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【医師監修】眠りが浅い悩みは更年期特有?睡眠不足で夢ばかり見るときに効くセルフケアと病院受診の目安

2024/10/18

更年期は眠りが浅くなりやすい時期です。女性からよく聞かれる悩みですが、実は中高年の男性でもぐっすり眠れない人が増えているのです。
夢ばかり見る、深く眠れない、昼間ぼーっとするといった症状と更年期はどのような関連があるのでしょうか。詳しく解説します。
睡眠不足によいとされるセルフケアや生活習慣、病院受診の目安を知り、つらい時期を乗り切りましょう。

  • 成田

    監修医師成田 亜希子

    2011年医師免許取得。初期臨床研修を経て総合診療医として幅広い分野の治療に携わる。
    臨床医として勤務しながら、行政機関での勤務経験もあり地域の健康課題にアプローチした健康寿命延伸、感染症対策などの医療行政にも携わってきた。 国立保健医療科学院、結核研究所での研鑽も積む。 現在、医療法人ウェルパートナー主任医師。

 

「眠りが浅い」悩みは女性特有?

睡眠不足は、更年期によくある悩みの一つとされています。
「なかなか寝つけない」「夜中に汗をかいたり眠りが浅かったりして、何度も目が覚める」「朝早く目覚めてしまう」など、不眠の現れ方は人それぞれです。
睡眠に関する悩みは、女性特有なのでしょうか。

睡眠に対して問題を抱えている人の性別と年代

多くの研究で、睡眠不足は女性に多く見られる傾向が明らかになっています。厚生労働省によれば、更年期女性の4割~6割が睡眠の悩みを抱えており、仕事にも影響することが報告されているのです。

参照:「健康づくりのための睡眠ガイド2023 (案) 」/厚生労働省

男性でも更年期で眠りが浅くなる?

更年期障害とは、40代を過ぎた頃に体内の性ホルモンの量が減って、自律神経バランスが悪くなって全身にさまざまな症状が出る状態を指します。
男性の場合、更年期障害をLOH症候群(late-onset hypogonadism)と呼びます。男性ホルモンである「テストステロン」の減少が原因です。
男性の更年期障害の症状にも睡眠不足が見られますが、男性ホルモンと睡眠不足がどう関係しているかは、実はまだ解明されていません。
ただ、不眠症や睡眠時無呼吸症候群の人は、男性ホルモンの値が低いとされており、不眠症を治療するとホルモンの値が改善するとの報告もあります。

 

女性特有のライフステージと不眠

女性の体は一生の間に大きく変化するもの。とくに、生理中、妊娠・出産、閉経の時期には、体のホルモンのバランスが変わり、睡眠のパターンにも影響します。
月経周期や妊娠・出産期、更年期で変化する睡眠の傾向を見ていきましょう。

月経周期と睡眠不足

多くの女性が悩まされる「月経前症候群(PMS)」の症状には、睡眠の変調も含まれています。月経周期に合わせて女性ホルモンが変化するため、昼間に眠気が強くなったり、夜は反対に寝つけなくなったりするのです。
睡眠の記録をつけると、月経と睡眠の関係が分かるかもしれません。症状が強いときは休みをとり、無理をせずに過ごしましょう。

妊娠中の睡眠不足

妊娠初期はホルモン「プロゲステロン」の影響で、昼間に眠くなる場合があります。無理をせず、短い昼寝がおすすめです。一方妊娠後期には子宮の収縮や胎動、頻尿などで夜中に目が覚めてしまうケースが多くなります。

出産後の睡眠不足

出産後は夜間の授乳やお世話で睡眠が分断されるため、睡眠不足になりがちです。周囲のサポートを得ながら、短時間の昼寝を取り入れましょう。

更年期の睡眠不足

歳を重ねると、睡眠が浅くなったり、眠る時間が短くなったりする傾向が強まります。更年期の女性に特有の、のぼせ・発汗・動悸が原因で眠りが浅くなる場合も多いでしょう。
また閉経後には、睡眠時に一時的に呼吸が止まってしまう「睡眠時無呼吸症候群」にかかるリスクが高まるといわれています。
「いびきが大きい」「寝ているときに呼吸が止まっているようだ」と家族や同居している人から指摘されたら要注意です。睡眠時無呼吸症候群を発症すると、慢性的に眠りが浅くなり日中の集中力低下や眠気などによって重大な事故を引き起こすケースも少なくありません。

「夢ばかり見る」など、更年期で眠りが浅いときの症状

更年期の女性が不眠を感じるとき、どのような症状が出るのでしょうか。
よく聞かれるのは以下の症状です。

  • ・入眠に時間がかかる
  • ・夜中に目が覚める
  • ・夢ばかり見て眠りが浅い
  • ・熟睡感がない

以上の症状が続くと、十分な睡眠がとれていない状態となります。
結果として、朝スッキリ目が覚められない、昼間ぼーっとする、頭が重たい、集中力が続かないといった、つらい症状に悩まされてしまうでしょう。

 

更年期特有の睡眠不足におすすめの方法

【医師監修】眠りが浅い悩みは更年期特有?

睡眠不足に悩む方々が共通して感じるのは、「今夜も眠れないかもしれない」といった不安です。
睡眠不足が続くと、「早く眠らなければ」と思いつめ、かえって眠れなくなっていませんか。
そんなときは、「どうせいつかは眠くなるから、眠くなるまで起きていよう」と考えると、気持ちが楽になるかもしれません。不眠改善におすすめの方法をご紹介します。

睡眠不足が気になるときのセルフケア

睡眠不足を改善するためには、自分でできるケアがいくつかあります。
冷えを感じたら手足を温めるなど、症状に応じた対策をとりましょう。また、自律神経のバランスを整えてリラックスするのも大切です。
前夜に十分に眠れなかった場合、昼食後に10-15分の昼寝をするとよいでしょう。短時間でも脳の疲労を取り除くのに効果的です。
睡眠不足で最も大切なのは、一人でくよくよ考え込まないこと。セルフケアも、自分の心と体の安定を第一に選んでください。

睡眠不足のとき、見直すべき生活習慣

睡眠不足に悩んだら、まずは日常生活を振り返ってみましょう。食事や運動、休息など、基本的な生活習慣の改善が重要です。

寝酒をしない

アルコールを飲むと、一時的に眠くなるものの、その効果は2時間ほどで切れてしまい、睡眠の質を悪化させます。寝酒は避けましょう。

カフェインをとりすぎない

午後から夜にかけてカフェインを含む飲み物をとりすぎると、眠りに影響する場合があります。少なくとも就寝の6時間ほど前からはカフェインの摂取は控えた方がよいでしょう。カフェインへの耐性は人によって異なりますが、眠れない日が続いているときは日中でもコーヒーやお茶類を飲みすぎていないか気にかけてみましょう。
最近では、カフェインレスの飲み物も多く市販されています。お気に入りの飲み物を探してみてください。

寝る前にブルーライトを浴びすぎない

スマートフォンやパソコンの画面を見すぎると、ブルーライトを過度に浴び、睡眠を促すメラトニンというホルモンの分泌が抑えられることがわかっています。その結果、眠りにつきにくくなるのです。「寝室にはスマートフォンを持ち込まない」「寝る2時間前からはデジタル機器を見ない」と、自分なりのルールを決められるとよいでしょう。

眠れないまま布団の中で過ごさない

寝つけないときには、寝床を離れてリラックスできる活動をするのもおすすめです。ソファーで音楽を聴いたり、読書したりすると自然と眠くなるケースも少なくありません。"眠らなくては"との義務感から離れられます。

休日の寝溜めをしない

平日に睡眠不足だからといって休日に寝溜めをすると、生活リズムが乱れてしまうおそれがあります。毎日同じ時間に起きる習慣をつけましょう。

寝つきの悪さを過度に気にしない

寝つきが悪い夜は誰にでもあります。過度に気にすると、不安が増してさらに眠れなくなってしまうもの。睡眠不足への恐怖から離れ、気持ちにゆとりを持ちましょう。

睡眠不足改善のために取り入れたい生活習慣

睡眠不足を改善するためには、簡単にできる習慣を取り入れるのが大切です。以下のうちできそうなものがあれば、ぜひ試してみてください。

適温で入浴する

お湯の温度は38~41℃が最適です。この温度で入浴すると、体がリラックスしやすくなります。42℃以上の熱いお湯は、逆に交感神経を刺激して寝つきを悪くする可能性があるため注意しましょう。

寝る前にリラックスする方法を試す

筋弛緩法や呼吸法など、さまざまなリラックス方法があります。とくに呼吸法は簡単で、お腹を膨らませながらゆっくり息を吸い、お腹をへこませながらゆっくり息を吐くだけ。息を吐くときは、吸うときの2倍の時間をかけるのがポイントです。
はじめは効果を感じにくいかもしれませんが、続けるとリラックスできるようになります。

日中の生活リズムを整える

寝つきが悪いときは、寝る時間を決めすぎず、眠くなったら寝るようにしましょう。
また、日中の過ごし方も重要です。朝起きたらカーテンを開けて日光を浴び、朝食をしっかりとりましょう。また、昼間は外に出て活動するのが大切です。昼寝は午後3時より前にするとよいでしょう。

心と体のバランスを整える

軽い運動で心も体もリフレッシュできます。ウォーキングやストレッチを試してみましょう。
また、過労やストレスは更年期障害を悪化させる原因になります。気分転換を心がけたり、深呼吸をしたり、趣味を楽しんだりしながら、心と体のバランスを整えましょう。リラックスする時間を作るのも大切です。

 

睡眠不足が続いたときは

眠りが浅い日が続いてつらい。そんな場合は、病院の受診や周りへの相談を考えてみましょう。

睡眠不足で病院を受診するタイミングは?

以下の症状が続くときは、病院の受診を検討するのがおすすめです。

  • ・セルフケアを試しても睡眠が改善されない
  • ・日中の眠気が強くて日常生活に支障が出ている
  • ・眠りの浅さが強いストレスになり、不安やイライラなど不眠以外の症状が出ている
  • ・睡眠不足以外にも気になる症状が続いている

睡眠不足は何科を受診すべき?

睡眠不足で病院を受診する場合、症状によって適した診療科が異なります。
入眠に時間がかかったり、夜中や早朝に目が覚めてしまうときは、内科・心療内科・精神科に相談するとよいでしょう。メンタルを扱う医療機関になじみがなく、気が重い場合は、まずはかかりつけ医に相談するのがおすすめです。漢方など気になる薬についても質問してみましょう。病院で睡眠不足について相談するだけでも、睡眠不足に対する心配が和らぐかもしれません。
いびきが大きかったり、日中の眠気に困ったりしている場合は、耳鼻咽喉科が選択肢になります。または、呼吸器・循環器を専門としている病院もおすすめです。
気分の落ち込み・顔のほてり・動悸の症状が気になるときは、婦人科や更年期外来を受診しましょう。問診や内診、女性ホルモンの値の測定を受けられます。

睡眠不足の悩み、周囲にどう相談する?

睡眠不足で悩んでいるときは、一人で抱え込まずに家族や友人、上司に伝えるのが大事です。
「病気ではないから」と周囲への相談をためらう人がいますが、昼間の眠気を「怠けている」と誤解される恐れもあるのではないでしょうか。眠りが浅く疲れがとれないと、きちんと伝えた方が、お互いによいはずです。
家族や親しい友人には、症状のつらい部分やサポートしてほしい事柄を具体的に伝えましょう。また、仕事に影響がある場合は、上司や同僚に事情を説明しましょう。理解を求め、場合によっては業務量の調整を希望するのがおすすめです。

 
更年期の不眠とうまく付き合って、人生を輝かせよう

不眠の悩みは本当につらいものです。眠りが浅い日が続くと「このまま一生眠れないのでは」と暗い気持ちになるかもしれません。
しかし、私たちの体はホルモンバランスや心身の疲れによって刻々と変化しているもの。「更年期を乗り切ると、急に心も体もラクに生きられるようになった」そんな先輩の声も多く聞かれます。上手に更年期と付き合って、長い人生を楽しく過ごしましょう。

 
監修医師からのアドバイス

私たちの健やかな心身をキープするには良質な睡眠が重要です。良質な睡眠には、疲労や体力を回復される効果だけでなく、免疫機能の向上、ストレスの軽減、記憶力や集中力の向上などさまざまな働きがあります。

良質な睡眠とは、スムーズに入眠出来て夜間を通して目覚めることなく朝予定している時刻までぐっすり眠れる状態を指します。いずれかの条件が乱れた状態が続くと医学的には不眠症が疑われるのです。単に睡眠時間が短いだけではなく、長く寝ていても朝の熟眠感がない場合も睡眠不足の可能性があり、不眠症を発症しているかも知れません。

睡眠が足りていないと感じるときは、今回ご紹介したセルフケアを試してみましょう。セルフケアを続けても睡眠不足が解消されない場合は、心身の病気や不眠症の可能性があります。できるだけ早い段階で医療機関を受診しましょう。