監修医師成田 亜希子
2011年医師免許取得。初期臨床研修を経て総合診療医として幅広い分野の治療に携わる。
臨床医として勤務しながら、行政機関での勤務経験もあり地域の健康課題にアプローチした健康寿命延伸、感染症対策などの医療行政にも携わってきた。
国立保健医療科学院、結核研究所での研鑽も積む。
現在、医療法人ウェルパートナー主任医師。
「眠りが浅い」「すぐに目が覚めてしまう」「寝付くのに時間がかかる」といった、睡眠の悩みはつらいものです。改善したいなら、生活習慣の見直しだけでなく、食べ物・ツボ・サプリメント・グッズにも目を向けてみましょう。
睡眠の悩みには4つのタイプがあり、原因も生活リズムや身体面、精神面など多岐にわたります。自分に合ったケアや対処法を探っていき、改善しない場合は病院の受診も検討しましょう。
睡眠の悩みは多岐に渡りますが、十分に眠れない、あるいは睡眠の質が悪いなどさまざまな悩みがあります。具体的には以下のような悩みを抱えている方が多いでしょう。
睡眠の悩みは、医学的に入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害の4つに分類されます。
いずれか一つだけ思い当たる人もいれば、複数が当てはまるケースもあり、人によって悩みの現れ方は異なるのです。
布団に入ってもなかなか寝つけず、入眠まで30分~1時間以上かかる状態を指します。
中途覚醒(睡眠維持障害)とは、夜中に何度も目が覚めてしまう症状です。目が覚める回数や時間は個人差があり、高齢者に多く見られます。
夜中に一時的に目が覚めても、すぐに再び眠りにつけるのであれば問題ありません。しかし、中途覚醒が繰り返し起こり、再度眠りにつけずに睡眠の質が低下する場合は、日中の活動にも支障が出る可能性があります。
早朝覚醒は、起きる予定の時刻より、30分以上早く目が覚めてしまう状態です。まだ眠りたいのに眠れないといった症状も、一般的に高齢者に多いとされています。
十分な睡眠時間をとっているはずなのに、朝起きた時にぐっすり眠った感じがしない。
いわゆる「眠りが浅い」状態を熟眠障害といいます。
複数の視点から、睡眠の悩みの原因を解説します。思い当たる項目がないか、チェックしてみてください。
女性の体は、ホルモンバランスの影響を受けやすく、更年期や妊娠・授乳期、生理前に眠りが浅くなる傾向にあります。また、皮膚トラブルといった他の要因にも着目してみましょう。
心の状態は、眠りの深さに大きな影響を与える場合があります。
生活の乱れによって体内時計が狂うと、眠気が訪れにくくなったり、起きるのがつらくなったりします。
寝室の環境はとても大事。とくに、家族と同じ部屋で寝ている場合は、自分に合った環境かどうか見直してみましょう。
日々の生活習慣は知らず知らずのうちに睡眠に影響を与えます。
ぐっすり眠るために、身近なポイントから見直してみましょう。
生活リズムや食事といった生活習慣をチェックしましょう。いずれも、忙しい時や疲れている日は、おろそかになりがちです。
起床時間を一定にし、夜は眠くなったら就寝するリズムを整えましょう。睡眠時間は5時間以上9時間未満が目安とされています。昼寝は20分以内に抑え、15時前には目覚めるようにしましょう。
就寝前には、ぬるめのお風呂に30分程度つかるのも効果的です。就寝時刻に向けて、心身共にリラックスできるよう意識していきましょう。ただし、入浴は就寝の1~2時間前には済ませてください。
夕方に軽い運動を、30分から1時間行うとよいでしょう。ラジオ体操や太極拳といった運動が効果的です。寝る前には腹式呼吸やストレッチでリラックスすれば、副交感神経が優位になり、リラックスできます。
また、トイレが近い方は水分摂取を控えましょう。頻尿が改善されない時は、泌尿器科の受診も検討してみてください。
朝食は起床後1時間以内、夕食は就寝2時間前までに済ませるのが大切です。カフェインやアルコールは、トイレが近くなるため控えめにしましょう。トリプトファンなど、良質な睡眠を促進する栄養素を意識して摂取してみてください。
スムーズな入眠を促すなら、温かい飲み物がおすすめです。夕方以降はホットミルクやハーブティーといった、カフェインを含まない飲み物を摂取しましょう。寝酒はかえって眠りを浅くしてしまうので、おすすめしません。
質のよい睡眠を得るためには、就寝環境も重要です。
寝室は暗くし、メラトニン分泌を促進させましょう。街灯といった外からの明かりが入り込む場合は、遮光カーテンがおすすめです。スマートフォンの使用も避けてください。
寝具は自分の好みや体格に合わせると、質のよい睡眠につながります。枕は首や肩の筋肉の緊張を防ぐため、高さが合った商品を選びましょう。マットレスは体型や体質に合わせて、やわらかさや通気性を重視しながら選ぶようにしてください。
就寝中の発汗や、体温変化に対応できる寝具を選ぶのも大切です。就寝前はテレビやスマホの強い光を避け、寝室の温度と湿度にも気をつけましょう。寝室の温度は26度前後、湿度は50~60%が適切とされています。ただし、温度や湿度の感じ方には個人差があるため、ご自身が快適と感じる環境を整えましょう。
眠りが浅い状況を打破するためには、ツボ押し・耳栓といったグッズ・アロマを使用したセルフケアが有効です。
不眠緩和のためのツボ押しは、寝る30分から1時間前に行うのが理想的です。照明を落とし、快適な室内温度の中でじっくりとツボを刺激します。布団の上で行うのもよいでしょう。
過度の飲酒後や、テレビを見ながらのツボ押しは控えてください。快眠のために脳をリラックスさせる必要があるので、ツボの正確な場所を探しすぎず、気持ちよい場所を押すようにしましょう。また、痛みをこらえながら強く押しすぎるのは逆効果です。優しい押し方を心がけましょう。
快眠を促すおすすめのツボを3つご紹介します。
グッズを上手に使うと、睡眠の質が上がる場合があります。
気軽に使えるのはアイマスクや耳栓です。周囲の光や音を遮断し、ぐっすり眠れます。家族による物音やいびき、光に悩まされている人はぜひ試してみてください。
また、自分自身のいびきや口呼吸が気になる方は、口呼吸防止テープや鼻腔テープを使用してみましょう。パジャマも自分に合った素材や形を選ぶと、リラックスにつながり、快眠につながるかもしれません。
寒い夜は、温熱商品を使って肩まわりを温め、1日の疲れを解消しましょう。ただし、長時間の使用で低温やけどのリスクがあるため、使用時間には注意が必要です。
夏の暑さ対策には、部屋の温度を調節し、涼感グッズを活用しましょう。体温の調整で自然に眠りにつけます。
睡眠に効くとされるアロマには「リラックス系」と「リフレッシュ系」の2種類があります。
寝る前はラベンダーやカモミールといった「リラックス系」がおすすめ。心を落ち着け、深い眠りを助けます。実際に嗅いでみて、ほっとできるかどうかも大切です。店頭で試したりサンプルを入手したりして、好みの香りを見つけられるとよいでしょう。
朝や日中は、ペパーミントやレモンといった「リフレッシュ系」がおすすめ。爽やかな香りで快適な目覚めが期待できます。
アロマを使用するなら、アロマディフューザーを使ったり、マスクにアロマオイルを垂らす方法を試してみましょう。枕にピローミストを吹きかけたり、ルームスプレーやボディクリームでも、香りを楽しめます。自分に合った方法を見つけて、続けてみてください。
ただし、妊娠中や体調によってはアロマを使用するとかえって体調が悪くなる場合もあります。使用するときは医師に相談しましょう。
睡眠サプリメントとは、睡眠の質を高めるための成分が配合されたサプリメントです。
たとえば、睡眠の質(眠りの深さ、すっきりとした目覚め)の向上に役立つ作用が報告されているGABA。また、すみやかに深睡眠をもたらし、睡眠の質の向上(熟眠感の改善や睡眠リズムの改善)や起床時の爽快感のあるよい目覚め、日中の眠気の改善・疲労感の軽減・作業効率の向上に役立つ作用が報告されているグリシンを含む商品が多く市販されています。
即効性はないものの、質のよい睡眠を促進するサポート的な役割につながるでしょう。
ドラッグストアやオンラインショップで簡単に購入でき、手軽に始められるのが睡眠サプリメントのメリットです。ぐっすり眠れず疲労感があるといった場合、まずはサプリメントの力を借りてみるのも一つの手かもしれません。
「眠ろうとしてもどうしても眠れない」といった睡眠の悩みは、ほとんどの方が一度は経験があるのではないでしょうか。一時的な場合も多いですが、睡眠の悩みが改善せず長期間にわたって続く場合も。ぐっすり眠れない、夜中に目覚めてしまうといった「睡眠の悩み」の状態が長く続くなら、不眠症の可能性があるため注意が必要です。
不眠が続くと、日中に倦怠感・意欲低下・集中力低下・抑うつ・頭重・めまい・食欲不振などの不調を感じるでしょう。中でも、「夜間の不眠が続き」「日中に精神や身体の不調を自覚して生活の質が低下する」の二点が認められたら、不眠症の可能性があります。
不眠症は、慢性不眠症(慢性不眠障害)と短期不眠症(短期不眠障害)の二つに分けられます。
眠りが浅い状態が続き、セルフケアを試みても改善が見られないなら、受診を検討しましょう。
病院では、生活環境や習慣の指導・認知行動療法・薬物療法など総合的な治療が行われます。
睡眠の悩みが続く場合には、まずかかりつけ医への相談を検討してください。病院を受診し、不眠の相談をするだけでも、気持ちが和らぐ可能性があります。
最近は睡眠に特化した「睡眠外来」も増えてきました。近くに専門のクリニックがないか調べてみるのもよいでしょう。
「睡眠に問題を抱え、だるさや頭痛の身体症状を1か月以上経験している」がひとつの目安です。また、1か月以内であっても、日中の眠気や集中力の低下によって仕事や学業に支障が出ている場合には、早めの受診をおすすめします。
治療法は大きく分けて「非薬物療法」「薬物療法」の2種類があります。
非薬物療法は、睡眠指導やストレス管理、リラクゼーション法、運動療法などを医師の指導を受けながら行うものです。
薬物治療では、睡眠薬や漢方薬を医師の指導の下、適切な量で使用します。睡眠薬に抵抗を感じる人もいるかもしれませんが、医師が処方した薬を正しく使用するのであれば、副作用などが生じる可能性は高くありません。ただし、指示された用法・用量を守り、自己判断で薬を増やしたり減らしたりするのは避けてください。また、「薬を飲みさえすれば眠れる」と考えず、生活をトータルに改善していく意識をもちましょう。
睡眠の悩みはつらい経験ですが、あなたの体や心からの「生活を見直そう」のサインかもしれません。
日頃の生活の中で、知らず知らずのうちに無理をしていないでしょうか。自分の体と心の声に耳を傾け、できるところから生活習慣を改善してみましょう。
規則正しい生活リズム、適度な運動、バランスのよい食事といった改善を徐々に重ねれば、良質な睡眠を取り戻せるはずです。
熟眠できない、十分な睡眠がとれないといった睡眠のお悩みは心身に大きな影響を及ぼします。放っておくと集中力低下などを引き起こし、重度な事故につながるケースも少なくありません。
今回ご紹介したような睡眠のお悩みがある場合には、第一に生活習慣の見直しが大切です。規則正しい生活リズムを整え、就寝前や就寝中の環境、目覚めの週間などを見直してみましょう。
最近ではさまざまな快眠グッズやサプリメントなどもあるので、そういったものを活用するのも一つの方法です。
しかし、睡眠のお悩みが続く場合は医学的な治療が必要になる場合もあります。さらに、睡眠のお悩みが心身の病気に起因するケースも少なくないため、軽く考えずにできるだけ早めに医療機関を受診して下さい。
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