管理栄養士ライター高村恵美
12年間管理栄養士として病院などに勤務。家族にいつでも"おかえり"が言えるようライターへ転身後は、忙しいひと・働くひとに寄り添うレシピの提供や、健康コラムを数多く執筆。
自分も同じ立場だからこそ「仕事と家庭の両立に悩む女性を応援したい」気持ちが高まり、悩めるママに向けたコラム執筆も行っている。
妊活は女性だけでなく男性も協力して行うのが成功への近道です。生活のポイントや、積極的に摂るべき栄養素・避けるべき食べ物や飲み物を理解して、2人で実践していく必要があります。妊娠しやすい身体づくりは、特定の栄養素だけ摂ればよいわけではありません。皆さんお馴染みの葉酸以外のおすすめ栄養素もあるので、知識を深めていきましょう。妊活中に便利なサプリメントの活用についても触れているので、ぜひ参考にしてみてください。
妊活において栄養管理は重要です。妊娠の確率を上げるには、心身ともに健やかである必要があります。妊娠しやすい状態をつくる生活のポイントをご紹介するので、ぜひご自身の生活と照らし合わせて見つめ直してみてください。
女性が妊娠の確率を上げたいのであれば、適正体重をキープしましょう。
アジア人女性を対象にした調査では、BMIが23以上の女性は、BMIが18.5~22.9の女性よりも妊娠の確率が低いといった結果がでています。
一方で、日本肥満学会では、BMIが「18.5未満:低体重(やせ)」、「18.5~25未満:適正体重」、「25以上:肥満」と区分しているのです。
上記の研究結果を参考にした場合、適正体重の範囲内でもBMIが23以上の場合は、BMIを22.9に近づけるようダイエットすべきと考えられます。
近年の大規模な研究結果により、やせ(BMI18.5未満)の妊婦は標準体重(BMI18.5~25)の妊婦と比較して、妊娠と胎児への悪影響のリスクが高いと報告されています。
「早産のリスクは1.16倍」「低出生体重児(2500g未満)のリスクは1.57倍」も多かったのです。
さらに、思春期から続く女性の根強い「やせ志向」が原因で、産後うつの発症リスクや、育児放棄・虐待の危険性が高くなると示唆されています。妊娠前の女性の過度なやせ願望は、将来の我が子への愛情問題にもつながる可能性があるのです。
食事の栄養バランスを整えるには、「主食・主菜・副菜」をそろえるのがポイントです。主食・主菜・副菜が揃った食事を1日2食以上食べた場合は、栄養素の摂取量が適正値に近くなるという報告があります。
何をどれだけ摂るかは、厚生労働省と農林水産省が公表している「食事バランスガイド」や「妊産婦のための食事バランスガイド」を参考にするのがおすすめです。
主食・主菜・副菜に加えて、牛乳や乳製品・果物を組み合わせていくと、さらに理想的な栄養バランスになります。
適度な運動は、健康維持や生活習慣病の予防に効果的です。デスクワークといった座った状態で一日の大半を過ごす人は、健康を害するリスクが高いとされています。
また、低出生体重児や早産の予防には、妊娠中の運動が効果的と示唆されているのです。妊娠前から、適度な運動習慣をつくり体力をつけておきましょう。
妊活中の夫婦にとって、ストレスは大敵です。強いストレスがかかると、排卵を抑える働きを持つプロラクチン(ホルモン)が分泌され、妊娠の確率を低下させてしまいます。リラックスして、楽しい時間を過ごすように意識しましょう。
女性の飲酒は、男性と比較して早期にアルコール依存症や肝硬変を招きやすい傾向があります。また、乳がんをはじめとした女性特有の疾患リスクも高くなるのです。
お酒は、クセになると辞めるのが難しくなります。妊娠前から、お酒は飲み過ぎを避け、適度に楽しみましょう。
喫煙は、女性の生殖能力の低下を招くとされています。妊娠しやすいコンディションは、健康体が基本です。自分自身が喫煙しなくても、周囲の人のタバコの煙を吸う(受動喫煙)だけで健康に害をおよぼすとされています。子どもの場合は、中耳炎や呼吸器疾患・乳幼児突然死症候群のリスクが高まるので、今のうちから家族全体で禁煙するのがおすすめです。
妊娠しやすい身体づくりに役立つ栄養素と、栄養素を含む食べ物や飲み物をご紹介します。とくに意識したい栄養素を「男女共通」「男性」「女性」に分けて解説するので、参考にしてみてください。
妊活中の男女が共通して、積極的に摂りたい栄養素と食べ物をご紹介します。
タンパク質は、筋肉や臓器・ホルモン・身体の細胞一つひとつを構成する重要な栄養素です。健やかな身体に欠かせない栄養素なので、不足しないようにしっかりと摂りましょう。
<タンパク質を含む食品>
肉類・魚介類・鶏卵・プロセスチーズ・納豆・油揚げ・高野豆腐・そら豆・えんどう豆など
妊活中の男性が積極的に摂りたい栄養素と食べ物をご紹介します。
シトルリンは、アミノ酸の一種で、マラソンやトライアスロンといった運動をする方におすすめの成分です。パートナーとのスキンシップや若々しい毎日のために積極的に摂りましょう。
<シトルリンを含む食品>
スイカ・ゴーヤ・きゅうり・メロン・冬瓜・へちま・クコの実・にんにくなど
アルギニンは、男性のパフォーマンスに関わる成分です。パートナーとのスキンシップに役立ちます。
<アルギニンを含む食品>
高野豆腐・湯葉・炒り大豆・きなこ・がんもどき・そら豆・えんどう豆・ひよこ豆など
妊活中の女性が積極的に摂りたい栄養素と食べ物や飲み物をご紹介します。
葉酸は、胎児の健全な成長のために重要な成分です。体内では合成されないため、必ず食品から摂取する必要があります。
厚生労働省が公表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、妊娠を希望する女性に対し、通常の食事に加えて、サプリメントや食品中に強化される葉酸として1日400㎍摂取するよう推奨しているのです。
厚生労働省による「令和元年国民健康・栄養調査報告」の結果では、女性の平均的な葉酸摂取量は、283㎍/日であり、推奨されている量を大きく下回っています。葉酸の主要な摂取源である緑黄色野菜を積極的に食べましょう。
<葉酸を含む食品>
玉露茶・菜の花・グリーンアスパラ・からしな・ほうれん草・春菊・枝豆・イチゴなど
鉄分は、体中に酸素を行き渡らせるために必須のミネラルです。妊娠後は、胎児の成長にともない、より多くの鉄分を必要とします。食生活は簡単に変えられないので、妊娠の準備中から、積極的に鉄分を摂りましょう。
しかし、鉄分が豊富な食品のなかには、摂り過ぎに注意すべき食品もあります。鉄分が豊富なレバーは、同時にビタミンAも多く含んでいます。ビタミンAを過剰摂取してしまうと、赤ちゃんが生まれつき奇形の状態で生まれてくるリスクが高まるのです。
妊娠前から、習慣的にレバーを食べ過ぎないよう注意しましょう。
<鉄分を含む食品>
あさりの水煮缶・レバー(鶏・豚・牛)・青のり・焼きのり・カシューナッツ・大根葉など
心身ともに大変な「妊娠・出産・育児」の時期を健康な身体で乗り切るには、妊娠前からの積極的なカルシウム摂取が大切です。骨や母乳の構成成分であるカルシウムは、胎児の成長や授乳により必要量が増え、どんどん消費されます。妊娠する前から、カルシウムの多い食事を心がけて、体内にカルシウムを蓄えておきましょう。
<カルシウムを含む食品>
牛乳・チーズ・ヨーグルト・干しえび・さばのみそ煮缶・焼き豆腐・ししゃも・小松菜など
妊活中に男女がともに控えるべき食べ物をご紹介します。
最悪の場合、命の危険性もあるので、軽視せずに栄養管理していきましょう。
加熱不足の肉や生肉を食べると、胎児が先天性トキソプラズマ症になる危険性があります。万が一発症した場合、胎児の脳や目に障害が生じたり、流産や死産につながる可能性があるのです。
肉類には、トキソプラズマという寄生虫が生息しており、加熱により死滅させてから食べる必要があります。また、トキソプラズマは土のなかに生息している場合もあるので、野菜はしっかり洗浄したり、加熱したりして食べましょう。
女性だけでなく、男性も生肉は食べないように注意が必要です。
生ハムやナチュラルチーズ・スモークサーモンは、リステリア菌を含んでいる場合があり、食べるとリステリア感染症を発症する危険性があります。妊婦は感染しやすく、重症化すると命の危険性がある恐ろしい感染症です。パートナーとのスキンシップの際に、男性から女性に感染させてしまう可能性もあるので、妊活中は男女ともに控えましょう。
妊活は女性だけの問題ではありません。男性も食事や生活に気を遣い、二人で新たな命を迎えるために準備をする必要があります。
しかし、「妊活中だから、食事はしっかりと準備せねば」と気負うと、ストレスになりかねません。妊活中に摂りたいタンパク質や葉酸といった栄養素を、毎食食事だけで確保しようと思うと大変です。サプリメントを上手に活用して、少しでも手間やストレスのかからない方法で食事管理をしていきましょう。
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