一級建築士・ライフスタイルライター神谷三理砂
住宅やインテリアの意匠設計に従事した経験を活かし、家の間取りやデザイン、インテリアなど住まいに関するコラムを多数手掛ける。ジュエリーデザイナーとしての経歴も長く、ファッション系コラムも執筆。最近は、より生活に役立つ記事を書きたいという思いから健康コラムに力を注ぐ日々。
刺繍や洋裁、家庭菜園といった手仕事を楽しむ暮らしを大切にしている。
室内での暑さ対策は万全ですか?気温や湿度が上がる季節は、室内で過ごしていても熱中症にかかるリスクがあります。体内の水分・塩分のバランスが崩れて体温調節ができなくなり、体内に熱がこもってしまうためです。
室内での基本的な暑さ対策や、生活シーン別の注意点、すぐにできる冷暖房効率を上げる方法についてお伝えします。とくに、赤ちゃんや子ども、高齢者は熱中症にかかりやすいため、しっかり対策をして安全で快適に過ごせるようにしましょう。
総務省消防庁によると、全国で熱中症により救急搬送された人は、令和5年5月から9月の間に91,467人にのぼり、前年に比べて約2万人も増加しています。熱中症と聞くと、気温が高い日の屋外で発生するイメージを持っている人が多いでしょう。ところが、実際には熱中症の約40%は住居(敷地内すべての場所を含む)で発生しています。
室内で熱中症が起きる原因は、おもに以下の3つです。
とくに気温が上がる7~9月は、室温や湿度の上昇により体温が上がりやすくなります。また、6月は湿度が高いために汗が蒸発しにくく、身体に熱がこもりやすい状態に。室内にいるからと油断せず、しっかり暑さ対策をおこないましょう。
参照:令和5年10月27日消防庁 報道資料/総務省年齢や体調によって熱中症にかかりやすい人がいます。以下にあてはまる場合は、リスクが高いため注意しましょう。
体温調節機能が十分に発達していないため、汗をうまくかけません。そのため、体内に熱がこもりやすくなり、大人よりも熱中症のリスクが上がってしまうのです。また、体調の変化を言葉でうまく伝えられず、暑いからと自力で涼しい場所へ移動したり、意識的に水を飲んだりするのが難しいため、大人が注意深く様子をみてあげる必要があります。
暑さや寒さ、のどの渇きへの感覚が弱まり、体温の調節機能も低下しています。長時間高温多湿の室内で過ごしても、体調の変化に気づきにくいのが特徴です。いつの間にか脱水症状になり、熱中症を引き起こしてしまいます。
風邪・寝不足・疲労で体調が悪いときや、二日酔いや下痢で体内の水分量が減っているときは、体温調節機能が低下しています。熱中症にかかりやすいため、注意しましょう。
皮下脂肪が多いと、体内の熱を外へ逃がしにくくなります。さらに、重い体を動かすために多くの熱が発生するため体温が上昇しやすく、熱中症のリスクが高まるのです。
室内で熱中症にかからないための、基本的な対策方法をお伝えしますので、ぜひ実践してみてください。
室温・湿度をチェックする習慣をつけましょう。室内環境は部屋ごとに異なります。まずは、温度計・湿度計・熱中症計を使用して、自分が過ごしている環境を確認。必要に応じて、エアコン・扇風機・除湿機を使用し、適切な室温・湿度になるように調整しましょう。
遮熱機能のあるカーテンやシェードを使用すると、強い日差しを遮れるうえに、冷房の効きもよくなります。すだれやよしずなどを活用してみるのもよいでしょう。
汗をかいていなくても、皮膚や呼気から水分は失われています。不感蒸泄と呼ばれ、気づかないうちに1日に約900mlもの水分が体から出ているのです。汗をかいていなくて、のどの渇きを感じない状態でも、こまめに水分補給をしましょう。
また、水分補給だけでなく、適度な塩分補給も大切です。高温多湿の環境下で長時間の運動や作業をして大量に汗をかくと、体内の水分以外に塩分やミネラルも失われます。水分補給をしているだけでは、塩分・ミネラル濃度が薄くなり、かえって熱中症を引き起こしたり、悪化させたりする場合があるのです。水分・塩分は、どちらもバランスよく補給しましょう。
生活のリズムが乱れ、栄養不足・睡眠不足・体調不良に陥ると、熱中症にかかるリスクが高まります。体温調節を担っている自律神経が乱れ、深部体温をうまく下げられなくなるためです。朝食をしっかりとって栄養や塩分を補給し、十分な睡眠をとって疲労を蓄積しないように気をつけましょう。
室内では、生活シーンに合わせた熱中症対策が大切です。キッチンでの調理中や入浴のときは、暑さ対策が必要なイメージがありますが、睡眠時や高齢者の部屋にも注意しましょう。
キッチンは火を使うため室温が上昇しやすく、調理中の蒸気で湿度も上がります。エアコンをつけて室温を調整し、換気扇を回してこもっている熱を逃がしましょう。また、調理中はこまめに水分補給をしつつ、体を冷やすアイテムを活用するといった工夫も必要です。
子どもは汗をかく能力が未発達です。体が小さいため、周辺環境の影響を受けやすい特徴があります。体調不良をうまく伝えられない子が多いため、子どもの顔が赤くなっていないか、汗を大量にかいていないかなど、こまめに様子を確認しましょう。部屋の涼しさを保てるように、エアコンで室温を調整し、不安な場合は目の届く範囲で遊ばせると安心です。子どもたちだけで遊ぶときには、いつでも自分たちで水分補給できるように、飲み物を用意しておきましょう。
高齢者は体温調節機能が低く、温度に対する感覚が弱いため、熱中症にかかりやすい特徴があります。のどの渇きを感じていなくても、水分をとるように心がけてください。キュウリやナスといった水分が多い食材をとる、味噌汁や漬物で塩分を補給するといった、食事面にも気をつかいましょう。
体が暑さに慣れると熱中症のリスクを軽減できるため、シャワーだけで済まさず湯船につかってあたたまりましょう。入浴前後には水分を補給し、大量に汗をかいたときには塩分も補給してください。
夜間に部屋を締め切ったまま寝ると、室温が上がって熱中症にかかるリスクが上がります。寝ている間も発汗して水分が失われるため、エアコンを使用して快適な温度を保ち、就寝前・起床後の水分補給を習慣にしましょう。
部屋の暑さ対策には、冷暖房効率を高める工夫が大切です。冷房をつけていても、部屋がうまく冷えなければ、熱中症にかかる恐れがあります。手軽にできる方法をご紹介しますので、ぜひ試してみてください。
エアコンから出た冷たい空気は下に向かい、床付近にたまる性質があります。部屋全体を均一に冷やすために、扇風機やサーキュレーターで部屋の空気を循環させましょう。サーキュレーターはエアコンの対角線上の冷気が落ちる場所に置き、床にたまった冷気をエアコンに向けて送り込むようにして循環させます。
隣の部屋も同時に冷やしたいなら、エアコンを背にしてサーキュレーターを配置してください。隣の部屋にも冷気を届けながら2部屋の空気を効率よく循環でき、どちらの部屋も快適性が向上します。
窓から強い日差しが注ぎ込むと、室温が急上昇します。エアコンを使用していても、室温がなかなか下がらない原因となるため、夏場の日中はカーテンやブラインドを閉めて直射日光を遮りましょう。とくに、西日があたる部屋は要注意です。遮光遮熱機能のあるタイプを選ぶと、より室内を涼しく保てます。
1日中窓を締め切った部屋は、室内に熱気がこもってしまいます。そのままの状態で冷房をつけても、なかなか室温は下がりません。帰宅したらまず窓を開けて、熱気を外へ逃がしましょう。窓は1か所だけでなく2か所(できれば対角線上の窓)開けると、空気が通りやすくなり、効率的に換気できます。
室内の暑さ対策には、室温だけでなく湿度の調整が必要です。湿度が高い部屋では汗をかいても蒸発しにくく、体温調節が難しくなるため熱中症のリスクが増加します。湿度を下げれば、同じ室温でも涼しく感じられるでしょう。
実は湿度が20%変わると、体感温度は約4℃変わるといわれています。エアコンを除湿運転にする、除湿器を使うなどして、空気中の水分を減らす工夫をしてみましょう。
熱中症は誰でもなる可能性があります。かといって、エアコンを使い過ぎると、電気代が気になりますよね。そんなときは、ひんやりグッズが役立つでしょう。
首元を冷やすネッククーラー、瞬間冷却パックや冷却シート、接触冷感タオルや衣類、汗をかくたびに冷涼感を得られる衣類スプレーなど、好みや使用シーンに合わせて選べます。アイス枕や冷却マットを使用すれば、就寝中の快適性も向上できるでしょう。エアコンとひんやりグッズを上手に併用して、室内の暑さ対策・熱中症予防に活かしてくださいね。
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