教養系ライター江上奏
司法書士として手続代理業を続ける中、難解で細かい書類を依頼者に分かりやすく説明する努力を重ねた経験を活かしつつ、解説記事や健康コラムを執筆。
世の中の便利な知識や世の中の仕組みについて、ひとつでもイメージしやすい形で読者に届け、知識を役立ててほしい思いでライター業を続けている。
健康診断とは、検査により数値を測定し、一定の基準で総合的に健康状態を確認する客観的な診断。日本の多くの方は、法定健診として費用負担なく受診する機会があります。
結果報告書の見方に関して、代表的な検査項目や基準値、判断している事項が分かると、問題点がイメージしやすくなります。
結果の活かし方や、健康診断を毎年受ける有用性についても解説しますので、ぜひ毎年受けて、自身の健康に役立てましょう。
数年に一度ならともかく、毎年健康診断を受けるのは面倒で気が重いと感じる方もいるかもしれません。
しかし健康診断は、自分の健康状態を客観的に確認できる、またとない機会です。
日本には「法定健診」の制度があり、事業者に雇われている方や40~74歳の方は、毎年費用負担なしで健康診断を受ける機会があります。
健康診断についての知識を、簡単にまとめてみましょう。
健康診断とは、「全身の健康状態を検査する目的で、体を一定の基準で総合的に確認するプログラム」です。「健診」と短縮して呼ばれる場合も。
広い意味では、個人の任意判断で受ける人間ドックなどの「任意健診」も含みます。
「毎年健康診断をちゃんと受けよう」といった一般的な文脈で使われる際は、労働安全衛生法などの法律によって義務付けられ、毎年受ける機会のある「法定健診」を指す場合が多いでしょう。
法定健診は、事業者や自治体が費用を負担するため、検査を受ける方の費用がかからない利点があります。
いっぽう任意健診は、法定健診より項目が多様で高度な検査も可能ですが、費用は自己負担です。
労働安全衛生法によって、企業などの事業者には健康診断の実施が義務付けられています。
事業者に雇われている方は事業者の案内により、1年に1回「定期健康診断」を受けるでしょう。
その他に「雇入れの際の健康診断」や、放射線業務に常時従事する労働者への「特殊健康診断」といった、事業者によるさまざまな法定の健康診断があります。
一方で健康保険法によって、国民健康保険を管理する自治体や、協会けんぽなどの医療保険者には、40~74歳の国民健康保険もしくは各医療保険の加入者に対する健康診断(「特定健診」と呼びます)の実施が義務付けられています。
自営業者の方などは40歳を過ぎると、毎年特定健診を受ける機会が通知されるでしょう。
健康診断は、企業や自治体などが指定した医療機関で行われるのが通常です。
結果がいつ出るかについては、各医療機関によってまちまちであり、翌日に一定の結果を出す場合もあれば、2~4週間程度後に診断結果を発表する場合もあります。
すぐに結果を知りたい方は事前に、結果がいつ出るかを医療機関に確認した方がよいでしょう。
健康診断の結果は、法律により医療機関に保存義務があり、多くの場合5年間と定められています。
結果報告書の再発行は可能ですが、1000円程度の費用がかかります。
5年以上前の健康診断結果を管理・把握したい場合や、再発行の手間や費用をかけたくない場合は、結果報告書を自分で保存しておきましょう。
次に、健康診断において検査される代表的な検査項目と見方を紹介します。
基準値をはじめとする具体的数値や、何のために測定しているかといった見方が分かると、結果報告書・医師の所見を読む際に、健康上の問題点をイメージしやすくなるでしょう。
身長と体重を測定します。
人の肥満度を示す体格指数であるBMI「体重(kg)÷身長(m)の2乗」の数値を調べ、
肥満かどうかを簡易に判定するためです。
また、内臓脂肪型肥満の判定のために、おへその高さの腹囲を測定します。
血液が血管の壁を押す力である血圧の測定です。
高血圧は、健康リスクが特に高いため要注意。
心臓が収縮して血液を送り出した際の圧力最大値である収縮期血圧(最高血圧)と、心臓が拡張して血液を吸い込んだ際の圧力最低値である拡張期血圧(最低血圧)を測定します。
血液を調べ、含まれている細胞や酵素などの数を数値化し、リスクを見つけたり病気の診断をする検査です。
項目が非常に豊富なため、代表的な項目名と基準値、何が判断されるのかについて、以下に表でまとめます。
尿を検査して、腎臓や膀胱、尿道、尿管の状態を判断します。
尿に含まれるたんぱく質や糖分の数値が正常かどうか、尿に血液が混ざってないかを調べます。
検査を一度受けて終わりにしてしまっては、自身の健康につながりません。
健康診断を活かすには、結果報告書を元に、しっかり再検査を受けて病気を発見したり、生活習慣を見直して病気を予防したりするのが大切です。
検査での異常が深刻だった場合は、結果報告書で、要再検査・要精密検査と判断されるでしょう。
健康診断前日の食事や行動の影響は大きく、健康診断当日の体調がたまたま悪い場合もあるため、健康診断当日の数値のみでは病気かどうか確定できません。よって、二次検査や医師の問診を受け、本当に病気かどうか判断していく必要があります。
命に関わる病気が見つかるかもしれませんので、健康診断を受けた病院や、かかりつけの病院に行って再検査を受けましょう。
気になる費用は、基本的には受診者の負担となり、保険適用の3割負担の形です。
事業者によっては、再検査費用を負担してくれる場合もあるため、念のため職場に問い合わせてみましょう。
異常が軽度だったならば、結果報告書で、要指導や要経過観察として注意点を知らされるのが一般的です。
結果報告書の医師の所見による注意点やアドバイスを参考にしながら、生活習慣を見直すきっかけにして、異常が見られる数値の正常化を目指しましょう。食生活に気をつかったり、運動習慣を取り入れたりすれば、数値が改善される場合が多いのです。
数値の改善は、病気の予防に役立つでしょう。
健康診断は毎年受け、経過を把握するのが重要です。どの数値がどのように悪化しているのか、時系列に沿って過去からのデータを確認できると、疑われる病気や健康上の問題点が分かりやすくなるからです。
また、自覚症状がないのに数値が悪化した場合は、健康リスクが高いとされています。
自分では気づけない数値の悪化を見逃さないために、毎年健康診断を受けましょう。
健康診断は、自分の健康状態を客観的に見れるよい機会です。
しかし、歳をとると何かしら数値が悪化する現実を突きつけられるため、健康診断を受けるのがおっくうに感じる場合も。そんな際はあまり気に病まず、多少悪い部分があるのは仕方ないと割り切るのがおすすめです。
そして、健康診断で気になる数値があった場合は、問題点を調べて生活習慣を見直し、翌年に数値が改善されるのを楽しみにするとよいでしょう。
せっかく毎年健康診断を受ける機会があるのですから、ぜひ健康増進のために、有効に活用してください。
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