監修医師成田 亜希子
2011年医師免許取得。初期臨床研修を経て総合診療医として幅広い分野の治療に携わる。
臨床医として勤務しながら、行政機関での勤務経験もあり地域の健康課題にアプローチした健康寿命延伸、感染症対策などの医療行政にも携わってきた。
国立保健医療科学院、結核研究所での研鑽も積む。
現在、医療法人ウェルパートナー主任医師。
睡眠は長さだけではなく、深さも大切です。睡眠には日中に活動した体と脳を休める働きがありますが、睡眠が浅くなると脳が十分に休めず、心身に不調を来します。睡眠が浅くなるのはどのような原因があるのでしょうか?睡眠を深くするための対処法も含めて詳しく解説します。
睡眠時間はしっかり確保しているのに、ぐっすり眠れた気がしない…。睡眠には一日の疲れを回復させるだけでなく、記憶の定着、免疫機能の向上、心身の修復などさまざまな効果があります。睡眠の十分な効果を得るには、良質な睡眠が不可欠です。
良質な睡眠は、単に長く睡眠時間を確保すればよいだけではありません。朝起きたときにぐっすり眠ったと実感できる「熟眠感」も大切です。
まずは、眠りが浅くなる原因について詳しく見てみましょう。
私たちの睡眠には、「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」というふたつのパターンがあります。簡単に言えば、レム睡眠は体が休んでいるのに脳は起きている状態です。一方、ノンレム睡眠は体も脳もしっかり休んでいる状態を指します。
レム睡眠では記憶の定着が行われており、ノンレム睡眠では体だけではなく脳をしっかり休めて疲れを回復していると考えられているのです。
眠りにつくと、まずはノンレム睡眠が始まり、一時間ほどするとレム睡眠に移行していきます。私たちの睡眠は、ノンレム睡眠とレム睡眠が約90分ごとの周期で繰り返されています。そして朝になると、レム睡眠の状態からすっきりと起床できるのです。
「眠りが浅い」状態は、ノンレム睡眠の時間が不足した状態と言えるでしょう。
十分な睡眠時間を確保しているのに以下の項目に当てはまる方は注意が必要です。睡眠が浅くなっている可能性があります。
眠りが浅くなる…つまり、ノンレム睡眠の短縮は以下のような原因によって引き起こされます。
日常的にストレスや心配ごとが多くなると、自律神経バランスの乱れが引き起こされます。通常、睡眠中は心身を落ち着かせる副交感神経が優位に活動しますが、交感神経が優位になってしまうと脳が興奮状態になってスムーズなノンレム睡眠に移行しにくくなるのです。
私たちには睡眠リズムを一定に保つ体内時計という仕組みが備わっています。体内時計は、不規則な生活習慣のほか、朝に太陽の光を浴びない状態やカフェインの摂り過ぎなどが原因で乱れていきます。体内時計が乱れるとスムーズな入眠ができなくなり、結果としてノンレム睡眠の短縮につながるケースも少なくありません。
頻尿、頭痛、皮膚のかゆみ、いびきなど夜間に目を覚ます原因になる身体的な不調もノンレム睡眠を短くする原因になります。
その他にもうつ病などの精神的な病気が原因で、ノンレム睡眠は短くなる場合があります。
良質な睡眠には、不快さを感じない温度・湿度・静かさ・暗さなど、眠りに適した環境が整っている必要があります。
また、寝具の快適さも良質な睡眠には不可欠であり、これらの環境が悪いと睡眠中に目覚める原因になります。
心身の健康を維持するには、良質な睡眠が必要です。そのためには、十分な睡眠時間の確保に加え、ノンレム睡眠の長さが十分な深い睡眠をとるよう心がけましょう。
上述したように睡眠が浅くなる要因はさまざまであり、睡眠が浅い方はご自身の思い当たる原因の改善が大切です。具体的には次のような対策をしてみましょう。
私たちの脳内ではスムーズな眠気を誘うメラトニンという物質が分泌されます。メラトニンは、起床後に太陽の光を浴びた時点から15時間ほど経過すると自然に分泌が盛んになります。しかし、メラトニンは夜間になっても室内が明るすぎると分泌が抑制される性質を持つ物質です。スムーズに寝入って睡眠リズムを整えるには、就寝の3時間ほど前から室内を暗めの環境にする必要があります。寝室の照明は昼光色や昼白色などまぶしく明るい灯ではなく、優しい灯の電球色を選ぶのもおすすめです。
メラトニンはパソコンやスマホの画面から放たれるブルーライトの光を浴びたときも分泌が抑えられます。就寝前にパソコンやスマホなどでリラックスタイムを楽しむ方もいますが、眠りが浅くなる原因になるため注意が必要です。
また、エアコンや加湿器などを活用して快適に眠れる環境を整え、枕などの寝具も不快さを感じないアイテムを選ぶなど工夫しましょう。
スムーズな入眠を誘うメラトニンは、朝になって太陽の光を浴びると分泌が抑えられます。しかし、太陽の光を浴びないとうまく分泌が抑えられなくなり、夜になって十分な量が分泌されなくなる可能性があります。睡眠リズムを整えるためにも、就寝や起床の時間は規則正しく、朝起きたときはカーテンを開けて太陽の光を浴びましょう。
休日の寝だめや長すぎる昼寝も睡眠リズムを乱す原因になるため注意が必要です。昼寝は午後3時までの間で15~30分程度にとどめましょう。また、休日もできるだけ平日と同じ睡眠リズムのキープも大切です。休日に寝だめをしたくなる場合は、平日の睡眠が足りないと考えられます。平日の生活リズムを見直しましょう。
ストレスや不安感による自律神経バランスの乱れは睡眠の浅さにつながります。社会生活を送る上でストレスなどの問題は避けて通れない場合もありますが、ご自身に合ったストレス解消方法を見つけてください。
ゆっくり入浴する、好みのアロマを炊く、好きな音楽を聴く…などストレス解消にはさまざまな方法があります。ただし、就寝時に体や気持ちが興奮した状態になっていると、かえって睡眠の質が悪くなります。気持ちが落ち着く方法を探しましょう。
食生活の乱れも睡眠を浅くする原因になります。スムーズな入眠に必要なメラトニンはトリプトファン、ビタミンB6、炭水化物などの栄養素が不足しているとうまく生成できなくなるため注意が必要です。
ビタミンB6は生のマグロやカツオ、トリプトファンは大豆製品・乳製品・バナナ・卵などに多く含まれています。炭水化物も含め、日頃からバランスよい食生活を心がけましょう。
良質な睡眠は心身の健康を維持する効果があります。良質な睡眠をとれない状態が続くと、下記のようなさまざまな不調が現れるため注意しましょう。
朝起きたときに熟眠感がない場合は、睡眠が浅い可能性が考えられます。ご自身の生活を見直して、原因を解決しましょう。
十分な睡眠時間を確保しても熟眠感が得られない方は、睡眠の浅い可能性があります。私たちの睡眠は、体を休めるレム睡眠、そして脳と体を熟眠させるノンレム睡眠が約90分周期で繰り返されています。しかし、生活習慣の乱れや環境の悪化によって、ノンレム睡眠が短くなると、脳がしっかり休息できず熟眠感を得られないのです。
適正なノンレム睡眠を得て睡眠の質を高めるには、今回ご紹介した対策が必要です。ただし、眠りの浅さは睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群、うつ病など心身の病気が原因の場合もあります。対策を講じても眠りの浅さが改善しないときは放置せずに医療機関を受診しましょう。
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