監修医師成田 亜希子
2011年医師免許取得。初期臨床研修を経て総合診療医として幅広い分野の治療に携わる。
臨床医として勤務しながら、行政機関での勤務経験もあり地域の健康課題にアプローチした健康寿命延伸、感染症対策などの医療行政にも携わってきた。
国立保健医療科学院、結核研究所での研鑽も積む。
現在、医療法人ウェルパートナー主任医師。
日本では、約40%の方が花粉症に苦しんでいると言われています。原因となる花粉は、なんと50種類を超える数が報告されているほど。花粉症を引き起こす花粉のなかでも代表的な種類のものを把握しておくと、花粉症対策をとりやすくなるでしょう。
花粉症の原因となる主な花粉の種類、飛散地域や飛散時期、花粉症の症状の特徴について紹介します。もしかして花粉症かも?と心配になったときの判断基準や花粉対策に役立ててください。
春や秋になると、くしゃみや鼻水、目のかゆみといった花粉症の症状で苦しむ方が増加します。日本では、約40%の方が花粉症で苦しんでいるとの調査報告があるほど、深刻な健康問題です。
また、花粉症のメカニズムを考えると、今はまだ花粉症になっていない方も、将来的に発症する可能性があります。誰にでも起こりうる日本の国民病ともいえるでしょう。
花粉症と一言で言っても、原因となる花粉の種類は多く、飛散する時期も異なります。
まずは、花粉とは何か、花粉症を引き起こすメカニズムについての知識を身につけて、花粉の時期に備えましょう。
花粉は、植物の花のおしべにある葯(やく)で作られる細胞の粒です。風や虫によって運ばれ、めしべに受粉すると種が作られます。花粉は、ほとんどの植物にとって繁殖に必要不可欠なのです。そのため、受粉しやすいように花粉をたくさん飛散させる植物が、数多く存在しています。
花粉症は、簡単に言うと、本来無害な花粉が鼻や目などに入り込んだときに身体が過剰に反応し、アレルギー反応を引き起こす病気です。
花粉は、基本的に人体に悪影響を与えませんが、有害な異物だと体が判断すると、免疫の細胞が花粉を攻撃してアレルギー症状が現れるのです。
特定の花粉を有害な異物として反応する体質の人は、体に花粉が侵入すると、抗体を作って対応します。ですが、体内に入った異物に対して少量の抗体が作られただけでは、大きな反応・症状は起きません。抗体が一定限度を超えると、再度侵入した花粉を排除するために過剰反応するようになり、かゆみなどを引き起こす物質が作られて、花粉症の症状として現れるのです。
抗体の量が鍵となるので、まだ症状の出ていない方も、このまま花粉を吸い込み続けると将来花粉症になる可能性があります。
花粉症を引き起こす花粉にはどれだけの種類があるでしょうか。現在、日本では50種類以上の花粉症が報告されています。
実は上の図にある大部分は、農家の方がハウス内で受粉作業を行うといった特殊な環境で報告された症状です。
都会に住む方は、広い範囲に多くの花粉を飛散させ、花粉症患者数が最も多いと言われる、スギやヒノキの花粉に注意しましょう。他にも、シラカンバやハンノキといった樹木による花粉症の可能性があります。草木(木にならない植物)では、イネ科植物やキク科のブタクサ、ヨモギ、アサ科のカナムグラによる花粉症が多いとされています。
花粉症の原因となる主な植物、花粉やその花粉を原因とする症状の特徴、花粉が飛散する地域や飛散時期について詳しく知っておくと、不調を感じたときに自分が花粉症かどうかを見極めやすくなるでしょう。
花粉症の原因となる植物別に、飛散地域と飛散時期をまとめた花粉カレンダーを載せておきますので、ぜひ活用してみてください。
ヒノキ科スギ属の針葉樹で、北海道から九州まで日本の広い範囲に植えられています。スギ材は幅広い用途に使えるため、広範囲に植林されています。
スギは、日本において花粉症を引き起こす一番の原因となっている樹木です。北海道南部から九州にかけて440万haを超える広範囲に植林されており、大量の花粉を飛散させます。
スギ花粉は、30~40μmと1mmの30分の1くらいの大きさで、一粒では肉眼で確認できませんが、集まると黄色く見える場合があります。
スギなど背の高い樹木の花粉は、数10km、風が強いと数百kmも運ばれるため、森林のない都会や平野にも届くのです。
スギ花粉症は、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみ・充血といった花粉症の典型的な症状を引き起こします。とくに、鼻に症状が出やすいとされています。
スギ花粉は、一般的に寒さの残る冬の終わりから暖かくなっていく春先にかけて飛散します。以下は、地域ごとの飛散時期です。
また、秋の気温が高い年には、11月から12月にスギ花粉が飛散する「狂い咲き」現象が起こる場合があります。狂い咲きの花粉量は多くありませんが、花粉症の方は11から12月も注意が必要です。
ヒノキ科ヒノキ属の針葉樹で、木材として多くの用途に利用できるため、人工林として広く植栽されています。
北海道と沖縄以外に広く植栽されており、ヒノキの人工林は約260万haにおよびます。風の状態によっては数10km以上飛散するため、森林のない都会であってもヒノキ花粉は届いてしまいます。
花粉の大きさはスギ花粉よりもやや小さめで、スギ花粉にアレルギーのある方の7割くらいは、ヒノキ花粉にも反応してアレルギー症状が現れるとされているため注意が必要です。
典型的な花粉症の症状が出ますが、スギ花粉症と比べると目や喉に症状が出やすいと言われています。
通常、スギよりも少し遅く飛散するのが特徴です。スギの飛散時期を頭に入れつつ、少し遅れてヒノキ花粉がやってくると覚えておきましょう。
北海道では、5月と6月に少量が飛散するだけです。その他の地域では、春暖かくなってくる3月中旬から5月にかけて2か月間ほど飛散します。
ただし、関東では、まだ寒い2月でも一定量飛散するので注意しましょう。
カバノキ科カバノキ属の落葉樹で、白い樹皮が名前の由来です。
暑さが苦手で寒い地域を好むため、北海道や東北地方、高原に多く生育しています。花粉の大きさはスギ花粉よりやや小さめで、数10km飛散すると考えられています。
一般的な鼻や目に花粉症の症状が現れますが、シラカバ花粉症では半数近くの方が口や舌にかゆみやしびれを感じる口腔アレルギー症候群を併発するのが特徴です。
北海道では4月から6月にかけて花粉が多く飛散し、東北でも、5月を中心に4月から6月にかけて飛散します。
それ以外の地域では、あまり飛散しません。
カバノキ科ハンノキ属の落葉樹で、水辺を好み、湿地帯に多く生育しています。
花粉の大きさはスギ花粉よりも小さめで、鼻や目の症状のほかに、喉の症状が出やすいのが特徴です。シラカンバと同じく、口腔アレルギー症候群を併発しやすいとされています。
飛散時期が早いので、1月に症状を感じた場合は、ハンノキ花粉症かもしれません。
キク科ブタクサ属の外来種の草で、土手や河原など、いたるところに生えています。
日本で最初に報告されたのがブタクサ花粉症で、秋の花粉症の代表格です。1mくらいの草丈で、花粉は通常数10mしか飛散しません。そのため、ブタクサが生えている周囲に近寄らなければ症状が現れないのが特徴です。ただし、風が強い日は、より遠くまで飛散する場合があるため気をつけましょう。
花粉のサイズは小さく、気管支など体の奥まで入り込みやすいため、鼻や目の症状のほかに咳など喉の症状も出やすいのが特徴です。
キク科ヨモギ属の、漢方の原材料としても知られる草で、繁殖力が強く、食用にも利用されています。
同じキク科でブタクサと似た特徴があります。花粉は遠くに飛びにくいものの、粒が小さいため体に入り込みやすく、咳など喉の症状が現れやすいのが特徴です。とくに、喘息のある方は症状を悪化させる可能性があるので、ヨモギが生えている場所の近くを通る際には注意しましょう。
8月から10月にかけて全国的に飛散します。とくに、関東の8月と9月、その他の地域は9月がピークとなるので注意しましょう。
葉が細長く平行脈で、小さな花がたくさん集まって小穂を形成する特徴がある草です。
イネ科植物の多くは、空地・草地・河川敷といった雑草が生える場所に広く生育しているため、草が生い茂る場所を避けるのは花粉症対策として有効です。気温が高く、晴れた日に花粉が飛びやすいので、天気がよい日はとくに注意しましょう。
花粉の大きさはスギ花粉と同程度の種類が多く、草丈は1mほどで、数10mしか飛散しないのが一般的です。鼻や目の典型的な症状が現れ、とくに目のかゆみや充血といった症状が出やすいとされています。
本州以南では、年の半分以上の期間にイネ科植物の花粉が飛散します。そのため、長期間にわたって注意が必要です。
アサ科カラハナソウ属の成長の早い草で、つる植物でもあります。
北海道を除く全国に広く生育し、繁殖力が強いため、家の庭や電柱の周りにも生えています。花粉の大きさはスギ花粉より一回り小さく、花粉の量は少なめですが、どこにでも生える草なので、生活圏内に入り込みやすいので要注意です。くしゃみ・鼻水・はなづまり・目のかゆみ・充血といった一般的な花粉症の症状が出ます。
花粉の飛散時期を網羅的に見ていくと、ほとんど年中何かしらの花粉が飛んでいるとわかります。春や秋の花粉症はよく知られていますが、実際には年間を通して花粉症になるリスクがあります。すでに、花粉アレルギーが判明している方は、花粉が飛ぶ時期は、とくに注意して生活しましょう。
今は花粉症にかかっていない方も、花粉が原因による体調不良は起こりえます。年中花粉は存在しているとの認識を忘れないようにしましょう。
参照:花粉症環境保健マニュアル2022(2022年3月改訂版)/環境省
花粉症といえばスギ花粉を思い浮かべる方が多いと思いますが、日本にはスギ以外にも花粉症を引き起こす花粉が多く存在しています。
一般的な花粉症の時期以外にもアレルギー症状がある方は、スギ以外の花粉によってアレルギーが起きている可能性があります。つらい症状を放っておくと、日中の眠気や集中力の低下など日常生活に支障を来すような強い症状が現れるケースもあるため注意が必要です。
思い当たる方は、耳鼻咽喉科などで一度アレルギー検査を受けてみましょう。
また、樹木の花粉症と草木の花粉症では対策方法が異なります。
樹木の花粉は広い範囲に飛散するため、マスクやメガネの着用、外出後のうがいなどの対策が有用です。一方、草木の花粉は狭い範囲にしか飛散しませんが、自生しているエリアに近寄ると症状が現れます。樹木の花粉症と同じくマスクやメガネ着用などの基本的な対策も大切ですが、アレルギーの原因となる草木が生えているエリアには極力近寄らない・自宅周囲に自生している場合には花粉が飛散する前に刈り取る、などの対策も非常に重要です。
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