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【医師監修】眠りが浅い理由は自律神経バランスの乱れ?原因と改善法は“ストレスを溜め込まない”生活を

2024/08/14

眠りが浅くて悩んでいる人の中には、自律神経バランスの乱れが原因の方が数多く見られます。睡眠のメカニズムと自律神経の関連を詳しく知れば、自分にあった改善法もみえてくるでしょう。大切なのは自律神経バランスの切り替えです。活動モードの交感神経が、休息モードの副交感神経に切り替わると、リラックス状態になりスムーズな入眠が叶いやすくなります。睡眠前に交感神経が刺激しないような生活を送り、自律神経バランスを整えて、生活全般の満足度を上げていきましょう。

  • 成田

    監修医師成田 亜希子

    2011年医師免許取得。初期臨床研修を経て総合診療医として幅広い分野の治療に携わる。
    臨床医として勤務しながら、行政機関での勤務経験もあり地域の健康課題にアプローチした健康寿命延伸、感染症対策などの医療行政にも携わってきた。 国立保健医療科学院、結核研究所での研鑽も積む。 現在、医療法人ウェルパートナー主任医師。

 

眠りが浅いのは自律神経の乱れのせい?

自律神経は睡眠に密接に関わっています。私たちは夜になると、自律神経バランスの働きによって自然と身体の筋肉が緩み、リラックス状態になりスムーズな入眠が可能となるのです。
しかし、自律神経のバランスが崩れると、なかなか寝付けず、浅い眠りになりがち。すると睡眠が慢性的に不足した状態となり、心身に不調が引き起こされます。その結果、さらに自律神経バランスが乱れるという悪循環に陥っている方は少なくないでしょう。

そもそも、自律神経とは何か

「自律神経バランスを整える」とよく耳にしますが、そもそもどういった神経なのでしょうか。
実は自律神経は、脳にある視床下部から指令を受け、私たちの生命を維持するために必要な機能を調節しているのです。自律神経の機能には、心拍数・呼吸・体温・消化活動などの調節があります。すべて無意識のうちに行われるため、自律神経による体の変化に気づく人はほとんどいないでしょう。まさに自律神経は「縁の下の力持ち」なのです。

交感神経と副交感神経

自律神経は大きく分けて、交感神経と副交感神経の2つからなります。身体のさまざまな部位で相反する働きをしており、私たちの体のコンディションを整えるのに欠かせない存在です。
交感神経は、主に活動中やストレスを受けたときに優位になり、心拍数や血圧を上げたり筋肉を緊張させたりして、私たちを「戦闘態勢」にします。一方、副交感神経はリラックスしているときや睡眠時に優位に働き、心拍数や血圧を下げ、筋肉の緊張をほぐして「休息態勢」に導くのです。
具体的には、交感神経が優位のときは心拍数や血圧が上がり、気管支が拡張し、血管が収縮します。また、胃腸の動きは鈍くなり、筋肉は緊張状態になります。逆に副交感神経が優位になると、心拍数と血圧が下がり、気管支は収縮し、血管は弛緩します。胃腸は活発に動き、筋肉の緊張は和らぐでしょう。
交感神経と副交感神経が互いに協力し合い、身体の機能をコントロールして健康を守ってくれています。自律神経は体が適切に機能するために、非常に重要な機能を担った神経なのです。

自律神経バランスの乱れで眠りが浅くなるメカニズム

前述のとおり、自律神経には交感神経と副交感神経の2種類があり、上手にバランスを取りながら働いています。睡眠ももちろん同じです。
しかし、ストレスや不規則な生活習慣によって自律神経バランスが乱れると、睡眠時に交感神経が働きリラックスできないため、不眠の大きな原因になります。

夜、自律神経が乱れて交感神経が働くとどうなる?

夜になると交感神経の働きが抑えられ、副交感神経が優位になり休息モードに切り替わります。しかし、夜でも交感神経が優位の状態が続くと、体は活動モードのままになり、リラックスして眠るのが困難になってしまうのです。
交感神経が活発だと、皮膚表層の血管が収縮して熱が放出されにくくなったり、熱を産生する褐色脂肪細胞が刺激を受けたりすることで体温が高く保たれてしまいます。一方で、睡眠に必要なホルモンであるメラトニンの分泌が抑えられがちです。メラトニンは夜になると分泌が促され、私たちを睡眠へと導きますが、不足すると良質な睡眠が困難になります。
自律神経のバランスが崩れると、体温調節機能が低下して、夜でも体温が下がりにくくなるため、深い睡眠が得られない結果になるのです。そして、「眠れない」「寝ても疲れが取れない」といった睡眠の質の低下につながります。

ノンレム睡眠とレム睡眠

睡眠中、私たちの脳は休んでいるわけではありません。睡眠には「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」の2つのステージがあるのです。ノンレム睡眠は睡眠の深さによって4段階に分けられ、段階を進むごとに脳波の活動は低下します。レム睡眠では脳波の活動があり、夢を見る場合が多いでしょう。
睡眠中、脳は目覚めている間に得た情報を整理・分類し、必要な情報を記憶に保存し、不要な情報は削除します。以上のプロセスによって、知識が定着し、ストレスが和らげられるのです。しかし、十分に眠れないと、学習の定着が悪くなったり、ストレスがたまりやすくなったりしてしまいます。

 

自律神経が乱れてしまう主な原因

自律神経が乱れると、全身の倦怠感・多汗・頭痛・肩こり・手足のしびれ・動悸・不整脈・めまい・不眠・吐き気など、心や体に不調があらわれます。自律神経が乱れる原因について、確認していきましょう。

主な原因はストレス

ストレスを感じると、自律神経のバランスが乱れ、ストレスホルモンとも呼ばれる「コルチゾール」の分泌量がアップします。コルチゾールはストレスに対抗するために血糖を上げたり、脈拍や血圧を上げたりするホルモンです。睡眠時に分泌されてしまうと、「眠れない」「寝ても疲れが取れない」不眠症の原因になってしまいます。

ストレス以外の要因

ストレス以外にも、自律神経が乱れる要因はいくつか存在します。

夜更かしや不規則な生活

夜更かし・昼夜逆転・不規則な起床時間は体内時計の乱れにつながり、自律神経のバランスを崩します。

生活習慣の乱れ

暴飲暴食・不規則な食事・深酒・喫煙は、交感神経と副交感神経のバランスを崩す原因になります。

環境の変化

季節の変わり目・急激な気圧の変化は自律神経バランスの乱れを引き起こします。引越しや職場の異動といった環境の変化によるストレスも、自律神経バランスに影響を与える要因のひとつです。

ホルモンの変化

女性はホルモンの変化にも注意が必要です。月経・妊娠や出産・更年期といったホルモンバランスが変化するタイミングは、自律神経バランスに影響を及ぼします。

過度の刺激

寝る直前に過度な運動や、スマートフォンの光を見すぎたりすると、過度な刺激となって眠りが妨げられます。

 

自律神経を整え睡眠不足を解消するには

【医師監修】眠りが浅い理由は自律神経バランスの乱れ?

睡眠の質を上げるためには、どのように自律神経を整えればよいのでしょうか。ストレス対策や生活習慣の改善についてお伝えします。

まずはストレスをためない生活環境づくりを

仕事・人間関係・健康上の不安など、ストレスの種はいたるところに隠れています。ストレスを上手に解消する方法を、一つでも多く知っておくのが大切です。

自分に合ったストレス対処法を見つけよう

ストレスに対処する方法は、人によって異なります。以下にストレス対処法の例を挙げるので、ヒントにしてください。自分に合った方法を複数見つけ、使い分けられるとよいですね。「効果がある」と感じたストレス解消法はメモしておきましょう。

  • ・音楽を聴いたり映画を見たりする
  • ・お笑いを見て爆笑する
  • ・スポーツや登山で思い切り体を動かす
  • ・友人や家族に悩みを話したり、日記を書いたりする
  • ・気が済むまで眠ったり、ゴロゴロしたりする
  • ・美術館や博物館、寺社めぐりをする
  • ・ショッピングを楽しむ
  • ・ゲームや漫画といった、好きな活動に没頭する
  • ・好きな香りの入浴剤を入れたお風呂にゆっくりつかる

物の見方を変えてみよう

人はそれぞれ、物事の見方は違うでしょう。少し視点を変えるだけで、ストレスの度合いは大きく変わってきます。たとえば、大きな仕事を前に緊張しているときをイメージしてみましょう。
「失敗は許されない、必ず成功させなければならない」と考えるのか、「周りの人の助けを借りればよい、必ずしも100点をめざす必要はない」と考えるのかで、気の持ちようは違うはずです。
心配ごとや悩みがあるときは、「別の見方、考え方はできないだろうか」と視点を転換してみましょう。ストレスを減らし、自律神経バランスの乱れを防ぎます。

生活習慣の改善で自律神経を整えよう

自律神経は、身体的・精神的なストレスや生活習慣の乱れから影響を受けやすい特質を持っています。したがって、日々の生活習慣の見直しは、不眠の改善につながります。

朝の光を浴びよう

目から入った朝の光は、脳の視床下部に信号を送り、体内時計をリセットします。光を浴びるとセロトニンの分泌が促され、セロトニンがメラトニン(睡眠ホルモン)の原料になるため、夜になると自然と眠くなり、質のよい睡眠が得られるのです。

食事を規則正しく取ろう

食事を毎日なるべく決まった時間に取るのも、自律神経のバランスを保つ上で重要です。とくに朝食は、副交感神経から交感神経への切り替えスイッチになります。朝食を取ると体温が上がり、交感神経の働きが活発になるからです。少量でも構いませんので、朝食を取る習慣をつけましょう。
食事のとり方も大切で、ゆっくりとリラックスした状態で楽しむのがベストです。緊張した状態で食事をすると、消化液の分泌が低下して胃もたれといった症状が出る可能性があるので、忙しい人ほど食事の時間を確保しましょう。

腸内環境を整えよう

腸内環境を整えるには、発酵食品と食物繊維を意識的に食生活に取り入れましょう。発酵食品には善玉菌である乳酸菌が含まれ、食物繊維は善玉菌のエサになります。具体的には、納豆・味噌・キムチ・ヨーグルト・海藻類・根菜類を食べる習慣を身につけましょう。

 
忙しい人こそ、サポートアイテムを活用してぐっすり眠ろう

仕事や育児、趣味に充実した日々を送る人ほど、ストレス解消とリラックスが大切です。
リラックスをサポートする栄養ドリンクや入浴剤、アロマを上手に使い、気分転換を図りながら規則正しい生活リズムを整えていきましょう。
自律神経が整うと、睡眠以外にもよい効果がたくさんあります。ぜひ、深い睡眠で満足度の高い日々を手に入れてください。

 
監修医師からのアドバイス

自律神経は体のさまざまな機能を調整する神経です。交感神経と副交感神経が相反する働きを担いながら体の機能を整えています。
睡眠の質もその一つであり、自律神経バランスの乱れは寝つきが悪い、熟眠できない、早朝に起きてしまう…など睡眠のトラブルを引き起こします。

自律神経バランスを整えるには、規則正しい生活リズム、食事、運動、入浴など多くの生活習慣を見直す必要があります。今回ご紹介した見直し以外にも、喫煙は交感神経を刺激して自律神経バランスを乱す原因になるため、喫煙習慣がある方は禁煙を目指すのも大切です。

一方で、睡眠の不調は甲状腺の病気や神経系の病気、精神的な病気などで引き起こされる場合もあります。ご紹介したようなセルフケアを実践しても改善しない場合は放置せずに医療機関を受診しましょう。