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漢方でむくみ・ほてり・めまいに関わる「水」とは?東洋医学で陰虚と水滞に働きかけて体質改善するには

2023/12/22

漢方において、「水」(すい)は重要な概念です。「水」が足りないとほてりやのぼせの原因になり、逆に過剰で巡りが悪くなるとむくみやめまいの原因に。
「水」とはどのような概念で、不足したり巡りが悪くなるとどんな症状が出るのか、詳しく解説します。また、「水」を補い巡らせて体質改善するにあたり、取り入れたいおすすめ食材や漢方薬、見直したい生活習慣についても紹介します。

 

むくみ・ほてり・めまいに関わる「水」とは?

漢方では、「気(き)・血(けつ)・水(すい)」が体を作る重要な3要素と考えています。 「水」は陰(いん)または津液(しんえき)とも呼ばれ、血以外のすべての体液を指す概念です。汗・唾液・リンパ液はすべて「水」に含まれます。水は全身を潤し冷やす作用があり、水が足りないとほてりや、肌・粘膜の乾燥を引き起こします。とくに肺が潤っていないと空咳を生じやすく、水が多く巡りが悪いとむくみ・めまいの症状が現れます。
水は十分な気・血から生まれるため、気・血が不足すると水が不足し、巡りが悪いと水の巡りも悪くなります。
漢方において、「水」(すい)はむくみ・ほてり・めまい・空咳などに関わる重要な概念とされています。

 

陰虚(いんきょ)とはどんな体質?

漢方において、水が不足している状態を「陰虚」といいます。
体を冷やす水(陰)が不足して体を温めるエネルギーが過剰になり、ほてって火のように旺盛になる状態を陰虚火旺(いんきょかおう)といいます。加齢や更年期においてよくみられますが、更年期に限らず陰虚ならなりうる状態です。
陰虚の中で、とくに五臓の腎の水が不足する状態を腎陰虚と呼びます。腎陰虚は腎虚の一種で更年期や加齢によって引き起こされますが、陰を補う食材や漢方薬の中には腎を補う種類もあります。
過労・寝不足・加齢などが原因となり、以下の特徴が現れます。すべてが当てはまらなくても、いくつか当てはまれば陰虚の特徴を持っていると考えられます。

<陰虚に見られる体質>

  • ・頬が赤く熱く感じる
  • ・のぼせやすく暑がり
  • ・手足の裏が熱い
  • ・冷たい飲食物が好き
  • ・寝汗をかく
  • ・口の中や肌が乾く
  • ・舌が赤く乾いている
  • ・舌苔が少ないか、ない
 

陰虚を改善するには何に気をつければいい?

漢方でむくみ・ほてり・めまいに関わる「水」とは?

陰虚の人にとって、コーヒーはあまりよくありません。コーヒーは、本来不足している水を体から出してしまう作用があるからです。一方、緑茶や紅茶は水を補いつつ余分な水を出す作用があるので、陰虚にもおすすめです。
氷砂糖(グラニュー糖)や蜂蜜、メープルシロップといった食材は、水を補ったり体を潤したりするので、紅茶に入れて飲むとよいでしょう。

また、漢方には、酸甘化陰(さんかんかいん)という、酸味と甘味を合わせてとると陰(水)が生まれるとの考え方があります。すっぱい味と甘い味を合わせた、果物の砂糖漬けや果物の蜂蜜漬け、または果物単体も陰を補うのによい食べ物とされています。
生活習慣を見直し、水を補う食べ物や、潤いを補う食材を食べましょう。漢方薬を取り入れるのも有効です。

陰虚におすすめの料理や食材

陰虚の人には、スープや煮物、鍋などの水分が多く摂取できる料理が向いています。体がほてるときは、サラダや冷菜など、体を冷やす食材を食べましょう。陰虚の人に最適で手に入りやすい食材は、以下のとおりです。

肌や粘膜など体組織を潤す食べ物

黒米・山芋・黒豆・アスパラガス・エリンギ・白きくらげ・人参・ほうれんそう・モロヘイヤ・黒ごま・イカ・ホタテ・牡蠣・クラゲ・ブリ・マテ貝・鴨肉・豚肉・鶏卵・卵黄・チーズ・ヨーグルト・鶏の脂・蜂蜜・氷砂糖(グラニュー糖)

体液を増やす食べ物

うるち米・豆乳・豆腐・アスパラガス・オクラ・白きくらげ・きゅうり・ズッキーニ・冬瓜・トマト・緑豆もやし・れんこん・あんず・オリーブ・柿・キウイフルーツ・クランベリー・ココナッツ・ザクロ・シークワーサー・スイカ・すだち・すもも・梨・パイナップル・びわ・ぶどう・マンゴー・みかん・メロン・桃・ライチ・りんご・レモン・牛乳・チーズ・ヨーグルト・白砂糖・水飴・メープルシロップ・甘酒・紅茶・緑茶

とくに肺を潤す食べ物(空咳やねばつく痰に使う)

山芋・黒きくらげ・白きくらげ・クレソン・春菊・ズッキーニ・百合根・あんず・いちじく・柿・すだち・梨・バナナ・びわ・みかん・りんご・アーモンド・銀杏・松の実・落花生・氷砂糖(グラニュー糖)・白砂糖・水飴・メープルシロップ

陰虚におすすめの生活習慣(養生)

体を冷やす水が足りていないので、夏は暑さを避け、汗をかきすぎる行為は控えましょう。運動をする際は、汗をかきすぎないように、中程度までの強さで行える太極拳やストレッチ、ヨガなどが最適です。また、漢方では体の潤いは寝ている間に補充されると考えられているため、夜は早く眠るように心がけましょう。水分をとるのは推奨されますが、水分を一気にたくさん飲むと消化器に負担がかかってしまいます。少量をこまめにとるようにしましょう。

陰虚におすすめの漢方薬

陰虚に使う一般的な漢方薬は以下のとおりです。症状によって細かく使い分けます。

食欲に問題ない

陰虚によく使われる生薬「地黄」(じおう)は胃もたれしやすいので、地黄を含む漢方薬は食欲(消化機能)に問題がないかをチェックしたうえで使用します。下記の漢方薬はどれも地黄を含みます。

  • 六味丸(ろくみがん):陰虚一般
  • 知柏地黄丸(ちばくじおうがん):のぼせ・ほてりが強い
  • 味麦地黄丸(みばくじおうがん):粘膜の乾燥が強い
  • 杞菊地黄丸(こぎくじおうがん):目の疲れやドライアイになる
  • 滋陰降火湯(じいんこうかとう):空咳が出る

食欲があまりなく、体力もあまりない

消化機能が弱い場合は、地黄が含まれていない漢方薬を使います。生薬の人参は胃腸に力をつけ、水の元となる気を補うので、胃腸が弱い人によく使われます。

  • 清暑益気湯(せいしょえっきとう):夏バテ、食欲不振
  • 帰脾湯(きひとう):食欲不振、ボーッとする、眠れない
  • 酸棗仁湯(さんそうにんとう):眠れない、疲れすぎて寝付けない
  • 麦門冬湯(ばくもんどうとう):空咳が出る

便秘

陰虚だと、便が固くコロコロしてうさぎのフンのような便秘になりやすいのが特徴です。腸を潤す漢方薬が役立ちます。

  • 麻子仁丸(ましにんがん):便が固くコロコロして、高齢などで体力があまりない
  • 潤腸湯(じゅんちょうとう):便が固くコロコロして、体力に問題がない
 

水滞(すいたい)とはどんな体質?

漢方において、余計な水が多く巡りが悪い状態を「水滞」と呼び、「水毒」(すいどく)と表現する場合もあります。水滞が進行して、さらに重度になったのが「痰湿」(たんしつ)です。痰湿は、体液だけでなく体脂肪なども含む概念で、体の余分な水がドロドロとした痰(たん)や湿(しつ)になった状態です。痰湿の改善はダイエットにつながります。水滞の人には、以下の特徴がみられます。すべてが当てはまらなくても、いくつか当てはまれば水滞の特徴を持っています。

<水滞に見られる体質>

  • ・体が重くだるい
  • ・脂っこい食べ物・甘い食べ物が好き
  • ・皮脂が多い
  • ・汗が多い
  • ・白い痰が多い
  • ・舌が大きく舌苔が白い
  • ・乗り物酔いしやすく、ときにめまいがする
  • ・食欲不振で胃が詰まった感じがする
 

水滞を改善するには何に気をつければいい?

水をためる原因となる、甘い食べ物や脂っこい食べ物はとりすぎないように気をつけて、あっさりした味の料理を食べるように心がけましょう。
上半身の水を出す食べ物と下半身の水を出す食べ物は、一緒にとるのがおすすめです。カルダモンは上半身、コーヒーは下半身の水を出す食べ物とされており、2つを合わせたカルダモンコーヒーは中東で親しまれています。カルダモンは紅茶や緑茶にもよく合います。痰湿に進行している場合、体脂肪が多い状態なので、痰湿に適した食材を油脂の少ないあっさりした味付けで食べるとよいでしょう。 体力に問題がなければ、運動をして汗をかくとよいでしょう。漢方薬も有効です。

水滞におすすめの料理や食材

体が冷えると水の巡りが悪くなるので、温かい料理を食べましょう。お粥やスープ、蒸し物、炒め料理、焼き物がおすすめです。また、痰湿なら油脂や砂糖は控えめにするべきです。手に入りやすい食材は以下のとおりです。

上半身の水を出しやすくする食材(消化器官の余計な水を取る)

いんげん・枝豆・キャベツ・セージ・セロリ・そら豆・にんにくの茎・バジル・大豆もやし・モロヘイヤ・よもぎ・ココナッツ・しじみ・カルダモン・山椒・花椒

下半身の水を出しやすくする食材(尿を出しやすくする)

あわ・玄米・ハトムギ・小豆・黒豆・あしたば・アスパラガス・えんどう豆・きゅうり・空芯菜・クレソン・パクチー・せり・タイム・冬瓜・とうもろこし・とうもろこしのヒゲ・ナス・白菜・水菜・緑豆もやし・レタス・ローリエ(ベイリーフ)・スイカ・すもも・ぶどう・マンゴー・メロン・海苔・昆布・あおさ・もずく・わかめ・あさり・スズキ・はまぐり・牛タン・豚レバー・紅茶・緑茶・烏龍茶・プーアール茶・コーヒー・ココア・ローズヒップ・ハイビスカス・ビール

水滞が痰湿に進行しているときの食べ物(ダイエットが必要な場合)

玄米・こんにゃく・里芋・豆乳・湯葉・あしたば・えのき茸・かぼちゃ・からし菜・春菊・生姜・大根・たけのこ・玉ねぎ・なめこ・にんにく・水菜・三つ葉・ラディッシュ・梅・オリーブ・かぼす・金冠・梨・みかんの白い筋・ゆずの皮・レモン・アーモンド・カシューナッツ・あおさ・あさり・寒天・クラゲ・昆布・ししゃも・海苔・はまぐり・もずく・わかめ・からし・胡椒・みかんの皮・烏龍茶・プーアール茶・焼酎

水滞におすすめの生活習慣(養生)

体に溜まった水は汗で出すといいので、体力に応じた強めの運動で汗をかきましょう。ジョギングやウォーキング、テニスなど、屋外の運動が最適です。汗をかくのが重要なので、サウナや岩盤浴もよいでしょう。毎日湯船に浸かるのも、ほどよく汗をかく手段のひとつです。ただ、気の不足と水滞が同時にある場合は、汗をかきすぎないように注意して、気を補う養生を優先しましょう。また、普段の飲み物を利尿作用がある飲み物に切り替えるのもおすすめです。ハトムギ茶・小豆茶・とうもろこし茶・とうもろこしのヒゲ茶などは、ノンカフェインで利尿作用がある飲み物なので、夜に飲んでも安心です。

水滞におすすめの漢方薬

水滞に使う一般的な漢方薬は以下のとおりです。症状によって細かく使い分けます。

体力がない

体を温め動かすエネルギー「気」が不足し、水滞になっている場合は、気を補いつつ水を排出するように促します。下記の漢方薬は気を補う生薬と水を出す生薬を組み合わせた漢方薬です。真武湯は、気の不足が進行して体の中心が冷えている場合に使います。

  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):色白でむくみがち、時に貧血がある
  • 防已黄耆湯(ぼういおうぎとう):むくんでいて筋肉にしまりがなく、時に関節痛がある
  • 苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう):下半身が水に浸かったように冷えている
  • 真武湯(しんぶとう):みぞおちや下腹が冷えていて、むくみがち

めまい

  • 苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう):のぼせや頬の赤らみがある
  • 半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう):食欲不振やふらつきがある
  • 五苓散(ごれいさん):天気が悪いときや低気圧のときに調子が悪くなる

漢方では、水滞はめまいを引き起こすと考えており、実際に三半規管のむくみによってめまいを生じる場合があります。体の余計な水を抜いて対処しますが、体の巡りをよくして水を抜くか、消化器官の余計な水を抜くか、体全体の水を抜くかで使う漢方薬が異なります。体の巡りをよくしつつ水を抜くのが苓桂朮甘湯、消化器官の水を抜くのがメインなら半夏白朮天麻湯、体全体の水を抜くのが五苓散です。

むくみ・梅雨の不調

梅雨は湿度が高く、体から水分が蒸発していかないので、余計な水が体に溜まってむくみになったり、胃腸に水が溜まって食欲不振になったりします。そこで、胃腸に働きかけて水を抜く漢方薬で対処します。五苓散はむくみを取る作用に特化したある漢方薬ですが、むくみが続く場合は気の不足や気の巡りの悪さが原因の場合があるので、根本的な原因への対処を考えましょう。

  • 二朮湯(にじゅつとう):胃腸に水が溜まった感じがある
  • かっ香正気散(かっこうしょうきさん)胃腸に水が溜まったうえに胃腸の動きが悪い
  • 五苓散:むくみ全般、低気圧頭痛、二日酔い
 
水(陰)を補い巡らせて軽い体になろう

水が不足するとほてりや空咳を引き起こし、過剰で巡っていないとむくみやめまいを生じます。水滞が進行すると体脂肪などが多くなり、痰湿になってしまいます。足りない水は水分だけでなく食べ物で補い、多すぎる水は汗や尿で出すように心がけましょう。漢方薬は水を補うのも排出するのにも有効ですが、症状に合わせて細かく使い分ける必要があります。余計な水はだるさや肥満の原因となる場合があるので、水を巡らせ、余計な水は出して、軽やかな体を目指しましょう。

  • 田中彩

    アロマ・ハーブ・薬膳・漢方ライター田中彩

    「紅生姜」の名義でハーブ・薬膳・漢方を中心に書くWebライター。植物と昆虫の研究で修士号を取得。農分野で研究員として働いた経験とバイオ系で遺伝子検査や抗体精製などに関わった経験あり。 薬膳コーディネーター、メディカルハーブセラピスト、アロマ&ケアスペシャリスト、紅茶検定中級の資格あり。理系として、研究論文(英語含む)、書籍を参考に執筆するよう心がけている。