漢方とは一体何なのでしょうか?漢方は東洋医学のひとつであり、中国から入ってきて日本で育った日本独自の伝統医学です。漢方の考えのもと、生薬を組み合わせて作った薬を漢方薬と呼びます。漢方薬は選び方を間違うと効果がなかったり、副作用が出る場合も。漢方について、漢方が生まれるに至った歴史、漢方における重要な概念、効果的な漢方薬の選び方をわかりやすく簡単に紹介します。
目次
- 01漢方の歴史は日本の歴史
- 02漢方とは
- 03漢方薬とは
- 04東洋医学と西洋医学の違い
- 05漢方薬はどのように処方されるか
- 06漢方を購入するときのアドバイス
漢方の歴史は日本の歴史
漢方は日本で育った伝統医学です。漢方の歴史や元になった医学を紹介します。
漢方の歴史
漢方は、中国の伝統医学(中医学)が日本に伝来して根付き、独自の発達を遂げた伝統医学です。日本の風土気候に合わせた漢方薬の処方が独自に発達しており、中医学では消えてなくなった、腹診といった診断方法が残っています。文明開化で西洋医学が日本に入ってきた時、オランダの医学とみなされた西洋医学を蘭方と呼ぶようになり、蘭方と区別するため、日本で独自に発展した医学は漢方と呼ばれるようになりました。
漢方のもととなった中医学
中医学は中国で発展を遂げていて、漢方とは共通する考えが多くありますが、厳密には異なる医学です。漢方は体質や症状だけでなく、病名で薬を選ぶ傾向にありますが、中医学は体質・症状に合わせて薬を選びます。漢方の理解を深めるために中医学を学ぶ人も多いです。
漢方と薬膳の関係
薬膳は体質・症状・季節を考えて食材を組み合わせて作る食事です。漢方の考え方を元にして作れらますが、中医学と漢方は同じ生まれなので、中医学の考え方で作る薬膳は数多く存在します。
漢方とは
漢方・漢方薬・薬膳はすべて同じ概念のもとに組み立てられています。漢方を理解するに当たって重要な概念を、簡単にわかりやすく説明します。
気・血・水
漢方では、体は気(き)・血(けつ)・水(すい)のバランスによって成り立っていると考えます。気血水は、ほどよい量があるのが大事です。また、ほどよく存在するだけはダメで、気血水は常に巡っていなければなりません。
気(き)
体を温め動かす体力・気力といったエネルギーです。気が足りないと疲れやすく、食欲がなくなります。巡りが滞るとイライラや落ち込み、お腹の張りやゲップといった症状を引き起こします。
血(けつ)
血液と血液に溶けた栄養・ホルモン・酸素などを包括した概念です。鉄が足りないのは鉄欠乏性貧血といい、血(けつ)が足りない症状のひとつとみなします。血液に溶けた栄養全般が足りなかったり、ホルモンに不足があったりしても血が足りない状態です。血が足りないと、立ちくらみ・肌や髪のぱさつき・眼精疲労が起こります。血の巡りが滞ると血行が悪くなり、シミ・くすみ・くまが出来るだけでなく、肩こりやズキンとした頭痛につながるでしょう。
水(すい)
唾液・組織液など、血液以外のすべての液体を指します。水は体の潤いを保ったり、のぼせ・ほてりを冷やしたりする要素です。水が多すぎると巡りが滞り、むくんだり関節に水が溜まったりします。水が足りないと体を冷やす力が足りず、手足がほてったり微熱が続いたりします。
五臓
漢方では、五臓が重要な概念です。五臓には、肺・肝・脾・心・腎があります。五臓は、内臓とは異なる概念で、体の機能や役割を5つに分けた考え方です。
肺
呼吸機能と水分代謝機能を担当する五臓です。不調だと呼吸困難や発汗異常、むくみなどが起きます。
肝
気の巡りと血の貯蔵を担当する五臓です。不調だとイライラ・落ち込み・怒りが起きます。貯蔵している血が不足すると、血の不足による立ちくらみや夜盲症といった症状を引き起こすとされています。
脾
消化吸収機能を担当する五臓です。不調だと食欲不振やだるさにつながります。また脾は、水を巡らし、気の上昇や血を脈外に漏らさない機能も持っています。
むくみ・内臓下垂・不正出血・あざになりやすいといった症状を感じたら、脾の不調が原因です。
心
血脈を担当する五臓です。また、精神・意識・思考も司ります。
不調だと動悸が起こるだけでなく、精神不安や集中できないといった症状につながります。
腎
尿の生成と生殖能力、精力の貯蔵を担当する五臓です。不調だと頻尿や尿が出にくくなるほかに、精力不足による発育不全・不妊・老化が起こります。
虚証・実証
東洋医学では、人はそれぞれ固有の体質を持ち、ひとまとめに病名をあげたとしても、症状のあらわれ方も個々人によって違う(「同病異治(どうびょういち)」)とされています。
もともと身体が弱い人が不健康になった場合と、健康で強い人が不健康になった場合とでは、体質によってかかりやすい病気の傾向が変わってくるのです。
虚証とは
「虚」という文字は、過去の住居がくぼんだ跡(廃墟)を示し、からっぽでうつろ(空虚)を意味します。病気の原因が体の内側にあり、体内の栄養素などが不足しているため、病にかかりやすい状態です。体力がなく疲れやすい、貧血・寒がり・やせ型の傾向がある人などの傾向で分けられます。
実証とは
「実」という文字は、家の中にものが詰まっていることを意味します。つまり、「実証」とは中身が充満している状態。「正気」といわれる生命力・自然治癒力が高く積極的に「邪気」と戦うため、逆に激しくなりすぎて病気を引き起こします。体力や抵抗力が充実し、高血圧・暑がり・太り気味の傾向がある人などの傾向で分けられます。
虚証の方には必要なものをしっかりと補い、実証の方には余分なものを排泄し体のバランスを整えるアプローチが必要です。よって同じ症状でも、自分の「証」と他の人の「証」が違えば、処方される漢方薬も違ってきます。
漢方薬とは
生薬の組み合わせには、各生薬の効果を高める組み合わせや副作用を弱める組み合わせが数多くあります。漢方薬は、体質や症状に合わせて生薬をベストバランスで組み立てた薬です。
東洋医学では前項で説明した「気血水・五臓・虚証や実証」によって、同じ症状でも別の漢方薬を使いますが、別の症状でも気血水・五臓・虚証や実証の状態によって同じ漢方薬を使う場合があります。
東洋医学と西洋医学の違い
西洋医学と東洋医学(漢方や中医学)は異なる体系であり、得意・不得意が違います。
西洋医学の特性
西洋医学は、原因がはっきりしていればすぐ対処でき、ひとつひとつの症状に対して即効性のある薬が多いです。逆に、西洋医学は原因のはっきりしない不調には対処しにくい医学となります。また、体全体の状態はあまり重視しません。
東洋医学の特性
東洋医学は、症状と体質を軸に診察と処方をするので、原因のはっきりしない不調にも効果的です。原因のはっきりしない不調は「未病」ととらえて治療します。「未病」とは、病気と健康の間の概念であり、「未だ病気ではない」けれど健康でもない状態です。
また、東洋医学は体全体の状態を重視し根本から体を整える医学なので、体質改善が期待できます。東洋医学には即効性があまりない薬や穏やかに効く薬が多いですが、ある程度飲み続けると、対処したい症状だけでなく、他のつらい症状の改善も期待できるでしょう。中医学や漢方は、外科領域にはあまり強くないので、外科治療後の体力回復サポートなどに向いています。
西洋医学の薬とは異なる漢方薬の特性
西洋医学で使用される症状に即効性のある薬と違い、漢方薬には飲んですぐ効くタイプと飲み続けると効いていくタイプがあります。
しかし、一つの症状に一つの薬を処方する西洋医学と異なり、個人の体質・特徴を重視して体全体の調和を図るのが漢方薬の特徴の一つなので、効果がきちんとあらわれるまでの期間は、人や漢方薬によって異なります。
薬にもよりますが、しっかりと体質改善をしたい方は、血液が入れ替わるとされる120日(4ヵ月程度)を一つの目安にし、継続して服用してみましょう。
漢方薬はどのように処方されるか
漢方薬は数が非常に豊富です。効果的な漢方薬をどのように選んで飲むべきか、わかりやすく紹介します。
専門家に選んでもらう
漢方薬は、漢方に詳しい医師や専門家(漢方薬局の薬剤師)に体質と症状を判断してもらい、処方してもらうのがおすすめです。体質と症状に合った漢方薬を詳細なヒアリングから選んでもらえるため、より自分にあった漢方薬が選択できるでしょう。
漢方の専門家は、舌の舌苔の色、舌の大きさ・血色を見たり、仰向けになったときのお腹を触ったりして体質や症状を判断します。顔色・肌つや・声の大きさ・声のハリも診断材料のひとつです。
自分で選ぶ
自分で選んで買う場合は、薬局に行って薬剤師に相談すると、体質と症状に合った漢方薬を選んでもらいやすいです。
自分だけの力で選ぶ場合は、虚証なのに実証向けの漢方薬を選ぶ場合がないよう、よく注意する必要があります。虚証のときに実証向けの漢方薬を飲むと、ただでさえ足りない必要な要素が体の外に出されてしまい、不調が起きやすくなります。
虚証向けの漢方薬は、「体力がない」「胃腸が弱い」「食欲がない」といった言葉が説明書きに書かれている場合が多く、実証向けの漢方薬は「体力がある」「胃腸が強い」「食欲がある」と書かれている場合が多いです。参考にしてください。
漢方薬は、とくに漢方薬への知識がない方や初めて用いる方は、まずは医師や薬剤師など専門家に相談してからの購入がおすすめです。
自分だけで選ぶ場合は、漢方薬の説明書きをよく読み、自分の体質に合わない漢方薬を使うのは避けましょう。
漢方薬を正しく選び、自分の状態や体質にしっかりあった種類が選べるよう、一つひとつ知識をつけていきましょう。
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