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女性の体質改善に重要な東洋医学の概念「血」とは?血虚と血おを漢方の力で解消しよう

2023/12/22

女性の体質改善において、「血」は欠かせない要素です。漢方では、「血」を単なる血液だけでなく、栄養やホルモンを含む総合的な概念としてとらえています。「血」を補い巡らせると、肌のシミや生理痛・頭痛・肩こりなどの改善を期待できますが、逆に血が整っていないと、肌や体調の低下につながる可能性があるのです。
「血」を整えて血虚や血おを改善するために、おすすめな食べ物や生活習慣、漢方薬を紹介します。

 

漢方による女性の体質改善で大切な「血」

「血」は体を作る上で不可欠な要素とされており、とくに女性の体に深くかかわっています。
「血」とは漢方において、「気(き)・血(けつ)・水(すい)」は体を形成する重要な3要素です。「血」は、血液だけでなく、血液に溶けた栄養やホルモンなども含む概念です。血は気から生まれ、気が巡れば血も巡るとされており、気と血が足りない場合は気を補うのを優先し、気と血を同時に補う場合もあります。
女性は生理・妊娠・出産・授乳で血を失い、血の不足は生理不順や不妊につながると考えられています。そのため、女性の健康において血を十分に補い巡らせるのは極めて重要なのです。
血が十分に巡らないと、体に栄養が回らなくなり、肩こりや刺すような痛み、生理痛などの症状が現れます。

 

血虚(けっきょ)とはどんな体質?

漢方では、血の不足を「血虚」と呼びます。血虚は、単に鉄分不足による貧血だけでなく、血に溶けたタンパク質・ミネラル・ビタミン・ホルモンの不足も含まれる幅広い概念です。血虚の原因は、怪我や病気による出血・生理・妊娠・出産・授乳などです。
また、栄養不足や気の不足「気虚」(ききょ)によって、消化吸収機能が落ちて栄養が吸収できていない場合も血虚になります。

血虚の人には、以下の特徴が見られます。
すべてが当てはまらなくても、いくつか当てはまれば血虚の特徴を持っています。

<血虚に見られる体質>

  • ・ 顔が青白い
  • ・ 唇の色や爪の色が薄い
  • ・ 目や皮膚が乾燥している
  • ・ めまい・立ちくらみがある
  • ・ 不眠がち、もしくは寝ても夢を多く見る
  • ・ 体にしびれがある
  • ・ 舌の色が薄い
  • ・ 舌が痩せている
  • ・(女性の場合)生理の出血量が少なく、色が薄い
  • ・(女性の場合)生理の後半に生理痛がある
 

血虚を改善するには何に気をつければいい?

女性の体質改善に重要な東洋医学の概念「血」とは?

生活習慣を見直し、血を補う食材を食べましょう。漢方薬も有効です。ただ、気の不足によって血虚になっている場合は、気を補うのが優先です。

血虚におすすめの食事・食べ物

血虚の人は、温かく消化しやすい料理が向いています。たとえば、おかゆ・スープ・蒸し物・煮物です。気が十分にあり、消化吸収力が落ちていないのなら、炒め物もよいでしょう。血を補う食べ物で手に入りやすいのは、以下の食材です。
コーヒーは気を上半身に持っていく効果があるため一時的にしゃっきりしますが、血を補う作用がないので効果は持続しません。鉄欠乏性貧血の場合は、食中・食後のコーヒーやお茶は控えましょう。コーヒーやお茶に含まれるタンニンが鉄分と結びついて、鉄分が体に吸収されにくくなってしまいます。ただ、食中・食後を除けば、紅茶・緑茶・烏龍茶はおすすめです。紅茶にレーズンを入れるだけで気と血を補う薬膳茶が作れます。ミルクティーに黒ごまを入れたお茶も最適です。

黒豆・枝豆・黒キクラゲ・しめじ・にんじん・パセリ・ほうれん草・よもぎ・カシス・ぶどう・ライチ・黒ごま・松の実・あさり・穴子・イカ・イワシ・うなぎ・牡蠣・カツオ・鮭・サバ・スズキ・タコ・タチウオ・たら・ニシン・ブリ・マグロ・ひじき・牛レバー・鳥レバー・豚レバー・牛肉・豚足・鶏卵・卵黄・うずらの卵

血虚におすすめの生活習慣(養生)

漢方において、血は夜作られるとされているので、夜は早く寝るように心がけましょう。睡眠時間を十分に取るだけではなく、早い時間に寝るのが重要なポイントです。また、血虚だと体の潤いが不足している場合が多いので、サウナや岩盤浴などで汗をかきすぎるのはよくありません。運動は、ゆったりと動く太極拳やストレッチ、ヨガなどをしましょう。

血虚におすすめの漢方薬

血虚の場合、血を補って対処します。漢方では、「当帰」(とうき)と「地黄」(じおう)が血を補う生薬の代表です。しかし、「地黄」は胃にもたれやすいので、食欲があり胃腸が弱くない人にのみ「地黄」が含まれる漢方薬を使います。「当帰」は地黄ほど胃にもたれやすくないので、胃腸が強くない場合は当帰を含み、地黄は含まない漢方薬を使います。たとえば、当帰芍薬散と加味逍遙散は、当帰を含むものの、地黄は含まれていません。
気虚かつ血虚の場合は、気と血を同時に補います。食欲があり、かつ消化機能が良好な場合は、地黄を含む十全大補湯や人参養栄湯がよいでしょう。帰脾湯・加味帰脾湯・補中益気湯は当帰を含みますが、地黄を含まないため、胃腸があまり強くない場合に適した漢方薬といえるでしょう。
ただ、非常に胃腸が弱く消化機能が落ちている場合は、当帰でも胃にもたれる場合があります。胃腸に力をつける漢方薬の四君子湯(しくんしとう)や六君子湯(りっくんしとう)をしばらく飲んで、胃腸を立て直してから血虚の漢方薬を使います。
血虚に使う一般的な漢方薬は以下のとおりです。症状によって細かく使い分けます。

食欲がない(胃腸が強くない)場合

  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):体力がなくむくみがち
  • 加味逍遥散(かみしょうようさん):イライラ・落ち込み・憂鬱・PMS

食欲がある(胃腸が弱くない)場合

  • 四物湯(しもつとう):血虚があり、血行がよくない
  • 当帰飲子(とうきいんし):肌の乾燥が強く、かゆみなどもある
  • 温経湯(うんけいとう):生理不順、体が冷えて巡りが悪い
  • 温清飲(うんせいいん):不正出血、下腹の痛み、熱、肌の乾燥とかゆみがある
  • 婦人宝(ふじんほう):血虚がひどく血行がよくない
  • 婦宝当帰膠(ふほうとうきこう):血虚がひどく血行がよくない
  • きゅう帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう):不正出血
  • きゅう帰調血飲(きゅうきちょうけついん):めまいや立ちくらみ、精神不安定、産後の不調
  • 七物降下湯(しちもつこうかとう):最低血圧が高い高血圧、頭痛

気虚かつ血虚で食欲はある

  • 十全大補湯(じゅうぜんだいほとう):体力がなく疲れている
  • 人参養栄湯(にんじんようえいとう):体力がなく疲れていて、不眠や不安もある
  • 大防風湯(だいぼうふうとう):冷え、関節痛、リウマチ、通風(体のしびれや痛み)

気虚かつ血虚で食欲がない

  • 帰脾湯(きひとう):疲れ切ってボーッとしやすく、食欲がない
  • 加味帰脾湯(かみきひとう):帰脾湯の症状に加えてのぼせやイライラ
  • 補中益気湯(ほちゅうえっきとう):体力と食欲がない
 

血お(けつお)とはどんな体質か?

漢方において、血が十分に巡っていない状態を「血お」と呼び、血おによって生じるしこり・筋腫・子宮内膜症といった病理的産物を「お血」(おけつ)と呼びます。血おの主な原因は、血虚による血の不足、運動不足による循環不良、冷えなどです。また、気の巡りが悪くて血おになる場合もあります。血おの人は、以下の特徴があります。すべてが当てはまらなくても、いくつか当てはまれば血おの特徴を持っています。

<血おに見られる体質>

  • ・ 顔色が暗い
  • ・ 目にくまがある
  • ・ 肌にシミがある
  • ・ 刺すような痛みがある
  • ・ 肩こりがある
  • ・ 足に細い血管が浮き出て見える
  • ・ 体に腫瘍がある(子宮筋腫・卵巣腫瘍など)
  • ・ 舌が赤黒く、舌の裏の血管が紫色に盛り上がっている
  • ・(女性の場合)生理の前半に生理痛がある
  • ・(女性の場合)生理で血の塊が出る
 

血おを改善するには何に気をつければいい?

運動不足や体の冷えは血おの原因になりやすいため、軽い運動をこまめにして体を温めましょう。漢方薬も有効です。気の巡りが悪くて血おになっている場合は、まず気の巡りの改善が先決です。また、気の巡りと血の巡りを同時に改善するようなアプローチをします。

血おにおすすめの食事・食べ物

体を温めると血行がよくなるため、温かい料理がおすすめです。お粥やスープ、辛い料理、炒め物、焼き物、蒸し物が適しています。もし胃腸が弱くないなら、揚げ物もよいでしょう。血を巡らせる手に入りやすい食材は以下のとおりです。

黒米・こんにゃく・黒豆・納豆・エシャロット・クレソン・ザーサイ・ししとうがらし・セージ・玉ねぎ・チンゲンサイ・なす・菜の花・ニラ・バジル・パセリ・みょうが・モロヘイヤ・ローズマリー・クランベリー・グレープフルーツ・ブルーベリー・プルーン・桃・ココア・栗・イワシ・うなぎ、カタクチイワシ、鮭、サバ、サンマ、ししゃも、ニシン、黒砂糖、酒粕、サフラン・酢・ターメリック・味噌・甘酒・醸造酒(紹興酒や日本酒)・焼酎

手に入るのであれば、バラや紅花(ベニバナ)のお茶を飲みましょう。また、シナモンは直接的に血の巡りをよくするわけではありませんが、体を温めて体全体の巡りをよくします。シナモンティーやマサラチャイといった紅茶も体を温めて血の巡りを助けます。ローズマリーは料理に使うだけでなく、ハーブティーにしてもよいでしょう。

血おにおすすめの生活習慣(養生)

座りっぱなしは避けて、定期的に立ち歩きするなど、こまめに体を動かすように心がけましょう。ラジオ体操やウォーキングなど、軽めの運動を複数回するのがおすすめです。筋肉が固くなっている場合は、ストレッチも取り入れましょう。また、毎晩湯船に浸かってしっかり体を温めるのも大切です。湯船に浸かると体に水圧がかかり、重力で下半身にたまった血液が上半身に押し出されるので血の巡りが促進されます。体が温まる入浴剤を使うと、さらによいでしょう。

血おにおすすめの漢方薬

血おのみの場合は血を巡らせるだけで十分ですが、気滞もある場合は気と血を同時に巡らせる必要があります。気滞が強くて血おになっている場合は、気を巡らせるだけで血が巡る場合もあります。また、体力のない人が体力のある人向けの漢方薬を使うと、副作用が強く出る場合があるので注意が必要です。血おで体力に自信がない場合は、当帰芍薬散や加味逍遙散がおすすめです。体力が中程度の人は、桂枝茯苓丸・折衝飲・女神散・きゅう帰調血飲・きゅう帰調血飲第一加減・冠心Ⅱ号方がよいでしょう。体力があり胃腸も強い場合は、桃核承気湯・血府逐お丸・通導散が適しています。
血おに使う一般的な漢方薬は以下のとおりです。症状によって細かく使い分けます。

血おのみで気滞はない

  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):体力があまりなく、むくみがちで生理後半に痛む
  • 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):体力が中程度以上で、肩こり・シミ・生理前半に痛む
  • 折衝飲(せっしょういん):体力が中程度以上で、肩こり・生理痛・神経痛・腰痛
  • 桃核承気湯(とうかくじょうきとう):体力が充実していて、便秘・精神不安・生理痛
  • 冠心Ⅱ号方(かんしんにごうほう):高血圧、肩こり、頭痛、胸の痛み、手足のしびれ、静脈瘤
  • 血府逐お丸(けっぷちくおがん):高血圧の傾向があり、肩こり・のぼせ・頭痛・頭重・動悸
  • 通導散:食欲があり、打ち身・便秘・生理不順

血おだけでなく気滞がある

  • 加味逍遥散(かみしょうようさん):体力と食欲があまりなく、イライラ・落ち込み・

  • ・PMS・生理痛
  • 女神散(にょしんさん):体力と食欲に問題なく、イライラ・落ち込み・PMS・生理痛・

  • ・産後の不調
  • きゅう帰調血飲(きゅうきちょうけついん):産後の神経症、体力低下、生理不順(産後の不調すべて)
  • きゅう帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん):産後の不調、手足の冷え
 
血を補い巡らせてツヤツヤの体になろう

女性にとって「血」のバランスはとくに重要です。血が足りないと肌の色ツヤが悪くなり、血が巡らないとシミが増えます。逆に血を整えれば、生理痛・頭痛・肩こりによい影響があります。血虚やお血に対応した食材を摂り入れ、生活に気を配りながら血を補い巡らせて、体質を改善していきましょう。

  • 田中彩

    アロマ・ハーブ・薬膳・漢方ライター田中彩

    「紅生姜」の名義でハーブ・薬膳・漢方を中心に書くWebライター。植物と昆虫の研究で修士号を取得。農分野で研究員として働いた経験とバイオ系で遺伝子検査や抗体精製などに関わった経験あり。 薬膳コーディネーター、メディカルハーブセラピスト、アロマ&ケアスペシャリスト、紅茶検定中級の資格あり。理系として、研究論文(英語含む)、書籍を参考に執筆するよう心がけている。