監修医師成田 亜希子
2011年医師免許取得。初期臨床研修を経て総合診療医として幅広い分野の治療に携わる。
臨床医として勤務しながら、行政機関での勤務経験もあり地域の健康課題にアプローチした健康寿命延伸、感染症対策などの医療行政にも携わってきた。
国立保健医療科学院、結核研究所での研鑽も積む。
現在、医療法人ウェルパートナー主任医師。
体脂肪率は、体重に対する体脂肪の重さの割合であり、肥満の程度を知るのに役立つ数値です。年齢とともに太りやすくなり、体脂肪率が気になる方は多いでしょう。健康のためには、肥満にならないよう体脂肪率を平均値にとどめるのが理想です。
体脂肪率を下げるコツだけでなく「計るたびに体脂肪率が違う」と嘆く方には、家庭の計測器で安定して正確に測定する方法について解説しますので、ぜひ定期的に測定し、肥満にならないよう気をつけましょう。
年齢とともに太りやすくなり、体脂肪を気にする方は多いのではないでしょうか。ただ体脂肪に対して何となく悪いイメージをもつだけでなく、体脂肪の役割や体脂肪率の平均値について、詳しく知っていますか?
肥満と大きく関係する、体脂肪と体脂肪率について、解説していきます。
体脂肪は、文字通り体についた脂肪です。全身の皮膚の下につく皮下脂肪と、内臓の周りにつく内臓脂肪のふたつに分かれます。
体脂肪はダイエットブームからマイナスのイメージをもたれがちですが、圧力や衝撃から身を守るクッションの役割、体温を一定に保つ役割、栄養をエネルギーとして蓄える貯蔵の役割をもつ大事な組織です。
しかし、体脂肪が多すぎると骨や関節への負担が増えたり、高血圧のリスクが高まるといったさまざまな健康リスクが増加する恐れもあるのです。
一方で、体脂肪が少なすぎると、ホルモンバランス異常や、皮膚や髪のツヤがなくなるといった悪影響も。
スタイルを追求して体脂肪を必要以上に落とし、体を絞りすぎるのは、健康の観点からは避けるべきでしょう。
「体脂肪率(%)=体脂肪量(kg)÷体重(kg)×100」
体脂肪率とは、体重に対する脂肪の重さの割合です。
体脂肪の重さを自分で測るのは難しいですが、家庭で使える電子体重計も登場しており、機器があれば体脂肪率は測定可能です。
肥満度を示す一つの指標であり、標準値がもっとも健康的と考えられています。
体脂肪率を測ると、外見だけでは判断しにくい体の脂肪量が分かり、肥満の程度を把握できるため、健康管理の指標になります。
一見太っておらず皮下脂肪が少なそうな方でも、実は内臓脂肪の多い隠れ肥満だと気づける場合もあるのです。また、ダイエットをする時に、体重以外で目標とする明確な数値を設定する際にも役立ちます。
「BMI=体重(kg)÷(身長(m)の2乗)」
体脂肪率と同じく肥満度を示す数値として有名なのが、体格指数とも呼ばれるBMIです。男女共通でBMIの値が「22」となる数値が、もっとも病気を発生しにくくなる適正体重とされています。
身長と体重だけで計算できる簡単さが便利ですが、脂肪過多かどうかは判別できないため、体重よりも体脂肪量が気になる方は、体脂肪率を測りましょう。BMIは標準でも、内臓脂肪が多い隠れ肥満の方は意外と多いためご注意を。
BMIは身長から理想体重を簡易に知る目安として、体脂肪率はより詳しく肥満度を知る目安として役立ちます。
体脂肪率は健康診断では測定しませんし、実際に正確な数値を計測した経験のない方もいるかもしれません。ですが、体脂肪率はより健康的な体形を目指す際に便利な数値ですので、上手に活用するのがおすすめです。
健康的とされる体脂肪率の基準値や、日本人の平均値について紹介します。
体脂肪率の基準値・適正値や、何%以上あると肥満にあたるのかが気になるところ。
しかし実は、体脂肪率の判定基準に絶対の基準はなく、WHOや日本肥満学会、体組成計メーカーなどが独自に基準を設けたりデータを公表しているのが現状です。
日本国民全員が健康診断などで正確な体脂肪率を測っているわけではないのが、明確な基準が確定されない原因のひとつかもしれません。
もっとも、各団体やメーカーがそれぞれ公表している基準やデータにはそこまで大きな差はないので、十分参考になる数値と言えるでしょう。
以下に肥満度の目安の一つとして、成人男性と成人女性の、体脂肪率と体の状態を紹介します。
※出典:土田隆監修「眠れなくなるほど面白い 図解 体脂肪の話」/日本文芸社刊
日本人の平均値としては、40歳未満の成人男性だと17~21%くらい、40歳未満の成人女性だと28~34%くらいとの、メーカーが公表しているデータがあります。
年齢が40歳以上になると、男女共に体脂肪率の平均値は2%程度高くなるようです。
標準体もしくは軽度肥満にあたる方が、日本人は多いと考えられます。
家庭の電子体重計で体脂肪率を測ると、数値がバラつきやすいと感じる方も多いのでは?
より正確に体脂肪率を知りたい場合は、安定して測定する方法を知っておきましょう。
また、測定して体脂肪が増えたなと感じる場合は、体脂肪がついてしまった原因に目を向けるのも大切です。体脂肪について正しく知ると、歳をとると太りやすい原因も分かり、対策を立てやすくなるでしょう。
体脂肪の重さの測り方はいくつかありますが、正確な数値を測定するのは大変で、高額の測定器が必要です。
そこで、家庭用の電子体重計などで使われるのが「生体電気抵抗法(生体インピーダンス法)」と呼ばれる、体内に微弱の電流を流して電流の流れにくい脂肪の量を推定する方法。
水は電気を通しやすいという原理から、体の水分量の高低による数値への影響が出やすくなっています。体に水分がたくさんあると電気が通りやすい状態になり、体脂肪率が通常よりも低く表示され、水分が少ない状態ですと通常より高く表示されます。
食後、運動後、入浴後、起床直後は、体の水分量が普段と異なっているため、計測を避けましょう。
毎日同じ条件で測ると数値がバラつきにくいので、夕食前や就寝前といった決まった時間に、排尿後に測るようにしてみてください。また、入浴後や運動後などによる発汗は体脂肪率に影響を与えやすいため、避けるのもポイントです。
食べ物から摂取するエネルギーが、日々の活動の中で消費するエネルギーを上回ると、体脂肪として蓄積します。
炭水化物の摂りすぎも脂質の摂りすぎも、摂取エネルギーが増えて体脂肪増加につながるので、食べ過ぎずにバランスよく食事を摂るのが大切です。
消費エネルギーの大部分にあたる約60%を占めるのが、心臓を動かしたり呼吸をしたりといった、何もしなくても基礎的活動で消費される基礎代謝。
基礎代謝が上がると無理な運動や食事制限をしなくても消費エネルギーを担保できるのですが、残念ながら年齢を重ねる毎に基礎代謝は下がってしまう傾向にあります。
生活や運動によって消費される生活活動代謝は、消費エネルギーの約20~30%ほどあるので、ちょっとした動作で体を動かしたりする運動を取り入れていきましょう。
年齢を重ねて基礎代謝が下がってくると、運動量を増やすか、食べる量や食事内容といった食生活を見直さないと、体脂肪がつきやすい状態になるのです。
基礎代謝が消費エネルギーの肝なので、できるだけ基礎代謝を下げない習慣も取り入れましょう。有酸素運動や筋トレで筋肉を鍛え、基礎代謝を上げるのが、体脂肪を減らすのに有効なのです。
体脂肪は、摂取エネルギーが余るとすぐに増えやすく、脂肪細胞のエネルギーを使う状態にならないと減らないため、体脂肪率を下げるのは簡単ではありません。
体脂肪率を下げるには、食生活や運動習慣の見直しをすると効果が高いです。
ダイエットに食事制限はつきものですが、何も考えずにカロリー制限をすると、脂肪だけでなく筋肉も落ちて基礎代謝が下がってしまいます。その結果、体脂肪が溜まりやすい体質になってしまうケースも。
健康を維持しながら体脂肪を減らすには、高たんぱく・低脂質・中炭水化物を意識し、ビタミンやミネラルも摂りつつ、バランスのとれた食事をするのが理想です。
食べ物をよく噛むようにして、食欲が満たされやすくなるよう工夫しつつ、腹八分目の食事を目指すのも効果的。
また、キノコ類やひじきなどの海藻、こんにゃくに多く含まれる食物繊維を、できるだけ毎食摂るようにしてみましょう。
食物繊維は、繊維質が多く自然とよく噛んで食べるため食べすぎの対策になるほか、血糖値の急上昇を防いだり、コレステロール値を下げたりと、健康維持に有用なのです。
筋トレして基礎代謝を上げたり、ジョギングなどの有酸素運動で脂肪を効果的に燃焼させるのは、体脂肪率を下げるのに非常に有効です。
積極的に運動習慣を身につけましょう。
また、特別な運動をするのは大変すぎて続かない方におすすめなのが、毎日行う動作を少し変えて、余計に体を動かし運動量を増やす方法です。
例えば上記の工夫を取り入れ、毎日行う動作が自然な運動になれば、無理せず運動を続けられるでしょう。
体重を定期的に測るとよいとされているのは、日々の体調管理や、ダイエットもしくは健康増進の意識付けに役立つから。
同じように、体脂肪率を意識して定期的に測るのも、体調管理・ダイエット・健康増進に役立ちます。
年齢とともに肥満が気になってきた方は、ぜひ定期的に体脂肪率を測り、上がりすぎないように、食事や運動習慣の改善を意識した生活を心がけてみましょう。
肥満度を測る指標として一般的に広く使用されるのは、BMIです。
しかし、BMIは単純に体重と身長から算出される数値であるため、体脂肪は考慮されていません。
上述したように内臓脂肪が多い方などはBMIでは肥満に該当しなくても、体脂肪率から考えると肥満に該当する方は少なくないのです。
特にダイエットをするとき、体脂肪率は減量や運動量の目安として非常に重要な指標となります。単に食事制限をして体重を落とすだけではなく、体脂肪率を把握して体脂肪率の低下を目指すことが大切です。
体脂肪率を正確に測定するのは難しいですが、家庭用の体重計に体脂肪を測定する機能が搭載されている場合もあります。これらの機器を上手く活用しながら理想的な体型と健康を維持していきましょう。
各ブランドの商品一覧をご確認いただけます。