一級建築士・ライフスタイルライター神谷三理砂
住宅やインテリアの意匠設計に従事した経験を活かし、家の間取りやデザイン、インテリアなど住まいに関するコラムを多数手掛ける。ジュエリーデザイナーとしての経歴も長く、ファッション系コラムも執筆。最近は、より生活に役立つ記事を書きたいという思いから健康コラムに力を注ぐ日々。
刺繍や洋裁、家庭菜園といった手仕事を楽しむ暮らしを大切にしている。
カビ対策をせずに放置すると、部屋のあちこちに繁殖してアレルギーなどの健康被害を生じる原因となります。湿気が溜まりやすく、空気が通らない場所はとくに発生しやすく、「湿度70%以上」「温度20~30度」「豊富な栄養源」と3つの条件がそろうと、猛スピードで繁殖するので要注意。また、ジメジメした梅雨の時期だけでなく、秋も長雨や台風の影響でカビが繁殖しやすいため、しっかり対策をしましょう。
自然界に100万種以上存在していると言われているカビですが、部屋に浮遊する種類は健康に影響を及ぼす可能性があります。代表的な健康被害は、アレルギーです。カビの胞子を吸い込むと、かゆみ・咳・鼻水・喉の痛み・喉の腫れ・呼吸トラブルといった症状を引き起こす場合も。エアコンを使っていたら喉が痛む、咳やくしゃみが出るといったときは、エアコンの内部に発生したカビによるアレルギーかもしれません。免疫力が低下しているときや、そもそも免疫力の低い子どもや高齢者は、呼吸器系にカビが感染する可能性があるため、とくに注意が必要です。
カビの種類によって発生しやすい状況は変わりますが、「湿度」「温度」「栄養源」と3つ条件がそろうと、あっという間に繁殖します。お風呂・洗面室・キッチン・トイレといった水まわりでカビが発生しやすいのは、よい条件がそろっているからです。
カビは湿気を好む傾向があります。湿度が60%以上になると活動が活発化。湿度80%以上では爆発的に増殖するため、湿気を溜めない工夫が必要です。
人が心地よいと感じるあたたかな気温は、カビの繁殖を促します。とくに、温度が25~28度になると、生育が盛んになるでしょう。
家の中に落ちているホコリ・食べかす・皮脂汚れ・髪の毛は、カビの大好物です。掃除をする頻度が少ないと、カビの温床となります。
梅雨は湿度が上がり、カビが発生しやすいタイミング。雨の日は窓を閉めがちですが、湿気の逃げ道がなくなってしまうため、窓を開けて適度に換気をする必要があります。また、あまり知られていませんが、実は秋も要注意の季節。暑い夏の間は増殖が抑えられていたカビも、気温が下がり、長雨や台風の影響で湿度が上がる秋になると、再び活発化します。
風通しが悪く湿度が上がりやすい場所は、カビの温床になります。「黒カビ」「赤カビ」「煤カビ(ススカビ)」「コウジカビ」の4種類は、部屋に生える代表格です。とくに、水まわり・窓まわり・収納は湿気が溜まりやすく、掃除が行き届きにくい家具の裏側はカビの栄養源となるホコリや汚れが豊富にあるため、発生率は上がります。
同じ家の中でも、場所によって生えるカビは異なります。種類ごとの特徴や発生しやすいスポットを抑えておきましょう。
水まわりや壁など、家中で見られるカビです。黒い斑点状に発生し、健康に影響を及ぼす可能性があります。
浴室や洗面台といった水まわりで見られ、ぬめりがあり、ピンク色や紫色をしています。赤カビと呼ばれていますが、実はカビではなく酵母菌「ロドトルラ」の一種です。簡単に落とせますが、繁殖力が強いため再発生しやすく、放置すると黒カビの原因となります。
色が一定ではなく、白・茶・緑など、場所や環境によって変わります。湿度が65%以上で発生し、やや乾いた場所を好むカビです。畳・エアコンの吹き出し口・カーペット・皮革製品に発生しやすく、たくさん吸い込むとアレルギーの原因になるでしょう。
エアコンの内部やプラスチックに繁殖する、黒いスス状のカビです。胞子が軽く、空気中に浮遊しているため、エアコンに吸い込まれて蓄積しやすくなります。繁殖すると除去が難しいため、早めの対処が必要です。
参照:東京都保健医療局「室内のカビ対策」湿気が溜まりやすく、空気が通らない場所は、とくにカビが発生しやすくなります。水まわりだけでなく、見落としがちな寝具や畳にも注意が必要です。
浴室・洗面室・トイレ・キッチンといった水まわりは湿気が多い場所です。また、皮脂汚れ・食品カス・石鹸カスなど、カビの栄養源が豊富にあります。
クローゼットや押し入れは、閉め切っていると湿度も温度も上がりやすくなります。ホコリが溜まりやすく、掃除をしないとカビの栄養源が増えるので要注意。
また、玄関のシューズボックス(靴箱)も湿気がこもりやすい場所。1日履いた靴や濡れた長靴は靴箱にしまわず、玄関に出しておきましょう。
屋外と部屋の温度差が大きくなると、結露が発生し窓にたくさん水滴がついてしまいます。とくに、エアコンを使用する真夏と冬場は、温度差が大きくなるため、カビの原因になりやすいでしょう。
人は寝ている間にコップ1杯分ほどの汗をかくと言われています。マットレスや敷布団は大量の汗を吸収し、さらに寝ている間にあたためられ、髪の毛やホコリといったカビの栄養分が付着。結果、カビが繁殖しやすい条件がそろってしまうのです。
食器棚や冷蔵庫の裏側は、日頃掃除をしにくい部分です。また、空気が溜まりやすいため、模様替えや引越しで大型家具を動かしたときに、びっしり生えているカビに驚く人も少なくありません。
エアコンは「快適な室温・高湿度・ホコリや汚れが溜まりやすい」と、カビが繁殖する3つの条件がそろっている場所。エアコンの内部がカビだらけになると、室内に放出されて、健康被害につながるリスクが高まります。
昔ながらの天然い草でつくられている畳は、湿度を調整して部屋を快適に保つ特性があります。しかし、湿度の高い状態が続くと、吸収できる湿気量の限界を超え、カビの発生につながるケースも。
「湿度」「温度」「栄養源」と、カビが好む3つの条件がそろわなければ、カビの繁殖を防げます。カビが生えないように、日頃からできる対策方法を確認しましょう。
湿度60%以下になると、ほとんどのカビ菌は活動できなくなります。とくに湿度が上がる梅雨・秋雨・夏場は、エアコンの除湿機能や除湿機を使い、湿度を40~60%に保ちましょう。玄関・クローゼット・押し入れに除湿剤を置くのも役立ちます。
部屋にこもった湿気を外へ逃がすために、天気のよい日は窓をあけて風通しをよくしましょう。料理や入浴後、洗濯物を部屋干しをしたときは湿度が上がっているため、換気を忘れずに。対角線状にある窓を2カ所開けると、効率よく空気が通ります。また、収納スペースはこまめに扉を開けて、物を詰めすぎないように余裕を持たせるのも大切です。
カビは、食べ物のカスやホコリを栄養源にして成長します。つまり、こまめに掃除をして栄養源を取り除けば、発生を抑えられるのです。こびりついている汚れは、しっかり拭き取りましょう。
カビが発生したら、今以上に増えないよう早めに対処しましょう。場所によって、「塩素系」と「消毒用エタノール」を使い分けます。
壁や家具といった水で洗い流せない場所には、雑巾に消毒用エタノールを吹きかけて拭き取りましょう。マスクやゴム手袋をすると、手荒れやカビの胞子を吸い込むリスクを減らせます。エタノールは引火の恐れがあるため、火の近くで使用しないでください。
塩素系のカビ取り剤は、使用後にしっかり洗い流す必要があるため、浴室や洗面台の水まわりで使いましょう。取り扱い説明に従い、使用後は水で洗い流し、雑巾でしっかり水気を拭き取ってください。
塩素系のカビ取り剤は効果を得やすい分、使用する際には注意が必要です。必ず換気を行い、酸性タイプの製品と混ぜないようにしましょう。液剤が飛び散ったときに備えて、マスク・ゴム手袋・ゴーグルを使用し、長袖の服を着て目や皮膚を保護してください。
空気の流れは、家具のレイアウトが大きく影響します。壁から少し離して家具を配置すれば、空気の通り道ができて、湿気が溜まりにくい環境になるでしょう。また、収納スペースは物を詰めすぎず、床にすのこを敷くなどして、空間の余裕と空気が循環しやすい工夫が大切です。ソファやベッドを脚付きタイプにすると、より空気が流れやすく、裏側のカビを防ぎやすくなります。繁殖してから対処は大変なので、できるだけ生えない環境づくりを心がけましょう。
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