管理栄養士ライター高村恵美
12年間管理栄養士として病院などに勤務。家族にいつでも"おかえり"が言えるようライターへ転身後は、忙しいひと・働くひとに寄り添うレシピの提供や、健康コラムを数多く執筆。
自分も同じ立場だからこそ「仕事と家庭の両立に悩む女性を応援したい」気持ちが高まり、悩めるママに向けたコラム執筆も行っている。
「辛い更年期の症状を軽減するために、食べ物から見直したい」でも、何をどう改善すべきかがわからない方もいるでしょう。
本記事では、“女性の更年期”の症状や対処方法・更年期に避けるべき栄養素やおすすめの食べ物をご紹介します。また、管理栄養士による具体的なレシピの見直し方も解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
女性の更年期は、生理がなくなる前後各5年ほど、合計10年間をいいます。閉経年齢に個人差はありますが、平均的には50歳頃が多いです。閉経が50歳の場合の更年期は、45歳~55歳となります。更年期に現れるカラダの変化や症状は以下のとおりです。
更年期になると、卵巣の機能がガクンと衰え、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減ります。すると、脳が“エストロゲン不足”を察知して、「もっと分泌量を増やせ」と卵巣に司令を出すのです。
卵巣は、司令に応えるために頑張ります。結果、エストロゲンの分泌量は、過剰になったり分泌できなかったりして、大きくゆらぎながら減少していくのです。
更年期特有の女性ホルモンの“ゆらぎ”は、カラダの調節機能を司る「自律神経」を乱して、あらゆる不調を招きます。
更年期は、すべての女性でエストロゲンの分泌量は減少しますが、全員に症状が現れるわけではありません。また、症状の重さは個人差があります。
代表的な更年期の症状を紹介しましょう。以下の更年期の症状により、日常生活に支障が出る場合を「更年期障害」といいます。
頭痛・関節痛・肩こり
イライラ・物忘れ・憂うつ・記憶力の低下・不眠
のぼせ・発汗・ほてり・手足の冷え・めまい・動悸・息切れ
だるい・疲れやすい
尿漏れ・頻尿・性交痛・外陰部の違和感
かゆみ・乾燥・湿疹
厚生労働省の調査によると、更年期症状を自覚しているのに受診していない人の割合は8割にものぼります。しかし、適切な治療で辛い更年期症状は、軽減できるのです。
保険診療の対象であり、公的補助を受けながら治療できます。「更年期障害かも?」と思ったら、まずは病院に相談してみましょう。
更年期については、“薬を使わない対処方法"と "薬による治療方法”があります。
薬の力に頼らずに対処するおもな方法は、以下のとおりです。
● 生活習慣の見直し(食事・睡眠・運動)
● サプリメント
●カウンセリング など
更年期の改善に効果的なおもな薬物療法は、以下のとおりです。
● 漢方療法
● ホルモン補充療法(HRT)
● 抗うつ薬
● 抗不安薬
● 催眠鎮静剤 など
“イライラしやすい”といったホルモンバランスの乱れを感じるプレ更年期から、積極的に摂りたい栄養素をご紹介します。
ビタミンB群は、「ビタミンB1」「ビタミンB2」「ビタミンB6」「ビタミンB12」「ナイアシン」「ビオチン」「パントテン酸」「葉酸」の8種類があります。
ビタミンB群は、互いに協力し合い、エネルギー代謝をアップさせる働きがあるのです。代謝が低下する更年期には、積極的に摂りましょう。
ビタミンB1は豚ヒレ肉・ごまに、ビタミンB2は焼きのり・レバー・うなぎに、ビタミンB6はニンニク・バナナチップス・マグロに豊富に含まれています。
ビタミンB群は、水に溶ける性質があるので、一度に多量を摂取しても尿に排出されてしまいます。効率よく摂取するには、こまめに補給するのがポイントです。ビタミンB群は協力して働くので、多種類の食べ物をバランス良く摂りましょう。
大豆イソフラボンは、女性ホルモンと似た働きがあるため、更年期の女性は積極的に摂りたい栄養素です。
大豆の水煮や厚揚げ・納豆・きなこ・豆腐・豆乳・おから・大豆ミートといった大豆製品に含まれています。
いつもの食材を、大豆製品に変えると、無理なく食卓に大豆製品を増やせます。下記を参考に食材を代替してみましょう。
例)
● 牛乳→豆乳
● お肉→豆腐・厚揚げ・大豆ミート
● 小麦粉→おから
エストロゲンが減少すると、骨粗鬆症のリスクが高まります。骨粗しょう症を予防するために、骨の主成分であるカルシウムを積極的に摂りましょう。
牛乳・チーズ・小魚・干しエビといった食品に含まれています。
いつものメニューに、カルシウム食品をチョイ足しして上手にカルシウム補給しましょう。
例)
● 味噌汁+牛乳(コクがでて、ミルキーなおいしさになります)
● お好み焼き+干しエビ
● 白いご飯+シラス干し
● トースト+チーズ
自律神経を整えるには、タンパク質が重要です。タンパク質は、セロトニン(別称:幸せホルモン)の材料になります。セロトニンの分泌は、自律神経のバランスを整えるうえで大切です。
また、タンパク質は筋肉の材料ですが、更年期になるとタンパク質から筋肉を合成する能力が衰えます。つまり、筋肉を維持するには、若いときよりも多めにタンパク質を摂取する必要があるのです。
筋肉は、加齢による代謝の低下を軽減する働きもあります。体内で使われている糖の7割は、筋肉で消費しており、代謝の維持には筋肉が重要なのです。
タンパク質は、朝・昼・夕で均等に摂りましょう。夕食は、肉や魚を食べるけれど、朝食は、“パンだけ”・“おにぎりだけ"という方もいるのではないでしょうか?
しかし、夜だけにタンパク質を多く食べても、一度にたくさん吸収できないため、無駄が多くなるのです。
また、筋肉合成の観点では、朝はとくにタンパク質を必要としています。効率よくタンパク質を吸収するために、朝のタンパク質摂取も意識しましょう。朝におすすめのレシピは以下のとおりです。
例)
● ご飯+シラス干し+チーズ(トーストもOK)
● ご飯+卵(卵かけご飯・卵焼き・茹で卵)
● ご飯+チーズ+おかか
● 豆乳(または牛乳)+きなこ+はちみつ
骨密度を増加させるには、カルシウムだけでなくビタミンKも必要です。ビタミンKは、骨にカルシウムを沈着させる働きがあります。
乾燥ワカメや納豆・ほうれん草・ブロッコリーといった食べ物に豊富です。
ビタミンKは、油と一緒に摂ると吸収率が良くなります。下記の組み合わせを参考にしてみてください。
例)
● ワカメご飯+ごま油
● 納豆+アマニ油
● ほうれん草のバターソテー
● ブロッコリー+マヨネーズ
ビタミンDは、骨量をキープするうえで重要です。カルシウムと一緒に摂ると吸収率がよくなります。
しかし、日本人はビタミンDが不足しがちです。 きくらげやシラス干し・ニシンといった食べ物に多く含まれているので、積極的に摂りましょう。
また、ビタミンDは日光を浴びると活性化します。帽子や日傘で紫外線対策した状態でもよいので、手や足に1日30分~1時間ほど日光を浴びると効果的です。
エノキタケ・ヒラタケ・生シイタケ・干しシイタケは、食べる前に日光に当てるとビタミンDをアップできます。
ビタミンEが不足すると、筋力や免疫力の低下・血流悪化による肩こり・冷え性・頭痛を招きます。不足しないように、しっかりと補給しましょう。
アーモンド・ピーナッツ・うなぎ・サクラエビ・ドライマンゴーといった食べ物に豊富です。
ビタミンEは、油と一緒に摂ると吸収率がよくなります。酸化しやすいので、新鮮なうちに食べるのがおすすめです。
更年期の症状を悪化させてしまう可能性があるので、以下の食べ物や飲み物は、できるだけ控えましょう。
加工食品は、ビタミンやミネラルといったカラダに必要な栄養素が少ないうえに、食品添加物が多く含まれています。食品添加物は、腸内環境を乱して自律神経のバランスも崩す原因になるので、控えましょう。
コンビニ弁当やカップ麺が多い方は、買い物の際に以下の食材を購入して、カンタンご飯にチャレンジしてみましょう。
例)
● 納豆・卵・シラス干し・チーズ(ご飯やパンにのせるだけで、タンパク質が補給できます)
● カット済みの肉や野菜・もやし(レンジで加熱して、塩コショウするだけでOK)
● ミニトマト・枝豆(調理いらずでそのまま食べられる)
菓子パンや甘いデザートは、血糖値を急上昇させます。すると、血糖値を下げるためにインスリンが大量に分泌され、血糖値の急降下を招く場合があるのです。血糖値の乱高下は、自律神経の乱れにつながります。
さらに、インスリンには体内で使わなかったブドウ糖を中性脂肪として蓄える働きがあるため、肥満防止の観点からも甘いデザートは控えたほうがよいでしょう。
菓子パンや甘いデザートの代わりに、以下の食べ物を買いましょう。
例)
● サンドイッチ(野菜やタンパク質も補給できる)
● カットフルーツ・ドライフルーツ(食物繊維やミネラル補給におすすめ)
● ヨーグルト(乳酸菌が補給できる)
更年期では、お酒の許容度が低下します。しかし、更年期症状のうつ状態や・疲れをお酒で癒そうと飲酒量が増えるケースもあるのです。
過度な飲酒は、肥満や骨粗しょう症の原因になります。アルコール依存症のリスクも出てくるため、飲酒は控えましょう。
水分補給は、お茶や水が理想的ではありますが、以下の飲み物をとり入れてみるのもおすすめです。
● ノンアルコールドリンク
● 炭酸水(お水では、物足りないときに、程よいのど越しが楽しめる)
カフェインが持つ覚醒作用により、睡眠を妨げるリスクがあります。更年期の自律神経の乱れを助長する可能性があるので、カフェインを含む食品は控えましょう。
コーヒーやエナジードリンク・チョコレートといった食品に含まれています。
最近は、ノンカフェイン商品のラインナップが多いので、試してみましょう。
例)
● ノンカフェインコーヒー
● ノンカフェインの栄養剤
● カフェインレスチョコレート など
更年期は、卵巣機能の衰えにより、ホルモンバランスが崩れやすくなります。不規則な食生活は、自律神経とホルモンバランスの崩れを助長させるため厳禁です。健康を維持するには、更年期はより一層、食生活に気をつかう必要があります。
今回ご紹介したように、「1日3食」「栄養バランスよく」「おすすめ栄養素を積極的に摂る」「避けるべき食品は控える」といった点に気を付けて、食事を見直してみてください。
症状が辛い場合には、病院に相談してみましょう。適切な治療により、日常生活がラクになるはずです。また、病院で処方される内服薬と同じ成分が配合されている市販薬もあるので、状況に合わせて使用してみてはいかがでしょうか。
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