監修医師成田 亜希子
2011年医師免許取得。初期臨床研修を経て総合診療医として幅広い分野の治療に携わる。
臨床医として勤務しながら、行政機関での勤務経験もあり地域の健康課題にアプローチした健康寿命延伸、感染症対策などの医療行政にも携わってきた。
国立保健医療科学院、結核研究所での研鑽も積む。
現在、医療法人ウェルパートナー主任医師。
休んでも疲れがとれないのは、脳疲労が原因かもしれません。脳疲労は、その名のとおり、脳が疲れている状態を表す造語であり、脳内の情報処理バランスが大きく崩れた状態を表します。回復のカギは、食習慣と生活におけるタスクのこなし方にあるのです。放置してしまうと集中力や判断力の低下をはじめ、全身に影響が出かねません。デジタル社会を健康に生き抜くために、正しい回復方法をチェックしてみませんか?
脳疲労は、その名のとおり、脳が疲れている状態を表す造語です。脳内が情報であふれ、処理しきれなくなった状態を指します。
脳には思考・感情・本能などを司る数多くの部位があり、通常は互いがバランスをとりあって情報を処理しているのです。脳疲労とは、これらのバランスが崩れてしまった状態をいいます。
たとえば情報を整理する人が脳内にいて、あまりに多くの情報をさばきこなせず、疲れ切ってしまったと考えてみてください。キャパオーバーで処理しきれなくなった情報が脳内で散らばってしまい、混沌とした状態になるのが想像できるでしょう。
情報過多で脳が疲れていると感じたときは、積極的にぼーっとする時間を設ける方も多いのではないでしょうか。情報が整理されて改善に向かいそうに思いますが、じつは違います。
脳には大きくわけて3つのモードが存在し、安静状態のときにはたらくのがDMN(デフォルトモードネットワーク)です。DMNモードになると、脳の消費エネルギーの6~8割を占めるといわれています。つまり何もしない時間を設けるほどに、脳はエネルギーを消費し続け、かえって疲れてしまうといえるのです。「しっかり休んだつもりなのに、なぜか疲れがとれていない」と感じる原因の一つと言えるでしょう。
脳内で情報があふれてしまう脳疲労は、デジタル機器の普及により格段に起こりやすくなってしまいました。情報が無限にあるスマホやパソコンを触る機会の多いわたしたちは、常に脳疲労のリスクにさらされている状態です。休んでも疲れがとれない状態を回避するために、原因と症状を理解しておきましょう。
デジタル社会において、脳疲労の大きな原因となるのが、スマホやパソコンの使いすぎです。テレワークやオンライン授業の導入により、デジタル機器から情報を得る機会を避けられなくなってきました。インターネットにはおびただしいほどの情報が落ちていて、逐一情報を精査しなければなりません。リフレッシュのつもりでスマホゲームをしたり、SNSをチェックしたりするのも、脳を休めるどころか酷使してしまっているのです。
日々のタスクの多さも、脳疲労の主な原因のひとつです。タスクが多いほど、多方面に考えをめぐらせなければなりません。マルチタスクは脳のワーキングメモリのキャパオーバーを引き起こすだけでなく、エネルギーの過剰消費やストレスに関わるホルモンの分泌促進を引き起こすと指摘されています。
「会議に参加して話を聞きながら、内容をまとめる」「部屋の片づけをしながら、夜ごはんの献立を考える」といったマルチタスクは、脳疲労につながると考えられるでしょう。
脳疲労は、休んでも疲れがとれない以外にも、さまざまな症状が現れ始めます。放置してしまうとさらなる不調をまねきかねません。脳疲労は全身の不調につながりかねないため、たかが疲労と思わず、早めの対処が重要です。
脳疲労の原因となるDMNモードで消費されるエネルギーは、適度な糖分やビタミン類から補えます。甘いものの摂り方も、脳疲労に深く関係するひとつです。日中に心がけたい食生活をチェックしてみましょう。
脳疲労を感じたときは、ビタミン類を積極的に摂るのがおすすめです。ビタミンが疲労を直接回復してくれるわけではありませんが、エネルギーの代謝や脳の情報伝達に必要な栄養素です。
ビタミン類は、肉・魚・豆類などを取り入れ3食バランスのとれた食事をしていれば、補うのはむずかしくありません。しかし、仕事や育児、介護で忙しく、まともな食事を用意できない場合もあるでしょう。ビタミンB群は体内で貯蔵しにくいため、栄養ドリンクやサプリメントなどからの摂取がおすすめです。
疲れたときによいとされる甘いものは、摂るタイミングと方法がカギとなります。そもそも疲れると甘いものが食べたくなるのは、脳のエネルギー源であるブドウ糖を欲するためです。甘いものを食べると、一時的に血糖値があがって幸福感で満たされます。しかし、根本からの疲労回復にはつながりません。
さらに、甘いものを摂りすぎると血糖値が急激に上昇し、糖尿病や肥満などのリスクが高まるため注意が必要です。
生活における脳疲労回復のポイントは、脳がこなさなくてはならないタスクをいかに減らしてあげられるかです。スマホやパソコンをどうしても使わなければいけないからといって、諦める必要はありません。生活習慣のなかでできる工夫をチェックしてみましょう。
脳疲労から脱するためには、寝る前に、1日のうちで得た情報の整理が大切です。起こった出来事を日記に書き留めたり、決定した先々のスケジュールを書き込んだり、目を閉じて寝落ちする前に考えをめぐらせたりするだけでも構いません。脳は、寝ている間に記憶の整理をしてくれています。その手助けをすると、脳を休めやすくなるでしょう。
リラックスタイムを設けるのも、脳疲労を回復させるためには必要です。好きなアロマを炊いたり、音楽をかけたり、自分がリラックスできる環境に身を置いてみてください。さらに目を閉じて行うと、目から入ってくる情報を物理的にシャットダウンでき、さらなる脳疲労のリスクを軽減できます。
マルチタスク下で起こりやすい脳疲労の回復に、大きく貢献してくれるのがマインドフルネスです。今起こっていることに心を向け、過去や未来、雑念から解き放たれるための考え方を指します。何かひとつに集中する、いわゆる究極のシングルタスクです。
マインドフルネスを実行するときは、雑念が浮かびそうになったら意識的に払い、目の前の光景や香り、音だけに心を向けてみてください。
休日にマインドフルネスを活用しても、日常的なマルチタスクは避けられず、すぐに疲れが溜まってしまうのではないかと不安な方もいるのではないでしょうか。しかし、シングルタスク化はむずかしくはありません。会議に参加しつつ内容をまとめなければならないなら、要点だけかいつまんで書き留めておくなど、できるだけあれこれ考えないで済むよう工夫してみましょう。
マルチタスクが得意な方も、脳が疲れないわけではありません。現代社会を健康に過ごすためのカギは、メリハリのある行動にあるといえるでしょう。
脳疲労は正式な医学用語ではありませんが、現代人に多い疲労の原因の一つです。
特にスマホやタブレットなどどこでも見られるデバイスが普及してから、脳疲労を抱える方は増えているとされています。
脳疲労を放置すると次のような症状が現れることがあります。
・自律神経バランスの乱れ
・認知機能の低下
・気分の不安定さ
また、うつ病や生活習慣病など心身の病気のリスクが高まるとの報告もあります。
疲れを感じやすいときは、無理をせず今回ご紹介した対策法を試してみて下さい。
ただし、疲れが長く続くときは何らかの病気が原因の場合もあります。単なる疲れと軽く考えず、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。
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