看護師ライター北村由美
看護師として総合病院、地域病院、訪問看護ステーション等で約30年勤務。超低出生体重児から103歳の高齢者まで看護を経験。
自らが家族の介護を行う中「自分の知識、経験が困っている人の役に立てるのではないか」と考えるようになり、ライターを開始。「読者が共感できる記事」をモットーに医療・健康分野の記事、看護師向け記事を執筆している。
足のむくみの原因はさまざまです。一時的であれば、生活習慣やホルモンの影響が考えられます。対策のためには、自分の生活を見直し、適切なセルフケアをするのが大切です。マッサージ・定期的な運動・体を温める入浴などを行うとよいでしょう。ただし、むくみの状態によっては、医療機関の受診が必要な場合も。一時的か、慢性的かを見極めるようにしてください。むくみの知識を広げ、「脱・むくみ足」を目指しましょう。
足がむくむと、太く見えたり重く感じたりしますよね。悩んだ経験のある人は多いはず。そもそもむくみとは何なのでしょうか。むくみが生じるメカニズムについてみていきましょう。
むくみとは「皮膚や皮膚の下に水分が溜まった状態」です。人の体は約60%が水分で構成されており、本来は水分が体の中をうまく行き来しながら、体の中でバランスを保っています。しかし、なんらかの理由により水分バランスが崩れると、水分が血管の外に溜まってしまい、むくみが生じるのです。
私たちの体では、心臓から送り出される血液が動脈を通って全身に運ばれ、静脈を通り心臓に戻ってきます。血液を循環させるためには心臓に加え、ふくらはぎのポンプ機能が大事です。ふくらはぎの筋肉は、伸び縮みによりポンプの役割を果たすため筋肉が動かないと血液の戻りが悪くなり、むくみが生じます。とくに足は心臓から遠く、低い位置にあるため重力の影響で余分な水分が溜まりやすくむくみやすい場所。血液をしっかり心臓に戻すには、重力にさからって戻すだけの、足やふくらはぎの筋肉の動きが求められるのです。
デスクワークや立ち仕事、運動不足などにより筋肉を動かさない状態が続くと、血流が悪くなりむくみにつながります。
生活習慣の影響や、女性特有のホルモンバランスといった原因で、むくみが生じます。2つの原因についてみていきましょう。
むくみの大半は「一過性のむくみ」で、生活習慣が原因と考えられています。長時間同じ姿勢でいる・運動不足・過剰な食事制限などです。むくみにつながる主な5つの生活習慣をみていきましょう。
長時間同じ姿勢でいるのは、むくみにつながる大きな原因の一つです。
通常ふくらはぎを動かすと、筋肉がポンプの役割を果たし心臓に血液を戻します。しかし、デスクワークや立ち仕事では長時間同じ姿勢になるため、ふくらはぎの動きが減って血液が心臓に戻れず足に溜まり、むくんでしまうのです。
運動不足が続き、ふくらはぎの筋力が低下すると、ポンプ機能がうまく働かなくなります。すると、血流が低下し、むくみやすい足につながるのです。年齢を重ねると筋肉量も少なくなるため、日常的に運動を続けるようにしましょう。
ダイエットでの過剰な食事制限は、ミネラル(カリウム・カルシウム・マグネシウムなど)やタンパク質・ビタミンB1の不足、足の筋力低下を招きます。結果、筋肉のポンプ機能がうまく働かず、血流の低下につながり、むくみを生じさせるのです。
冷えは体にとって大敵です。冷えると血流が滞り、水分や老廃物がうまく排出されなくなるため、むくみを生じさせます。むくみのほかにも、体に影響を及ぼす恐れがあり、注意しなければなりません。
アルコールは血管内を脱水させる作用があるため、飲み過ぎると体の水分が失われ、血液中のアルコール濃度が高くなります。濃度を下げようとして水分を取り込んでしまい、むくみの原因となるのです。
塩分の多い食事も、血液中のナトリウム濃度が上昇するため、ナトリウム濃度を下げようと水分を多く取り込んでしまいます。アルコールも塩分もむくみを招くため、摂り過ぎに注意しなければなりません。
女性は生理・妊娠・更年期といった場面で、体の変化やホルモンバランスの影響を受けやすいため、注意が必要です。
生理前には、体内の水分量を保持させる黄体ホルモン(プロゲステロン)が増えるため、体内に水分が溜まりやすくなります。また、妊娠中は大きくなった子宮によって、足の血管が圧迫され血流が滞りやすくなります。その結果足の静脈に溜まった水分が、周囲の組織にしみ出してしまうのです。出産に向けて血液量が増えるのも、むくみにつながります。更年期には女性ホルモンのバランスが崩れるため、自律神経が乱れやすくなります。自律神経は血管の収縮や拡張をコントロールしているため、血行が悪くなりむくみが生じてしまうのです。
また女性の筋肉量は男性よりも少ないため、足のポンプ機能が弱く、むくみや冷えが起こりやすくなります。
一晩休むと軽減する程度のむくみであれば、さほど心配はいらないでしょう。しかし、慢性的にむくんでいるなら、注意が必要です。以下の場合は医療機関の受診をおすすめします。
明らかに普段と違うむくみならば、早めに受診するようにしましょう。
足がむくむ原因をふまえると、以下の人は注意が必要です。
・運動不足
・デスクワークが中心
・立ち仕事
・生理前、生理中
・妊娠中
・体が冷えやすい
・高齢
病的なむくみでなければ、セルフケアで改善が期待できるでしょう。
足のむくみ対策には、原因となる生活習慣の改善が大切です。セルフケアを取り入れておくと、むくみの程度も抑えられるでしょう。ポイント6つを解説します。
むくんでいる部分は、マッサージをして血流をよくしましょう。足先から太ももに向けて行い、強く揉まず撫でるようにするのがポイント。すべりをよくするために保湿クリームを使用するのもおすすめです。お気に入りの香りなら、マッサージタイムも心地よくできるでしょう。
座っている時に足がむくんだら、イスなどを利用して足を水平するといいでしょう。就寝時は足の下に薄いクッションを入れて、心臓よりも足を少し高くして休むのもおすすめです。
定期的に体を動かしましょう。足の筋肉を鍛えると、ポンプ機能が働きやすくなります。激しい運動の必要はなく、ウォーキング程度で十分です。すきま時間に足首を回したり、かかとを上げ下げしたりするのも効果的です。
体が温まると血流がよくなるため、湯船につかるのも大切です。入浴中に足をマッサージしてみるのもいいでしょう。
また、体を冷やさない工夫も大切です。冷房の効いた屋内は、とくに注意しましょう。カーディガンやジャケットを羽織ったり、膝かけを利用したりして、できるだけ体を冷やさないようにしてください。
レトルト食品やインスタント食品は調味料が多く使用されているため、できるだけ自炊するようにしましょう。減塩の調味料を使うなど、普段から薄味の食事を心がけるのも大切です。
また、カリウムは塩分の排出を促すため、一緒に摂り入れるとよいでしょう。カリウムを含む代表的な食品は以下のとおりです。
毎日の食事や間食に上手に取り入れつつ、難しい場合はサプリメントで栄養補給するのも一つの方法です。
弾性ストッキングは、一般的なストッキングより圧力の強いストッキングで、ふくらはぎや足首を圧迫してむくみをケアします。自分に合ったサイズ選びが重要であるため、購入時はサイズ表を十分確認してください。正しい方法で着用するのも大事です。
デスクワークや立ち仕事で、足のむくみに悩む人は多いでしょう。一過性の足のむくみであれば、生活習慣を見直し、適切にセルフケアすれば改善が見込めます。毎日のセルフケアが対策にもつながるため、習慣化してみてください。
むくみは嫌な症状ですが、一日仕事や家事をがんばったからこそ現れる変化でもあります。夜のリラックスタイムにはお気に入りのクリームでマッサージを行い、自分をケアしてあげてくださいね。
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