監修医師木村眞樹子
東京女子医科大学医学部卒業後、東京女子医科大学病院循環器内科入局。
現在も東京女子医科大学病院、および関連病院で内科、循環器科、睡眠科として診療にあたるほか、嘱託産業医として企業の健康経営にも携わっている。
コレステロールの数値を下げた方がよいと、医師から言われた場合はどうしたらよいでしょう。
コレステロールは有酸素運動により効果的に減少するので、屋内でもできる具体的な運動方法や必要とされる時間・強度を知って、日々取り入れるのが大切です。
継続させる方法や、運動量を増やす生活習慣の工夫も紹介しますので、ぜひ有酸素運動を習慣化し、健康診断での数値を気にしなくてよい生活を目指しましょう。
健康診断でコレステロール値の高さを指摘され、健康のために運動を増やしてコレステロール値を下げましょうと言われた方は多いのではないでしょうか。
コレステロールとは脂質の一種で、細胞膜やホルモン・胆汁酸の原料となる人間に必須の物質です。
脂質であるコレステロールは血中を流れる際、血液になじみやすいようにアポタンパクと結合して「リポタンパク」という粒子になります。
リポタンパクの粒子に含まれる脂肪とタンパク質の量によって、比重が異なる5種類のアポタンパク質に分けられるのです。
おもに、LDLコレステロール(低比重リポタンパク・悪玉コレステロールとも)とHDLコレステロール(高比重リポタンパク・善玉コレステロールとも)に分けられます。
LDLやHDLは、血中のコレステロール値を示す指標として健康診断での検査項目になっており、耳にする機会も多いのでは。
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)には、肝臓で作られたコレステロールを全身に運ぶ働きがあります。
一方、HDLコレステロール(善玉コレステロール)には、増えすぎたコレステロールを回収し、血管壁にたまったコレステロールを取り除いて肝臓に戻す働きがあります。
総コレステロール値が極端に高すぎる場合や、LDLコレステロール値が高すぎる場合は、血管への悪影響などの健康リスクがあるため要注意。
また、きっかけなく急激にLDLコレステロール値が下がったときには、肝機能異常やホルモン異常などほかの疾患が隠れている可能性があるので注意が必要です。
現代人はコレステロール過剰になりやすく、健康のためにはコレステロール値を意識して、高い数値を指摘されたら下げるよう対策しましょう。
コレステロール値を下げるのに、大きな効果が期待できるのが有酸素運動です。
人類の長い歴史の中で、ほんの100年前までは飢餓と隣り合わせの時代であり、コレステロールが体のエネルギーを蓄える貯蔵庫の役割を果たしていた時代もありました。
しかし、現代は飽食の時代をへて食生活が大きく変わり、LDLコレステロールを増やしやすい飽和脂肪酸といった脂質を摂取する機会が増えました。
さらに日常生活が便利になり、運動する機会が減ったいま、コレステロールは過剰にたまりやすく、日頃から注意すべきなのです。
コレステロール値を下げるために、全てのコレステロールを減らせばよいわけではありません。
HDLコレステロール(善玉コレステロール)は血管にはりついたコレステロールを回収してくれるので、基本的には増えた方がよいとされているのです。
近年LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の中でも、とくに小型LDLコレステロール(超悪玉コレステロール)は酸化しやすく、増加すると健康リスクが非常に高くなると分かってきました。
コレステロールはバランスが重要であり、また体質は個人差があるため、全員に当てはまるわけではありませんが、現代人はLDLコレステロール値を意識して下げた方がよいとは言えるでしょう。
運動の中でも、有酸素運動によってコレステロール値は低下します。
有酸素運動とは、酸素を使って体内の糖質や脂質をエネルギーに変えて筋肉を動かす、ウォーキングや水泳といったある程度長時間継続して行う運動です。
研究により、有酸素運動にはHDLコレステロールを増加させる効果があると分かっています。
また有酸素運動により脂質の代謝が向上し、余った脂質を消費しやすくなるため、さらにコレステロール低下につながるのです。
厚生労働省の健康情報サイトでも、有酸素運動中心のメニューによるコレステロール値改善が推奨されています。
実際、どれくらいの時間や強度の有酸素運動が必要でしょうか。
過去の論文や検証によると、ややきついと感じられる程度の、中強度以上の運動を1日合計30分以上行うと効果が出やすいとされています。
運動の強度は、少し息が上がるくらいの、心拍数が安静時と比べて1分あたり40%~60%程度増える程度をひとつの目安にしてみてください。
厚生労働省のWEBサイトでは、1日30分程度の運動をできれば毎日、少なくとも週3回以上行うのを推奨しています。
一度に30分行う必要はないため、手の空いた時間に軽い運動を何度か行うのもよいでしょう。
あまりに強度がきつい運動はストレスになり、ストレスホルモン分泌によってLDLコレステロールが増えてしまい逆効果となる恐れも。
また、きつい運動をいきなり取り入れて怪我など体を傷める恐れもあるため、避けたほうが良いでしょう。
筋トレといった強い力を瞬間的に発揮する運動が無酸素運動です。
無酸素運動は、筋肉を動かすエネルギーを生成するのに酸素と脂質を使わないため、LDLコレステロール値を下げるためには有酸素運動のほうがよいとされています。
しかし、無酸素運動は筋肉量・基礎代謝の増加につながり、脂肪を燃焼しやすい体となるので、無酸素運動後に有酸素運動を行うと、脂肪燃焼効果が高まるのです。
有酸素運動を中心としながらも、無酸素運動を取り入れつつ毎日の運動量を増やすのもよい方法でしょう。
有酸素運動といっても何をすればよいか悩む方のために、継続しやすい効果的な運動について、いくつか紹介します。
無理をするとストレスになるので、大きな負担にならない程度の、自分に合った簡単な運動から始めてみましょう。
生活習慣を工夫し、なるべく体を動かす習慣を取り入れるのも効果的です。
大きめの歩幅で、少し早めに歩くウォーキングは、ストレスなく30分程度の中強度の有酸素運動をするのに理想的な運動です。
両腕を前後に大きくふり、大きめの歩幅(身長の半分よりやや小さめくらい)で歩きましょう。
コースを変える、ウォーキングアプリを使用してモチベーションを維持させるといった、飽きずにウォーキングを続ける工夫も大切です。
毎日継続的に運動するには、悪天候の日でも屋内で手軽にできる運動を見つけて習慣化しましょう。
忙しくて時間のない方も、何かしながらや、ちょっとした時間や簡単な道具だけで行える運動ならば室内で運動しやすいはずです。室内でできる有酸素運動をいくつかご紹介します。
20cm程度の高さの体重を乗せて大丈夫な台をダンボールなどで準備し、昇り降りを繰り返す踏み台昇降運動はおすすめです。
実際にやってみると、ウォーキングより少しきつく、効果的な有酸素運動だと実感できるでしょう。
時間がない方や足腰が弱った方向けの屋内運動として、太ももを高く上げるその場足踏みや、椅子に座ったままで大きく腕を動かす腕だけ走りがあります。
他の作業をしながらでもできる簡単な運動で強度は低めとはいえ、十分有酸素運動として効果があるので試してみましょう。
縄跳びは、強度が高めの有酸素運動であり、場所は取らないため、実践しやすい運動の一つです。前跳びに慣れてきたら二重跳びなどの他の跳び方にも挑戦し、楽しく運動を続けましょう。
朝起きてすぐや寝る前の15分に、ヨガを取り入れてみませんか。
布団や専用のマットの上で、「板のポーズ」「猫の伸びのポーズ」「戦士のポーズ」などにトライしてみましょう。
ゆっくり体を動かすヨガは、強度は低めの有酸素運動であり、高齢になっても無理なくできる利点があります。
生活習慣を変えて、毎日の有酸素運動の時間を増やすのは効果的です。
以下の工夫を実践し、日常生活でなるべく体を動かすよう意識すると、自然と効果が出るほどの運動になるでしょう。
コレステロール値を下げるのに毎日の有酸素運動が効果があるのは間違いないですが、運動を続けるのは簡単ではなく、ストレスになってしまっては元も子もありません。
「日々の買い物とウォーキングを合わせる」「歩いた歩数を記録したりヨガの新しいポーズに挑戦して、小さな達成感を積み上げる」「ドラマや映画を観ながらその場足踏みする」「誰かと一緒にウォーキングする」といった、無理せず自分なりに運動を継続させる方法を見つけるのがおすすめです。
ぜひ積極的に継続できる運動習慣を身につけて、コレステロール値を気にしなくてよい生活を目指しましょう。
生活習慣病のコントロールには、有酸素運動は効果的といわれています。一方で、基礎代謝アップにはレジスタンストレーニングが効果的です。
運動するのであれば、有酸素運動だけでなく、レジスタンス運動も取り入れることをおすすめします。
また、コレステロール値におけるコントロール目標値は、基礎疾患がある場合には変わってくることがあります。かかりつけ医と相談しながら治療を行ってください。
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