監修医師成田 亜希子
2011年医師免許取得。初期臨床研修を経て総合診療医として幅広い分野の治療に携わる。
臨床医として勤務しながら、行政機関での勤務経験もあり地域の健康課題にアプローチした健康寿命延伸、感染症対策などの医療行政にも携わってきた。
国立保健医療科学院、結核研究所での研鑽も積む。
現在、医療法人ウェルパートナー主任医師。
「風邪を早く治す方法」で調べている方へ。風邪の症状は7日から10日ほど続くのが一般的とされていますが、できるだけ早く回復したい…。そんな気持ちを後押しするケア方法を紹介します。
原因となるウイルスや細菌への対処方法、免疫の重要性、睡眠や栄養の取り方や方法、病院を受診する目安など、風邪の早期回復に役立つ情報が満載です。風邪をひいたときのために、ぜひ参考にしてみてください。
なかなか風邪が治らずに苦労した経験はありませんか?成人は、平均で年3~6回ほど風邪をひくと言われています。まずは、風邪の原因となるウイルスや細菌、症状があらわれる期間、免疫の重要性について解説します。
「風邪」は、正式な病名ではありません。一般的に、「のどの痛み・発熱・鼻水・鼻づまり・くしゃみ・咳・痰などの症状が現れる感染症」を指し、上気道(鼻からのどまでの部位)の炎症のことを意味します。
正式な医学用語では「かぜ症候群」と呼ばれ、80~90%はウイルス感染が原因とされています。ウイルス感染によって引き起こされる風邪は軽度な症状のみのことが多く、症状を緩和させる対症療法を行いながら自然に回復するのを待つケースがほとんどです。一方、細菌感染によるかぜは症状が重くなりやすいため抗菌薬の投与を行うことがあります。
風邪の症状を引き起こすウイルスは200種類以上存在し、飛沫感染や接触感染などによって人から人へうつり続けています。しかし、ウイルスによる風邪の多くは免疫の機能が作用して自然に治るケースが多いため、喉の痛みや発熱などの症状を緩和する対症療法が治療の主体となります。例外として、インフルエンザウイルスに対するタミフルといった抗ウイルス薬が開発されている場合もあり、回復するまでの期間短縮や重症化予防などの効果が期待できる可能性があります。
鼻や口からウイルスが侵入すると、体を防御するために免疫機能が働きます。ウイルスを体から追い出したり増殖を防いだりする防御反応引き起こされ、発熱などの症状が現れるようになります。ウイルスによって症状や回復するまでの期間はさまざまですが、平均で回復するまでに7日から10日間くらいかかるとの報告があります。
しかし、初期段階でしっかり休みをとらなかったり、栄養バランスが悪かったりすると、免疫の機能がうまく働かず風邪が長引く原因に。人の体にあらかじめ備わっている免疫の機能によってウイルスと戦う環境が整えられていない場合には、風邪の早期回復は期待できません。場合によっては、風邪で弱った体に別の細菌感染が生じて、さらに重症化するケースもあるため注意が必要です。
風邪を早く治すためには、体力を温存して自然に回復するのを待つことが大切です。体力を温存してウイルスの増殖を防ぐための免疫システムがよく働くと、風邪が重症化することはまずありません。体力をキープして免疫の機能をサポートするための有効な生活の工夫について、いくつかの具体的方法を紹介しますので、ぜひ実践して早期回復に役立ててください。
風邪をひいたときは、体力を温存するためにもエネルギー源になる食事をバランスよく摂る必要があります。お粥など消化がよく栄養価が高い食事を摂るようにしましょう。また、食事やサプリで、免疫の働きをサポートする栄養素を摂取すると、症状の改善が期待できます。
たとえば、亜鉛は風邪から回復するまでの期間を短くするのに有用との報告があります。また、ビタミンAには粘膜を保護する効果があるため、風邪でダメージを受けた鼻やのどの粘膜の回復に役立つでしょう。腸内環境を整えると免疫力が高まるため、乳酸菌などを摂取して腸内環境の改善に努めるのもよいとされています。
一方で、昔から風邪の予防や回復によいとされてきたビタミンCは近年の様々な研究の結果、風邪の症状をわずかに軽減したり、回復までの期間を短くするという報告があるに留まっているのが現状です。特定の栄養素を偏って多く摂る必要はありませんが、バランスよい食事を心がけ、食事が摂れないときは風邪によいとされる栄養素をサプリなどで補いましょう。
体力をキープするため、睡眠や休養をしっかりとりましょう。とくに深い眠りは体力を温存する効果があるため、必要に応じて薬で症状を緩和させたり、脇や首を冷やしたりして、ぐっすり眠れるように工夫しましょう。
体温が高くなると、血行が促進され免疫細胞の働きが活発になり、免疫機能が向上します。部屋を暖房であたためたり、ホットドリンクを飲んだりして、体があたたまるようにしましょう。症状が重くない場合は、湯冷めに気をつけつつ湯船に浸かるのも効果的です。ただし、風邪のときはいつもより水分が失われがちなので、脱水には十分注意しましょう。
発熱などの症状があると、発汗や食欲低下などが原因で、普段より体の水分が失われがちになります。体の水分が少ないと血流が悪くなって、免疫の働きが低下してしまう可能性があります。風邪の際はこまめに水分を補給しましょう。食事が十分に摂れないときはミネラルが不足しがちになるため、経口補水液やスポーツドリンクを利用するのもおすすめです。
のどに症状がある場合は、保湿をこころがけて乾燥を防ぎましょう。のどの粘膜が乾燥すると新たなウイルスや細菌感染が生じやすくなり、症状が悪化する恐れがあるからです。加湿器を使う、マスクをして寝る、こまめにうがいや水分補給をするといった工夫で、のどが乾燥しないように注意しましょう。
風邪をひいたときに、どの市販の風邪薬を選ぶのがよいか、病院に行くかどうか悩む方も多いのではないでしょうか?風邪薬での症状緩和や病院の受診で、より楽に過ごせる場合もあるでしょう。市販の風邪薬の選び方と病院を受診すべき場合について解説します。
症状が辛くてよく眠れない場合などに、市販の風邪薬が役立ちます。風邪薬にはウイルス自体を排除する効果はありませんが、症状が緩和することでしっかり睡眠や休息を取れるようになります。その結果、体力の温存につながり、風邪の回復が早くなったり重症化を予防したりする効果が期待できるでしょう。、風邪薬の種類は豊富にありますが、選ぶ際は症状に合わせて選ぶのが大切です。パッケージに書かれている、「高熱がある」「のどの痛みがある」「鼻水・鼻づまりがひどい」「痰がひどい」「咳がひどい」といった症状から自分に合う製品を選ぶのがおすすめ。常備薬として家に一つ風邪薬を置いておきたい場合は、どの症状にも対応するバランスのとれた製品を選ぶとよいでしょう。
風邪薬には血圧に作用する成分を含む種類が多く、高血圧の方は使用に注意が必要です。薬局やドラッグストアで薬剤師に相談し、高血圧の方が飲んでも問題ない製品や漢方薬を選んでもらいましょう。
また、眠くなりにくい風邪薬を選びたい場合も、薬剤師への相談を推奨します。どうしても起きて作業をしなければならない場合がありますが、眠くなる成分が含まれる風邪薬もあります。必要な際は、日常生活に影響が少ない製品を選んでもらうとよいでしょう。
軽症の風邪であれば、特に病院を受診しなくて問題ないとされています。ですが、重症が続いたり、普段の風邪との違いを感じたりしたら、検査や治療が必要になる場合があるため病院の受診を検討しましょう。
全身に複数の症状がある場合や、判断に迷う場合には、内科を受診すれば問題ありません。「のどが痛い」「鼻水が止まらない」「耳が痛い」といった特定の症状がある場合には、専門科である耳鼻咽喉科を受診するのもよいでしょう。
重症の際は病院を受診すべきですが、とくに以下の2つの症状がみられる場合は、積極的に病院で診てもらうべきとされています。
1つ目は、通常の症状を超えて咳が出たり、呼吸が苦しかったりする場合。肺炎に進行しているリスクなどが考えられるので、病院で検査してもらいましょう。
2つ目は、発症して3日経っても悪化していく場合や、何度も症状がぶり返す場合です。ただの風邪ではなく、他の細菌感染症を発症しているリスクがあるため、病院を受診しましょう。
なお、咳やのどの症状がないのに高熱が続く場合や扁桃が膿んでいる場合などは、細菌感染症が疑われるサインです。
風邪をひいたときは、とくに初期段階の対応が大切と言われています。すぐに水分補給や栄養に気をつかったり、睡眠を多めにとったりすれば、重症化や長引くリスクは大きく下がるからです。
のどや鼻に違和感があった際は、風邪をひいたかもしれないと早々に判断し、体力をキープしてて風邪の早期回復が期待できる行動をこころがけましょう。
一般的な風邪は特別な治療をしなくても7~10日ほどで自然に回復していくケースがほとんどです。しかし、十分な睡眠や休息が取れなかったり、エネルギーの補給ができなかったりすると体力が低下して風邪が悪化する場合があります。風邪をひいたときは、「安静にすること」、「十分な栄養を取ること」、「水分補給をすること」の3つを心がけましょう。その上で症状がつらい場合には、それらを緩和するための薬物療法などを行います。
また、つらい症状が続くときや発熱などの症状が3日以上続くときは、細菌感染を起こしている可能性があります。セルフケアだけでは対処できない場合がありますので、医療機関を受診しましょう。
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