一級建築士・ライフスタイルライター神谷三理砂
住宅やインテリアの意匠設計に従事した経験を活かし、家の間取りやデザイン、インテリアなど住まいに関するコラムを多数手掛ける。ジュエリーデザイナーとしての経歴も長く、ファッション系コラムも執筆。最近は、より生活に役立つ記事を書きたいという思いから健康コラムに力を注ぐ日々。
刺繍や洋裁、家庭菜園といった手仕事を楽しむ暮らしを大切にしている。
日差しがたっぷり注ぎ込む明るい家に住みたいと思いながらも、気になってしまう紫外線。太陽の光は健康にとって不可欠ですが、紫外線を過度に浴びるとシミやシワといった光老化や、家の劣化を促進させてしまいます。
日よけの設置や、紫外線カット効果のある窓ガラス・レースカーテンの導入など、日当たりと紫外線のバランスをうまく保ちながら、より快適でより健康的な暮らしを実現するためのヒントを探っていきます。
新築での土地探しや間取り決め、部屋探しにおいて、重要視されるのが「日当たり」です。室内を明るく照らす太陽光は、住む人の生活や身体に多くのメリットをもたらします。
日光を浴びると、免疫力の向上や骨の健康に役立つビタミンDが生成されます。健康な体づくりには、適度な日光浴が欠かせません。
朝日を浴びると、脳内ホルモンの一種で幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの分泌が増加します。朝はすっきりと目覚められ、睡眠の質も上がるようになるので、生活のリズムが整います。
日差しが多く入る部屋は、あたたかく心地よい雰囲気を演出してくれます。リビングやダイニング、キッチンといった1日のうちで過ごす時間が長い場所は、日当たりに配慮すると暮らしの質が向上します。手元が明るくなるので、家事をしたり本を読んだり、作業しやすくなるのもメリットです。
部屋が明るくなるので、年間を通して照明をつける時間が短くなります。冬は部屋があたためられるので、暖房費の節約につながるでしょう。ただし、西向きの部屋は、夏になると気温が上昇する午後から夕方にかけて強い西日が入るため、エアコン代が高くなる可能性もあります。
日当たりや風通しがよいと洗濯物が早く乾きます。生乾きの嫌なニオイを軽減でき、紫外線による殺菌効果も得られます。
日光のあたる時間が長いと室内に湿気がたまりにくくなるので、カビの発生を抑えられます。
日当たりは、家の快適性や住む人の健康に直結する大切な要素です。しかし、太陽光には紫外線が含まれており、窓を通過して室内にまで入り込みます。日の当たる環境は、継続的に紫外線を浴びる環境でもあるので、家の中にいる人・壁や床・家具などのインテリアを、じわじわと老化や劣化させていきます。
環境省の「紫外線 環境保健マニュアル2020」は、「屋内で働く人は屋外で働く人の1~20%の紫外線を浴びている」と示しています。紫外線による影響の大きさに個人差はありますが、日焼けや炎症といった急性傷害や、シミやシワ、たるみといった慢性傷害である光老化を招いてしまいます。さらに、長時間の紫外線暴露によってダメージが蓄積されると、皮膚がんや白内障といった、より深刻な病気を引き起こすリスクが高まるでしょう。
出典:「紫外線 環境保健マニュアル2020」/環境省
長年使用していた家具を移動したら、フローリングや畳の色が変化していた、といった経験はありませんか?窓ガラスの種類や、カーテン・ブラインドの有無などによって、室内に入り込む紫外線量に違いはあります。しかし日光がよくあたり、長期間紫外線にさらされた部分は、日があたらないところと比較すると劣化が進みやすいのです。日焼けや色あせ、壁紙のはがれなどが現れるようになります。
家の中にいても紫外線は窓ガラスを透過して室内に降り注ぐので、何も対策をとらなければ日々ダメージが蓄積されていきます。かといって、カーテンを閉めっぱなしにして暗い部屋で過ごしたくはないですよね。
自然光の入る明るい部屋で、日焼け止めを塗らずに素肌のままリラックスして過ごせるように、紫外線に配慮しながら日差しを取り入れる方法をご紹介します。
窓の外にシェードやオーニングを設置すると、直射日光を防げます。
シェードは網み目が大きめなので、隙間から木漏れ日のように日差しが入ります。オーニングはキャンパス地でつくられており、シェードと比べるとしっかりとした構造で布を出し入れできるため、日差しに応じて自由に調節できるのがメリットです。
古くから使われている簾(すだれ)も、一年を通して活用できる日よけの方法です。風流で趣のある住まいを演出できます。
紫外線遮蔽効果の高い窓ガラスを選ぶと、室内に入り込む紫外線量を軽減できます。
一般の板ガラス1枚では、約30%ほどしか紫外線を遮れず、2枚のガラスの間に空気層を設けた複層ガラスでも40%程度です。しかし、複層ガラスに熱を伝えにくくする金属膜をコーティングし、断熱効果を高めた「Low-E複層ガラス(遮熱タイプ)」であれば、約70%も紫外線をカットできます。
2枚の板ガラスの間に特殊な樹脂フィルムを入れて強度を高めた防犯安全合わせガラスなら、99%以上の紫外線カットが可能です。
※紫外線カット率は、メーカーや製品によって異なります。
UVカット効果のあるレースカーテンは、室内の明るさを適度に保ちつつ紫外線を遮れます。窓の交換リフォームや外に日よけを設置するよりも、手軽に紫外線対策できる方法です。紫外線カット率や製品によって透け具合が異なり、部屋の明るさも変わってくるので、選ぶ際にはしっかり確認しましょう。
紫外線カット効果のあるフィルムは、透明タイプであれば明るさや見た目を大きく変えずに、製品によっては紫外線を99%以上カットできます。ただし、窓の種類によっては使用できない場合があり、自分で貼るとフィルムとガラスの間に気泡が入ったり、シワがよったりして見栄えが悪くなる場合もあるので注意が必要です。
昔ながらの日よけの方法として、ヘチマやゴーヤ、朝顔といったツル性の植物を庭やベランダに植えて日陰をつくる「グリーンカーテン」があります。生い茂った葉で日差しを適度に遮りつつ、緑を楽しめます。夏のイベントとして取り入れると、楽しみながら紫外線対策ができ、見た目も涼しげです。植物の気化熱によって、周辺の温度を下げる効果も期待できるでしょう。一年中グリーンカーテンを楽しみたい場合には、越冬できる多年草を選んでください。
日当たりと紫外線を共存させるには、対策が必要です。とはいえ、どのような方法で共存していくかは、環境や好みによって人それぞれ。自分に合う方法を見つけて、より快適でより健康的な暮らしを実現しましょう。
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