「妊活」の言葉はなぜ身近になった?妊娠・出産の現状から考える
妊活とは、文字通り「妊娠をするための活動」です。近年ではさほど珍しくはなく、とくに女性にとっては妊活を身近に感じる方が増えています。
妊活が広く知られるようになった背景は、妊娠から出産にいたるまでの現代の特徴を知るとみえてきます。
女性の第1子出生時の年齢は上がっている
近年、経済的な理由や女性のキャリア充実といったさまざまな要因により、女性の第1子出生時の年齢が上がっています。厚生労働省の調査によれば、令和4年度の第1子出生時の母の平均年齢は30.9歳で、昭和50年代と比べて約5歳も上昇しているのです。
参照:令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況 結果の概要/厚生労働省
20代後半から妊活を意識する人が増えている
第1子出産の年齢が上昇している理由に、社会進出する女性の増加により晩婚化が進んでいる点が大きく関与していると考えられます。女性のキャリア形成の道筋はまだまだ見えづらい現状があり、結婚のタイミングが遅れてしまう傾向にあるのです。
しかし、女性の卵子の質は30歳以降低下していくとわかっています。
そのため、なるべく妊娠する確率が高いうちから妊活をしようと、近年は20代後半から妊活に取り組む女性が増えているのです。
出典:Q24.加齢に伴う卵子の質の低下はどのような影響があるのですか?/一般社団法人 日本生殖医学会
妊活は特別なものではなくなっている
いままでは「妊活=不妊治療」といったイメージが強く、敬遠されがちでした。しかし現代では、クリニックに通ったり精子検査をおこなったりするといった特別な取り組みではなく、夫婦で話し合ったり食事に気をつかったりする日常的な行動も、妊活の一部として捉えられています。
もう、妊活は特別なものではありません。妊活は「赤ちゃんを望む人すべてがおこなう活動の」へと変化しているのです。
妊活に向けた大きな一歩「タイミング法」とは
妊活のなかでも、妊娠へ向けた大きな一歩として効果が期待されているのが「タイミング法」。タイミング法とは、自身の排卵日を把握し、妊娠しやすいタイミングに狙いを定めて性行為をおこなう妊活法です。
一般的に、もっとも妊娠しやすい時期は排卵前日~2日前だといわれています。あらかじめ排卵日を把握しておけば、妊娠しやすいタイミングをピンポイントで狙えるわけです。
タイミング法には大きく分けて3つのやり方があります。1つは、自分で基礎体温表をつくるセルフタイミング法、2つ目は排卵日検査薬を使用するタイミング法、3つ目は医療機関でおこなうタイミング法です。
それぞれのやり方を詳しくみていきましょう。
基礎体温表をつくるセルフタイミング法
妊活をするうえで非常に大切な役割を担うのが、基礎体温です。女性の体温は、ホルモンによって上下しています。例えば、月経開始から排卵までの約14日間はエストロゲン(卵胞ホルモン)が分泌されるため体温が下がり、プロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌される排卵後は高温期が約14日間続くのです。
基礎体温表をつけ続けていくと、自身の排卵パターンがわかってきます。また、高温期が続いたら妊娠の兆しです。いち早く体調の変化に気づけるのも利点とされています。
基礎体温表をつくるときは、以下のポイントを意識しましょう。
- ・ 0.01単位で計測できる基礎体温計(婦人体温計)を用意する
- ・ 毎朝起きてすぐ安静な状態で計測する
- ・ 生理日や性交渉の有無も記録に残す
自分で基礎体温表をつくるセルフタイミング法は、単に排卵日を予測するだけでなく、自身の体調や生理周期を深く理解するよい機会でもあります。妊活を成功させるための基本なので、別のタイミング法を試そうと考えている方も基礎体温表はつけておくとよいでしょう。
排卵日検査薬を使用するタイミング法
排卵日検査薬とは、排卵の24~36時間前に大量に分泌される尿中の「LH(黄体形成ホルモン)」濃度を検知して排卵日を検査するキットです。排卵日検査薬を使用するタイミング法の最大のメリットは、月経周期が不安定な方でも排卵日を特定できる点でしょう。
排卵日検査薬は、月経周期に合わせて使用します。月経周期が28日の場合、月経開始日から数えて11日目に使用する、といった具合です。月経周期にバラつきがある方は、半年間の月経周期のうちもっとも短かった月経周期を基準に計算しましょう。
医療機関でおこなうタイミング法
医療機関を介したタイミング法は、エコーや血液検査で排卵日の予測をおこないます。高い精度の診断ができるだけでなく、あらゆる検査で妊娠しづらい原因を早期に発見できる点が大きなメリットでしょう。
また、具体的な妊活方法が相談できるのも魅力です。タイミング法がうまくいかなかったときは、医師と相談のうえ、別の方法の模索もできます。
費用面も気になるところですが、令和4年4月より医療機関でおこなうタイミング法も不妊治療の一環として保険適用されたため、うまく活用できれば費用を抑えて妊活できるかもしれません。
参照:不妊治療に関する支援について/厚生労働省
妊活のこんなときどうする?悩んだときのQ&A
妊活は、夫婦のどちらかだけが頑張ればよいわけではありません。夫婦が同じ方向を向いて、一緒に歩んでいく必要があります。しかし、どうしても「妊活は女性がやるもの」の認識が抜けきれず、悩んでしまう方が多いのも事実です。
ここでは、妊活時によくある悩みと、解決の手がかりになるヒントを紹介します。
夫が妊活に興味をもってくれないときはどうする?
夫婦間のコミュニケーションを通じて解決策をみつけましょう。
万が一夫の意識が変わらない場合には、専門家の助けを借りるのも一つの選択肢です。カウンセラーや産婦人科医に相談し、夫婦でカウンセリングを受けてみると問題解決の糸口がみつかるかもしれません。
夫に妊活の重要性を理解してもらうために、以下の手法を試してみてはいかがでしょうか。
共有の時間を作る:
忙しい日々のなかでも、妊活について話すための時間がとにかく必要です。夕食後や休日の朝など、リラックスした時間帯に話し合う時間を設けましょう。始めは妊活の話ではなく、理想の家族像から話を進めるのもよいでしょう。
いまが妊娠のチャンスと煽る:
「年齢とともに妊娠の可能性は下がってしまう、いまが妊活のチャンス!」「子どもとの生活は体力勝負、早いうちから始めるのが吉」と伝えてみるのも有効です。
心の準備を促す:
周囲の子どもの話をしたり写真を見せたりして、子どもとの具体的な生活をイメージしてもらい、心の準備を促しましょう。
タイミングが合わずになかなか性交渉ができないとき
まずは夫婦で互いの体調や生活リズムを共有しましょう。ストレスや疲労、生活リズムの乱れなどが排卵日のズレを引き起こす原因となるケースもあるので、お互いの生活スタイルを理解して調整する必要があります。
なかなかタイミングが合わないときは、「絶対にこの日」と意固地にならず、できるときに無理のない範囲で性行為をおこなうのも大切です。「この日」と決めてしまい、性交渉が義務感やプレッシャーからおこなわれると、逆に妊活の成功率を下げてしまう可能性もあります。お互いに気を使いつつ、ストレスを感じない関係性を築きましょう。
1年以上タイミング法に取り組んでも妊娠できないとき
タイミング法に取り組んでも1年以上妊娠できないときは、方針転換の時かもしれません。例えば、医学的な問題を考えて、医療機関で夫婦ともに詳しい検査を受けてみるとよいでしょう。専門のクリニックを訪れて、人工授精や体外受精を検討するのも一つの選択肢です。
その際、決して自分たちを責めないようにしましょう。ストレスは妊活の大きな敵、両親の心身の健康あってこその妊活です。まずはリラックスしながら夫婦で将来について話し合い、今後の方向性を定めましょう。
妊活に絶対はない
タイミング法を始めとする妊活に「絶対」はありません。妊娠成功率は年齢や健康状態、生活習慣といったさまざまな要素によって変わります。「うまくいかなくて当たり前、うまくいったらとても幸運」と考えて、穏やかな気持ちで妊活に向き合いましょう。
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