赤ちゃんが生まれてから1歳になるまでの乳児期は、1年間で体重がおよそ3倍になります。一生のうちに最も発育する時期に食べる「離乳食」には大切な役割や注意すべきポイントがあるのです。今回は、離乳食とは何か・どのような役割があるのか、いつから始めたらいいのかを解説します。離乳食の進め方についても、初期・中期・後期・完了期に分けてご紹介するので、参考にしてみてください。
離乳食とは?どんな役割があるの?
離乳食とは、母乳や育児用ミルクだけに頼っていた乳汁栄養から幼児食へ移行する過程に与える食事のことです。赤ちゃんは、成長するにあたって多くのエネルギー源や栄養素を必要とします。
母乳や育児用ミルクだけでは十分な栄養素を補給しきれなくなるため、栄養を補うために食事を取り入れていく必要があるのです。
離乳食には、少しずつ固形物に慣れ、足りない栄養素を補い、食べる楽しみを育む役割があります。
離乳食を始める時期はいつから?
離乳食を始める目安は、5カ月頃です。遅くても6カ月頃には始めましょう。
以下のようなサインが現れたら、離乳食開始のタイミングです。
● 首がしっかりとすわっている
● 誰かが食べる姿をじっと見ている
● 自分も食べたそうに口を動かしている
● スプーンなどを口に入れたときに、舌での押し出しが少なくなる
離乳食の進め方の目安
母乳や育児用ミルクといった液体のみでの栄養補給から固形物での栄養補給に慣れるために、少しずつ食事の形態を変えていきます。
赤ちゃんの成長は、個人差が大きいのでお子さんに合わせたペースで進めていきましょう。
生後5~6カ月頃(離乳初期)
赤ちゃんの機嫌のよいときに離乳食を始めます。
【目安】
● 回数:一日1回
● 硬さ:ゴックンと飲み込めるくらいなめらかにすり潰した状態(ヨーグルト程度)
● 味付け:不要
● 栄養面:離乳食を始めて1カ月を過ぎた頃には、主食・主菜・副菜を揃える
● 量:スプーン1杯からはじめ、少しづつ量を増やしていく
慣れてきた頃の目安量は、1食の総量で子ども茶碗の1/2程度
【食べさせ方のポイント】
● 膝に赤ちゃんを抱き、やや後ろに傾けると食べさせやすいです。
● 「おいしいね」などと話しかけてあげましょう。
生後7~8カ月頃(離乳中期)
いろんな味や舌触りに慣れていく時期です。食品の種類を少しずつ増やしていきます。
なるべく時間を決めて与えましょう。
【目安】
● 回数:一日2回
● 硬さ:舌で潰せるくらい(豆腐程度)
● 味付け:食材の本来の味を活かして、風味付け程度(しょうゆを1滴たらすなど)
● 栄養面:主食・主菜・副菜を揃える
● 量:1回分の総量で、子ども茶碗2/3杯分程度
● 離乳食後の母乳や育児用ミルク:赤ちゃんが欲しがる分だけ与える
● 母乳の場合:離乳食とは別に授乳のサイクルに沿って欲しがる分だけ与える
● 育児用ミルクの場合:一日3回程度与える
【食べさせ方のポイント】
● 平らなスプーンを下唇の上にのせて、上唇が閉じるのを待ちます。
生後9~11カ月頃(離乳後期)
食事のリズムを覚えていく時期です。味付けや硬さなどに好みが出てきます。
【目安】
● 回数:一日3回
● 硬さ:歯ぐきで潰せるくらい(バナナ程度)
● 味付け:食品本来の味を活かしたうす味
家族の食事から味付け前に取り分けると楽
● 栄養面:鉄分不足になりやすいので、鉄分補給を意識
肉・レバー・赤身魚・ほうれん草・小松菜・ひじきなどを活用
場合によっては、フォローアップミルクを利用
● 量:1回分の総量で、子ども茶碗1杯分くらい
● 母乳の場合:離乳食とは別に授乳のリズムに合わせて欲しがる分だけ与える
● 育児用ミルクの場合:離乳食とは別に一日に2回程度与える
【食べさせ方のポイント】
● 手づかみ食べを積極的にさせてあげましょう。食べ物を握ったり、触ったりすることで、食べ物への関心・自分で食べる意欲アップにつながります。
● 食事スペースの下にビニールシートなどを敷いておくと、後片付けが楽です。
● スプーンを持たせてみましょう。
● 食べさせてあげるときは、くぼみのあるスプーンを下唇の上にのせて、上唇が閉じるのを待ちます。
● 軟らかい食材を前歯でかじり取らせましょう。
● コップ飲みの練習を始めます。手持ち付きで、小さく・軽く・割れにくいコップを使います。
● 食事時間は、ダラダラ食べはせず30分~40分を目途にしましょう。
1歳~1歳6カ月(離乳食完了期)
食事のリズムに慣れ、生活のリズムを整える時期です。
成長にともなって栄養の必要量が増えます。しかし、一度にたくさん食べられないので、一日に1~2回おやつ(少なめの食事)をあげましょう。量と時間を決め、次の食事と2時間~3時間の間隔を空けます。
【目安】
● 硬さ:歯ぐきで噛めるくらい(肉だんご程度)
● 味付け:食品本来の味を活かしたうす味
● 栄養面:主食・主菜・副菜を揃える
● 量:主食・主菜・副菜をそれぞれ大人の1/2量程度
【食べさせ方のポイント】
● 手づかみ食べをたくさんさせてあげましょう。
● 上手になってきたらスプーンやフォークを持たせます。
● 同じ食べ物だと飽きてくるので、味・形・色のバリエーションを増やします。
● コップで牛乳かミルクを一日に300ml~400ml与えましょう。
固形物を噛みつぶして食べられるようになり、栄養補給の大部分を乳汁以外から摂れるようになったら離乳完了です。1歳6カ月頃を目安に幼児食に移行しましょう。
離乳食の栄養バランス
つぎの3つのグループからバランス良く組み合わせて与えましょう。
● エネルギー源になる食品:穀類・いも類・油脂類
● からだをつくる食品:豆腐・肉・魚・卵・乳製品
● からだの調子を整える食品:野菜・くだもの
離乳食で避けたい食品や注意点
離乳期に注意すべきポイントを押さえて、安全に「食」を伝えましょう。
清潔を心がけよう
赤ちゃんは抵抗力が弱いので、調理器具や食器は清潔なものを使い、手洗いもしっかりしましょう。
1歳までは「加熱」が必須
赤ちゃんは抵抗力が弱いので、1歳までは加熱調理した食品を与えましょう。お粥や野菜スープなど冷凍ストックしておいた食品も必ず再加熱してから与えます。刺身は、新鮮なものを3歳以降にチャレンジしましょう。
離乳期に果汁・イオン飲料は必要ない
離乳前の赤ちゃんに最適な栄養源は、母乳や育児用ミルクです。離乳食を始める前に果汁やイオン飲料の味を覚えると、母乳や育児用ミルクを飲む量が減ってしまう場合があります。そうすると、必要なエネルギーや栄養素量を満たせません。
乳汁以外の味を覚えるのは、離乳開始後にしましょう。味のうすいものから1種類ずつ試していきます。
はちみつは、満1歳までは使わない
はちみつは、乳児ボツリヌス症を発症するリスクがあるため、満1歳までは使用しないようにしましょう。
フォローアップミルクは、必須ではない
鉄分が強化されたフォローアップミルクは、離乳食が順調に進んでいる場合は、必要ありません。離乳食が進まず、体重増加が見られない場合や鉄分不足の懸念がある場合は、医師に相談したうえで使用しましょう。
アレルギーが心配だからといって食べさせないのはNG
離乳食の開始を遅らせたり、特定の食品の摂取時期を遅らせても食物アレルギーの予防効果は期待できません。
むしろ、特定の食品の摂取時期を遅らせることが食物アレルギー発症の一因になると指摘されているのです。厚生労働省では、遅くとも6カ月頃には離乳食を開始するように進めています。
以下の食品は、アレルギーの原因になりやすく、注意が必要です。適した時期に、少量ずつ慎重に試していきましょう。
例)そば・パイナップル・キウイフルーツ・マンゴーなど
のどに詰まりやすい食品は避けよう
のどに食べ物が詰まると危険なので、以下の食べ物は与えないようにしましょう。
例)もち・こんにゃく・ナッツ類・たこ・いか・ちくわ・かまぼこ・魚肉ソーセージ など
消化しにくい食品は避けよう
離乳期は、消化機能が未熟なため、消化しにくい以下の食品は与えないようにしましょう。
例)ごぼう・玄米・雑穀米・きのこ類(すり潰したり、細かく刻んで与える分には可) など
刺激の強い食品は避けよう
赤ちゃんには刺激が強いので、以下の食品はなるべく控えましょう。
例)ウーロン茶や緑茶(カフェイン)・炭酸水・コショウ・カレー粉・にんにく・しょうが など
どうしても使いたい場合は、にんにく・しょうがは9カ月頃から、刺激のある調味料は1歳以降にごく少量にしましょう。
味の濃いものを避けよう
「味覚は3歳までに決まる」といわれています。離乳期に濃い味付けに慣れてしまうと、大人になっても濃い味を求めるのです。塩分や糖分の多い食事は、赤ちゃんにとっては消化・吸収の負担になります。以下の食品は、離乳期にはなるべく使用を控えましょう。
例)ソース・ケチャップ・マヨネーズ・ドレッシング・100%果汁ジュース・生クリーム など
どうしても使いたい場合は、ケチャップやマヨネーズは9カ月頃から、ソースは1歳以降にごく少量にしましょう。
離乳期はあっという間に過ぎ去ってしまいます。この時期のお世話は、手がかかって大変だと思いますが、一生に一度しか味わえない貴重な時期です。
ママがこの時期の赤ちゃんとしっかりと向き合えるように、心の余裕を作ることも意識していきましょう。離乳食は注意すべき点も多いのですが、神経質になり過ぎるとママの心に余裕がなくなってしまいます。
便利なベビーフードを使うなど、負担を減らしてママがご機嫌でいられる工夫をしましょう。ベビーフードは、離乳食の完成形の参考にもなります。赤ちゃんにあげる前に、一口食べて、味付け・硬さ・具材の大きさ・量などを確認するのがおすすめです。
便利グッズを味方につけてママ自身が楽しみながら「食」を伝えてあげましょう。
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