セラピストライター白井未奈子
サービス業を10年経験するなかで、リラクゼーション業務に出会い「人を癒す」ことに目覚める。
フリーランスに転向して以降は、ボディートリートメントとフェイシャルエステの知識を活かし、美容・健康系の記事執筆を中心に担当。今は手ではなく、文章で読者にくつろぎとすこやかさを届けることを目指している。
冷えに悩みつつも、対策をしっかり行わない…とくに女性で、多いのはなぜでしょうか。
「重篤な病気ではないから」といった理由で、後回しになってはいませんか?
しかし、実際のところ、"冷え"をそのままにしておくと、思っているより怖いリスクを伴うケースも…。仕事や家事に追われ、「自分をつい後回しにしてしまう」方にこそやってみてほしいのが、マッサージやツボ押しです。ほんの数分、心身をいたわる時間をつくってみませんか?
筋肉量の少ない女性は、熱を生産しにくく冷えやすい状況に置かれています。お腹まわりを冷やすと、子宮や卵巣にも悪い影響が及びやすくなるため、要注意です。
生理痛がひどくなったり、生理のサイクルがみだれたり…もしかしたら、冷えが原因かもしれません。
加えて、だるさや疲労感をはじめ、肩こりや腰痛といった症状は、冷えで生じやすい不調です。「たかが冷え」と見過ごし我慢するのは、じつはリスクが生じる可能性が高い生活なのです。
多くの不調をまねきかねない"冷え"ですが、じつは身体だけでなくココロの負担になるケースも。
身体の冷たさが続くと、やがて冷え自体がストレスに。就寝前や起床時など、冷たさを感じて「また今日も冷えている…」と思う日が重なって、知らず知らずのうちにストレスゲージが増えていってしまうでしょう。
冷えがストレスをまねくのではなく、「ストレスによって冷えが引き起こされるケース」もあります。いわゆる「ストレス冷え」と呼ばれ、心身の緊張状態を放置して起こる冷えです。緊張状態の連続は自律神経のバランスをみだし、副交感神経が優位になりづらく、身体に絶えず力が入って筋肉も硬直します。結果、血行が悪くなり冷えを起こしてしまうのです。冷えとストレスのタッグは、ココロをむしばむ負のループを生み出しかねません。
身体がポカポカすると眠りやすくなるのに対し、冷えは眠りにくさも連れてきます。
ひやっとする感覚が眠りを妨げるほか、身体が冷えやすい人は体温の変化に乏(とぼ)しいのも問題です。日中から体温があまり変化しないため、休息モードがオンになりにくく、寝付きにくく中途覚醒しやすい状態をつくってしまいます。
厚生労働省の調査では、日本の成人のうち、睡眠時間が6時間未満の割合が高いのは40代の女性(※)です。
家事や育児に忙しく、仕事でも重要なポジションを任されるタイミング。ただでさえ短い睡眠時間を邪魔する冷えは、いますぐ対策しておきたいところです。
※参照:「働く女性にとって良い睡眠とは/一般財団法人 女性労働協会内(厚生労働省委託事業)」
すぐできる「冷え対策」として、入浴や食事、運動習慣の見直しが有効といわれています。ぬるま湯をはったお風呂に浸かったり、身体を内側からあたためる食べ物や飲み物をとったり、簡単にできそうな対策はいくつかあります。
どれも健康にプラスとなるのには違いありません。そのなかでも、ココロにポジティブな効果を与えてくれるのが「マッサージ」や「ツボ押し」です。
マッサージで筋肉を揺らすと血行が促進され、ツボを押すと「気の流れ(※)」が整えられて、冷え改善へとつながります。
(※)東洋医学の概念で、現実には見えない身体の中の「風通し」の感覚。東洋医学で気の流れは、健康において非常に重要な要素
「マッサージなんてむずかしそう…」そんなことはありません。すき間時間に、簡単にできる部分から始められます。ぜひメリットや魅力をチェックしてみてください。
マッサージ・ツボ押しをおすすめする大きな理由は「特別な用意なしにすぐ始められる」点です。あったか靴下や腹巻きといった温活グッズはもちろん、お風呂を沸かす時間も、食事をつくる時間も必要ありません。内容によっては、オイルやクリームを必要とする場合もあります。ですが、思い立ったタイミングですぐ実践できる方法も多いのです。家事をしながら、テレビをみながら。仕事の合間にできるのもメリットです。
「手が疲れそう」と思うかもしれませんが、少しでも身体を動かせば、気分転換&あたたまって冷えをより緩和でき、一石二鳥の魅力も。
更年期の女性にみられがちな「冷えのぼせ」にアプローチできるのも、マッサージやツボ押しによる冷え対策の魅力です。
冷えのぼせは冷えの一種ですが、手足は冷たいにもかかわらず顔や頭はほてりがあるため、湯船に浸かったりあったかい食べ物・食べ物をとったりする気が起こらない方も多いでしょう。マッサージは多少身体は動かしますが、基本的に指先だけ動かしていればいいツボ押しなら、冷えのぼせを快適に対策できます。
ツボ押しをおすすめするもうひとつの理由に、「冷えたパーツを直接触らなくていい」点も含まれます。
例えば、足先の冷えにはくるぶしから指4本分上にあるツボ「三陰交(さんいんこう)」が、腕の冷えには手の甲側の手首の真ん中にある「陽池(ようち)」を刺激するのが効果的です。
冷えに限らず、不調を感じるパーツに、冷えたままの手を触れるのは、違和感があったり不安があったり、抵抗がある人も多いのでは。冷えているパーツとツボが多少重なっている場所はあるものの、少しでもひやっと感によるストレスを減らせるのは魅力です。
マッサージやツボ押しで冷え対策をするなら、いかに続けられるかがカギ。
セルフマッサージになれていれば、ルーティンに取り入れるのも苦ではありません。しかし、はじめての挑戦であれば、あまりに複雑で時間のかかる内容では、挫折する率も高くなります。
手軽に取り組めて、仕事や家事のすき間時間にできる「冷え対策マッサージ&ツボ押し」をチェックしていきましょう。
頭や顔には熱がこもっているのに、手足は血流が悪い冷えのぼせには、ヘッドマッサージと足のツボ押しを組み合わせるのが有効です。頭皮の刺激によって上半身に溜まった熱を逃し、くるぶしから指四本分上にある「三陰交」のツボ押しで冷えを緩和していきましょう。
1.四指が向かい合うように頭のてっぺんに両指を置く
2.指先に少し圧をかけ、小刻みに動かして刺激する
3.左膝を立て、足首をつかむように三陰交をじんわり3秒ほど押す
4.(3)を何度か繰り返したら、右足も同様にする
ほてりやのぼせがなく、足の冷えのみが気になるなら、(3)~(4)だけやってみてください。いずれの刺激も強すぎず、じんわり痛みを感じる程度が理想です。
女性にとって、とくに大切な子宮や卵巣があるおなかの冷えには、両手を使って直接おなかにアプローチをかけていきましょう。おへその下には「丹田(たんでん)」、おへそから指三本分外側には「天枢(てんすう)」と、お腹の冷え解消につながるツボが複数あります。
1.お腹を抱えるように両手を構え、みぞおちから下へやさしくなぞる
2.1の位置から、おへそを中心に両手を時計回りに動かして鼠径部に流す
3.左の腰骨の上に両手を置き、時計回りに小さな円を描き鼠径部に流す
4.3を右も同じようにする
5.手のひらを使って上下になであげ上げたり下げたりする
おなかのマッサージは、下半身の脂肪を燃やしたい人にもおすすめです。とくに下っ腹が気になるなら、おへそから鼠径部に流すときにしっかりめに圧をかけるとよいでしょう。摩擦が気になるなら、アロマオイルやクリームを使用してなるべくストレスのない形で行うのがコツです。
上半身の冷えが目立つなら、ハンドマッサージとツボ押しを組み合わせた手指&腕の冷え対策マッサージに取り組んでみてください。ひやっとした感覚をなるべく避けたいなら、温感クリームを使ってみるのも手です。
1.親指を内側に折るようにして両手をグーパー×10
2.各爪の両サイドを親指と人差し指でつまむ×2往復
3.親指と人差し指の間にある合谷をつまんでじんわり刺激する
4.手の甲側の手首の真ん中にある陽池を、親指と人差し指ではさんで圧をかける
ちなみに「合谷(ごうこく)」は、親指と人差し指の骨が交わるところのすぐ下にあります。生理痛や生理不順によい効果をもたらしてくれるといわれているため、念入りに押してみてください。
マッサージやツボ押しによる冷え対策は、血行をよくして、冷えを取り除けるだけが魅力ではありません。マッサージはいわゆる「手当て(※)」にあたり、人の手をとおしてココロの癒しにもつながるのです。美容院で髪を触られると眠くなるのも同様で、心地よい手のぬくもりは、幸せホルモンや癒しホルモンと呼ばれるオキシトシンの分泌を増加させます。
女性はホルモンバランスのみだれによってストレスが溜まりやすく、冷えを感じやすい生き物です。冷えに構っている時間がないと感じる人も、ちょっとしたすき間時間をマッサージやツボ押しにあて、ほっこりあたたかな時間を過ごしてみましょう。
※東洋医学における「手当て」とは、痛い箇所(経穴)に手を当てると身体が楽になると古人は鋭い感覚で知り、より有効な治療点を探すうちに経絡を見出した経緯から「病気の治療をする」に転じた言葉
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