アロマ・ハーブ・薬膳・漢方ライター田中彩
「紅生姜」の名義でハーブ・薬膳・漢方を中心に書くWebライター。植物と昆虫の研究で修士号を取得。農分野で研究員として働いた経験とバイオ系で遺伝子検査や抗体精製などに関わった経験あり。 薬膳コーディネーター、メディカルハーブセラピスト、アロマ&ケアスペシャリスト、紅茶検定中級の資格あり。理系として、研究論文(英語含む)、書籍を参考に執筆するよう心がけている。
漢方の考え方は体質改善によく使われます。漢方において、体質は「気・血・水」(き・けつ・すい)の3つの要素に分類され、お互いに影響しあって体のバランスが保たれていると考えられています。 気血水とは、いったいどのような概念なのでしょうか?気血水の不調によって引き起こされる6つの体質について解説します。各要素については別ページでより詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
気血水は漢方の基本概念で、体を構成する重要な3要素です。十分な量の気血水が存在し、常にほどよく巡っている必要があります。いずれかが不足したり、巡りが悪かったりすると、身体に不調をきたしてしまいます。
体を温め活動させるエネルギーで、気血水の中で最も重要な要素です。気が不足すると感染症から体を守る働きが低下し、免疫力に影響を与えます。
血液と、血液が含む栄養やホルモンを含む概念です。全身に栄養分や潤いを運ぶ作用があります。
血以外のすべての体液を指し、汗や唾液、リンパ液などが含まれます。津液(しんえき)とも呼ばれ、陰陽の陰(いん)に属する概念です。全身を潤し冷やす作用があります。
気の不調は大きく分けて2つあります。
「気虚」や「気滞」におすすめの食事や食材、生活習慣については、以下の記事で詳しく解説しています。
気が不足している状態を指します。忙しくて気の消耗が激しかったり、消化機能が落ちて栄養を十分吸収できなかったりする(食物から気を作れない)のが原因です。
血と水は気から生まれるので、気虚になって血や水が不足すると多くの不調のもととなります。気虚で血や水の不調が起きている場合は単に血や水へのアプローチだけでは治まりません。気虚への対処が必要なので、気を補う漢方薬や、気を補いつつ血や水に対処する漢方薬を使います。
気虚の人には以下の特徴がみられます。
すべてに当てはまらなくても、いくつか当てはまる特徴があれば、気虚の状態です。
気の巡りが悪い状態を指します。ストレス過多や、運動不足による体の循環機能の低下などが原因です。
気は血や水を巡らせるもととなるため、気が巡らないと血や水も巡らず、多くの不調の原因となります。血や水が巡らないために不調が出ていても、根本の原因が気滞である場合は、気滞に対処しなければ不調が治まりません。まずは気を巡らせたり、気と血を同時に巡らせたり、気と水を同時に巡らせたりして対処します。
気滞の人には、以下の特徴がみられます。
すべてに当てはまらなくても、いくつか当てはまれば気滞の状態です。
血の不調は大きく分けて2つあります。
「血虚」や「血お」におすすめの食事や食材、生活習慣については、以下の記事で詳しく解説しています。
血が不足している状態を指します。血虚になると、低血圧・栄養の不足・ホルモンの不足などを生じます。血虚には血や栄養が不足して生じる鉄欠乏性貧血も含まれますが、すべての血虚が必ずしも貧血になるわけではありません。また、血は目に栄養や潤いを運ぶとされているので、東洋医学では眼精疲労やドライアイも血虚とされています。
血虚になると、髪や肌がパサつきやすくなります。また、漢方では、生理・妊娠・出産・授乳で多くの血を消耗すると考えられています。
つまり、美しい髪や肌を維持し、女性の体を健康的に保つには、しっかり血を補う必要があるのです。血を補う漢方薬は数多くあります。
血虚の人には、以下の特徴がみられます。
すべてが当てはまらなくても、いくつか当てはまれば血虚の状態です。
血の巡りが悪い状態を指します。血おによるしこり・筋腫・子宮内膜症などの病理的生産物はお血(おけつ)と呼ばれます。血おの原因は、冷え、運動不足による循環不良、血虚などです。気滞が元で血おになる場合もあります。
血おだと、目のくまや肌のシミが出やすくなるだけでなく、血行が悪く肌に十分な栄養が行きわたらないため、吹き出物が多く出たり、ざらざらのさめ肌になったりする場合があります。また、女性は産後に血おになる傾向があります。美しい肌を保つには、血おを解消するのが大事です。
血おの人には、以下の特徴がみられます。すべてが当てはまらなくても、いくつか当てはまれば血おの状態です。
水の不調は大きく分けて2つあります。
「陰虚」や「水滞」におすすめの食事や食材、生活習慣については、以下の記事で詳しく解説しています。
体に水が不足している状態を指します。過労・寝不足・加齢などが原因です。水(陰)が足りなくて体を温めるエネルギーが過剰になる状態は、陰虚火旺(いんきょかおう)と呼ばれます。加齢や更年期で生じる傾向がありますが、更年期でなくても陰虚であればなりうる症状です。また、陰虚の中で、五臓の腎の水が不足している状態を腎陰虚と呼びます。
陰虚には、以下の特徴がみられます。 すべてが当てはまらなくても、いくつか当てはまれば陰虚の状態です。
水の巡りが悪い状態を指します。水毒(すいどく)とも呼ばれ、水分のとりすぎ、汗をかかない、甘い食べ物や油脂の多い食べ物の過剰摂取が原因です。水滞が進行して重度になると、痰湿(たんしつ)になります。痰湿は体の余分な水がさらにドロドロの痰(たん)や湿(しつ)に変化した状態で、体液だけでなく体脂肪や中性脂肪も含む概念です。痰湿を改善すると、ダイエットにつながります。
水滞(または痰湿)は、体に水分や脂肪を必要以上に溜め込んだ状態なので、体の余分な要素を出すように対処します。体の余分な要素を出す漢方薬は数多くありますが、体力を使う漢方薬も多いので、自分に体力があるかどうかをよく見極める必要があります。体力のない人が体力のある人向けの漢方薬を使うと副作用が強く出やすいので、漢方薬の説明をよく読み、体力のある人向けの薬か体力のない人向けの薬かを見極めましょう。 とくに、気虚に当てはまる場合は体力がない状態なので、注意してください。
水滞の人には、以下の特徴がみられます。 すべてが当てはまらなくても、いくつか当てはまれば水滞の状態です。
漢方の観点から自分の体質を知るには、気血水の考え方が重要です。気血水には、それぞれ2つずつ、合計6つの体質があり、複数の体質が組み合わさる場合もあります。複合的な状態の場合は、まず気の不調への対処が大切です。自分の体質を理解して、体にあった養生をしましょう。
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