監修医師木村眞樹子
東京女子医科大学医学部卒業後、東京女子医科大学病院循環器内科入局。
現在も東京女子医科大学病院、および関連病院で内科、循環器科、睡眠科として診療にあたるほか、嘱託産業医として企業の健康経営にも携わっている。
コレステロールの数値が高い原因は、生活習慣の乱れや女性の体の変化などが考えられます。
通常は「善玉」と呼ばれるHDLコレステロールと、「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロールのバランスが保たれています。しかし、乱れた食生活や運動不足が続くと、「悪玉」が高くなりやすいのです。
コレステロールの働きや「高い」と言われる基準、LDLコレステロールの数値を低下させるための生活習慣について解説していきます。
コレステロールとは人間の体に存在する脂質の一つです。悪者のイメージがありますが、細胞膜やホルモン、胆汁酸をつくる材料となり、体には欠かせない物質です。
約7~8割は糖や脂肪から肝臓などで合成され、2~3割は食事から取り入れられます。
コレステロールは血液の流れにより、全身の必要な場所に運ばれますが、そのままでは血液中に溶け込めません。「リポタンパク質」と呼ばれる粒子に変化し、血液に溶け込みます。
リポタンパク質は複数あり、働きにより分類されLDLコレステロールは「悪玉」、HDLコレステロールは「善玉」と呼ばれるのです。
ふたつのコレステロールの役割と、近年特定健診(※)の結果表で目にするようになった「Non-HDLコレステロール」について見ていきましょう。
※特定健診とは:40~74歳の人の健康リスクに着目した健診
LDLコレステロールは、肝臓でつくられたコレステロールを全身に運ぶ役割があります。健常者では測定した値が通常の範囲であれば問題ありません。
しかし増えすぎると血管の壁にたまり、健康のリスクを高める可能性があります。なお、喫煙をされていたり、基礎疾患がある方ではLDLコレステロール値は低く抑えておくことが勧められています。
HDLコレステロールは、余分なコレステロールや、血管の壁にたまったコレステロールを取り除き、肝臓へ戻す働きがあります。不足するとコレステロールがうまく取り除けなくなってしまいます。
Non-HDLコレステロールとは、総コレステロール(血液中に含まれるすべてのコレステロール)からHDLコレステロールを引いた値です。
LDLコレステロール以外のコレステロールも含まれ、健康リスクの指標の一つになります。空腹時でない場合などに用いられます。
LDLコレステロール値は血液検査でわかります。高い人は、会社の健康診断や人間ドックで指摘される場合が多いでしょう。「高い」と言われる基準を表に示しました。
ただし、高い場合でも、すぐ生活に影響が出るわけではありません。
自覚症状がないため、知らず知らずのうちにどんどんLDLコレステロールが血管にたまり、健康を損なう可能性も。コレステロール値が高いと言われた人は、生活習慣を見直す必要があります。
LDLコレステロール値が「高い」と言われたとき、真っ先に食事を思い浮かべる人は多いでしょう。しかし他にも、運動不足や女性の体の変化が原因となる場合があります。考えられる原因を、それぞれ見ていきましょう。
脂質や糖質の多い食生活を続けると高くなります。とくに血液中でたまりやすいのは「コレステロール」「飽和脂肪酸」「トランス脂肪酸」です。
鶏卵やバター、ショートニングなどを使った食品は、食べ過ぎないよう注意が必要です。
運動不足は、HDLコレステロールを減少させ、LDLコレステロールを増加させる原因になります。日頃運動ができているか、振り返ってみましょう。
肥満の人はHDLコレステロールがうまく働かず、LDLコレステロール値は高めになります。余分なコレステロールをうまく取り除けず、コレステロールがたまってしまうためです。
しかし、痩せていても数値が高い人もいます。原因として女性の体の変化や、遺伝が考えられます。
年齢による女性特有の体の変化は、LDLコレステロール値を高めると考えられており、とくに40~50代の女性は注意したい点です。
女性ホルモンは、余分なLDLコレステロールを回収する働きや、HDLコレステロールを増やす働きがありますが、閉経を境に女性ホルモンが減ってしまいLDLコレステロールは増加してしまうのです。
体質や遺伝が関係している場合もあり、注目されています。この場合は健常者に比べて健康リスクが高いことでも知られており、若年の頃から高コレステロール値を指摘されている場合には早めに精密検査と治療介入の検討が必要です。
LDLコレステロール値を下げるためには、バランスのよい食事、適度な運動など生活習慣が大切です。コレステロール値が高いと指摘された人は、以下に挙げる生活習慣の改善ポイントを参考にしてみてください。
控えたい食品や、積極的にとりたい食品など食生活のポイントを5つ紹介します。
飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、コレステロールのとりすぎは、LDLコレステロールを高くします。バターたっぷりの洋食や、コッテリ油で揚げたファストフードなどを毎日食べている人は要注意です。
控えたい食品と対策を表にまとめました。
植物油には不飽和脂肪酸が含まれており、健康へのよい働きが話題となります。なかでも注目したいのは、「亜麻仁油」です。
亜麻仁油にはオメガ(n-3)系脂肪酸(※)であるα-リノレン酸が多く含まれています。α-リノレン酸には血中の悪玉(LDL)コレステロール値を低下させる機能があると報告されています。
毎日の食事に取り入れてみるとよいでしょう。日本人の食事摂取基準(2020年版)では、1日の摂取目安量を表のとおり定めています。
※オメガ(n-3)系脂肪酸:体に欠かせない脂肪分類の一つ
【n-3系脂肪酸の食事摂取基準(g/日)】
表の量は、亜麻仁油小さじ1杯相当です。熱に弱く、酸化しやすい性質があるので、かけたり、つけたりしてそのまま摂取するようにしてください。以下の食べ方がおすすめです。
青魚に含まれる成分は、LDLコレステロールを減らす働きがあるとされています。次の点を考慮し、摂取できるとよいでしょう。
食物繊維は、コレステロールを体外に排出させる働きがあります。現代の日本人に不足している栄養素でもあるため、積極的にとりましょう。
LDLコレステロール値が高い間は、アルコールの摂取は控えましょう。飲酒しなければならない場合は、ビールなら500ml、日本酒は180ml(1合)、ワインは180ml以下が望ましいです。
定期的な運動も欠かせません。少なくとも週3回、できれば毎日続けましょう。
運動の種類は、ウォーキングや水泳、エアロビクス、サイクリングなどの有酸素運動が適しています。1日30分以上が望ましいです。運動時間の30分は続けて行っても、10分ずつ3回にして行ってもよいです。
「少しきつい」と感じる強さで行いましょう。運動する時間の確保がむずかしい人は、普段の生活でできる工夫をしてみてください。
通勤の際、一駅手前で降りて歩く、テキパキと掃除をする、子どもと体を動かし遊ぶなどがよいでしょう。家の中であればスクワットなどの筋トレも効果的です。
家事の合間やテレビCMのときなど、すきま時間にやってみるのもいいですね。
LDLコレステロール値が高くても、対策が分からなかったり、忙しかったりして何もしていない人がいるかもしれません。
「痛い」「つらい」など感じないため、放置している人もいるでしょう。しかしそのままにしておけば、いずれ健康に影響を及ぼす可能性があります。
早めに生活習慣を改善し、健康な生活を維持していきましょう。定期的な健康診断も忘れずに。
バランスのよい食事や定期的な運動は健康の基本です。忙しい日々のなかでも、上手に時間を作って、少しずつ改善していきましょう。
コレステロール値の異常で症状がでることはありません。しかし、長期間にわたって高LDL血症、低HDL血症が続くと、動脈硬化が進行してしまいます。
定期的に健康診断を受けることで、早めに異常を把握し、早めに治療を始めることができます。結果、心臓病や脳卒中のリスクを減らすことができるでしょう。
経時的な変化をみることも大切ですので、毎年健診を受け、前回の結果と比較してみることもおすすめです。
※コレステロールに関して正しい情報発信を行うために、専門家に監修を依頼しております。亜麻仁油の商品(サービス)について専門家が推薦を行うものではありません。
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