一級建築士・ライフスタイルライター神谷三理砂
住宅やインテリアの意匠設計に従事した経験を活かし、家の間取りやデザイン、インテリアなど住まいに関するコラムを多数手掛ける。ジュエリーデザイナーとしての経歴も長く、ファッション系コラムも執筆。最近は、より生活に役立つ記事を書きたいという思いから健康コラムに力を注ぐ日々。
刺繍や洋裁、家庭菜園といった手仕事を楽しむ暮らしを大切にしている。
家の掃除が行き届いていると、気分がすっきりしませんか?きれいな住まいは心身の健康にもプラスに働きます。
家の中には目に見えないウイルスやカビ、ダニなどがたくさん存在しているので、こまめな掃除は毎日の日課にしたいところです。とはいえ、「忙しくて時間がとれない」「掃除は面倒」となかなか掃除に手がまわらない人は多いはず。身の回りの掃除がなぜ大切なのか、心身に与える影響や、掃除しやすい家づくりのポイントをお伝えします。
家の中には、微細なウイルスやカビ、ダニ、ハウスダストなどが存在していて、多くはホコリの中に混じっています。水まわりにこびりつく水垢も、カビや細菌の温床になりやすい場所。もしも掃除しなければ、健康被害をもたらす病原体を気づかないうちに吸い込んでしまい、アレルギーや感染症を引き起こしてしまう可能性があります。しかも、家が汚れている状態は、ストレスや集中力の低下の原因に。
窓や床を拭いたり、お風呂の掃除をしたりするときに、一定のリズムで左右に手を動かす動作はリズム運動に似ていて、脳がリラックスするといわれています。家がきれいになれば、達成感や満足感も得られます。実は、掃除は体だけでなく心にもよいのです。
コロナをきっかけに除菌の意識が高まっていますが、ホコリや水垢などに直接除菌スプレーを吹きかけても、原因の根本を取り除けていない状態です。もちろん、掃除をしたからといって、ウイルスや細菌、ハウスダストなどがすべて取り除けるわけではありませんが、病原体の数を減らせば、あとは人間の免疫力によって対処しやすくなります。健康に暮らせる家にするには、除菌する前のこまめな掃除が大切なのです。
健康を維持するために、とくに気をつけたいのがカビです。免疫力が低い人や持病がある人にとって、カビは命に関わってくる場合があります。
「温度」「湿度」「栄養分」の3つが揃うと、カビが繁殖しやすくなります。
住まいの中でカビが発生しやすい場所は、浴室・キッチン・トイレ・洗面所といった水まわりや、湿気がたまりやすく掃除しにくいエアコンの内部・家具の裏・窓などです。物を出し入れしないクローゼットや押し入れの奥も要注意。除湿機を置く、風通しをよくするなど、こまめなお手入れをしましょう。
エアコンは、室内の空気を吸い込み、フィルターできれいにして熱交換器で冷やしたり暖めたりしてから室内に排出する仕組みをしているので、どうしてもフィルター部分が汚れてしまいます。とくに冷房を使う場合には、エアコン内部が冷たくなって結露が生じるので、ホコリがたまっているフィルターにカビが発生してしまうのです。このまま放置すると、エアコンからカビやホコリがどんどん出てきてしまいます。
エアコンを使って健康的に暮らすには、定期的なお掃除が大切です。もしも、生乾きのような変な臭いがしている場合は、雑菌が繁殖している可能性があるので早めにお手入れしましょう。
掃除が行き届いた住まいは清潔感があるので、見た目の印象が上がり、心身の健康にもよい影響をもたらします。健康的な毎日を過ごすには、掃除が短時間で終わる住まいづくりが大切。お手入れがラクになる間取りやインテリアのポイントを押さえて、家づくりに活かしましょう。
床や壁は、凹凸を極力つけずにフラットに仕上げるのがポイント。床に段差があると、1段ずつ掃除機をかけなければならないので、面倒に感じてしまい時間もかかります。また、ホコリは部屋や階段の角にたままりやすいので、段差や部屋数が増えれば、それだけホコリがたまる箇所も増えてしまうのです。たとえば、同じような広さの部屋でも、小上がりの畳スペースや床を一段下げるダウンフロア、スキップフロアといった間取りは、段差のない部屋よりも掃除に時間がかかります。
引き戸のレールもホコリがたまりやすい部分です。引き戸を使う場合は、レールのない上吊り式を選ぶと、床がフラットになるので掃除の負担が減ります。立体感のあるタイルや石などの壁材、少し凹凸のあるクロスにもホコリは少しずつ蓄積されていくので、できるだけフラットなデザインを選びましょう。
置き家具は、家具と壁や家具と家具との隙間、天板にもすぐにホコリがたまります。脚付きの家具の場合、家具の下まで掃除しなければなりません。部屋に合わせて床から天井までの家具を造作すれば、隙間がなくなるので掃除をする場所がぐんと減ります。
トイレはできるだけ手短に掃除を済ませたい場所。手間を極力減らすには、便器選びが重要です。凹凸や継ぎ目、フチが少ないスッキリした形状のタンクレストイレや、汚れがたまりにくく落としやすい、自動で除菌する、といった機能性の高いタイプを選ぶと、掃除の煩わしさを軽減でき、きれいなトイレを維持しやすくなります。水まわりの中でも、とくにトイレは省スペースなので、空間にゆとりをもたせてつくるのも、掃除しやすくするポイントの一つです。
掃除する範囲が広く、汚れがたまりやすい浴室は、掃除が面倒に感じやすい場所です。最新式の浴室なら、汚れが付きにくい床材や、自動で床や浴槽を掃除する機能が充実。もしも、汚れやカビが落ちにくくなった古い浴室を使い続けているのであれば、思い切ってリフォームを検討してみるのも一つの方法です。
こまめな掃除を習慣化するには、いかに作業の負担を少なくするかが鍵となります。掃除を効率的に進める間取りのポイントになるのが、水まわりを1カ所に集約する配置方法です。
洗濯機を回しながら洗い物をしたり、風呂やトイレ掃除をしたり、家事は複数の作業を同時進行で行います。とくに水まわりでの作業が多いので、キッチン・洗面室・風呂・トイレをまとめて配置すると、家事動線が短くなって時短につながるのです。
掃除をする際にホコリをたててしまうと、舞い上がったホコリはゆっくりと時間をかけて、また床に落ちてくるので、結局きれいになりません。喘息を引き起こす原因の一つとなるダニの死骸やフンも、ホコリと一緒に空気中に舞い上がります。つまり、掃除をする際は、ホコリをたてない工夫が大切なのです。
まず、掃除機やモップなどでホコリを静かに取り除いてから、窓を開けて風を入れましょう。とくに、寝室は寝具にホコリがたまりやすいので、他の部屋よりもホコリの全体量が増えがちです。また、エアコンを使用している時期はホコリが部屋中に広がりやすくなります。風邪やインフルエンザが流行っている時期は、ウイルスが家中に広がらないようにとくに注意が必要です。枕をタオルでカバーしてこまめに洗うようにすると、清潔な状態を保ちやすくなるでしょう。
掃除は上から下へ順番に行うのも大切な基本です。床を掃除してから、家具や照明など高い位置の掃除をすると、せっかくきれいになった床の上に新たなホコリが落ちてしまいます。
掃除を習慣化するのは面倒に感じるかもしれませんが、後からまとめて掃除する方が、余計な労力や時間がかかってしまいます。こまめな掃除を習慣にして、住まいを清潔に保ち、自分と大切な家族の心身の健康を維持していきましょう。
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