一級建築士・ライフスタイルライター神谷三理砂
住宅やインテリアの意匠設計に従事した経験を活かし、家の間取りやデザイン、インテリアなど住まいに関するコラムを多数手掛ける。ジュエリーデザイナーとしての経歴も長く、ファッション系コラムも執筆。最近は、より生活に役立つ記事を書きたいという思いから健康コラムに力を注ぐ日々。
刺繍や洋裁、家庭菜園といった手仕事を楽しむ暮らしを大切にしている。
住まいの花粉対策はどうしていますか?家を出入りするときや換気で窓を開けたときなど、ちょっとした隙に花粉は部屋の中に入ってきます。そのため、外でしっかり花粉対策をしているにもかかわらず、帰宅後も花粉症の症状が出てしまう方は少なくありません。
花粉シーズンでも家の中で快適に過ごせるように、花粉の侵入経路や部屋に入った花粉を除去する方法、花粉を持ち込まないための対策方法についてご紹介します。
花粉が部屋に侵入するのは、換気時が約60%、外干しした洗濯物や布団からが37%、帰宅時の衣類や髪に付着して持ち込まれるのが約3%です。玄関ドアや窓を開けた際に、外気と一緒に花粉が部屋の中に入ってきます。窓を閉め切っていても、玄関は家族が1日に何度も出入りするため、注意が必要な場所です。全身に見えない花粉が大量に付着したまま玄関に入り、屋内でコートや帽子を脱いでしまうと、家中に花粉が飛び散ってしまいます。
花粉は気づかないうちに部屋に持ち込まれています。部屋に入り込んでしまった花粉は、舞い上がらないように気をつけながら、定期的に掃除する必要があります。掃除のタイミングやポイントを押さえて、花粉を確実に除去しましょう。
窓やサッシにたまった花粉は、乾燥して細かく砕けるとハウスダストとなって空気中に舞い上がり、人が寝て空気の動きが少なくなる夜中に、床や家具の上に積もっていきます。つまり、掃除に適しているタイミングは、起床や帰宅直後。積もったハウスダストが舞い上がる前に掃除をしましょう。
掃除の基本は水拭きです。最初に掃除機をかけると花粉が舞い上がるので、適切に除去できなくなります。雑巾やお掃除シートで床を拭いてから掃除機をかけましょう。毎日の拭き掃除が負担に感じる方は、ロボット掃除機に頼るのもありです。
玄関も同様に、いきなりホウキではくと花粉が舞い上がってしまいます。小さくちぎって水で濡らした新聞紙や古紙を床に撒いてからホウキで掃けば、花粉を舞い上げずに掃除できます。
カーテンは外からの花粉が付着しやすい場所です。他にも、ラグやマット、ソファなどのファブリック素材は、繊維に花粉がからまって蓄積しやすい特徴があります。人が歩いたり座ったりすると繊維の奥まで花粉が入り込んでしまうので、粘着テープでこまめに花粉を除去しましょう。丸洗いできるものは、定期的に洗濯するとよいでしょう。
一般的なエアコンは、室内の空気を取り込んで、温めたり冷やしたりしてから室内に吹き出す構造をしています。そのため、室内に花粉が漂っているとエアコンの内部に花粉が入り込み、そのまま使用を続けるとエアコンから花粉が排出されてしまいます。2週間に1度を目安に、フィルターの掃除をしましょう。
換気機能付きエアコンの場合、換気機能をONにすると外気を取り込んでしまうため、室内に花粉が入り込む可能性もあります。花粉が飛散する時期にはエアコンの使い方に注意しましょう。
せめて家の中では花粉に悩まされず、快適に過ごしたいものです。できるだけ花粉の少ない室内環境を維持するための対策方法をご紹介します。
外出から帰ったら、玄関先で衣服や髪についた花粉を落としましょう。玄関で衣類を脱いだら、粘着ローラーで花粉を除去します。ブラシをかけると花粉が飛び散るので要注意。花粉を払った後は、脱衣室や浴室で部屋着に着替えてからリビングや居室に入りましょう。
花粉を払ったコートや帽子は、玄関のシューズクロークやクローゼットなどに収納しましょう。収納スペースがない場合には、廊下にフックを取り付け、衣類を掛けておけば、リビングや居室に花粉を持ち込む量は減らせます。
花粉の飛散シーズンに洗濯物を外干しすると、花粉が付着して家の中に持ち込まれてしまいます。外干しした衣類をはたいてから室内に取り入れる、花粉の飛散量が少ない時間帯に外干しするといった方法もありますが、部屋に花粉を入れないように対策を強化するなら、室内干しがおすすめ。花粉の付着を防げるうえに、天候や時間を気にせず自分のタイミングで洗濯物を干せるのもメリットです。
換気を考えると窓を閉めっぱなしにするのは最善ではないので、花粉の飛散量が少ない時間帯に換気をしつつ、窓にカーテンを取り付けて侵入してくる花粉の量を減らしましょう。環境省の「花粉症環境保健マニュアル」によると、厚いカーテンを使わなくても、レースのカーテンを設置して窓を10cmほど開けて換気すれば、室内への花粉の流入量をおよそ1/4に減らせます。花粉対策用のレースカーテンや、網戸の上から貼るフィルターを活用するのもよいでしょう。
カーテンは定期的に洗濯をして、窓付近の床はフローリング用のモップやウェットシートのワイパーなどで掃除しましょう。また、換気をする際は、花粉の飛散が多い昼前後や夕方頃を避けましょう。
部屋に漂う花粉の除去に役立つのが空気清浄機です。たとえば、スギ花粉の粒径は約30~40μm。細かい花粉を捕集できるHEPAフィルターや、TAFUフィルターを搭載したタイプなど、高性能な集塵フィルターを搭載している空気清浄機を選べば、多くの花粉除去が期待できるでしょう。
より高い花粉の除去機能を求めるなら、JAPOC(花粉問題対策事業者協議会)が定めた厳しい規格をクリアし、花粉対策製品認証を受けてJAPOCマークを付与されたモデルを選びましょう。
花粉は、水分を含むと重くなって床に落ちやすくなります。湿度50%を目安に部屋を加湿したら、床を掃除して花粉を除去しましょう。湿気が30%程度では花粉が完全に床に落ちず、低い位置で漂い続けてしまうので、温湿度計で確認を。
家を建てる際やリフォームを考えている場合は、花粉対策に有効な間取りや内装材を検討してみましょう。たとえば、洗濯に関連する「洗う・干す・取り込む・洗濯物をたたむ」といった作業を一部屋で行えるランドリールームを設置すれば、室内干しが手軽にできるので、花粉を防ぎながら家事の効率化も図れます。ベランダや庭にサンルームを設置するのもよいでしょう。
また、アレルギー物質の働きを抑制する機能性タイルを住まいに取り入れる方法もあります。とくに花粉が侵入しやすく飛び散りやすい玄関まわりや、衣類を着替えるときに使用する脱衣室などに取り入れるとよいでしょう。花粉は床にたまるので、床に座って過ごす時間が長い小さなお子様のいるご家庭にも最適です。空気清浄機との併用で、より高い効果を期待できるでしょう。
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