監修医師成田 亜希子
2011年医師免許取得。初期臨床研修を経て総合診療医として幅広い分野の治療に携わる。
臨床医として勤務しながら、行政機関での勤務経験もあり地域の健康課題にアプローチした健康寿命延伸、感染症対策などの医療行政にも携わってきた。
国立保健医療科学院、結核研究所での研鑽も積む。
現在、医療法人ウェルパートナー主任医師。
ダイエットで減量目的の運動の場合は、朝食前と夕方から夜の時間がおすすめです。朝の運動は交感神経を刺激して基礎代謝をあげ、カロリーが消費しやすくなります。からだも目覚め、仕事や勉強の集中力をあげてくれるので、メリットも高いでしょう。しかしタイミングを間違ってしまうと栄養の吸収や睡眠に影響を及ぼすため注意が必要です。
適切な頻度や運動時間も知って、自分のペースで運動を取り入れましょう。
ダイエットのために運動する人は多いでしょう。ダイエット効果を高めるための運動は朝食前と夕方から夜にかけての時間がおすすめです。理由を丁寧に解説します。
通常人は運動をすると、糖が最初にエネルギーとして利用されます。朝は前日の夕方以降、食事を摂取していないため、糖が少なくなっている状態です。体内の糖分が少ないときに運動をすると、脂肪が消費されやすくなります。運動すると交感神経が刺激されるため、基礎代謝が向上してダイエットのサポートにもつながります。
また朝は、日中の活動に向けからだのスイッチが切り替わるタイミングです。運動により切り替えがスムーズになるために、活動的に過ごせるようになるでしょう。
夕方から夜にかけての運動もダイエットに効果的です。人の筋肉は日中から夜間にかけて血行が良くなっているため運動のパフォーマンスは夕方から夜にかけて高まるとされています。夕方から夜にかけての運動は、ダイエットの効果が期待できるだけでなく、睡眠の質も高めます。夕方に運動を行うと体温は一気に上昇しますが、就寝前にかけて低下します。体温の低下によりスムーズに寝つきやすくなるのです。ただし、激しい運動は交感神経を刺激して逆効果になるので、注意が必要です。
ダイエット目的で運動するなら、できるだけ効果的に運動したいもの。体の調子によっては、避けたほうがよい時間もあります。
朝起きてすぐの時間は、からだが完全に目覚めていません。休息と活動のスイッチの切り替えがまだできていない時間であり、急に運動をするとからだへの負担となってしまいます。起きてから1時間程度たってからの運動をおすすめします。
運動は簡単なストレッチや体操などでからだをほぐしてから始めましょう。睡眠中の発汗によりからだの水分が失われているので、水分を摂取してから行うようにしてください。
極端に空腹を感じるときは、避けた方がいいでしょう。血液中の糖分が少なくなっており、エネルギー不足が考えられるためです。ふらついたり集中力が低下したりして、ケガや事故につながる可能性もあります。
空腹感があるときは軽食を摂取するようにしましょう。バナナやゼリー飲料などは手軽に摂取できておすすめです。
食直後の運動は食べ物の消化吸収を妨げてしまうため、運動の時間には向きません。食後の運動は1時間程度経過してから行うようにしましょう。
寝る前に運動をすると、からだが休息するためのスイッチに切り替わりづらくなります。寝付きにくくなり、睡眠の質の低下につながってしまいます。激しい運動は寝る3時間前には終了させるようにしてください。
なお、ストレッチやヨガであれば、心身の緊張をほぐし、リラックス気分をもたらしてくれます。寝る1時間ほど前までできる運動です。呼吸を意識してゆっくり行うといいでしょう。
運動には「有酸素運動」と「無酸素運動」があります。2種類の運動の組み合わせで、ダイエットの効果がさらに期待できます。それぞれの運動のポイントをみていきましょう。
有酸素運動は、酸素を使い糖や脂質をエネルギーとする運動で、ウォーキングやジョギング、水泳などです。ダイエット効果をあげるためには頻度、1日あたりの時間がポイントです。
有酸素運動は毎日行っても問題はありません。運動自体の強度がそれほど高くなく、継続によって効果が高まると期待できるためです。ただし、運動を始めたばかりの人や慣れない人は週2~3回でもかまいません。継続が大切であるため、無理せずできる頻度で行いましょう。
有酸素運動では主に脂質をエネルギーとして利用します。運動を開始して20分頃から脂質が消費されるため、ダイエットを目的にする場合、1日20~30分が効果的です。
以前は1回あたり20分以上行わないと効果がないと考えられていましたが、最近の研究では1回あたり30分でも、10分を3回に分けて行っても効果に差がないと報告されています。自分が続けやすい方法で行いましょう。
無酸素運動は、短い時間に大きな力を発揮する強度の強い運動で、短距離走や筋トレなどです。からだを鍛え、消費カロリーのアップがのぞめるため、ダイエットをサポートしてくれます
筋トレなどの無酸素運動は毎日ではなく、週2~3回行うようにしましょう。筋トレはからだを休ませる時間も重要であるためです。ただし、部位を変えれば毎日行ってもかまいません。「今日は脚、明日は背中」など部位を変えて行うのもいいでしょう。
スクワットや腕立て伏せなど、1回10~15回を3セット、数種類組み合わせるのがおすすめです。
ダイエットのための運動で大切なのは継続です。とはいえ、わかっていても忙しいときもあるでしょう。自分が継続できる頻度や回数で行ってみてください。おすすめの有酸素運動と無酸素運動を紹介します。
有酸素運動はダイエットをサポートしてくれるほか、健康な生活の維持にもつながります。ウォーキングと踏み台昇降は手軽に取り組みやすい運動です。
ウォーキングはからだへの負荷が少ないため、運動に慣れていない方にもおすすめです。少しきついと感じる程度の速さを目標にしましょう。慣れてきたらランニングに移行してみてください。景色を眺めながらのウォーキングはストレス解消にもつながりますよ。以下がウォーキングのポイントです。
天気が悪いときは、自宅での踏み台昇降がおすすめです。専用のステップ台も市販されていますが、階段などで代用が可能です。TVを見ながらでもできます。
有酸素運動の効果を高めるために、筋トレなどの無酸素運動も行うようにしてみてください。筋トレは正しく行わないと効果が得られないため、正しい方法を身につけるようにしましょう。初心者の人は慣れるまで回数を調整するようにしてくださいね。
スクワットは下肢の筋トレで、特別な道具が不要で手軽にできます。正しい方法で行えばダイエットの効果を高められるでしょう。以下がスクワットのポイントです。
プランクは腹部の筋トレで、スクワットと同様手軽にできる筋トレの一つです。以下がプランクのポイントです。
ダイエットの効果をあげるためには、運動以外でも意識したいポイントがあります。3つのポイントをそれぞれ解説します。
運動をすると発汗により水分が失われます。脱水症状を防ぐために運動前後、運動中に水分をとりましょう。のどの渇きを感じる前に飲むようにしてください。たくさん汗をかくときは水分だけではなく電解質が含まれたスポーツドリンクや経口補水液などがおすすめです。ただし、スポーツドリンクは糖分が多い商品もあるため、注意が必要しましょう。
ダイエットは食事制限と合わせて行う人もいるかもしれません。制限し過ぎず、栄養バランスのよい食事が大切です。また、食事は野菜から食べ始めましょう。野菜に含まれる食物繊維によって満腹感を得やすく、食べ過ぎ防止につながるためです。よくかんでゆっくり食べるようにしましょう。
また、特に水に溶けるタイプの食物繊維は糖質の吸収を緩やかにするため、肥満の原因にもなる食後の血糖値の急上昇を抑える働きがあります。
運動によるダイエット効果は、日常生活の動きでも得られます。たとえば、通勤の移動は速度をあげて歩行する、エレベーターは使わずに階段を使用する、掃除はテキパキと行うなど意識して行うといいでしょう。
ダイエット目的の運動は、時間帯と頻度を意識して行うと効果的です。時間帯は朝食前と、夕方から夜がおすすめです。頻度は有酸素運動が週2~3回から毎日、無酸素運動は週3日程度行うようにしましょう。運動の効果を得るには継続は大切ですが、無理のしすぎは挫折につながる可能性もあります。
急激なダイエットはからだへの負担も考えられるため、無理のない程度から始めてみてください。成功したら着たい洋服を買う、おしゃれをして外出するなど楽しい目標を立てて取り組んでみましょう。
適度な運動はカロリー消費や脂肪燃焼などのダイエット効果、ストレス解消など私たちの心身に良い影響を与えてくれます。
しかし、運動の方法や時間帯などを間違えると今回ご紹介したように怪我や事故を引き起こしたり、スムーズな入眠ができなくなったりとかえって不調の原因となる場合も少なくありません。
特にダイエット目的で行う運動は、無理のない範囲で楽しみながら朝食前や夕方などに行うのがよいでしょう。
ただし、運動を習慣づけることがストレスになると継続が難しくなります。
最初から強度や頻度を上げず、ご自身のペースで進めるようにしてください。
また、運動に慣れていない方は膝や腰などの痛みが生じる場合もあります。体に痛みや不調を感じたときは無理に運動を継続せずに回復してから再開しましょう。
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