監修医師成田 亜希子
2011年医師免許取得。初期臨床研修を経て総合診療医として幅広い分野の治療に携わる。
臨床医として勤務しながら、行政機関での勤務経験もあり地域の健康課題にアプローチした健康寿命延伸、感染症対策などの医療行政にも携わってきた。
国立保健医療科学院、結核研究所での研鑽も積む。
現在、医療法人ウェルパートナー主任医師。
自律神経バランスの乱れは、からだや心にさまざまな不調をもたらします。原因がはっきりしない吐き気や頭痛・めまいなどが続く場合、自律神経のバランスの乱れにより引き起こされている可能性があります。
まずは、自分でできる健康チェックをおこなってみてください。規則正しい生活や、ストレスをためない生活を送るのが、健康のために重要です。また、真面目な人は自律神経が乱れやすい傾向にあるため、物事の見方を変えてみる工夫も大切です。
原因のわからない体調不良は、自律神経の乱れにより起きている可能性があります。頭痛や肩こり、疲れやすさといった、さまざまな不調となってあらわれます。自分の症状にあてはまるかどうかを、下記でチェックしてみましょう。
自律神経は、私たちのからだ中に張りめぐらされている末梢神経です。臓器のはたらきをコントロールし、状況に応じてからだを調整しながら健康を維持しています。呼吸や体温・血圧・代謝など、生きていくための活動を維持するために、意思とは関係なく「自律的」にはたらくのが特徴です。
自律神経には交感神経と副交感神経の二つがあり、交感神経は活動するときにはたらき、副交感神経は休息やリラックスするときにはたらきます。ストレスがかかると二つの神経のバランスが乱れ、からだと心に悪い影響をおよぼすでしょう。おもな不調は、以下のとおりです。
上記以外にも、さまざまな変化があらわれます。病院で検査をしても原因が見つからない場合は、自律神経バランスの乱れが原因となっている可能性が高いでしょう。
自律神経が乱れる原因は、不規則な生活やストレス、ホルモンバランスの乱れ、病気の影響があげられます。それぞれくわしくみていきましょう。
人は生きていると多くのストレスにさらされます。通常は、ストレスがかかって交感神経が優位になっても、適切なタイミングで副交感神経に切り替わり、リラックスした状態になります。しかし、ストレスの強い状態が続くと、スイッチの切り替えがうまくできなくなり、さまざまな不調があらわれるのです。
気温や気圧の変化も、からだへのストレスの原因となります。からだのストレスのおもな原因は、以下のとおりです。
心のストレスのおもな原因は、以下のとおりです。
悪い出来事だけでなく、よい出来事もストレスになるときがあります。
自分のストレスの状態を、下記でチェックしてみましょう。
自律神経の乱れは、不規則な生活が原因の一つと考えられています。現代社会では、多くの人がパソコンやスマートフォンを夜遅くまで使います。本来は休息する時間に脳を使うため、自律神経バランスが乱れやすくなります。また、画面から放出されているブルーライトは交感神経を刺激する働きもあるため、寝つきが悪くなるといった不調が現れることも。朝もスッキリ起きられなくなる方も少なくないでしょう。生活リズムが乱れた状態が続くと、自律神経のバランスもさらに崩れてしまい、からだや心の不調となってあらわれるのです。食事を抜いたり、バラバラな時間に食べたりするのもよくありません。
ホルモンバランスや病気の影響により、自律神経バランスが乱れる場合もあります。月経周期や更年期による影響、脳・神経系の病気などで乱れてしまうのです。「不規則な生活だから仕方がない」と考えていたら、実は病気だったケースもあるので、注意しなければなりません。のちほどお伝えするセルフケアで改善しないときは、早めに医療機関を受診してください。
自律神経失調症とは、自律神経のバランスが崩れ、からだと心にさまざまな症状があらわれる状態をいいます。実は、医学的な正式名称ではなく、多様な症状をまとめて表現した言葉です。
自律神経失調症は、4つのタイプに分類されます。タイプ別の原因と特徴をみていきましょう。
自律神経失調症は性格による影響もあり、真面目で几帳面、神経過敏な人に起きやすいといわれています。症状が重いと、治療が必要になるケースも。
自律神経を整えるには、規則正しい生活や運動習慣、ストレスの対処が重要です。また、真面目で几帳面な人は、おおらかな気持ちで物事をみてみましょう。一つずつ解説します。
食事時間や起床・就寝時間はできるだけ一定にして、規則正しい生活をしましょう。朝日を浴びると体内時計がリセットして、スッキリ起きられ、夜は自然に眠りにつきやすくなります。
食事は、栄養バランスが取れるように心がけましょう。1日3食、主食・主菜・副菜を組み合わせたメニューを選んでみてください。とくに、朝食はしっかり食べるよう意識するのが大切です。忙しいときや食欲がないときは、ヨーグルトとバナナで済ませてもよいでしょう。
入浴は、就寝の1~2時間前が理想的です。ぬるめのお湯にゆったり浸かりましょう。入浴後はパソコンやスマートフォンを使用せず、就寝までゆったり過ごすのがおすすめです。
自律神経のバランスを整えるには、運動も欠かせません。運動により血流がよくなると、交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいきやすくなります。リフレッシュやリラックスにもつながり、心にもよい影響をもたらすのです。運動は、ゆっくり深い呼吸ができるウォーキングやストレッチがおすすめです。通勤通学の際は一駅分歩く、テレビや家事の合間に「ながら運動」をするといった工夫をしてみてください。
自分なりのストレス解消法をみつけましょう。以下は一例です。
リラックスできて、心から楽しいと思えたり充実感が得られたりする過ごし方が大事です。お気に入りの方法をいくつか持っておくとよいでしょう。
ストレスの感じ方は、人それぞれです。物事の見方は一つではないので、ストレスだと受け取らないように、別の角度でとらえてみましょう。マイナス面だけでなく、プラス面がみえてくるかもしれません。
よく聞くたとえ話としてあげられるのは、コップの水の理論です。コップの半分の水を「半分しかない」ととらえるのか、「半分もある」ととらえるのかの違いで、気持ちは変わってきます。他人の考え方や行動は変えられないので、自分の物事の見方を変えてみるように心がけましょう。
自律神経バランスの乱れは、生活習慣やストレス、病気の影響により引き起こされます。ストレスの要因は幅広く、気づかないうちに蓄積するケースがほとんどです。不調を感じる場合は、早めにセルフケアをしましょう。
セルフケアをしても改善しない場合は、医療機関の受診を検討しましょう。まずは、一番困っている症状に合わせて、受診先を選ぶのが大切です。下痢や便秘でお腹の症状が強いときは消化器内科、不安やイライラが強いときは心療内科を受診してみてください。
自律神経は私たちの体のさまざまな機能を調節する重要な働きを担っています。一方で、自律神経のバランスは些細な原因で乱れやすく、心身に不調を来すケースも少なくありません。
自律神経のバランスを整えて健やかな生活を送るには、今回ご紹介したような生活改善やセルフケアを心がけましょう。
ただし、自律神経バランスを整えようとする生活改善がストレスとなり、返ってバランスの乱れを引き起こしている方もいます。生活改善は無理のない範囲で行うのが原則です。
ご自身ができることから毎日少しずつ始めてみましょう。
また、自律神経バランスの乱れによる不調は市販のお薬で改善する場合があります。
気になる症状はあるけど病院を受診するまでひどくない…そういった場合はまず市販薬を試してみて、それでも改善しない場合は医療機関を受診するのがよいでしょう。
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