監修医師成田 亜希子
2011年医師免許取得。初期臨床研修を経て総合診療医として幅広い分野の治療に携わる。
臨床医として勤務しながら、行政機関での勤務経験もあり地域の健康課題にアプローチした健康寿命延伸、感染症対策などの医療行政にも携わってきた。
国立保健医療科学院、結核研究所での研鑽も積む。
現在、医療法人ウェルパートナー主任医師。
HDLコレステロールは善玉コレステロールともいわれ、体にとってよい働きをするコレステロールです。低い場合には改善が必要であり、食事や運動といった生活習慣の見直しが欠かせません。今回の記事では、HDLコレステロールの増やし方について、増やす食べ物や飲み物はあるのかについても、あわせて解説します。またHDLコレステロール値が高い場合の原因や注意点もお伝えするため、ぜひ最後までチェックしてみてください。
HDLコレステロールの働きは、余ったLDL(悪玉)コレステロールや血管の壁に沈着したLDLコレステロールの回収です。LDLコレステロールは増えすぎると血管の壁にたまってしまい、プラークという物質に変化して血管を狭め、動脈硬化を引き起こします。その結果、将来的に心筋梗塞や脳梗塞などの病気を引き起こすリスクを高めます。
このように、HDLコレステロールは体にとってよい働きをするため「善玉コレステロール」とも呼ばれています。HDLコレステロールが体内に十分にある状態をキープするのが、健康づくりには欠かせないのです。
HDLコレステロール値は、低いと体にあらゆる影響を引き起こします。基準値と影響について見てみましょう。
HDLコレステロール値は40mg/dL以上が正常値です。40mg/dL未満では、HDLコレステロールが低いとされる状態となります。
HDLコレステロール値が低くなると、LDLコレステロールを回収しきれなくなります。そのため血管の壁にLDLコレステロールがたまりやすくなり、動脈硬化になりやすい状態を作ってしまいます。
はじめは自覚症状がないまま進行するため、HDLコレステロールが低いとわかった場合は、のちほど紹介する対策を早めに取り組むようにしましょう。
HDLコレステロール値が低い場合だけでなく、LDLコレステロール値が高い場合も注意が必要です。LDLコレステロールがたくさんある状態に加えて、LDLコレステロールを回収するHDLコレステロールが少ないため、病気のリスクが高まります。
個人の状態によって望ましい数値は異なるため、健康診断などでコレステロール値の異常を指摘された場合は、医療機関へ相談するようにしましょう。
HDLコレステロール値が低くなる原因は、運動不足や食習慣の乱れ、喫煙などがあります。そのため生活習慣の見直しが欠かせません。HDLコレステロールを増やすために工夫できる点について詳しく解説します。
HDLコレステロールを増やすには、運動が効果的であると知られています。有酸素運動と筋力トレーニングの効果について見てみましょう。
ウォーキングや速歩などの有酸素運動を行うと、HDLコレステロール値の改善につながるのが分かっています。またLDLコレステロール値も低下させるため、コレステロール値が気になる方はぜひ取り組みたいものです。
運動の頻度と時間の目安は「30~60分以上の運動を週3日以上」とされています。ウォーキングや速歩のほかにも、エアロビクスダンス・スロージョギング・サイクリングもすすめられています。
ただし運動習慣のない方は、ストレッチやウォーキングといった軽い運動からはじめるようにし、徐々に運動強度をあげていくようにしましょう。無理のない範囲で長く継続するのがポイントです。
筋力トレーニングにより、HDLコレステロール値が改善したという報告があります。筋力をつける基礎代謝が向上して脂肪が燃焼されやすくなるため、積極的に行いたい運動です。
週2~3回行うのがよいとされているため、スクワットや腕立て伏せ、ダンベル体操などの筋力トレーニングを無理のない範囲で行ってみましょう。
肥満の方は、標準体重に近づけるようにしましょう。糖質や脂質を控えめにして、消費エネルギーよりも摂取エネルギーを減らすのがポイントです。
野菜たっぷりの食事を心がけると、エネルギーを抑えながら満足感をキープした食事となります。
また、水溶性食物繊維は腸内でのLDLコレステロールの吸収を抑える働きがあるため、バランスよく食事に取り入れるとLDLコレステロールを減らしてHDLコレステロールを増やす効果も期待できます。
喫煙をしている方は、HDLコレステロール値を下げるために禁煙が欠かせません。禁煙により、HDLコレステロール値の改善が期待されています。また禁煙により、血管が硬くなったり狭くなったりするのも防げるため、将来的な健康づくりにも役立つでしょう。
禁煙は2~3日後に離脱症状(禁断症状)があらわれ、10~14日ほどまで続くとされています。この期間を乗り切れるよう、気持ちの切り替えや代わりになる行動を探しておくのが禁煙成功のポイントです。ご自身だけでは禁煙が難しい場合は、禁煙外来を活用も検討しましょう。
HDLコレステロールを増やす食べ物や飲み物について、直接的に効果が期待されているものは、現時点ではわかっていません。
つい、効果の期待できる食べ物や飲み物を取り入れたくなるかもしれません。ですが、今まで説明した通り、運動、肥満の解消、禁煙といった試みが大切であるといえます。
ただし、HDLコレステロール値が低いだけでなく、LDLコレステロール値が高い場合には、下記の摂取がすすめられています。
普段の食生活に意識して取り入れてみましょう。
HDLコレステロール値が高い場合、原因や対処法が気になる方もいるでしょう。
HDLコレステロール値が高くなる原因は、日本人ではCETPというタンパク質の欠損が考えられており、体質の一種とされています。生活習慣や治療では下げられず、必要性もないといわれています。
注意したいのは、LDLコレステロール値も高い場合です。HDLコレステロール値が高いので心配ないかと思うかもしれませんが、LDLコレステロール値が高いと動脈硬化のリスクが高くなるため、食生活や運動習慣の改善が必要となります。
HDLコレステロール値だけでなくLDLコレステロール値にも注意し、適切な対処法を行いましょう。
HDLコレステロールを増やすには、適度な運動・肥満の解消・禁煙が大切です。LDLコレステロール値の改善も必要な場合には、あわせてEPA・DHA・α-リノレン酸といったオメガ3系脂肪酸や、水溶性食物繊維の摂取も欠かせません。コレステロール値の異常があっても、はじめは自覚症状がありません。ですが、早めの対処が将来の健康を守るために大切です。ぜひできる取り組みからはじめてみましょう。
善玉コレステロールと呼ばれるHDLコレステロールは、動脈硬化の原因となる悪玉コレステロールであるLDLコレステロールを回収する働きがあります。
HDLコレステロールが少なくなると動脈硬化のリスクが高まり、将来的に心筋梗塞や脳梗塞など命に関わる病気を発症しやすくなるため注意が必要です。
コレステロール値が気になる方は、今回ご紹介した運動や食事などの生活習慣を見直してみましょう。
ただし、コレステロール値の異常は自覚症状がほとんどありません。そのため、気付かない内に動脈硬化が進行してしまうケースも少なくありません。
ご自身のコレステロール値を知るには健康診断や人間ドックなどで血液検査を受ける必要があります。特に気になる症状や体の変調がない場合でも、年に1度は健康診断や人間ドックを受けてご自身の体の状態を把握するようにしましょう。
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