一般的な漢方薬の服用方法は?基本的な飲み方は?
基本的に、漢方薬は胃が空な時に飲みます。水か白湯で食前(食事30分前)もしくは食間(食後2時間)に飲むのが一般的です。
ただ、お湯でも、鉄瓶で沸かしたお湯で飲むのはおすすめできません。漢方薬の多くは、本来は生薬を混ぜて煎じて飲む薬ですが、煎じる時に鉄瓶を使ってはいけないとされているからです。
漢方薬は他の薬と併用しても大丈夫?
多くの場合、漢方薬は他の漢方薬や西洋医学の薬と併用しても大丈夫です。ただし、併用してはいけないケースはいくつかあるので、気をつけましょう。
具体的に言うと、複数の漢方薬を同時に飲む場合、特定の生薬が多くなりすぎて、重複した生薬の副作用が現れるケースがあります。
また、漢方薬と西洋医学の薬との相互作用で副作用が現れる場合があり、飲む前には必ず含有生薬や成分を確認するのが大切です。
漢方薬を2種類または数種類併用する場合の注意点
複数の種類の漢方薬を飲む上で気をつけるべき点を紹介します。漢方薬を複数飲んだときの副作用は、生薬の重複が原因になる場合が多いのです。重複すると副作用が強く出る生薬の例をいくつか見てみましょう。
麻黄(まおう)
麻黄は葛根湯、麻黄湯、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)などに使われます。体を温め巡りをよくする生薬です。麻黄はエフェドリンを含み、エフェドリンは交感神経(心身が高ぶるときの神経)を興奮させるので、多すぎると不眠・動悸・多汗が現れます。
また、気持ちが興奮したり、逆に脱力してしまう場合もあるのです。体が弱い人だと、麻黄を含む漢方薬1種類だけで副作用が出るケースも。
甘草(かんぞう)
全漢方薬のおよそ2/3ほどの種類に含まれます。胃腸に力をつけたり他の生薬の副作用を緩和したりする生薬です。甘草はグリチルリチン酸を含み、グリチルリチン酸が多いと偽アルドステロン症になってしまいます。偽アルドステロン症の症状は、低カリウム血症・低カリウム血症による手足の脱力・むくみ・高血圧・高血圧による頭痛などです。ひどい場合は筋力低下で歩いたり立ったりができなくなり、入院になるでしょう。
1日に甘草5~7g以上をとると偽アルドステロン症になると言われていますが、加齢によって代謝が落ちていると5g以下の甘草でも偽アルドステロン症になってしまう場合があります。
大黄(だいおう)
防風通聖散などに含まれる血行をよくする生薬ですが、同時に下剤として使われる生薬です。多すぎると下痢になってしまいます。また、母乳に成分が移行する生薬なので、大黄を含む漢方薬は授乳中に飲むのはやめましょう。
附子(ブシ、ブシ末)
八味地黄丸(はちみじおうがん)などに含まれます。体の内側を強力に温める生薬です。作用が強い生薬なので、多すぎると心臓がバクバクしたり舌がしびれたりします。
飲み合わせに注意が必要な組み合わせ例
下記の組み合わせは、各成分が重複するため組み合わせに注意が必要な例です。
普段飲んでいる漢方薬はちゃんと記録し、医師や薬剤師に申告しましょう。お薬手帳にメモしておくのがおすすめです。
麻黄の組み合わせ
- ●麻黄湯と葛根湯
- ●麻黄湯と防風通聖散
- ●葛根湯と防風通聖散
- ●麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)と防風通聖散
- ●越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)と神秘湯、など
甘草の組み合わせ
- ●甘草を含む漢方薬2種類以上の組み合わせは甘草が多くなる場合があります。
大黄の組み合わせ
- ●防風通聖散と桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
- ●防風通聖散と大黄甘草湯
- ●桃核承気湯と三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)、など
附子の組み合わせ
- ●八味地黄丸と真武湯
- ●八味地黄丸と牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
- ●大防風湯と麻黄附子細辛湯、など
漢方薬と西洋薬との飲み合わせの注意点
多くの場合、漢方薬と西洋薬は同時に飲んで大丈夫ですが、禁忌の組み合わせや注意すべき組み合わせはあります。主な組み合わせを紹介しましょう。
小柴胡湯(しょうさいことう)とインターフェロン
禁忌の組み合わせです。間質性肺炎を起こす組み合わせとして知られています。間質性肺炎は重篤な肺炎で、死亡するのも珍しくありません。
麻黄とよくない組み合わせ
麻黄を含む漢方薬と一緒に飲むべきではない薬は、以下の薬などです。麻黄が含むエフェドリンの作用を増強し、副作用が強く出てしまいます。
- 〈1〉エフェドリンの分解を阻害してしまう薬:モノアミン酸化酵素(MAO)阻害剤
- 〈2〉エフェドリンと似た作用を持つ薬:エフェドリン類含有製剤、甲状腺製剤(チロキシン、リオチロニン)
- 〈3〉交感神経を興奮させる薬:カテコールアミン製剤(アドレナリン、イソプレナリン)
甘草とよくない組み合わせ
甘草やグリチルリチン酸を含む薬と一緒に飲むと、摂取するグリチルリチン酸が多くなりすぎるため注意が必要です。風邪薬には、甘草やグリチルリチン酸を含む薬が複数あります。また、ループ系利尿剤(フロセミド、エタクリン酸など)、チアジド系利尿剤(トリクロルメチアジドなど)と甘草を含む漢方薬の併用にも注意が必要です。
大黄とよくない組み合わせ
下剤と大黄を含む漢方薬を同時に使うと、下剤としての効果が増強されすぎて下痢になるケースがあります。
その他
葛根湯と解熱剤や、麻黄湯と解熱剤の組み合わせは、よくない作用があるわけではありませんが、お互いの効果を打ち消し合ってしまいます。葛根湯や麻黄湯は体を温めて風邪を追い出す漢方薬で、解熱剤は体温を下げる作用があるためです。
補足
お薬手帳を使うと、病院で処方された薬のすべての記録が残ります。医師や薬剤師にお薬手帳を見せて相談すると、よくない飲み合わせがあるかすぐわかり安心です。医師に処方されていない薬を飲んでいる場合は、お薬手帳にメモしておくといいでしょう。
漢方薬と水以外の飲み物・食べ物との飲み合わせの注意点
現在の多くの漢方薬は粉薬なので、飲み物で服用しますが、漢方薬を飲む時に使ってはいけない飲み物は複数あります。
飲み物
漢方薬は水やお湯で飲む薬ですが、鉄瓶で沸かしたお湯はよくありません。鉄分と生薬の成分が反応してしまう場合があるからです。鉄剤や鉄分を含むサプリと漢方薬を同時に飲むのもおすすめできません。ただし、漢方薬と服用時間をずらせば、鉄分の服用自体は問題ないでしょう。
また、牛乳で漢方薬を飲むのもあまりおすすめしません。漢方薬を胃が空のときに飲むのは、生薬の成分を胃酸や腸内細菌と十分反応させるためです。牛乳があると胃酸や腸内細菌が牛乳の消化に回ってしまい、生薬の消化に回らない可能性があります。同様の理由で、濃いお茶やジュースで飲むのは避けましょう。プロテイン・豆乳・ヨーグルトも同様です。薄いお茶・薄いコーヒー・麦茶は、牛乳やジュースほど成分が濃くないため、牛乳やジュースで飲むよりはいいと考えられます。
食べ物
基本的に、漢方薬と食べ物を同時にとるのはおすすめできません。食後に服用すると吸収がよくなりすぎて作用が出すぎる生薬成分があるためです。ただ、食べる時間と漢方薬の服用時間をずらせば大丈夫なので、漢方薬を飲んでいる時に食べてはいけない食品は基本的にないでしょう。
ただ、甘草を含むお菓子は例外です。飴や甘いお菓子は意外と甘草(リコリスと表記されている場合も)を使っているので、甘草を含む漢方薬を飲む場合は甘草を使ったお菓子を食べすぎないように気をつけましょう。
漢方薬の飲み合わせでチェックすべきこと
漢方薬は多くの場合、他の薬と併用しても大丈夫です。しかし、他の薬との相互作用や他の漢方薬との生薬の重複による禁忌の飲み合わせや、よくない飲み合わせは複数あります。お薬手帳を使って、自分が現在飲んでいる薬をきちんと記録し、心配なときは医師や薬剤師といった専門家への相談が大切です。また、牛乳やジュースで漢方薬を飲んだり、甘草を含むお菓子を食べながら甘草を含む漢方薬を飲むのは避けましょう。
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