは、日本人における糖類摂取と健康への影響についてわかっていないことが多いからです。
世界保健機構(WHO)による2015年のガイドラインでは、“肥満予防”などを目的に、※遊離糖類の摂取量を総エネルギー摂取量の10%未満に抑えることを推奨しています。
さらに、※遊離糖類の摂取量を総エネルギー摂取量の5%未満に抑えることはより健康的であるとしています。これは、成人だと砂糖小さじ6杯ほど(約25g)/日に相当します。
(※遊離糖類とは、食品や飲料の加工調理で加えられる単糖類と二糖類・果汁や濃縮果汁・はちみつ・シロップなどに自然に存在する糖類のこと。なお、生鮮フルーツや野菜・乳のなかに存在する糖は対象外)
つまり、普段砂糖をよく使う人や甘い加工食品・甘い飲み物をよく口にする人は、糖類ゼロの栄養ドリンクなど糖類を抑えた商品を選ぶのがよいでしょう。
栄養ドリンクを毎日飲んでも良いかどうかは、その人の体調や体質によってさまざまです。
栄養ドリンクの健康効果を感じている場合は、症状や体調に合わせて栄養ドリンクを飲むことができます。
万が一、栄養ドリンクを飲んだあとに動悸や不眠体の不調が現れた場合や、しばらく栄養ドリンクを飲んでみたけれど症状が良くならない場合は、飲むのをやめてお医者さんや薬剤師さんなどに相談するとよいでしょう。
栄養ドリンクと血糖値についてお話してきましたが、 “血糖値が上がること”がすべて体に悪いわけではなく、基本的に糖分は私たちが生きるためのエネルギー源として必要不可欠なものです。 そのため、糖分が入った栄養ドリンクを摂取することで「集中力アップ」「疲労回復」といった効果が期待できます。しかし、何事も過度になると体によくありません。 普段から、甘いジュースを飲む人や甘いお菓子を食べる人など糖分が多めの食生活を送っている人や、カロリーが気になる人は、「糖類ゼロ」などの栄養ドリンクを選ぶとよいでしょう。 また、糖尿病の人は安易に栄養ドリンクを多用せずに、お医者さんなどに相談することが必要です。
栄養ドリンクは集中力のアップや疲労回復などの効果が期待できるため、疲れが溜まっているときや仕事に集中したいときなどに便利です。
しかし、栄養ドリンクの多くはカフェインが含まれており、頻繁に飲むと動悸、吐き気、不眠などの症状を引き起こす場合があります。
飲み過ぎには注意が必要なのです。
また、栄養ドリンクには糖分が含まれているため、血糖値の情報を引き起こします。糖尿病の方や健康診断で「糖尿病予備軍」などと指摘された方が安易に多用するのはお勧めできません。
特に糖尿病治療中の方は担当医などに相談しましょう。
最近では糖質ゼロの栄養ドリンクも販売されていますが、含まれる人工甘味料で糖尿病の発症リスクが高まるとの報告もあります。
もちろん、糖分が多く含まれた栄養ドリンクよりも血糖値への影響は少ないですが、糖質ゼロの商品でもリスクはゼロではありません。
過度な摂取は控えましょう。
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