一級建築士・ライフスタイルライター神谷三理砂
住宅やインテリアの意匠設計に従事した経験を活かし、家の間取りやデザイン、インテリアなど住まいに関するコラムを多数手掛ける。ジュエリーデザイナーとしての経歴も長く、ファッション系コラムも執筆。最近は、より生活に役立つ記事を書きたいという思いから健康コラムに力を注ぐ日々。
刺繍や洋裁、家庭菜園といった手仕事を楽しむ暮らしを大切にしている。
湿気対策は、快適な住環境の維持に欠かせません。部屋の理想的な湿度は40~60%といわれ、高くなりすぎるとカビや害虫の発生を招き、家の劣化や健康被害の原因になります。
家の環境や建材、洗濯物の室内干し、季節や場所など、湿気が増えてしまう理由は複数考えられるのです。家と健康を守るためにカラッとした部屋をつくるなら、換気・除湿・収納方法のポイントを抑えて、しっかり対策しましょう。
部屋に湿気がこもると、カビの繁殖や害虫の発生を促し、家の劣化が進むだけでなく健康被害のリスクも高まります。毎日気持ちよく暮らすためには、湿気を溜めない工夫が大切です。
部屋の湿気を放置するのは止めましょう。湿気によりカビや害虫が発生してしまうと、住環境が悪化する可能性があります。
湿気を含んだ空気が部屋に溜まると、カビの温床に。とくに、「湿度70%以上」「室温20~30度」「豊富な栄養源(食べかすやホコリ・ゴミなど)」の3条件がそろうと、カビは一気に繁殖します。風通しが悪いクローゼット・押し入れ・靴箱、結露を生じやすい窓まわりや浴室・洗面室といった水まわり、日当たりが悪い北向きの部屋は、カビが生えやすい場所です。
湿気の影響でカビが発生すると、カビを餌とするダニやチャタテムシ(湿気虫)といった害虫被害につながります。ダニは高温多湿を好み、湿度60%以上・気温20~30度で繁殖しやすい状態に。チャタテムシは、繁殖すると食品に侵入したり、チャタテムシを捕食するダニを呼び寄せたりして、被害が大きくなってしまいます。
湿気によりカビやダニが発生すると、人の健康にまで大きな影響を与えます。微細なカビの胞子やダニの死骸・フンを吸い込むと、かゆみやアレルギー症状を引き起こすリスクがあるのです。世界保健機構(WHO)によると、わずか1gのホコリでも、2μg(ダニ100匹/ホコリ約1g)以上のダニ(死骸・フン)が含まれている場合、アレルギーを発症する可能性があるとされています。
また、湿度が高い環境で過ごしていると、体温調節の役割をしている汗が蒸発しにくくなるため、体内に熱がこもって体調不良や熱中症を引き起こす可能性も。湿気対策は、健康を守るために欠かせないのです。
部屋に湿気が溜まる原因は、ひとつではありません。季節や部屋の場所、家の環境や使用されている建材、洗濯物の部屋干しといった、複数の要因が関係しています。
雨が多い梅雨や秋雨のシーズンは、部屋の湿度が上がります。雨が降っているからと窓や部屋のドアを締め切ると、風通しが悪くなり、水分の逃げ道がなくなって湿度が高い状態になってしまうのです。また、冬は外気の温度や湿度が低くなりますが、部屋で暖房を使用すると屋外との温度差で結露が発生し、湿気や水滴が溜まってしまいます。
浴室・洗面室・トイレ・キッチンといった水まわりや、日当たりや風通しが悪いクローゼットと押し入れは、湿気でジメジメしやすい場所です。また、寝ている間にかいた汗を吸収してしまうベッドや布団も、湿気がこもります。
海や川辺の家は、どうしても湿気が多くなります。周囲に高い建物が多い場所や北向きの部屋は日が当たりにくく、風通しも悪くなりがちです。また、新築時のコンクリートは多くの水分を含んでおり、抜け切るまでに約2年ほどかかります。1年目はとくに蒸発量が多くなるといわれているため、住環境に影響が出やすくなるでしょう。
洗濯機のおまかせモードで洗濯・脱水をした洗濯物は、乾燥時の重量の約60%もの水分を含んでいるとされています。部屋干しをすると、濡れた洗濯物の水分が部屋に放出されるため、部屋の湿度がぐんとアップするのです。
快適に過ごせる部屋の湿度は40~60%といわれ、季節によって快適な湿度は変わります。夏は除湿機やエアコンの除湿機能、冬は加湿器を使用して、最適な湿度をキープしましょう。湿度が10%上がると体感温度は約1度下がるといわれており、気持ちよく過ごすには湿度と温度のバランスが大切です。自分の体感に合わせて、最適な湿度・温度を見つけましょう。
参照:どうしたら涼しくなるの?/一般社団法人 環境情報化学センター
参照:健康・快適居住環境の指針 平成28年度改訂版/東京都福祉保健局
部屋の湿気を軽減して清々しい部屋を保つには、換気・除湿・収納方法がポイントです。いくつか方法を組み合わせて実践し、快適な部屋を目指しましょう。
窓を開けて空気を入れ替えると、手軽に換気ができます。季節を問わず、暑い夏や寒い冬でも1時間に2回以上、数分間ほど換気するのがよいといわれています。無理のない程度におこないましょう。対角線上に位置する窓を2カ所開けると、空気の通り道ができ、効率よく換気できます。
参照:「換気の悪い密閉空間」を回線するための換気の方法/厚生労働省エアコンの除湿モードや除湿機を使うと、効率的に湿度を下げられます。除湿機は、部屋の広さにあった適用畳数(除湿可能面積)の製品を選びましょう。
部屋の換気をする際は、クローゼット・押し入れ・部屋の扉を開けて、サーキュレーターで窓の方へ向かって風を送りましょう。風通しが悪い場所で湿気を逃したいときに、役立つ方法です。
汗や水分で湿気が溜まりやすい、密閉空間の靴箱・クローゼット・押し入れの中には、除湿剤を置くと便利です。除湿剤には、置き型・吊り下げ型・シート型があるので、置き場所とスペースの広さに合わせて選んでください。
クローゼットや押し入れには、パンパンに物を詰め込まず、2割程度の余白を残して収納しましょう。ハンガーとハンガーの間は数センチ空ける、服が増えたら増えた分だけ古い服を捨てるといった工夫で物量を調整し、風の通り道を残してください。押し入れに布団を入れる際は、その下に調湿効果のある天然木の桐や檜(ヒノキ)の、すのこを敷くとよいでしょう。
窓まわりは結露が発生しやすく、放置するとカビの繁殖や、壁内の木材の腐食につながります。結露を見つけたら、すぐに拭き取りましょう。
重曹を口の広い空き瓶といった容器に入れて、フタをせずに置いておくだけでも、湿気を吸収し、消臭・脱臭作用も発揮します。2~3カ月ほど使用して固くなってきたら、水分を吸った状態なので交換のタイミングです。使用した重曹は、掃除で使い切りましょう。
炭は無数の小さな穴があいている多孔質で、部屋の湿度が高いときには吸収し、湿度が低くなると溜めた水分を放出してくれて、加えて脱臭もしてくれます。効果が薄れてきたと感じたら、水洗いをしてから陰干ししましょう。繰り返し使用できて経済的です。
入浴後は、浴室内に残った水分をタオルや水切りワイパーでしっかり拭き取りましょう。水気がなくなれば、湿度が下がります。はじめは手間に感じるかもしれませんが、作業は数分で終わるので、カビが発生した後の対処と比べると、ずっと簡単です。
また、カビの餌となる石鹸カスや垢などの汚れを熱いシャワーで流した後、冷水シャワーをかけて浴室内の温度を下げてから換気をおこなう方法も有効。換気は、窓を開けて風を通すか、換気扇を回しましょう。
浴槽にお湯を残しておくときは、湯気が天井へ上がらないように必ずフタをしめてください。
棚やソファーといった大型家具は、壁や家具同士をピタッとくっつけて配置すると、空気が循環しにくくなり、湿気がこもってしまいます。家具の周囲は、できるだけスペースをとってレイアウトしましょう。
湿気を溜めない部屋にするために、調湿効果のある壁紙や珪藻土(塗り壁材)を使って、内装をDIYしてみるのはいかがでしょう。一人でじっくり作業してもいいですし、家族や友人に手伝ってもらいながら楽しい時間を過ごせるのも、DIYの醍醐味です。湿気対策と部屋のイメージチェンジが同時にできるので、ぜひ試してみてください。
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