教養系ライター江上奏
司法書士として手続代理業を続ける中、難解で細かい書類を依頼者に分かりやすく説明する努力を重ねた経験を活かしつつ、解説記事や健康コラムを執筆。
世の中の便利な知識や世の中の仕組みについて、ひとつでもイメージしやすい形で読者に届け、知識を役立ててほしい思いでライター業を続けている。
男性の更年期障害に関する認知度は現状、かなり低いのですが、認識しておくのは重要です。男性には女性の閉経にあたる「加齢にともなうホルモン低下」をわかりやすく自覚する機会がありません。そこで、ホルモン低下により起こる症状を知っておき、病気を疑う意識が女性より重要なのです。
男性ホルモンの低下による心や体の不調が起きた場合、治療で回復する可能性が十分にあります。更年期による症状が疑われたら、ぜひ病院を受診してチェックしてみましょう。
昔から女性の更年期障害ばかりが話題にあがるため、更年期障害は女性にしか起こらないと思いこんでいる男性も多いでしょう。
しかし、更年期障害は男女共に起こりうる、決して特別ではない、身近な障害と言えるのです。まずは更年期障害について、簡単に解説します。
「更年期」とは生殖能力を失っていく移行期です。生殖能力が発達していく「思春期」と対をなす時期と考えると分かりやすいでしょう。
「更年期障害」は、更年期に性ホルモンの分泌が減少する結果、心や体にさまざまな不調が現れ、日常生活に支障をきたす場合に診断される可能性のある病気です。
男性も女性も、加齢と共に生殖能力を失っていくのは自然の摂理ですから、更年期障害は男女共に起こりえるのです。
性に関するホルモン分泌の低下による「ホルモンバランスの乱れ」が、更年期障害の原因です。
男性の場合は「テストステロン」、女性の場合は「エストロゲン」と呼ばれる性ホルモンの減少が更年期障害を引き起こす原因とされています。
ホルモンとは、生命機能維持などに必要な情報伝達をするために、体内で分泌される化学物質。100種類以上存在するとされ、性に関するホルモンも数種類存在していますが、まだ解明されていない部分も多い物質です。
女性の場合は閉経が、ホルモン低下の明確なサインとなりますが、男性の場合は明確なサインはありません。
性ホルモン分泌の低下にともなうホルモンバランスの乱れは、主に加齢によって起こりますが、ストレスや睡眠不足などによっても起こる場合もあります。
男性の更年期障害が診断されにくく、日の目を浴びてこなかったのには、男性特有の以下の理由が考えられます。
あまり認知されてこなかった男性の更年期障害ですが、時代は変わり情報は更新されていきます。男性更年期障害の受診者数は増加傾向にあり、ホルモン補充療法などの更年期障害の治療についても周知されつつあります。
更年期障害の代表的症状である「情緒不安定」は、精神疾患のうつ病や、自律神経失調症の症状とも似ています。
何が原因で発症しているのか見極めるには、自己判断は難しいでしょう。
また更年期障害は、うつ病や生活習慣病と関連し複合している場合も多いため、病院でのしっかりした問診が重要です。
基本的に更年期障害は、他の病気には該当しないと判断した場合に診断する「除外診断」として診断されるため、医師の総合的な判断が必要に。
いっぽうで、更年期障害は体内ホルモンの値を調べれば異常が分かる可能性が高く、判明しやすい病気の側面もあります。更年期障害かどうかの判断には、まずは病院でのホルモンチェックが一番なのです。
女性と比較して、男性の更年期障害が起こる時期、起こりやすい症状やテストステロン低下のサインについて、より詳しく解説します。
テストステロンの低下による男性の更年期症状の発生時期については、個人差が大きく、早ければ30代から起こり、遅い場合は70代で起こる場合もあります。とはいえ、40代以降であれば誰にでも起こりえる病気です。
テストステロン低下は認識しづらいため、自分に何が起きているか気付かず、戸惑う方も多いでしょう。生理周期に乱れが生じる閉経とは異なり、男性は体の変化を認識しづらい分、精神面の弱化が目立ち、うつ病と勘違いしやすいのも特徴です。
また、男性の更年期障害には「特に終わりがない」と言われています。
女性はホルモンの低下に体が慣れて体調不良を感じなくなる傾向があり、更年期障害の終わりを感じる方も多いのです。いっぽう男性はテストステロンが低下している限り、活力が戻らず「元気にならない」と感じ続ける方も多いのです。
男性の更年期障害には、現れやすい代表的な症状や、更年期障害が疑われる自覚しやすいサインがあります。以下に挙げられる症状やサインは、更年期障害が疑われる目安です。
更年期障害が疑われる場合、どう対応したらいいのでしょうか。数ある病院のなかで、何科を受診すべきか…など、男性更年期障害の対処法、予防法について紹介します。
男性特有の疾患を扱う「メンズヘルス外来」のある病院の受診は、男性ホルモン値のチェックや更年期障害についての診療を安心して任せられるため、おすすめです。
また、どの地域でも比較的数の多い泌尿器科は、男性ホルモンの専門知識が豊富な可能性が高いでしょう。男性更年期障害を診療内容や看板に掲げている診療所であれば、より確実です。
テストステロンの急激な低下による更年期障害と診断された場合、さまざまな対処法・治療法があります。
まずは生活習慣の見直しを。テストステロンの低下が軽度ならば、生活習慣の見直しや運動によるホルモンバランス改善を目指す方法があります。また、食事で摂れない栄養素をサプリメントなどで補うのも効果的です。
男性ホルモンの低下が著しく、症状が強い場合には、テストステロン補充療法(TRT)があります。また、症状に合わせ漢方薬やED治療薬、抗うつ薬などを併用するケースもあるでしょう。
テストステロン補充療法には飲み薬・塗り薬・注射などの投与方法があります。どの方法を用いるかは、担当医としっかり相談して決定を。
男性の更年期障害への予防には、テストステロンを低下させないために、セルフケアが大切です。とくにストレスはテストステロンを低下させる原因なので、無理をせず、ストレスを解消できる生活を心がけましょう。
夜更かしを避け、質の良い睡眠をとると、テストステロン活性化が期待できます。筋トレやウォーキングなどの運動を無理のない範囲で行うのも効果的です。また、テストステロンの原料となるのは、コレステロールとたんぱく質。しっかり摂取するために、肉・魚・大豆製品を積極的に食べる献立にしましょう。
男性の更年期障害はあまり知られていないわりに、誰にでも起こりうる症状です。50歳を過ぎた男性の6人に1人くらいの割合で更年期障害による不調が起こるそうです。
男性の更年期障害は、病院でのテストステロンの補充によりすぐに回復する場合も多いと聞きます。病院でのホルモンチェックにより、活力や健康を取り戻す道が見つかる可能性があるのです。
男性も50歳を過ぎ、心と体の不調を感じて更年期障害かもと思ったら、ぜひ恥ずかしがらずに病院を受診し、調べてみてください。
参照:2022年・更年期症状・障害に関する意識調査」基本集計結果/厚生労働省
各ブランドの商品一覧をご確認いただけます。