監修医師齋藤幹
さいとう内科・循環器クリニック院長
公式HP:https://saito-heart.com/
1996年北海道大学医学部卒業後、東京大学医学部附属病院にて内科研修。
その後東京大学医学部付属病院(循環器内科)や専門病院での経験を経て、2019年に「さいとう内科・循環器クリニック」を開業。
医学博士、内科認定医、総合内科専門医、循環器専門医・指導医、臨床研修指導医
内臓脂肪は臓器を保護するために必要な脂肪ですが、増えすぎると見た目が悪くなったり、健康に悪影響を及ぼしたりします。
筋トレや有酸素運動を生活習慣に取り入れると、消費カロリーが増えて、徐々に内臓脂肪を減らしてくれるのです。
ただ、脂肪燃焼のメカニズムや運動ごとの特性を知らずに取り入れても、内臓脂肪は減らないかもしれません。あなたに合ったトレーニングで脂肪を燃焼させましょう。
私たちの体についている脂肪は「皮下脂肪」と「内臓脂肪」の2種類に分かれ、脂肪のうち、内臓の周りにつく脂肪を「内臓脂肪」といいます。
内臓脂肪は臓器を保護する役割があるため、私たちの体にある程度ついていますが、増えすぎると、血圧や血糖値が変動して健康に悪影響を及ぼします。
まずは、内臓脂肪がつくメカニズム・体への影響を理解しましょう。
内臓脂肪は1日の摂取カロリーが、代謝活動で消費されるカロリー(消費カロリー)を上回ると、体につきやすくなります。
私たちは、以下3つの代謝活動で摂取カロリーをエネルギーとして消費しています。
まずは、あなたの「1日の推定エネルギー消費量」を把握しましょう。推定エネルギー消費量および基礎代謝量は、以下の式で算出できます。
・ 推定エネルギー消費量(kcal/日) = 基礎代謝量(kcal/日) × 身体活動レベル
・ 男性の基礎代謝量(kcal/日)= 66.4730+13.7516×体重(kg)+5.0033×身長(cm)-6.7550×年齢(歳)
・ 女性の基礎代謝量(kcal/日)= 655.0935+9.5634×体重(kg)+1.8496×身長(cm)-4.6756×年齢(歳)
推定エネルギー消費量(kcal/日)=( 655.0935+9.5634×55+1.8496×160-4.6756×40)×1.5 ≒ 1,935kcal
内臓脂肪はお腹まわりに溜まりやすいため、下半身よりもウエストが太くなる「リンゴ型肥満」になりやすいです。
また、内臓脂肪が余分についてしまうと、体が動きづらくなるだけではなく、血液中の脂質や血糖が増えたり、血圧が高くなったりして、体調悪化につながってしまう場合も。
内臓脂肪は皮下脂肪と違い、体の内側についているので、見た目は普通でも体脂肪率が高くなる傾向にあります。
現在の体型や体脂肪率を把握して、正常範囲まで内臓脂肪を減らしましょう。
筋トレや有酸素運動は、内臓脂肪を減らす効果的な方法です。運動で減るメカニズムを中心に確認していきましょう。
私たちは、食事から摂取した三大栄養素(糖質・脂質・タンパク質)をエネルギー源として利用しています。
1日の摂取カロリーが消費カロリーを下回ると、不足分を補うために、筋肉や肝臓に貯め込まれているグリコーゲン(糖質)や内臓脂肪が使われます。
内臓脂肪を減らすためには、「摂取カロリー<消費カロリー」の状態を作る必要があるのです。
運動には筋肉量や必要エネルギー量を増やして、消費カロリーを上げる働きがあります。
消費カロリーの上限が高くなるほど、エネルギーとして内臓脂肪が使われやすくなるため、燃焼効率が上がるのです。
私たちの体は運動の種類によって、利用するエネルギーの種類が変化します。
筋トレのみだと、グリコーゲンや炭水化物(糖質)をメインのエネルギー源とするため、内臓脂肪はなかなか消費されません。
ただ、筋トレで筋肉量を増やすと「活動代謝」が向上するため、消費カロリーの上限が高くなります。筋トレには間接的に内臓脂肪を減らす効果があるのです。
参考:全米ストレングス&コンディショニング協会「NSCA パーソナルトレーナーのための基礎知識」 P31~41
筋トレと有酸素運動を組み合わせると、より内臓脂肪を減らしやすくなるでしょう。
有酸素運動のみでも内臓脂肪は減りますが、炭水化物やグリコーゲンをエネルギーとして利用する場面が多く、脂質がエネルギー源になるまでに20分以上かかってしまいます。
筋トレで体内の糖質を使い切った後に有酸素運動を行うと、エネルギー源が脂質に切り替わりやすくなり、内臓脂肪を効率的に燃焼してくれるのです。
以下で紹介している筋トレと有酸素運動を組み合わせて、内臓脂肪を減らしていきましょう。
筋トレは消費カロリーの上限を高めて、内臓脂肪を燃焼しやすくする運動です。運動習慣のない方でも、自宅で実践しやすい2つのトレーニングを紹介します。
スクワットは筋トレの王道トレーニングで、体のなかでも大きな筋肉が多い「脚」全体を鍛えます。
勢いよく立ったりしゃがんだりすると、筋肉や関節を痛めてしまう恐れがあるので、2~3秒かけてゆっくりと動作を行いましょう。
プランクは正しい姿勢を支えるための「腹筋」を鍛える種目です。腹筋が辛くなると、お尻が上がりやすくなります。筋肉に効かせるためにも、なるべく上がらないように意識して、体勢をキープしましょう。
有酸素運動のみだと、内臓脂肪がエネルギー源として消費されるまで20分以上かかるため、長時間続けやすいジョギングやウォーキングなどの軽い運動でもOKです。
厚生労働省は内臓脂肪の減少を目的とする場合、「週10メッツ(※)/時」以上の有酸素運動を推奨しています。
※メッツとは、安静時を1とした時と比較して何倍のエネルギーを消費するかで、運動や身体活動の強度を示した単位です。
10(メッツ/時)÷4(メッツ)= 1週間で2.5時間以上の有酸素運動が必要
運動の強度や時間はトレーニングによって変わるので、体の状態に合わせて無理のない範囲で取り入れましょう。
内臓脂肪を減らすならエクササイズも効果的です。エクササイズはウォーキングやランニングと違い、複数の種目を1セットでこなせるため、楽しく体を動かしながらカロリーを消費できます。
今回はボクシングの基本動作を取り入れたエクササイズを紹介します。
1回の動画運動量の目安(※体重60kgのひとの場合)
活動強度:5METs / 運動時間:3.5分 / 消費カロリー:18.4kcal
ボクシングの基本動作であるジャブやフック、アッパーを、エクササイズに取り入れているため、腕だけでなく全身の筋肉を使えます。特にフックは体をねじる動きも同時に行うので、お腹の横の筋肉(腹斜筋)を重点的に鍛えられます。
エクササイズの途中で10秒程度の休憩を挟みますが、約3分間全身を動かし続けるため、運動経験のない方は途中で疲れてしまう可能性があります。体力の限界を超えた状態で動き続けると、筋肉の疲労が抜けにくくなるので、疲れを感じたら無理をせずに休みましょう。
今回のエクササイズは有酸素運動なので、長時間続けるほど脂肪も燃焼していきます。慣れてきたら2セット、3セットと回数を増やしてみましょう。中腰の姿勢をキープしたままエクササイズを続けると、常に太ももやお尻の筋肉に負荷がかかります。下半身の筋肉も同時に鍛えたい方は、ぜひ実践してみてください。
運動も大切ですが、内臓脂肪を減らすためには生活習慣を見直す必要があります。該当する方は、徐々に改善していきましょう。
内臓脂肪を減らすためにはカロリー管理が大切です。ただ、栄養素の偏った食事を続けると、体に悪影響を及ぼすリスクが上がります。
とくにエネルギー源となる「三大栄養素」はなくてはならない存在です。バランスのよい食事と定期的な運動習慣で、健康を保ちながら内臓脂肪を減らしましょう。
参考:岡田 隆 竹並 恵里「筋肉をつくる食事・栄養パーフェクト事典」P32~33
アルコールは1gあたり7kcalの高カロリー物質なので、アルコールの量が増えるほど、1日の総摂取カロリーが高くなり、内臓脂肪が体に溜まりやすくなります。
さらにアルコールは優先的に消費されるため、本来使われるはずだった三大栄養素が体内に残ってしまい、そのまま内臓脂肪としてつきやすくなるのです。
アルコールの飲みすぎは、血圧や血糖にも影響を及ぼし健康に悪影響なので、1日の飲酒目安量(純アルコール約20g)を守りつつ、週2回以上は休肝日を作りましょう。
睡眠時間が不足すると、食欲を抑えるホルモンであるレプチンの分泌量が減少し、食欲を増進させるホルモンであるグレリンが増えるため、内臓脂肪がつきやすい体になります。
また、睡眠は私たちが思っている以上に重要で、睡眠不足の状態が長期間続くと、健康に対して悪影響を及ぼします。
ジョギングやウォーキングといった軽い運動は、快眠を得るために重要です。運動習慣と睡眠時間を確保して、内臓脂肪を効率的に減らしましょう。
内臓脂肪は体の内側に隠れているので、見た目ではなかなかわかりません。
まず、あなたのお腹のウエストを計ってみましょう。女性なら90cm以上、男性なら85cm以上で「内臓脂肪型肥満」となります。
該当した方は、健康的な生活を送るためにも、規則正しい生活と運動で内臓脂肪を減らしていきましょう。
内臓脂肪型肥満は糖尿病、高血圧、心臓疾患などのリスクを増加させるため、とくに注意が必要です。
有酸素運動は内臓脂肪を減らすための効果的な方法ですが、スクワットやプランクなどの自宅でできる筋トレにも積極的に取り組んでいただきたいです。
適切な食事、運動、質の高い睡眠を組み合わせて、内臓脂肪を減少させましょう。
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