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木の家ってなぜ健康にいいの?人にやさしい木材を取り入れて、ナチュラルで心地よい毎日に

2023/09/22

自然の中を歩いているとリラックスできるように、木の空間で過ごしていると穏やかな気持ちになるのを感じませんか?自然素材の木材を使った家は、住む人に癒しを与え、心身を健康にしてくれます。
なぜ木の家が健康にいいのか、現代の家が抱える問題を考えながら、木の魅力に迫っていきます。木目や木肌が美しく、経年変化も楽しめる木材や、木の家を新築したり、物件探しをする際のポイントもお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。

 

現代の家には健康問題がいっぱい!?

現代の住まいは高気密化が進み、昔の日本の家と比べると格段に冷暖房の効きがよくなりました。裏を返せば、建材や家具などから発生する化学物質が室内に充満しやすい環境です。換気が不十分な場合には、カビの発生やダニの繁殖も引き起こしてしまいます。
室内に化学物質が残留すると、人によっては目がチカチカする、のどが痛い、頭痛や吐き気がするといった「シックハウス症候群」と呼ばれる健康被害を生じる場合があります。すき間が多い昔の日本の家では起きなかったので、現代病と言えるでしょう。とくに、新築時やリフォーム時に発生しやすく、免疫力の弱い子どもや高齢者、在宅時間の長い人は症状が出やすくなります。家を建てるときには、化学物質を極力出さない素材選びが大切なのです。

 

木の家が人にやさしい理由

木材で作られた空間で過ごしていると癒される、心地よいと感じる感覚は、一体どこから来るのでしょう?私たちは日頃から、何気なく木から多くの恩恵を受けています。

木の香りに癒される

木は、傷ついたときに自分自身を守る「フィトンチッド」と呼ばれる物質を放出しています。森林浴をすると気持ちいいと感じるのはフィトンチッドによるもので、人をリラックスさせ、ストレスを緩和する効果があるのです。
スギチップの匂いをかぐと血圧が低下したり、スギ材の匂いでストレスが抑制されたりする報告もあり、科学的にも木の香りの効果は明らかになってきています。木の家や木質の内装など、木材として使用してもフィトンチッドの効果は持続します。驚くべき自然の力ですね!

睡眠の質が向上する

室内の木材使用量を増やすと、リラックス状態や深睡眠時間は長くなる傾向が確認されています。あたたかみのある木の風合いを取り入れた寝室で眠ると、疲労の回復や翌日のパフォーマンス向上につながるでしょう。

参照:睡眠の質と日中の知的生産性を高める住宅内装木質化率に関する被験者実験/J-STAGE

調湿効果がある

木が呼吸しているのと同様に、木材も呼吸しています。無数の空気孔が、湿度が高いときには空気中の水分を吸収し、乾燥しているときには含んでいる水分を放出して湿度を調整してくれるのです。湿った梅雨の時期も乾燥する冬も、安定した湿度の中で快適に過ごせます。とくに日本は湿気が多い国なので、調湿効果のある建材を取り入れるのはメリットが多いでしょう。

心地よい肌触りとクッション性を備えている

木材には熱を伝えにくい性質があるため、寒い冬場に素足で無垢材の床を歩いてもひんやりせず、夏は熱くならないので一年中快適です。また、転倒したときの衝撃をやわらげてくれる、ほどよいクッション性があるため、小さなお子さまや高齢者がいるご家庭でも安心して使用できます。
素足でペタペタと走り回っても安全な上に、木の香りや肌で触れたときの心地よさ、木目の美しさなど、五感を刺激する効果を得られるのが木材の大きなメリットです。利点を活かして、子どもが育つ環境によいとして、幼稚園や保育園などで無垢材を導入する割合が増えています。

経年変化を楽しめる

多くの物は、使いはじめだけが美しく、経年で劣化していきます。一方で無垢の木材は、使い込むほどに道具が手に馴染んでいくように、年月を経て風合いが増し、愛着も湧いてくるのが魅力です。変化の仕方は樹種によって異なりますが、飴色になったり、深みのある琥珀色に変わったり、木目やツヤが際立つようになったりと味わい深い表情を見せてくれます。木と一緒に過ごした時間分のストーリーが、少しずつ刻まれていく過程を楽しめるのは、他の素材にはない味わいでしょう。

 

住まいに取り入れたい!暮らしを美しく彩る樹種

樹種によって、香りや木目の濃淡・手触り・重厚感・経年による色の変化などに違いがあります。一つひとつに個性がある木の中から、上質感があり、見た目の変化が楽しめる美しい樹種をご紹介します。

ウォルナット

ウォルナットは、北米産のクルミ科クルミ属の落葉広葉樹で、チーク・マホガニーと並ぶ世界三大銘木の一つとして知られています。チョコレートのような深みのある色合いと、墨流しと呼ばれる木肌に墨を流したように滑らかな木目が美しく、しっとりとした気品のある佇まいが魅力です。
経年変化で色の濃くなっていく木材が多い中、ウォルナットは年月が経つにつれて紫や黒っぽさが抜けて、明るい茶色へと変化していきます。また適度な硬さや粘りがあり、温度や湿度による狂いが少ないため、フローリングや家具、楽器などに幅広く使われています。フローリングに使用する場合には、ヘリンボーン張り(短木を組み合わせて山形に張る寄木張りの一種)にすると、黒と茶色のマーブル模様が美しく交差し、クラシックな雰囲気に仕上がって素敵です。

ブラックチェリー

アメリカンブラックチェリーは、北米産のバラ科サクラ属の広葉樹です。スーパーで見かける、赤黒く大きなアメリカンチェリーの実がなる木と聞くと、親近感が沸きますよね。
製材したてのときは、ほんのりピンクがかった色合いをしていますが、経年でオレンジをおびたツヤのある飴色へと変わっていきます。色の変化は1カ月でもわかるほど急速です。緻密で穏やかな木目と、スベスベと心地よい手触りで、テーブルや椅子などの家具としても人気があります。内装材として使うと、あたたかみのある空間づくりができるでしょう。

 

憧れの木の家に住みたい!新築や物件選びのポイント

木の家を建てる際や物件選びにおいて、チェックしておくべき大事なポイントがあります。

シロアリへの対策方法を確認する

シロアリは古い家に発生するイメージがあるかもしれませんが、新築時でも被害にあう可能性があります。ヒノキやヒバといった堅い木は食害を受けにくいとされていますが、シロアリは基本的にどのような木材でも食べるので、しっかり防蟻対策をしているのかどうかを確認しておきましょう。
また、シロアリは暗くてジメジメした場所を好むので、床下に湿気が溜まらないよう通気性に配慮しているか、シロアリの侵入経路になりやすい部分に対策が施されているかなどをチェックしてください。

木の家が得意な会社に依頼する

ハウスメーカーや工務店、設計事務所などには、個々に得意とするデザインや工法があります。無垢材は取り扱いが難しく、職人の技術によって仕上がりがかなり変わってくるため、木の特性を知り尽くした、実績豊富な会社を見極める必要があります。そのために、過去の施工事例を見せてもらい、仕上がりやデザインを確認しましょう。

 
こだわりたい部分に木材を取り入れる

上質な木材を家全体に使うのは予算的に厳しいけれど、木の雰囲気を味わいたいと思ったら、空間でとくにこだわりたい部分のみに木材を取り入れてみましょう。たとえば、家族が集まるリビング・お客様の目に触れる玄関まわり・リラックスして過ごしたい寝室は、こだわって作ると家の満足度が上がる部分です。
床を無垢材にする・天井を板張りにする・柱や梁など構造材をあえて見せるなど、部分的に木を取り入れると、メリハリが効いておしゃれな空間に仕上がります。
家は暮らしの土台です。自分に合う方法で住まいに木を取り入れて、健やかな毎日を過ごしてくださいね。

  • 神谷三理砂

    一級建築士・ライフスタイルライター神谷三理砂

    住宅やインテリアの意匠設計に従事した経験を活かし、家の間取りやデザイン、インテリアなど住まいに関するコラムを多数手掛ける。ジュエリーデザイナーとしての経歴も長く、ファッション系コラムも執筆。最近は、より生活に役立つ記事を書きたいという思いから健康コラムに力を注ぐ日々。
    刺繍や洋裁、家庭菜園といった手仕事を楽しむ暮らしを大切にしている。