看護師ライター北村由美
看護師として総合病院、地域病院、訪問看護ステーション等で約30年勤務。超低出生体重児から103歳の高齢者まで看護を経験。
自らが家族の介護を行う中「自分の知識、経験が困っている人の役に立てるのではないか」と考えるようになり、ライターを開始。「読者が共感できる記事」をモットーに医療・健康分野の記事、看護師向け記事を執筆している。
犬の皮膚はデリケートで、乾燥しやすい特徴があります。乾燥がすすむと、からだにさまざまな影響をもたらしますが、犬は痛みやかゆみを言葉で伝えられません。飼い主が愛犬の変化に気づき、早めにケアしてあげるのが大切です。シャンプーを見直し、保湿剤を塗るのも一つの方法です。乾燥と一緒に湿疹が見られる場合は、病気の可能性もあるため、皮膚のチェックもしっかり行ないましょう。
犬の皮膚は人間の皮膚よりも薄く、被毛が皮膚を守る役割を果たしています。皮膚の厚さを人間の成人と比較すると、犬の皮膚は3分の1程度の厚みしかありません。大変デリケートで、少しの刺激でもトラブルが起こりやすいのです。とくに空気が乾燥する季節は、皮膚も乾燥しやすくなります。人間の肌と同じように、愛犬の皮膚も常にケアしてあげなければなりませんね。
犬の皮膚が乾燥すると、どのような変化があるでしょうか。早めに気づけば対処も早くできるため、進行を防げるでしょう。変化を一つずつみていきます。
皮膚が乾燥すると人間と同じようにカサカサしてきます。フケがみられる場合もあります。さらに乾燥すると、皮膚のバリア機能が低下し、外部からの刺激を受けやすい状態に。少しの刺激でもトラブルにつながるリスクもあるのです。
皮膚の乾燥は、かゆみを引き起こす場合もあります。かゆみがあると引っ掻いたり、噛んだりするため、赤みや傷、出血が見られます。傷口が皮膚病の原因となるリスクもあるので、注意してくださいね。
肉球は乾燥するとひび割れが起こります。見逃しやすい部分であるため、日々チェックしてあげましょう。乾燥やお散歩でのダメージで出血する場合もあるため、しっかりケアしてあげたいですね。
乾燥は皮膚だけではなく、被毛にも影響を及ぼします。ツヤがなくなりパサつき、毛玉や切れ毛を発生させます。
犬の皮膚が乾燥する原因は、皮膚が薄いためだけでなく、ケア方法や環境も影響します。原因を一つずつみていきましょう。
愛犬をきれいにしたいからと、頻繁にシャンプーをしていませんか。犬のシャンプーは、月に1~2回が理想的です。頻繁なシャンプーは必要な皮脂まで落としてしまい、皮膚のバリア機能を低下させてしまいます。どうしても臭いが気になる場合や、おしりの汚れが気になる場合は、以下の方法がおすすめです。皮膚に負担をかけないように注意しましょう。
空気が乾燥すると犬の皮膚も乾燥します。とくに冬場は湿度が低下し、暖房器具も使用するため、乾燥しやすい状態です。加湿したり、暖房器具の使い方を工夫したりして、愛犬を乾燥から守るようにしてくださいね。
栄養不足や栄養バランスの乱れで、皮膚が乾燥する場合もあります。乾燥だけでなく、さまざまなトラブルにつながるリスクも。バランスのよいごはんをあげましょう。
皮膚の乾燥はかゆみを発生させますが、犬は気持ちを伝えられず、自分で対処できません。飼い主さんが仕草を見て、気づいてあげる必要があります。かゆがっている様子があれば、皮膚の状態をチェックしてあげてください。掻き傷から出血しているときも、かゆみが出ているかもしれません。
以下の仕草があるときは注意しましょう。
乾燥しやすい部位は、被毛におおわれていない部分です。おなか周りや足の付け根には、被毛がほとんど生えていません。そのため、乾燥した空気の影響を受けやすくなります。また肉球は散歩で直に地面に触れるため、外からの刺激を受けやすいのです。乾燥がすすむと、ひび割れたり硬くなったりする場合もあります。
皮膚の状態をチェックする際は、以下の部位を念入りにチェックしましょう。
愛犬を乾燥から守るためには、毎日のケアが大切です。保湿を意識したケアを行なってあげましょう。おうちでもできる方法を紹介していきますね。
シャンプーは愛犬の皮膚に合ったシャンプーを選ぶようにしましょう。カサつきやフケが目立つ場合は、低刺激のシャンプーがおすすめです。乾燥しやすい冬場は、保湿作用のあるシャンプーを選んでみてください。
シャンプーはやさしくおこない、やさしく拭き取ってあげましょう。シャンプー液は直接皮膚につけて洗うのではなく、あらかじめスポンジで泡立てておき、泡で洗うようにします。ゴシゴシこすらず、マッサージするように洗いましょう。すすぎは、すすぎ残しのないように、毛の根元から十分洗い流します。水分の拭き取りは、からだをタオルで包みこみ、押さえるように拭き取るのがポイントです。
シャンプーで嫌な思いをしてしまうと、シャンプーが苦手になってしまう場合も。愛犬とのコミュニケーションにもなるので、様子を見ながら丁寧に行なってあげてください。
シャンプーの後は、皮膚の水分がうばわれやすくなっているため、必ず保湿剤を塗ってあげましょう。犬用の保湿剤はクリームやローション、ミストなどさまざまなタイプがあるので、部位や目的に合わせて選んでみてください。愛犬の被毛でおおわれている部分は、広範囲に塗布しやすいローションやミストがおすすめです。肉球は専用クリームでケアしてあげるといいでしょう。
犬は保湿剤を塗ると、気になってなめてしまう場合があります。一緒に遊んで気を紛らわせたり、カラーや靴下で保護したりして工夫してくださいね。
暖房器具を使用すると、部屋は乾燥しやすくなります。加湿器を使用し、湿度を保つのが望ましいです。ホットカーペットやこたつに長時間いる場合は、皮膚のトラブルにつながるリスクがあるので、注意してあげましょう。
寒い冬は、愛犬に洋服を着せる飼い主さんも多いのではないでしょうか。洋服は寒さ対策に役立ちますが、皮膚が弱かったり乾燥したりしていると、トラブルの原因となる場合もあります。洋服は綿や羊毛などの天然素材を選ぶようにし、化学繊維はできるだけ避けるようにしましょう。
乾燥肌だと思っていたら、実は皮膚の病気だったとの話もあります。乾燥肌と間違いやすい病気をみていきましょう。
膿皮症とは、皮膚に湿疹や赤みができる病気です。皮膚に存在するブドウ球菌が極度に増加するために起こります。湿疹が治る過程で、フケや脱毛が見られるため、乾燥による変化と間違われる場合があります。
脂漏症は、皮膚のターンオーバーが乱れ、脂っぽくなったり、フケが出たりする病気です。皮膚のターンオーバーのサイクルは、通常3週間から1か月程度ですが、脂漏症ではサイクルが早まります。その結果、皮脂が過剰に分泌されるのです。皮脂のバランスの乱れで、フケが見られるようになり、乾燥肌と間違われる場合もあります。
皮膚をかゆがる・引っ掻くなどの仕草や、脱毛が見られる場合、犬アトピー性皮膚炎の可能性があります。ダニや花粉などのアレルゲン(抗原)に対する過剰な反応で起こります。遺伝が関係するとされ、若いうちに発症し、年齢を重ねると症状が強くなるのが特徴です。
犬の皮膚は人間の皮膚よりも薄くとてもデリケート。乾燥から肌を守るためには毎日のチェックと、保湿を意識したケアがポイントです。乾燥対策は愛犬との大事なスキンシップの時間にもなるでしょう。もし、ケアを見直しても皮膚がよくならない場合や、症状がひどくなる場合は、病気の可能性があります。早めに病院で見てもらうようにしましょう。
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